メイドA「奥様、とても可愛らしい方ですよね」

琴吹父「ぼっ、僕のだぞ!? 狙うなよ?」

メイドA「寝取り属性とかないので、そこはご安心を。第一、奥様はガチノンケじゃないですか」

琴吹父「ならいいが」

メイドA「やっぱあれですか? 年の離れた女房は可愛いもんですか?」

琴吹父「ああ、別に若いから好き、ってわけでもないが……」

メイドA「若い頃は散々遊んだ癖に、結婚は処女とだなんて、普通に腐れ外道ですよね。さすがリア充」

琴吹父「そんなに遊んでないし、お前、僕に酷すぎないか!?」

メイドB「ご主人様が腐れ外道!? 駄目です、そんなの!」

琴吹父「どっから湧いた!?」

メイドA「あんたドMなんでしょ? だったら、旦那様が腐れ外道の方が嬉しいんじゃ?」

メイドB「ご主人様には良き夫であり、良き父であって欲しいんです」

琴吹父「だったら僕に浮気させようとすんなよ……」

メイドB「そんな大人の男の人に道具扱いされるから興奮するんじゃないですか!」ハァハァ

琴吹父「知らねぇよ! 一体どんな人生を送ってきたらそんな歪んだ性癖になれるんだよ!?」

斎藤「ところで旦那様、お嬢様の件は奥様には内緒にされるおつもりでしょうか?」

琴吹父「どわああっ! だからどっから湧くんだ、お前ら!? 揃いも揃って忍者かなんかの末裔なのかよっ!?」

さわ子「いやねぇ。気配を消すなんて、誰でもできるじゃない」

琴吹父「どちら様!?」

さわ子「あら、出てくるとこ間違っちゃったみたい。ごめんなさいね」スゥ…

琴吹父「消えた!?」

メイドA「馬鹿な……。ペンタゴン並みのセキュリティを誇る我が琴吹家に侵入してくるなんて……」

琴吹父「初耳だが!? うちはセコムしかしてねぇよ!」

メイドA「旦那様はノリが悪いですね」ハァ

メイドB「って言うか、今の人、泥棒なんじゃ……」

斎藤「そこはご安心を。彼女はお嬢様の部活の顧問をやってらっしゃる方です」

琴吹父「よけい不安になるわ! 紬って軽音部でバンドやってんだよね? 暗殺者養成機関にいるんじゃないよね?」

斎藤「まったく。ユニークな方でしたな」

琴吹父「ユニークで片付けていいのか、あれ……?」

斎藤「それで結局、今回の件は奥様にはどうされましょうか?」

メイドA「世間知らずの奥様には、少々刺激が強い話かと」

メイドB「ずっと内緒にしておくことも、不可能ではありませんけどね。お嬢様次第ですが」

琴吹父「……でもやっぱり母と娘なんだ。避け続けていいことじゃない。いつか僕ら夫婦は、紬とちゃんと向き合わないといけないからね」

メイドA「……」

斎藤「ではお3人にとって、よりよい結論が出ることを祈っております」

琴吹父「ああ。ありがとう、斎藤」

メイドB(ご主人様って家族想いでらっしゃる……凄い素敵/// ああ、この人の専用肉便器になりたいっ!)ハァハァ


とは言え、琴吹父は事が事なだけになかなか琴吹母に言い出せずにいた。
そんなある日、琴吹父は廊下で落ち込んだ様子のメイドAを見かける。



琴吹父「A、どうしたんだい? 何やら元気がない様子だが……」

メイドA「ああ、旦那様。女狐です。女狐が我が家にやってきたのです」

琴吹父「め、女狐?」

メイドA「はい」

琴吹父「狐はエキノコックスと言う恐ろしい寄生虫がいるから、安易に飼ってはいけない動物なんだよ?」

メイドA「そういうくだらないリア充ギャグとかいりませんから」

琴吹父「んぐ」

メイドA「平沢唯です。彼女がお嬢様のところへ遊びに来ているのです」

琴吹父「そうなのか(まぁ、そんなことだろうと思ったが)」

メイドA「何ですか、その薄いリアクション? 今2人が何をしているのか気にならないのですか?」

琴吹父「いや、その……」

メイドA「私のお嬢様が今、平沢唯の手によって女を開花させられているのかと思うと、悔しくて悔しくて」ギリギリ

琴吹父「そういう言い方はよしなさい」

メイドA「きっとお嬢様は、あの女狐に組み敷かれて、色んなところにキスされて、肌を重ねて、熱く見つめ合ったり愛の言葉を交わし合ったり……もう、私のライフは0です」

琴吹父「お前も色々大変なんだなぁ」

メイドA「すみません。何かもう熱が出てきてしまいましたので、今日はもうお休みを頂いてよろしいでしょうか?」

琴吹父「あ、ああ。奥さんには僕から言っておくよ」

メイドA「では失礼します…………ちくしょう、女狐め」ブツブツ

琴吹父「……A、ちょっといいかい?」

メイドA「は?」

琴吹父「僕の前で平沢さんのことを悪く言うのはやめてもらっていいかい」

メイドA「…………はい?」

琴吹父「僕だってまだ理解できたわけじゃない。これからも悩むだろうさ。でもね、平沢さんは紬が選んだ恋人なんだよ。彼女の悪口を聞くのは、あまりいい気持ちはしないな」

メイドA「旦那様……」

琴吹父「……」

メイドA「やっぱり言動がリア充丸出しですよね。イラッとします」

琴吹父「どうしろって言うんだよ!? 娘を思う親なら仕方なくね!?」

メイドA「でも、嫌いじゃないです」

琴吹父「へ?」

メイドA「…………私、ちょっとお嬢様が羨ましいかもしれません」

琴吹父「そうか……」

メイドA「それじゃ」

琴吹父「あ、ああ、お大事にね」

琴吹父(そうだな、Aだってきっと色々あったんだろうな……)

