寒い冬

ー田井中家ー

律パパ「一週間後、海外に引っ越すことになったぞ、律」

律「え?」

律パパ「突然の話ですまないな、今日からでも部屋の整理をしなさい」

律「…そんな…イヤだって!!」

律パパ「仕事の都合なんだ…どの道選択はしなければいけなかった

すまんな」

律「…」

律パパ「これからの事を考えてだ、許してくれ」

律「…わかったよ」



ー律の部屋ー

私はベッドの上で考えていた

律「…どうしてだよ…」

色々考えると、涙が止まらない

律「…」グスン

私は枕を抱き締めていつもより早く眠った



ー翌朝ー

唯「やっほぅ!!りっちゃん」だきっ

律「…唯…」

唯「むぎゅー、りっちゃんあったかいなあ」スリスリ

律「…」

唯「…あれ?いつもなら『やめろってぇ』って嫌がるのに」

律「唯ぃ…」ウルウル

唯「うわぁ!!どうしたのりっちゃん…可愛くなっちゃって!!」

律「…うるさい」ムカッ

唯「なんかあったの?」

律(言わない方がいいかな…でも…)

唯「お腹空いたの?」

律「はは…あんたじゃあるまいし」

唯「てへへ」

律「あはは」(唯には黙っておこう)



律「…澪…澪…」

気付けば私は澪を探していた

澪「おっ、律」

律「…みおしゃん…」

澪「どうした朝から…」

律「うわぁああん」

澪「へっ!?あっ…律…」

澪「どっ…どうした」

律「…澪、私辛いの」

澪「どうした?律らしくないぞ?」

律「…澪がよしよししてくれたら元気出るかも」

澪「…なっ…」

律「ぅうぁあわあぁん」

澪「あわわ、分かったよ…」

澪「よしよし」ナデナデ

律「澪…」ギュッ

澪…あったかい

律「元気出た!!」しゃきーん

澪「なんでだよぉ」

律「澪は可愛いなあ」

澪「ぅうぁあわあぁんっもうっ」

律「よしよし」ギュッ
(澪にも言わない方がいいかな)



