5がつ9にち
梓「あれ、これは……」
梓「唯先輩くったりぬいぐるみの画像がアップされてる」
梓「か、かわいい……」
梓「フライングゲットしたって報告もあるし、もしかしたらもう置いてあるかも……」
梓「うーん」
梓「よし、ローソンに行ってみよっと」
ろーそん!
姫子「いらっしゃいませー」
梓「あ、あのー……」
姫子(あれ、この子、確か唯の……)
姫子「なんでしょうか?」
梓「けいおんフェアの商品って入荷してますか?」
姫子「ええ、入荷していますよ」
梓「その、取り置きとか予約ってできますか……?」
姫子「申し訳ございません。フェア用品につきましてはお取り置きができないことになっていますので……」
梓「そ、そうですか……」シュン
姫子「ん~…… 明日の7時に陳列するからその時に来てもらえれば大丈夫じゃないかな」
梓「7時…… 分かりました!ありがとうございます!」
姫子「いえいえ」
梓(明日は早起きして…… やってやるです!)
(朝……)
梓(忘れ物もなし。この時間に出ればローソンにつくのは7時ころ)
梓(ふふ、待っててくださいね、唯先輩……!のぬいぐるみ!)
ふたたびろーそん!
梓(ついに、くったり唯先輩が私のものに……)ウィーン
姫子「いらっしゃいませー」
梓「あ、あれ……」キョロキョロ
梓「あのっ、くったりぬいぐるみは……」
姫子「申し訳ございません、既に売り切れてしまいまして……」
姫子(夜からずっと張り込んでたお客さんいたからなぁ……)
梓「そんな……」じわぁ
姫子「えっと、ほら、うちわとかならまだ沢山あるし……」
梓「……」ぐすっ
姫子「このケースとかかわいいんじゃない?どうかなーっ……」
梓「……」
姫子「……」
梓「……」ガサガザ
梓「これください」ドサドサドサ
姫子(買うのね……)
姫子「ありがとうございましたー」
梓「」フラフラ
姫子「うーん」
姫子(なんだか、すごくかわいそうだったなぁ……)
梓「いろいろ唯先輩グッズは手に入ったけど、リフレクターと携帯スタンドはダメだった……」
梓「はぁ……」
梓「……うん、しょげてちゃダメだよね」
梓「ローソンはまだ他にもあるし、頑張って探さなくっちゃ」
にけんめ!
梓「ここにはあるかな……」
店員「ありがとうございましたー」
オタ「ふひーふひー」ズッシズッシ
梓「!?」
梓(大量に袋を抱えた男……)
梓(商品が陳列されていない綺麗な棚……)
梓(この二つの符号が意味するものはひとつ……!)
梓「やられた…… 買占めだ……!」
梓「このローソンをさっきの男が…… 商品を全部買い占めた……!」
梓「ふ…… ふざけないでよ!戦争でしょ……」
梓「お目当ての商品を買うだけならまだしも、買占めなんかしたら…… 戦争じゃないの……!」
店員「あ、あの……」
梓「違う、これは戦争…… 第二次ローソンけいおん戦争…… 戦争なんだっ……!」
梓「早く!次のローソンに行かなくちゃ!」ドピューン
店員「あ、ありがとうございましたー……」
さんけんめ!
梓「ここにもない……」
よんけんめ!
梓「やっぱりここにもない……」
梓「くったりぬいぐるみも、リフレクターも携帯スタンドもないなんて……」
梓「こんなのぜったいおかしいよ……」
ごけんめ!
