純「ねぇ、梓ー」

梓「……」

純「梓ってば~」

梓「……」

純「あ~ず~さ~」

梓「あーうるさい! さっきから何!?」

純「憂が遅いんだけど」

梓「ちょっと遅れるって言ってたじゃない。もう少し待とうよ」

純「え~。じゃあ先にお茶にしようよ」

梓「そんな事だろうと思ったよ……」

純「さっすが梓、話が早い! では早速……」

梓「駄目だって。もう先輩達も卒業したし、これからは真面目に練習するんだから」

純「まだ春休みだからいいじゃん」

梓「その休みが終わったら新歓ライブ! 部員獲得しないと存続が危ういんだし」

純「真面目なんだから~。何とかなるって、私も協力するし」

梓「純が手伝ってくれてもなぁ」

純「何そのあからさまに信用してない態度は」

梓「だってねぇ……」

純「私がいないとベース無しだよ」

梓「そうなんだけど……純が軽音部きてから練習してるの見たことないよ」

純「してるっての! 梓もいたじゃん!」

梓「えー……そうだっけ?」

純「都合いい記憶力しやがって……!」

梓「まぁ、そういう事にしとくから、練習始めるよ」

純「えー! 憂が来るまで休憩してようよー」

梓「話が進まないよ……」

憂「ごめーん! 梓ちゃん、純ちゃんお待たせ」

純「お、来た」

梓「待ったよ、憂。じゃあ揃ったところで始め……って」

唯「こんちはー」

梓「唯先輩!?」

唯「おー、久しぶりだねぇ、あずにゃん。純ちゃんも」

梓「久しぶり、じゃないですよ! 一体――」

唯「あ、そっかぁ忘れてたや」

梓「え……?」

唯「ひっさしぶりー、あっずにゃ~ん!」

梓「な、なんで改めて抱きつくんですか!? 離れて下さい!」

唯「え~? 違ったかなぁ」

梓「違いますよ! どうして唯先輩がいるのか聞いてるんです」

唯「いやぁ、暇だったから」

梓「暇って……唯先輩、大学寮に引っ越す準備はしないんですか?」

純「そっか、唯先輩達ってみんな同じ寮に住むんだっけ」

唯「うん、そだよ。みんな準備で忙しくてね、誰も遊んでくれないんだよ」

梓「いやいや、唯先輩こそ準備大丈夫なんですか?」

唯「私? 私はもう終わったよ」

梓「えぇ!?」

梓(あの面倒くさがりの唯先輩が……)

梓(そうだよね、もう大学生になるんだもん。唯先輩がしっかりしててもおかしくないよ)

