唯「あずにゃんと恋人になりたいなあって////初めて見たときから、かわいいなって思ってて。それでいつもあずにゃんのことばっか考えてたんだよっ。別にわたし女の子を好きになったこととかなかったのに。え、えーとそれで………」

 唯先輩は恥ずかしいのを隠すためなのかずっと喋り続けている。わたしから、告白していたらわたしもこうなっていたなと思って、そこで気づいた。唯先輩はわたしの不安を知っていて、自分から先に言いたいと言ったんじゃないだろうか。
 やっぱり、優しい先輩だ。だから、わたしは落ち着いて言うことができた。

梓「わたしも唯先輩のこと大好きですよ」
唯「あ、あずにゃーーんっ!!!!」ダキッ

 唯先輩はわたしに抱きついてきた。

梓「はわわっ、いきなり抱きつかないでくださいよー////」

唯「いいじゃーん、わたしたち恋人同士だよー」ギュゥゥー

 唯先輩はさっきより、もっと強くわたしを抱きしめる。唯先輩は温かくて、柔らかくて、そして懐かしい。
 わたしは気づくと泣いていた。

唯「あずにゃん?」

梓「う、嬉しくて……唯先輩、これからはずっと一緒に…」

唯「違うよーあずにゃん!!今までだってずっと一緒だったじゃん!」

 唯先輩はそう言って、わたしの脇に手を入れてくすぐる。

梓「ははっ、唯せんぱいっ、ひゃ、ひゃにするんですかぁーひゃはっはっ」

唯「泣いてるあずにゃんもかわいいけど、笑ってるのが一番だよっ!」

梓「もうっ///」

唯「あっそうだ記念にさ……」

梓「何ですか?」

唯「アイス食べよっ?」

梓「だ、台無しですよー」

唯「じゃあ、あずにゃんは何を期待してたのかなあー」ニヤニヤ

梓「な、な、なんでもないですっ////」

 はやくアイス食べましょうと言い、わたしは唯先輩の背中を押した。唯先輩は冷蔵庫から、2つのカップアイスを持ってきて、わたしに1つを手渡す。手渡す瞬間にわたしを抱き寄せた。

唯「あずにゃん大好きだよっ!」チュッ


 わたしの唇に唯先輩の唇が重なる。

梓「~~//////」

唯「あずにゃんかわいいっ~」

梓「ず、ずるいですっ//」

唯「えへへ~」

 言いながらわたしはずるいのは自分だと思う。だって、こんな人と一緒になれたんだから。

 それからわたしたちは二人でアイスを食べる。アイスをスプーンですくいながら唯先輩が言った。

唯「実はもうひとつ大切なことを伝えなきゃなんだ!」

 わたしはそれを聞いて、今この時に大切なこといったら、1つ、つまり放課後ティータイムに関することしかないと思った。


唯「ムギちゃんが日本に帰ってくるんだって!」

梓「ほんとですかっ!?」

唯「うんっ!放課後ティータイムの復活だよ」

 わたしと唯先輩は放課後ティータイムの五人が楽しく集まっているところを想像する。



~ 今日! ~


 私は飛行機を降りると荷物を受け取り、空港の中を歩いた。確かに唯ちゃんの言うとおり、日本は暑かった。
 りっちゃんは空港で待っていると言ってくれたけど、なかなかみんなは見つからない。もしかして、何かの事情で遅れてるのかしら。
 そう思ったとき、向こうから四人組が歩いて来るのが見えた。すぐにみんなかと思ったけれど、どうやら違うみたいだった。 まず、みんなのなかにアフロはいない。アフロの隣にはニット帽をかぶっているのがいて、その横の子はフードをかぶっている。最後一番右の子は唯ちゃんに似た髪型をしていたが、まさか唯ちゃんじゃないだろう。全員がマスクとサングラスをしていて、なんだか出来の悪い銀行強盗みたいだ。

 私は彼らを奇抜だとは思ったものの、特に気にとめることもなく、またみんなを探す作業に戻る。
 しかし、彼らの方はまるで私に用があるみたいに私の方に向かって歩いてきた。そして、私の前で立ち止まり、アフロがわたしの腕を掴んだ。そのまま、私は彼らに引っ張られるようにして、空港からでる。
 途中、背の低いフードをかぶった子が大丈夫ですよ、と言って、その声がなんだか懐かしいものだったので、不思議と安心してしまったから、怖くはなかった。