梓「ここが最後…… そろそろ学校に行かないと……」
梓「かーみーさま、お願い!」ウィーン
店員「らしゃっせー」
梓「! あれは……!」
梓「カウンターの前に置かれているあの愛くるしい姿は……!」ダッ
梓「く っ た り ゆ い ぐ る み !」
梓「あ、あの!これください!」
店員「ああそれ、もう俺が買っちゃったんでー」
梓「……はい?」
店員「俺が買ったんすよー」
梓「……え?だってレジに並んでるじゃん……」
店員「飾ってるだけっス」
梓「そんなのってないよ……」
梓「大体、店員さんが売り物買うなんておかしいんじゃないですか!」
店員「べつにダメじゃないっしょー。金払ってるわけだし?」
梓「うぅ……」
梓「……じゃあ、このニワトリください」
店員「それも俺買ったんで」
梓「……この豚も?」
店員「そうっス」
梓「馬も店員さんが買ったんですか?」
店員「そうっス」
梓「猫も?」
店員「そうっス」
梓「犬も……?」
店員「840円になりやーす」
梓「え?」
店員「840円になりやす」
梓「結局どれも見つからなかった……」
憂「梓ちゃんおはよう。今日はいつもより遅かったね?」
梓「おはよう……。それが今朝ローソンめぐりをしたんだけど……」
憂「フェア?」
梓「うん。7時になったら商品並ぶって聞いたから、その時間にローソン行っんだけどどこも売り切れで……」
梓「ぬいぐるみも買えないし、それどころかリフレクターも携帯スタンドもなくって……って!」
梓「憂、その手にもってるのは……」
憂「これ?かわいいでしょー」クター
梓「かわいいよ!かわいいけどさ!」
梓「どうやって手に入れたの?!流通?メーカーから直輸入したの?!」
憂「おちついて梓ちゃん。普通にローソンで買ったよ」
梓「そうなんだ…… いいなぁ……」
憂「んー……。7時になってから探し回ったんだよね?」
梓「うん。それなのにぜんっぜん見つからなくってさー」
憂「言わせてもらうけど、梓ちゃん…… 超ぬるいんですけどぉおおお!」
梓「!?」
憂「こっちは数日前からフラゲがないか毎日何度もいろんなローソンに確認に行ってるし」
憂「それでも見つからなかったから、深夜からずーっと張り込んでやっと手に入れたんだよ?」
憂「日本中で欲しがる人が大勢いるのに、1店舗1つ限定しかないおねえちゃんくったりぬいぐるみなんだよ?」
憂「そんなのどう考えても戦争…… 争奪戦になるにきまってるじゃない」
憂「前のフェアだって相当な争奪戦が繰り広げられたんだよ?そうなれば言うまでもなく今回も!」
憂「それなのに!当日の7時から探して見つかると思うなんて、どうかしてるよ!」
憂「甘いんだよ、隙だらけなんだよ!だから梓ちゃんは買えないんだよ!」ズビシィ
梓「うぅ……」ジワァ
梓「……そうだよね、憂の言うとおりだよね」
梓「争奪戦になりきるって分かってたのに、こんなのんびり探していたら見つかるわけないよね……」
憂「でも、梓ちゃんなりに頑張ったんだもんね……」ヨシヨシ
梓「ういぃ……」グシグシ
憂(へこんだ顔が超セクスィーだよ、梓ちゃん!)グッ
純(よくわからないが憂がおもいっきりへこませたことには、突っ込まないでおこう)
おひる!
純「見てみて、じゃーん」
梓「あ、澪先輩うちわ?」
憂「純ちゃんもローソン行ったの?」
純「じゃなきゃもってないっしょー。あとこれ……」
純「ててててん!ゴールデンチョコパンミニーミニーミニー」
梓「なんで三つも……」
純「それはですな、これをこうやって連結して……」
純「パッパラパッパパラパッパッパーン!ゴールデンチョコパンミニロングー!」
憂「純ちゃんすごーい」
梓「ふつーのゴールデンチョコパン買った方がいいじゃん……」
純「ちっちっち、梓は遊び心ってもんが分かってないなー」
梓「絶対途中で飽きて残すのが目に見えてるよ」
純「そんなことないもーん」
純「そんなこと…… ないもん……」
――
純「ねぇ、梓……」
梓「いらない」
純「うい……」
憂「純ちゃんファイト!」
純「ちくしょー!」ムシャコラ
純「あー、もうしばらくはチョコパンいらないや」ゲフ
梓「一応、完食したところは凄いよね」
憂「かっこよかったよ」
純「全く誰だ、あんなこと考えたやつは……」
梓「じぶんでしょ……」
純「まあいいや。それよりさぁー、二人ともローソン行ったんだよね?なに買ったの?」
憂「私はー……」
純「憂は言わなくてもわかるからいいや」
憂「えー」
純「梓は?」
梓「私は…… その、目当てのものがなかったから……」
純「梓はぬいぐるみ?」
梓「べ、別に唯先輩のぬいぐるみが欲しいわけじゃ……!あの、リフレクターのほう!」
純(ぬいぐるみって種類あったと思うけど、わざわざ唯先輩って言うのか)
憂(隠してもバレバレだけどねー)
純「あの反射板みたいなやつ?あれも見たとき売ってなかったかもー」
梓「で、でしょ?先輩たちの全部!欲しかったのに……」
純「まー、どっか探したらまだあるんじゃ?」
梓「朝だって結構探したけど見つからなかったし……」
純「人通り少ない場所とか穴場って感じがする場所なら残ってそうじゃない?」
梓「うーん…… どうかなぁ」
憂(ないと思うけど……)
純「梓くん、あきらめたらそこで試合終了だよ」キリッ
梓「純…… そうだよね!私、もうちょっと頑張ってみるよ!」
純(ちょろいな)
憂(ちょろいなぁ)
梓「そうとなれば今日の部活は休んで探すぞー」
純「それはちょっとやりすぎじゃ……」
梓「だって部活行ってる間に売り切れるかもしれないし!」
純「えー……」
憂「がんばってね、梓ちゃん!」
梓「うん!」
純「ああ…… もうどーでもいいや、がんばれー」
ほうかご!
