律「なあ澪」
澪「なんだよ」
律「もうさ、私たちで梓に伝えてやろうか」
律「お前の気持ち」
澪「そんなこと……」
律「みんなで言えば信じてくれるよ」
紬「私や唯ちゃん、憂ちゃんも一緒に」
澪「そういうことじゃないよ」
唯「どういうこと?」
澪「もしそれで上手くいって梓と付き合えても、そんなの駄目だよ」
紬「駄目なの?」
澪「うん。価値が無いよ」
律「やっぱお前」
澪「めんどくさいよな」
澪「でもこればっかりは譲れないんだ」
唯「澪ちゃん」
澪「私自身が伝えないと駄目だから」
唯「そういうの、分かるよ」
紬「うん!やっぱり自分で伝えたいよね」
律「ま、澪だもんな」
澪「え?」
律「澪ってどうしようもなくロマンチストだもんな」
澪「そうかな?」
律「じゃなきゃあんな詩書けないって」
澪「馬鹿にしてるのかー?」
律「そんなことないよ」
唯「澪ちゃん頑張って」
紬「澪ちゃんの歌詞に出てくるような素敵な恋が成就するといいね」
澪「うん、ありがとう」
律(なんだかんだ、ちょっとずつ成長してるんだよな。澪も)
澪「そんな、ありがとうだなんて!澪先輩のためならこれくらい……」
澪「なんて健気なんだ梓!大好きだよ!」
澪「澪先輩…私も!」
澪「ちゅっ!」
唯「だいなし!」
律「澪、梓から返信は?」
澪「来てない……」
唯「寝ちゃったのかな」
紬「私梓ちゃんにメールしてみる」
澪「えっ?」
紬「ううん大丈夫。何でもないやりとりよ。起きてるかどうか確かめるだけ」
澪「ああ、そっか。頼むよ」
紬「軽音部のことでも話そうかな」 ポチポチ
紬「送信♪」
紬「あ、返信来ちゃった」
澪「あずさあああああああああどうしてええええええええ」
澪「わたしじゃなくムギを選んだああああああばばばば」
唯「澪ちゃんはもう寝た方がいいよ」
律「近所迷惑だしな」
翌日
律「おはよう澪」
澪「おはよ」
律「よく眠れたか?」
澪「うん、梓の夢を見たよ」
律「おー、どんな夢?」
澪「梓が私に向かって画鋲をバラ撒いてた……」
律「……」
澪「ま、まさか正夢!?」
律「それは絶対に無いからな」
律「澪、夕方になったら公園に行け」
澪「何でだよ」
律「梓を呼び出しておいた」
澪「はぁ!?」
律「梓と会って話せ。告白しろ」
澪「ば、馬鹿!そんな勝手に…心の準備がまだ全然」
律「知ってるよ。どうせいつまでも準備なんて整わないんだ、澪は」
澪「……」
律「腹くくるしかないでしょ」
澪「うん。ありがとう」
律「どーいたしまして」
澪「はぁ」
唯「あっ」
と言う間に夕方
澪「律…付いてきて」
律「言うと思った」
澪「だ、駄目か?」
律「いいよ。その代わり、今回は助けないぞ」
澪「分かってる」
律「リラックスしろよ」
澪「大丈夫、大丈夫」
律「まずはしっかり謝ること」
澪「うん。そうだよな」
澪「その後告白すればいいかな」
律「出来るのか?」
澪「自信無い……」
律「ま、他愛の無い話をしなよ」
澪「他愛の」
律「音楽の話とかさ、なんでもいいじゃん」
澪「…うん」
律「会話が弾むようになったら、後はグッと行けよ」
澪「うん」
律「出来そう?」
澪「多分。あのさ」
律「ん?」
澪「色々、ありがとな」
律「お礼を言う回数が増えたな、澪」
澪「そうかな?」
律「まだ終わったわけじゃないんだから」
澪「そうだよな」
律「今は梓のことだけ考えてろって」
澪「あ、ああ。ありがと」
律「また言った」
澪「うっ」
律「そろそろ梓来るぜ」
澪「あ、ああ」
律「私その辺に隠れてるから」
澪「うん」
律「しっかりやれよ!」
澪「う、うん」
─────
───
紬「あ、返信来ちゃった」
澪「あずさあああああああああ」
唯「澪ちゃんはもう寝た方がいいよ」
律「近所迷惑だしな」
澪「ぐすん…おやすみ」
唯「ねえムギちゃん」
紬「うん?」
唯「さっきあずにゃんにどんなメールしたの?」
紬「あのね……」
紬「澪ちゃん辛そうだから助けてあげてって」
紬「ちょっと変なこと言うかもしれないけど、澪ちゃんの心を察してあげてって」
唯「そしたらあずにゃん、何だって?」
紬「澪ちゃんに会いたいって」
唯「おー!こりゃ間違い無くミャクアリだよ!」
律「そうなんだよ。澪一人で勝手に落ち込んだりハイになったり馬鹿になったりしてるだけなんだ」
唯「ねえねえ!じゃあ明日澪ちゃんとあずにゃんが会う約束取りつけちゃおうよ」
紬「勝手にそんなことしていいのかな?澪ちゃん寝ちゃってるよ」
澪「すー……あず…さ……」
律「寝言言ってる」
唯「澪ちゃんだって今すぐあずにゃんに会いたいはずだよ!」
紬「そうよね。夢の中でも梓ちゃんのこと考えてるくらいだもんね」
律「じゃ、会わせちゃうか」
唯「うん!」
澪「うーん…梓ぁ、画鋲はやめろ~」
澪「刺さるよ~……すやすや」
──
────
梓「澪、先輩」
澪「うわあっあ、梓!」
梓「そんなに驚かないでくださいよ」
澪「ああ、ごめんっ」
梓「そこのベンチ、座りましょっか」
澪「う、うん」
律(澪…リラックスだぞリラックス!)