梓「唯先輩! 私、感動しました! 唯先輩だって、やれば――」

純「どうせ憂が手伝ってあげたんでしょ?」

憂「大体……かな。あっ、荷物を入れるバッグはお姉ちゃんが用意したよ」

唯「何か私がやると散らかる一方でね~」

梓「あー……」

唯「あずにゃん、どうかした?」

梓「そんな可能性も否めないと思ってましたよ……私の感動を返して下さい……」

唯「お陰さまで暇でね~。澪ちゃん達も誘ったけど断られたんだよね」

梓「そりゃそうですよ。唯先輩も憂に頼ってばかりじゃなくて、そろそろ独り立ちして下さい」

唯「だ~いじょうぶだって~。大学行ってから本気出す! なんてね~」

梓「律先輩達にすがる図が目に浮かびますよ」

唯「うぅ……あずにゃん、しどい……」

純「……ねぇ、憂」

憂「ん、何?」

純「やっぱ梓と唯先輩って仲良いよね」

憂「そうだね」

純「それに、先輩といるときの方が生き生きしてるし」

憂「最近の梓ちゃん、新歓の事で余裕なさそうだもんね」

純「その為に私らがいるんだけどね……仕方ない、練習しますか」

憂「うん。梓ちゃんに頼りにされるようにならなきゃね」

梓「――ふぅ、今のは結構良かったかな」

憂「うん、良い感じだったね」

純「ふふーん、私と憂にかかればこんなもんよ」

梓「純はもう少し練習が必要かもね」

純「はーいはい、いずれ澪先輩に追い付き追い越す勢いのベーシストになりますよ」

梓「それは純には無理じゃないかな」

純「今に見てなさいって……あ、もうこんな時間」

憂「何かあるの?」

純「ジャズ研の方も行かなきゃならないんだよ」

梓「そっか……向こうも新歓あるんだよね」

純「そういう事。じゃあちょっと行ってくる」

憂「行ってらっしゃい」

梓「何か……悪かったかな」

憂「純ちゃんの事?」

梓「うん」

憂「確かに忙しそうだけど、純ちゃんはそんな事思ってないよ」

梓「憂……」

憂「私だってそう。私達、梓ちゃんと一緒に軽音部がやりたかっただけだから」

梓「憂……うん、ありがとう」

憂「えへへ、どういたしまして」

梓「じゃあ当面の問題は……唯先輩!」

唯「ふぇ?」

梓「さっきから私達が練習してる横で何してるんですか」

唯「何って……お菓子食べて漫画読んでるだけだよ?」

梓「見れば分かります……そうじゃなくて、こう何かないんですか?」

唯「何か? 残念ながら、これが最後のお菓子なんだけど」

梓「いらないです! 私が言いたいのは、先輩として後輩にアドバイス的なのがないのか、って事ですよ」

唯「えぇ~、でもあずにゃんの方が私より上手いから言うことないよぉ」

梓「情けない……」

憂「お姉ちゃん……」

唯「あ、あれ? おかしかったかな?」

梓「普通何かあるんじゃないですか? 技術的な事じゃなくとも、心構えとか」

唯「心構えぇ?」

梓「……言っておいて、唯先輩にはハードルが高いと思いました」

憂「えぇ!?」

唯「しどい!?」

梓「パートは違っても、澪先輩だったら何かあると思いますよ」

唯「……ふーむ。それはりっちゃんでもかな」

梓「まぁ一応部長ですからね。やる時はやりますよ」

唯「ふーむむむ……」

憂「お姉ちゃん?」

梓「どうかしました?」

唯「よし! それなら私がみんなになるよ!」

梓「はい?」

唯「私は言うことないから、みんなに言ってもらうよ」

梓「言ってる意味が……」

唯「ちょっと待っててね~」ガチャバタン

梓「出ていった……何する気なんだろ」

憂「さぁ……お姉ちゃん、いつも突然だから」

唯「お待たせ~!」ガチャバタン

梓「早っ!」

唯「これ探してただけだからね~」

憂「厚紙とハサミ……?」

唯「ペンはあるから、これで準備よし!」

梓「一体何を始めるんですか」

唯「まあ見てなさいな~」

唯「これをこうやって~、ここをこうして~……はい完成!」

梓「完成までも早いですね……って、これは」

憂「お面?」

唯「そう! りっちゃんと澪ちゃんとムギちゃんお面だよ」

梓「あぁ~……なるほど、なりきりでもする訳ですね」

唯「そういうこと~」

憂「へぇ~」

唯「では早速澪ちゃんに活を入れてもらいましょう」

澪(唯)「こらっ梓、ちゃんと練習しないと駄目だろっ」

唯「……どお?」

憂「うーん、口調は澪さんっぽかったけど」

梓「なんで私が怒られるんですか。いつも練習しないのは唯先輩でしょう」

憂「えぇ!?」

唯「しどい!?」

梓「唯先輩が澪先輩を演じるのは無理ありますよ」

唯「うぅ……じゃあ次はりっちゃんで……よいしょ」

律(唯)「よーし、それじゃ練習しようぜー」

唯「……どお?」

梓「律先輩、そんな風に言いますかね?」

唯「あれ?」

梓「どちらかというと、唯先輩と一緒にサボってる印象なんですが」

唯「うーん、そうかも。じゃありっちゃんだと説得力に欠けるなぁ」

梓「部長だったんですけどね」

憂「あはは……」

唯「んじゃ、次はムギちゃんで」

紬(唯)「それじゃあ練習の前にお茶にしよっか?」

憂「わぁ、それっぽいかも」

唯「だよね! 私はミルクティーでお願~い」

憂「はーい」

梓「あ、私も……じゃなくて! ムギ先輩なら言いそうですけど、何か趣旨が変わってきてますよ」

唯「えぇ~。じゃあ次はどうしようかなぁ」

梓「もう結構ですよ。自主練してますから、好きな事してて下さい」

唯「ぶ~、あずにゃんつれないよ~」

梓「私は練習しに来てるんです!」

唯「……すっかり怒らせちゃった。このなりきりお面、楽しいと思ったんだけどなぁ」

憂「お姉ちゃん、梓ちゃん真剣なんだから、あんまり邪魔しちゃ悪いよ」

唯「私も真剣に考えてるよ?」

憂「そ、そうだったの?」

唯「そうだよ。あずにゃん、私達が一気にいなくなったから寂しいんだよ。遊んであげなきゃ」

憂(そっちじゃないと思うなぁ)

唯「よし! 今度は二人でやろうよ」

憂「えぇ、私も!?」

唯「やっぱり私一人じゃ限界があるし。憂は誰にする?」

憂「どうしても?」

唯「このままじゃ、あずにゃんが寂しくて死んじゃうかもしれないんだよ」

憂「そんな、うさぎじゃないんだし……えっと、じゃあ私は――」

梓「――ふぅ」

?「あーずにゃん!」


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最終更新:2011年05月26日 02:07