 私は空港の駐車場にとめてあった車に押し込まれた。ただ、押し込まれたと言っても彼らの私の扱いは逆に丁寧なものだったので、それがまた私を安心させる。
 そのときにはもう私はある可能性について考えていた。それは突拍子もないおかしな考えだったが、逆に突拍子もないおかしな考えだからこそ、正しい気がしたのだ。

 車の中に残りの四人も乗り込んできた。アフロは運転席、ニット帽は助手席に、私を挟んで右側に唯ちゃん似た髪型の子、左にフードの子というように彼らは座った。 唯ちゃんに似た髪型の子が私に向かって言った。
 「シンパイシナイデーキガイヲクワエルツモリハナイカラー」
 ヘリウムガスというんだっけ、そんなものを使っているのか、声が異常に高い。
 「ムギチャンハネ、コレカラ…………アッ!!!!」
 彼女は口をおさえた、だけどもう手遅れだった。私の左の子がフードとサングラス、マスクをとって言った。
 「やっぱり、唯先輩のせいで失敗しましたね」

律「いや~驚いただろムギ?」

 りっちゃんは車を運転していた。みんなはもう変装用具をはずしている。

唯「えへへェー↑失敗シチャッタケドォ」
澪「まだ、声が変だぞー」

紬「ふふっ、びっくりしたわ」

律「だろー準備するの大変だったんだからな。恥ずかしかったし」

梓「でも、似合ってましたよ。いっそのことアフロにしたらどうですか?律先輩」

律「中野ぉ!!」

澪「ちょっ、前見て運転しろよ。危ないぞ」

 久しぶりに見たみんなは変わっているようにもみえたし、変わってないようにもみえた。だけど、みんな笑って嬉しそうにみえたから、どっちでもいいかしらと思う。
唯「アーあーあー、あっ!戻った」

 そこで、わたしは気になっていたことを聞いてみた。

紬「どうなったのかしら?唯ちゃん?りっちゃん?」

澪梓「…//」

 そこで、質問した二人ではなく、澪ちゃんと梓ちゃんが顔を赤くしたので、これはうまくいったのね、と嬉しく思った。
 車はいつの間にか赤信号に止まっていて、話をそらすためかりっちゃんが写真でも撮ろうぜ、と携帯をとりだす。

