翌日
唯「いらっしゃ~い♪」
客梓「まぁ可愛い売り子さん」
唯「てへー、どもー」
梓「へらへらしてないでお客さんを案内してくださいよ」
唯「どぞーこちらへおかけになってお待ちください」
客梓「外人さん?」
唯「ちょっと勉強がてらに」
客梓「偉いですねぇ」
唯「それほどでもー」
梓「白あんと抹茶クリームでお待ちのお客様ー大変お待たせいたしましたー」
客梓「こりゃどうも」
客梓「むぐむぐ、おいしいです!」
唯「そりゃおいしいよーあずにゃんが焼いたんだもん! まいどありー」
唯「……ふぅ、忙しいほどではないけど疲れたよ」
梓「前よりかはお客さんの数ふえました」
唯「えへへ。どんなもんだい」
梓「やっぱり客引きにはルックスが……いえ、なんでもないです」
唯「?」
梓「一息つきますか。お茶いれますね」
唯「そういえば、ここはタイヤキしか売らないの?」
梓「えっ? はい。ていうかタイヤキしか作れませんし」
唯「パンとかケーキは?」
梓「ぱん……?」
唯「えっ、パンしらないの?」
梓「食べ物ですか?」
唯「うそ~~~~」
梓「むっ、馬鹿にしてるでしょ」
唯「もしかしてパンの代わりがタイヤキなのかなこの国は」
梓「ぱんって日本の主食なんですか?」
唯「逆に聞くけどタイヤキが主食なの?」
梓「まぁ……もっともポピュラーな食事ではありますけど」
唯「なるほど、国じゅう甘ったるい臭いがするわけだこりゃ」
梓「けど基本は生地だけでたべます」
梓「中になにか詰めるだけで結構高くつきますし」
唯「あん入りのタイヤキはハンバーガーとかサンドイッチみたいな感覚なんだね」
梓「はんばー? さんどいち?」
唯「今度つくってあげるよ」
梓「楽しみです」
唯「ということは向かいのあのタイヤキチェーンは相当ってことだね……国民食かー」
梓「おかげでウチは商売あがったりです」
唯「そりゃ賑やかな方にいくよねー」
梓「どうしましょう」
唯「もりあげるにしてもこっちは二人だし、やっぱりメニューで勝負するしかないかー」
梓「でも……もう何をどうしたらいいのか」
唯「よし! さっぱり売れないメニューはこの際なしにして」
唯「新しく考えてみよう」
唯「あと、サンドイッチを売ってみようよ。まずはつくるから食べてみて」
梓「はいです……でもそんな誰もしらないようなの売れますか?」
唯「まぁおいしければ。あとワッフルは作り方とか材料にてるからいいかも」
唯「ケーキはどうだろ……ちょっと調べないとダメだね」
梓「????」
唯「まかせて! 料理は妹が得意だったんだ!」
梓「はぁ……」
数分後
梓「にゃああああ!!! なんですかこれはー!!」
唯「どう? ふわっとしたタイヤキ生地でお肉と野菜はさんでみたんだけど」
梓「うますぎですうううう!!」
唯「そんなにおいしい? ぱくっ」
唯「もぐもぐ……うーん、舌触りが悪いなぁ」
梓「えっ、とってもおいしいんですけど」
唯「日本ではもっともっとおいしいのがたくさんあるから」
梓「そうなんですか……じゅるり」
唯「とりあえず、強力粉とか足りない材料買ってこようかな」
梓「でもあんまりうちお金ないですよ?」
唯「大丈夫大丈夫。そんなにいっぱい買わないから」
梓「心配です……唯はお金使いが荒そうで」
唯「使いどころをわかってるって言ってほしいね」
梓「す、すいません。生意気いって」
唯「じゃあちょっと行ってくるね」ナデナデ
梓「は、はい……」
唯(ふー、高校時代からいろいろやってきたバイトの経験が生きたよ……なんでもやってみるもんだね)
……
唯「んーと、だいたいこんなものかなー」
唯「はぁ、お米もそのうち買えるようになればいいなぁ……」
唯「2kgで約2000円なんてありえないよ。国内で生産してないのかなー」
唯「だいぶ風土も違うし、もっと特産物とかこの国の人の好みとかつかまないとなー」
唯「明日はちょっと市内の食事処でもまわってみよう」
唯「あとは向こうのパンチェーンの偵察」
唯「お店で新メニューも考えなきゃだし」
唯「もちろん仕込みと調理と接客と……あうー」
唯「やることいっぱいでいそがしー」
唯「これをあずにゃんは一人でやってきたのかな」
唯「やっぱりすごいなぁ」
唯「私にもできるかな。ううん、やるんだ」
唯「後悔なんてしてないもん!」
そして夜……
唯「……どう?」
梓「……」プルプル
唯「私的には自信作なんだけど」
梓「……」ガクガク
唯「おいしい? ねぇあずにゃん」ユサユサ
梓「あ、あう……あっ」
梓「にゃひいいいいいいいい!!!」
唯「うわ!!」
梓「舌がおかしくなるくらいおいしいです!!!」
梓「一体このタイヤキはなにがつまってるんですか!?!?」
唯「ふっふっふー、それはね。日本の心だよ」
梓「日本の……心……?」
唯「味噌だよ! 味噌味の餡をつくってみたの!!!!」
唯「外人向けのマーケットでたまたま味噌をみつけてね!」