メイドA「旦那様」

琴吹父「うおっ!? まだいたのか」

メイドA「ご報告するのを忘れるところでした。旦那様のパンツ2枚と歯ブラシ、早速なくなりました」

琴吹父「…………B、か……」

メイドA「まぁ、それ以外の原因は考えられませんね」

琴吹父「こんなおっさんの下着なんぞ盗んでどうしようってんだか」

メイドA「オナニーのおかずでしょう」

琴吹父「わかってるよ! わざわざ口にすんなよ!」

メイドA「取り返しましょうか?」

琴吹父「……いや、いい」

メイドA「もうすでに色々な体液が付着してしまった可能性が高いですからね。賢明な判断だと思います」

琴吹父(僕の方こそ熱が出そうになって来た……)


メイドAがいなくなった後、廊下の先から2人の少女の声が聞こえて来た。
帰ろうとする唯とそれを見送る紬だった。


紬「お父様!」

唯「えっ!? ムギちゃんのお父さん!?」

2人の少女は、素早く身繕いをしたように見えた。

琴吹父(なんかAが言ってたことが本当のような気がしてきた……)

唯「はっ、初めまして! 平沢唯です!」カチコチ

琴吹父「紬の父です。よろしくね、平沢さん」

唯「こっ、こちらこそ!」

琴吹父(可愛らしいし、いい子じゃないか。女狐は酷いぞ、A)

紬「唯ちゃんは、軽音部で一緒にバンドをやってる仲間なんです」

琴吹父「もちろん覚えているよ。平沢さん、文化祭のDVDを観せていただきました。素敵な演奏でしたね」

唯「えへへへ~/// ありがとうございます」


そんな3人のもとへ、琴吹母が現れた。



琴吹母「あなた、紬ちゃん、お客様でしたの?」

唯「ムギちゃんのお母さん!? 凄い美人さんだ!」ホー

紬「うふふふ」

琴吹母「まぁまぁまぁまぁまぁまぁ。あなたもしかして紬ちゃんのバンドの子!? おばさんもDVDを観せていただいたの! とっても素敵でした!」

唯「でへへへぇ~///」テレテレ

琴吹父「彼女の紹介は僕からさせてもらうよ」

琴吹母「まぁ! あなたの方が先に仲良くなっちゃうなんてずるいです! 早く紹介してくださいな」

琴吹父「彼女は紬の恋人の、平沢唯さん」

紬「!?」

唯「ほえ?」

琴吹母「はい?」

紬「お、お父様! 何で……」ガクブル

唯「あわわわわわわ」ガクブル

琴吹父「紬…………うちの玄関には、防犯カメラが設置されてるんだよ?」

紬「」

唯「こっ、この前のキス、見られちゃった……」ガクブル

琴吹母「え? だって女の子……」

紬「お父様、ごめんなさい! 私、子供の頃からずっと女の人が好きで、ずっと悩んでたけど、やっぱりこの気持ちは変えられなくて」

唯「ムギちゃん……」

紬「もうお父様やお母様の期待に応えられないんだ、って。私は親不孝者なんだ、って。そう思っても、やっぱり駄目だったんです」

琴吹母「そ、そんなこと……」オロオロ

紬「ごめんなさい、お父様。こんな子でごめんなさい!」

唯「わっ、私、絶対絶対ムギちゃんを幸せにしますから! だからムギちゃんと付き合うの、許してくださいぃ~!」ペコ

琴吹父「紬」

紬「はっ、はい!」

琴吹父「僕は紬に普通の幸せを味わって欲しかったし、もしかしたら今もそう思っているかもしれない」

紬「で、でも私、唯ちゃんじゃないと駄目なんです」ポロポロ

琴吹母「紬ちゃん……」

琴吹父「うん。平沢さんは、紬を本当に大事に思ってくれてるようで、親としてそれは嬉しいことだ。正直、僕も何が正しいかなんてわからなくなってしまったよ」

唯「ムギちゃんのお父さん……」ウルウル

琴吹父「だからね、これからは一緒に悩んでいこう。答えなんか出なくてもいいじゃないか。君が幸せになってくれることが、僕の幸せなんだからね」

紬「お父様……」ポロポロ

琴吹父「例え同性愛者だって、紬は僕の大事な大事な、自慢の娘だよ」

紬「お父様~~~~っ!!」ギュッ

琴吹父「子供の頃から1人で悩んでたんだね、可哀相に。でもこれからは、僕達がついてるから、忘れないでおくれ」ナデナデ

紬「はいっ……。はいっ……!」


唯「びえ~~~~~~~~~!!」

琴吹母「うわぁぁぁぁぁぁぁん!!」

琴吹父「うわ、びっくりした!」

唯「ムギぢゃ~~~ん! 良かった! 良かったよぅ!」ビエー

琴吹母「あなだ~~、私、一生あなたについていきますからぁ~~!!」ビエー

唯「ええ話やぁ~。ええ話やぁ~」ビエー

琴吹母「ええ話やぁ~。ええ話やぁ~」ビエー

琴吹父(何で関西弁!?)

琴吹父「ぷっ! あははははは!」

紬「? お父様?」

琴吹父「紬、どうしよう? 僕らはとんでもなく似た者親子らしい」

紬「え? それはどういう……」

琴吹父「だって女性の好みが一緒じゃないか!」


―fin―



最終更新:2011年05月23日 01:23