梓「あぶないですよ」

律「大丈夫だって、ここの赤は長いんだよっ」

 そう言うと、りっちゃんはみんなが写るように携帯を掲げる。

律「ほらっはやくはやく、変な顔で写ってもしらないぞー」

律「はいチーズ」

 パシャッと音がして、写真が撮られる。りっちゃんは携帯の画面に写しだされた写真を見て、それから言った。

律「澪ーこれなんだよー。放課後ティータイムだったら4じゃなくて5だろー」

 自分を数え忘れたのかよと言い、澪ちゃんにそれを見せ、それからに私たちにも見えるようにする。

澪「ああ、これはダブルピースだ」

唯「ダブルピースっていったらこうだよー」

 唯ちゃんはそれぞれの手にピースを作ってみせた。

澪「知らないのか?最近はこれが流行ってるんだ」

紬「そうなの?」

律「嘘だろっ!」

澪「うん、正確には私と私の後輩が流行らせようとしてるんだ」

梓「流行んないでしょうね」

 梓ちゃんが言うと、澪ちゃんは嬉しそう顔してから、言った。

澪「だよなあー私もそう思うよ」

紬「そういえば、私たちはどこに向かってるの?」

律「さあ、どこに向かってるんだ?」

澪「お前が運転してるんだろっ」ポカッ

 二人のコンビも相変わらずだ。

律「よしっ、今からわたしたちがどうするか2つ選択肢がある」

梓「2つ?何ですか?」

律「忘れたとは言わせないぜ。常にわたしたちを悩ませてきた命題。練習かティータイムだっ!」

梓「ということはみなさんちゃんと楽器やっていたんですか?」

律「当たり前だろ、軽音部顧問をなめるなよ」

唯「わたし毎日ギター触ってたから、きっとあずにゃんよりうまくなってるよ」

紬「わたしも毎日のようにしていたわ」

澪「わたしもだっ」

梓「…先輩方も同じだったんですね。良かったです」

律「よしっ、練習かティータイムのどっちがいいか、せーので言おうぜ」

唯「りっちゃんはせーので言うの好きだね~」

律「いくぞ、せーのっ」

唯律紬「ティータイム!」
澪梓「練習!」

律「……ぷっ…あははっ変わってねー」

唯「多数決でティータイムだねっ」

澪「でも、どこでする?」

紬「ふふっ、澪ちゃん練習派なのに嬉しそうね」

澪「いやーなんというか久々のティータイムもいいなって」

梓「あっわかります」


律「放課後ティータイムの復活だな!」

 りっちゃんが言ってみんなが笑った。わたしは気づくとこう言っていた。

紬「やっぱり、放課後ティータイムは最高ね」

律「『だ』だろ?」

 車内にさっきよりもいっそう大きな笑い声が響きわたる。




~ 三年前 春! ~


梓「うわ~桜がきれいですよ!」

唯「そうだねーだけど、あずにゃんの方がかわいいよっ!」ダキッ

梓「意味わかんないですっ///」

紬「梓ちゃん、こういうところで告白されたら、相手の先輩喜ぶと思うわー」

梓「へ、変なこと言わないでくださいっ//」

律「いやーお熱いですなー」

澪「相変わらずだよ」

紬「そういえば、みんなに渡したいものがあるの」

唯「なに、なにー?」

紬「海外に旅行したときのお土産のストラップなんだけど」

唯「わあーワンちゃんだ!かわいいー」

梓「あっわたしは猫です」

澪「わたしはかわいいうさちゃ……うさぎだったよ」

律「………なんでわたしはサルなんだ?」

紬「あっ…いやだったかしら……かわいいと思ったんだけど」

律「い、いやもちろん嬉しいよっ」

梓「ナイスチョイスですよムギ先輩。律先輩とサルって同じようなものですし」

律「おいっ中野ぉ!」ガシッ

梓「ちょっ、じ、冗談ですよ」バタバタ

紬「あらあら」

唯「ねえねえあずにゃん、交換しようよ?わたし、あずにゃんがいいな!」

梓「あずにゃん?」

唯「そのストラップだよっ!これをあずにゃんだと思えば、あずにゃんがいなくても寂しくないからね!」

梓「まあ、いいですよ」ハイ

唯「ありがと!あずにゃんだと思って大切にするよっ!」

梓「はあ」


澪「それより、なんでムギのは動物じゃなくて、ティーカップなんだ?」

紬「私も最初は動物にしようと思ったんだけど、これが気に入っちゃったの」

梓「たしかに、ムギ先輩って感じがしますし、いいですね」

紬「ふふふ、そうかしら、よかったわ」

律「よく見ればこのサルもなかなかいいなっ!」

唯「そうだよ!りっちゃん!」

律「なんか、桜もきれいだし、いいものもらったしテンションあがるなー」

唯「あげあげだね!りっちゃん!」

律「よしっみんなで叫ぼうぜ」

澪「は?」

律「小さい頃テレビでみたんだよ。なんか主人公たちが手を繋いで叫ぶわけ、一度やってみたくてさ。幸いここには人いないし」

唯「おもしろそうだねっ!」

紬「なんだか気持ちよさそうね♪」

梓「えーやめましょうよ。子ども向け番組ですよねそれ」

律「いいだろー梓は一番子どもっぽい体型してるんだし」

梓「う、うるさいです、心は一番大人ですよ」

律「精神年齢おばさん」ボソッ

梓「な、なっ、違いますよ!やってやるです!!」

律「よし、後は澪だな」ジー

澪「………わ、私もやるよっ!」

唯「よーし、手繋ごう!」ギュッ

梓「手まで繋ぐんですかー」

律「当たり前だろ」

澪「で、なんて言うんだ?」

律「『放課後ティータイムは最高だ!』でどうだ」

紬「いいわね、りっちゃん」

律「じゃあいくぞ……せーの!」

律「放課後ティータイムは最高だぜ!!」澪「放課後ティータイムは最高だな!!」唯「放課後ティータイムは最高だよ!!」梓「放課後ティータイムは最高です!!」紬「放課後ティータイムは最高ね!!」



律「…………おいっ!語尾ぐらいそろえろよー」

澪「言い出しっぺの律も違うけどな」

律「…細かいことはいいんだよっ!」

紬「わたしたち10年後もみんなでバンドしてるかしら?」

澪「なんだかんだいって、結局は一緒にバンドやってる気がするよ」

梓「たしかに一度バラバラになってもしぶとく再生しそうですよね」

唯「わたしたちは復活するんだよっ!!」

律「なんたって放課後ティータイムは最高のバンドだからなっ!!」




これで完結です。







最終更新:2011年05月30日 23:34