ー放課後、部室ー

ガラガラ

紬「あら、早いのね。りっちゃん」

律「あ…ああムギ

澪はトイレだってさ
あれっ…唯は?」

紬「唯ちゃんなら居残りだわ」

律「あいつ~」

紬「うふふ、紅茶入れますね」

律「…ありがと」

律「ムギ…」

紬「はい?」

律「他の二人には言えなかったけどさ

私、一週間後に海外の学校に引っ越すの」

紬「…え?」

律「ムギの前だと落ち着くね。こんなことすぐ言えちゃうくらいだ」

紬「…あっ熱っ」

律「ああムギ…大丈夫?」

紬「あ…はいぃ」

律「ムギなら冷静に一緒に悩んでもらえるかと思ってさ」

紬「あ…あまりにも突然だから…紅茶…せっかく入れたのにこぼしちゃった、ごめんね」

律「…ムギ…」

私には分かった
ムギは泣いていた

こぼしてしまった紅茶を片付けながら
顔を決して私に見せなかった

ムギは震えた声を隠すようにわざとらしい口調で話してる

紬「私もよく経験あるのよ、小学校の時も、中学の時も…」

律「そうなんだ…」

紬「勿論突然だから辛いわよね―――」

律「…私…どうしよ」

ガバッ

律「ム…ムギ!?」

紬「ぅう…ふぅう…イヤです…イヤだ…りっちゃん…」

律「…ムギ…ムギ…」

ムギは思いっきり泣いてる

今まで聞いた事ないような悲しい小さな声で

私も歯を力いっぱいくいしばって泣いた

その日
唯と澪は部活に姿を見せなかった



ーその日の夜、田井中家ー

プルルル

律「ん、電話…澪?」

ピッ

律「もしもし…」

澪「律…」

律「澪、お前なんで今日部活来なかったんだ?心配し「来て」



ー公園ー

律「はあ…はあ…澪…」

澪「…」

律「どうした?突然呼び出して…」

澪「律…」

律「どうしたあ?寂しくなったのかい?澪さんよぉ」コノコノ

バシンッ

律「!!…いたっ…」

澪が私を力いっぱい殴った

澪「寂しいやつはどっちだよぉ!!!」

手と言葉はいつもよりずっと強かった

澪「なんで…」

律「…!」

澪「なんでわたしに最初に話してくれなかったんだよぉぉぉっ!!」

律「な…なんのこと…!?」

澪「とぼけんなよ!!
今日…ムギとの会話聞いてたんだから…」

律「!!」

澪「ずっと一緒だったじゃん…なんでわたしに一番に話してくれなかったんだよ…」

律「…傷つけたくなかったからだよ…」

澪「こっちのほうがよっぽど傷つくよ!!!

だったらなんだよ!!

突然私の前から消えようと思ってたのかぁ!?」

澪は泣きながら怒鳴っていた

こんな澪を見るの、初めてだ…

ガシッ

澪が、か弱い腕で私の胸ぐらを力いっぱいに掴んだ

澪「…な…んで…律…」

律「…澪…」

澪「うう…えぐっ…うう」

律「…私、どうすりゃいいんだろ」

馬鹿だなー私

唯にだって何も言ってないのに

澪「律はムギの方が好きなのかよ!!?」

律「す…好き!?って…」

澪「ねぇ…わたしが…ダメだから…頼りなかったのかな…」

律「…そんなこと…」

澪「だってそうだろ!!

わたしは…不器用だ…弱虫だ…痛いのが苦手だ…」

律「違う…そんな…」

澪「でも…」

澪「…律が好きだ…」

私の胸ぐらを掴んでいた手がふわっとゆるまる

澪はボロボロ涙を溢しながら笑顔を作って

くしゃくしゃな顔を真っ赤にしながら
私を「好き」言った

澪「わたしの…強いところ…律に見せなきゃ…」

律「ちょっと…澪…!?」

澪「律…ずっと
わたしを頼っていいんだよ?」

律「…澪…大丈夫か?」

澪「…もう…大丈夫じゃないや…」

律「みぉ…んっ…」

冷たい唇が私に触れた。

律「んっ…ぐ…」

澪「…ん…んう」

とたん、包まれた気がした

温かい…澪の舌だ…

澪は震えていた

私は抵抗する事も考えないで
澪をただ受けとめた

唇が離れた

澪「なあ律…強くぶったりしてごめんな…」

温かい吐息が私にかかる
甘い匂い

律「糸、ひいてるよ、澪」ニカ

澪「やっ…律のだよ」

律「…澪のだもん」

澪「…もう…バカ…ふっ…ふた…二人のだ」

いつもの 澪の顔だ

律「澪に初キス奪われちゃったあ」

澪「…わたしも…初めてだから」

律「ねぇ…澪…」

澪「な…なに」

律「私は…澪が男の子だったら告白してるよ」

澪「えっ…り…律」

律「デートも沢山するし」

律「その…あの…」

律「…一つにだってなれる…」

律「…だから!いつだってメチャクチャにしていいんだよ?」

澪「…り…つ…?」ジワッ

律「でも私ら、女の子同士だから」ニッ

私は今、世界一切ない笑顔を作ったろう

律「澪と私が一つになれるのは

キスだけ―――」

もう一回、もう一回、
もう一回…

気が済むまで
唇がふやけるくらいに
私達はキスをした

切ないよ、澪

きっと
メールも出来るよね
電話も出来るよね

また会えるよね

私は澪が大好きだから。

この味、忘れないよ。

ムギが出してくれたどんなお菓子よりも
どんな紅茶よりも

甘い澪を、私は忘れないから。

律「澪、大好き―――」



~fin~



唯「ちょ」



我ながら何やってんだか

これは澪×律な百合だけど
もう一方はけいおん!×ダウンタウンでした
勿論反省している

支援してくれてありがとうございました
SS初めてだったが楽しかった


最終更新:2011年05月14日 21:14