澪「あの……」
梓「はい」
澪「昨日はごめん!ごめんなさい!」
梓「あっ」
澪「梓に酷いこと言って」
梓「いえ。私も急に帰っちゃったりして……ごめんなさい」
澪「梓と仲直りしたくて…」
梓「はい。私も澪先輩と仲直りしたいです」
澪「あ…梓……」
梓「もう、仲直りですね」
澪「う、うん。仲直りできたね」
律(澪!よく謝れたな)
梓「元通りの仲の良い澪先輩と私です」
澪「そうだね」
澪(そうだ、他愛の無い話……音楽の話題がいいかな!)
澪「あのさ、梓」
梓「はい」
澪「ガセネタっていうバンド知ってる?」
律(女子大生と女子高生が聴くバンドじゃない!)
梓「はい!好きです!」
澪「ホントに?」
律(知ってるのかよ!しかも好きなのかよ!)
律(ま、会話になるならなんでもいっか……)
梓「あはははっ」
澪「おかしいよな!」
梓「ですよね、父ちゃんのポーって何なんでしょうか?」
澪「映画観れば分かるのかな?」
梓「さー、どうでしょう」
澪「ははは……。あ、梓?」
梓「なんですか?」
澪「あのさ、梓」
澪「この前、告白してくれただろ?」
梓「……」
梓「はい」
澪「凄く嬉しかったよ」
梓「……」
澪「私も、梓のこと、すっ好きだから」
澪「好きって、色々あるけど」
澪「私も、前からずっと。ずっと梓と…その……」
律(頑張れ澪!)
澪「梓と付き合いたいって思ってた」
澪「だから今度は私から言わせてくれ……」
澪「梓、好きだ」
澪「私と、私と付き合って!」
梓「……」
澪「……」
梓「澪先輩」 ギュッ
澪「あっ」
梓「もう、だったらどうして私が告白したとき断ったんですか?」
澪「なんだろ……あのときは」
梓「好きじゃなかったんですか?」
澪「えぇ?いや、そんなことないよ」
澪「よく分からないけど、梓をフりたかったんだ」
澪「もっとハッキリ言えば、梓にフられたかった」
梓「はぁ」
澪「意味分からないよな」
梓「いえ。分かりますよ」
澪「えっ」
梓「分かります」
梓「破滅願望みたいな、そういうものですよね」
澪「私もよく説明できないんだけど」
梓「きっと、そうだと思いますよ」
澪「梓……」
梓「私も、あるんです」
梓「このまま良い結果が出せるのに、良い未来が待ってるのに」
梓「あえて、それを避けると言うか、切り捨てちゃうんですよね。何一つ得しないっていうのに」
澪「あ、ああ」
梓「すごく分かりますよ。そういう変な気持ち」
澪「そっか、梓もそういうことあるのか。私が特別おかしいのかと思ってた」
梓「澪先輩」
梓「返事がまだでしたね」
澪「う、うん」
梓「澪先輩とは、付き合えません」
澪「……えっ」
梓「澪先輩のこと大好きです」
梓「でも……いえ、だからこそ、澪先輩とは付き合いません」
澪「あ、あずさ?」
梓「私のこと恨んでください!」
澪「意味が分からないよっ」
梓「分からないはずないでしょ。先輩と同じなんですから」
澪「梓……」
梓「さよなら。大好きな澪先輩」
タッタッタッタッタッタ
澪「」
ぽか~ん
律「み、みお~?」
澪「……」
律「あ、全部、見てた。聞いてたよ」
澪「律……」
律「その、なんて言えば分からないけどさ」
律「世の中色々…」
澪「ふふふっ」
律「澪?」
澪「梓も私と同じだったのか」
律「みおさーん?」
澪「そうだったのか梓!」
澪「それならそうともっと早く言ってくれればいいのに~」
律「おい澪ってば」
澪「さっそく梓を追いかけるぞ律!」
律「はぁ?」
澪「梓は私のことが好きだ!」
澪「私だって梓が好きだ!」
澪「それにしてもさっき走り去るときの足音も可愛かったな!」
澪「うふふふっ梓っ♪愛いやつ愛いやつ!」
ダダダダダダダダッ
律「あぁ……これからも疲れる日が続きそうだ」
律「あ、画鋲落ちてる」
おわり
最終更新:2011年05月22日 02:03