「あ、りっちゃーん。オィンクオィンクー」
「ネイ!ネイ!」
律「……なにやってんだ」
唯「けいおんブタ」
紬「けいおんウマー」
律「分かりづらいわ!」
唯「もーりっちゃんったら、視野が狭いね。ワールドワイドに生きなきゃ」キリッ
律「お前のそれは昨日テレビでやってたことの受け売りだろーが」
唯「りっちゃんするどい……」
律「つか、今日遅刻しそうになったわりに、それ買ってる余裕あったんだな……」
唯「違うよ。これを買ってたから遅刻しそうになったんだよ」
律「まったく…… で、ムギも買ったのか?」
紬「ううん、これは唯ちゃんからもらったの」
律「そうなのか?」
唯「ふっふっふ。そしてりっちゃんにはミャウミャウをあげよう」
律「ネコか」
紬「りっちゃんも一緒にけいおん動物ごっこしましょう?」
律「いや、ネコは梓の専売特許だから遠慮しとくよ」
唯「あずにゃんはクックドゥードゥルドゥーだから大丈夫だよ」
律「はぁ。じゃあ澪はバウワウなのか」
唯「それが…… バウワウだけ売り切れてたんだよね……」
唯「だから澪ちゃんにはこれ!リフレクター?これでいつでもりっちゃんのおでこの輝きを忘れずにいられるように……」
律「ケンカうっとんのかー!」グリグリ
唯「わー、だって売り切れてたんだもんー」
律「まったく……。ま、澪だったら必要ないと思うけど……」
紬「そういえば今日は澪ちゃん用事があって部活来れないのよね?」
律「ああ。大した用じゃないんだけどな……」
唯「?」
唯「あれ。そういえば、あずにゃんは……?」
律「ん?梓も今日休みだろ?」
唯「ええっ!そんなぁ~」
律「メール来てただろ…… 見てないのか?」
唯「んっと…… あ、ほんとだ……」
唯「これじゃ、あずにゃん分が補給できないよぉ……」
律「今日は梓に会いに行ってなかったもんな」
唯「……りっちゃん」
律「なんだ?」
唯「あずにゃんの真似して、ニャアって言って?」
律「はい?」
紬「私からもお願いします!」ガタッ
律「なんでムギも!?」
唯「今こそけいおんネコであるりっちゃんの出番だよ」
律「い・や・だ!」
唯「ええっ!?りっちゃんは私があずにゃん分不足で倒れても大丈夫だっていうの!?」
律「大丈夫だ、問題ない」
紬「一言!一言だけでいいから!」
律「ムギはまずカメラ向けるのやめろ!」
律「あーもう!あずにゃん分なんてなくてもお茶でも飲めば充分だろ!」
紬「ヤダ!」
律「!?」
紬「りっちゃんがミャウミャウ言ってくれないとお茶は出しません!」
律「なんでだよ、なんでそうなるんだよ!」
唯「ちょっと真似するだけでいいのに…… なんでそんなに嫌がるの?」
律「う、それは…… だって……」
律「……は、はずかしーし」
紬「」カシャ
律「おい、カメラ止めろ!」
唯「りっちゃーん……」
律「はぁ…… 唯もムギもなに言っても聞かないからな…… しゃあなしだな」
律「……一回しか言わないからな?」
唯「わくわく」
紬「どきどき」
律「えーっと……」
最終更新:2011年05月17日 04:56