唯「コレだ!!っておもったよ」
梓「味噌……はじめてたべましたが不思議な味です」
唯「餡だけじゃなくて生地にも練りこんであるんだよ」
梓「すごい……タイヤキの甘いという常識を覆した怪作です」
唯「でしょ! これならご飯たべたーって気になるよ」
梓「……売れそうですね」
唯「かな?」
唯「ただ、これ、一つ問題があるんだよね」
梓「?」
唯「値段設定がちょっとね……。味噌じたいこの国では入手が難しいから割高だし」
梓「なるほど……」
唯「さすがに得体のしれない味を普通のアンコの倍の値段にするわけにはいかないもん」
梓「はじめは安くしてみるとか?」
唯「うーん……」
唯「それこそ一定の需要が見込めるなら」ブツブツ
梓「日本人はよくわからないことを考えますね」
唯「コストを下げる方法か……」
唯「大量に安く入手できたらいいんだけど……あ!」
梓「?」
唯「この辺りにサテライト電話ない?」
梓「さてら?」
唯「外国に電話できるやつ」
梓「んーと……ホテルとか空港まで行けばあるんじゃないですか」
唯「よーし! ちょっと電話してくる!」
梓「だれに?」
唯「友達!!」
……
唯「やっほーもしもしームギちゃんー?」
『えっ、唯ちゃん? 唯ちゃんなの!?』
『唯から?』 『そうみたい』
『おーい唯、お前授業どうしてこないんだよー』
唯「いまねー外国にいるんだー」
『はぁ? なにわけわかんねーこと』
唯「それよりさ、お味噌! 味噌おくってほしいんだ! それもちょっと多めに!」
『どういうことなの唯ちゃん?』
唯「私こっちで商売はじめるからー」
『なぁ唯……どうしたんだ? 早く戻ってきてまじめに授業受けて……』
唯「こっちは大真面目だもん! 失礼しちゃう!」
『よくわからないけどお味噌を送ればいいのね?』
唯「うん! さすがムギちゃん物分りがいいね。もちろん味噌代と送料はこっち持ちだからね」
唯「じゃそゆことでーあずにゃん教授によろしくー」
『お、おい唯! 教授ほったらかしにするのかよ』
唯「んーでもでも、しばらくは戻れそうにないし」
『あのなぁ……教授寂しがってるぞ』
唯「ちぇー、ちょっと優しくしただけですぐ勘違いしちゃうんだから」
『相変わらずなんだなー。そっちの国ではさぞやイイ思いできたようで』
唯「まぁそれはこれからだねー」
『いいか、売春旅行なんて絶対今後の人生の枷になるぞ。だから悪いこといわねーからさっさと戻』
ツーツー
唯「あ、お金いれるのわすれてた、まいっか」
唯「ふう、たったこんだけの電話でもすごいお金かかるなぁ」
唯「さっさとパソコンかってメッセンジャーを使えるようにしないと連絡とりあうだけでも馬鹿にならないよ」
唯「またムギちゃんに電話はするとして。教授にもフォローいれとかないとね」
唯「あま~い伝言メッセージでも残しとけばいいのかなぁ」
唯「でも柄じゃないんだよねー。なにか解決する方法はないものか。あー頭疲れることばっかりー」
数日後
唯「さぁ新発売の味噌タイヤキだよ~!」
唯「よ、そこの美人のあずにゃんさん、お一ついかが?」
客梓「みそ……?」
唯「味噌!」
客梓「いい匂いがしますね。ひとつもらいます」
梓「ありがとうございます!」
唯「まいどあり! さあいらっしゃいいらっしゃい。本日発売味噌タイヤキ! うちでしか食べれないよー」
客梓2「くんくん。変わった匂いです」
客梓3「くんくんいい匂いです」
客梓4「ほんとだ、この外人さんいい匂いデス」
客梓5「くんくんくんくん……ハァ、ハァ」
ゾロゾロ ゾロゾロ
唯「えっ! ちょっ、あずにゃ……助」
客梓2「タイヤキ屋さんいい人もらってよかったねぇ」
梓「えっ」
客梓3「どこでこんな可愛い人引っ掛けたか教えてほしいです」
客梓4「げへへ」
唯「えーんあずにゃん助けてー」
客梓5「私もあずにゃんですよ」クンクン
梓(集客効果抜群だ! これはいける!!)
唯「うわーん、押さないでー。数はございますのでーー!」
梓「はいどうぞー30アズニャンセントになりますー」
客梓6「……じゅるり」
客梓「にゃはあああああああ」バクバク
唯「おいしいでしょー」
客梓2「にゃひいいいいいいい」ガツガツ
客梓3「にゃふうううううううううう」ムシャムシャ
唯「ふぅ忙し忙し」
梓「よかったですね! 大当たりですよ」
唯「うんうん。あ、追加オーダーきてるからじゃんじゃん焼いて」
唯(とりあえずは好評だ……良かった)
唯(やっぱり全然しらない味をタイヤキで食べれるってのは新鮮だろうなぁ)
唯(日本でいうと全く新しい丼物が生まれたようなもんだし)
唯(あとは売って売って売りまくる! 私とあずにゃんの生活のために!!)
唯「さぁさぁどんどん食べてってね―」
梓「いらっしゃいませー♪」
客梓6「……」ニヤ
客梓6「……」メモメモ
……
最終更新:2011年05月27日 22:34