何より私にいちんごが生えてないし。
唯「はぁ……」
体がだるい。
澪ちゃんのおかげで身についた技を駆使して頑張ったからかな。
身体はさらにベトベトだけど守りきる事が出来た。
ありがとう(?)澪ちゃん。
……あ、足音がする。
もしかしなくてもいちんご生徒……?
まずい、まずいまずい。
早く身体を起こさなきゃ。
唯「ふんぬっ……」
重い。
こんな疲れ切った身体じゃ走れないよ。
階段を下る音がもうすぐそこまで――
澪「……」
澪ちゃん……?
澪ちゃんが黙ってこちらに近づいてくる。
顔は赤いし目は泳いでて……。
え。
そういえば理科室で別れた時の澪ちゃんはもう限界だって言ってた。
ということは、そういうことになるのかな。
結局こうなっちゃうのかぁ。
私と澪ちゃんの頑張りって無駄だったのかな。
でもまあ、いっか。
周りに他の生徒はいないみたいだし。
澪ちゃんになら……。
あ、澪ちゃんの手が私に触れそう……。
澪「……ほら、これ」
ああ……澪ちゃん……せめて優しく……。
……?
唯「あれ、これ私のパンツ?」
澪「うん。文芸部の部室から持ってきた」
唯「あぁ~。ありがと~」
澪「ん」
唯「……あれ?」
澪「どうした? も、もしかして……されちゃったのか?」
唯「へ? いやあ、私はてっきり澪ちゃんにされちゃうのかと」
澪「う、あ……いや、その……アレのことなんだけどな、なくなったんだ」
唯「え? あれって?」
澪「だ、だから……い、ぃちんごのことっ!」
唯「……え、そうなの?」
澪「う、うん」
唯「……ほんとだ」
澪「じろじろ見るなぁ!」
唯「でもどうして?」
澪「それは……多分だけど……出し切ったっていうか……」
唯「え、何、聞こえないよ?」
澪「と、とにかくなくなったの!」
唯「そっかー……」
唯「よかったね澪ちゃん」
澪「うん。それで唯、本当にごめんな。あんなにひどいことして……」
唯「大丈夫だよ~。それに私が言いだしっぺだしね」
澪「でも……」
唯「いいってばぁ。それよりあずにゃんと純ちゃん知らない?」
澪「ああ、梓達もここで寝てて先に起きたから帰らせたよ。律達もな。アレもなくなってた」
唯「そっか。てことは私結構寝てたのかな? もう夕方みたいだし」
澪「きっと疲れてたんじゃないかな」
唯「そうみたい。でも澪ちゃんとのいちんご――」
澪「うわああああ!!」
唯「――のおかげで入れられずに済んで……澪ちゃん?」
澪「思い出したら……は、恥ずかしくて……ぅあ……!」
唯「……。澪ちゃんてばあんなに激しく……」
澪「ひ、あ、あ……! ごめん……あああああ……」
やっぱり澪ちゃんはこうでなくちゃね。
唯「ごめんごめん。澪ちゃん帰ろう」
澪「あ、うん……」
唯「よっこい……せ、あれ」
立てない……。
澪「ほら」
唯「いいよ、私の手べとべとだし……」
澪「そんなの気にしないから。……私の所為でもあるしな」
唯「……じゃあ」
私より少し大きな手はとても暖かかった。
唯「ぬるぬるだねぇ」
澪「言うな」
*
週明け。
教室に入るといつもと何かが違っていた。
なんだろう。
和「私も何か変だと思うんだけど」
唯「だよねえ」
ちなみに和ちゃんはあのあと無事に学校を脱出して人を呼びに行ったらしい。
でも戻ってくる頃には事態は収束していたんだって。
あの非常事態は突然始まって唐突に終わった。
私のした事って一体何だったんだろう。
和「私だってどうなってたかわからないし、そればっかりは仕方ないわよ」
唯「あうう……」
和「あれから澪とは連絡とったの?」
唯「うん。私が気にしてないよって言っても何回もごめんねのメール送ってきてた」
和「そうなんだ。あ、澪来たわよ」
唯「おはよー澪ちゃーん!」
澪ちゃんと目が合う。
澪ちゃんは席にカバンを置かずまっすぐ私の席に来た。
澪「おはよう唯。先週はほんとにごめん……」
唯「んもー大丈夫だってば」
澪「そっか……」
唯「そうだよ」
澪「でもひどいことしちゃったし……」
唯「それより澪ちゃん、今日の教室何かが変じゃない?」
澪「え? うーん」
唯「どう? 何が変かわかる?」
澪「確かに、何ていうかちょっと居づらい空気……」
唯「だよね。なんていうのかな、空気が桃色のような」
澪「ああ、言われてみれば」
澪ちゃんが私の列の先頭を見て言う。
気になって見てみると……
ちか「ねえ美冬、今日暇? 私の家においでよ」
美冬「う、うん……!」
ちかちゃんと美冬さんの距離が近い。
元々仲良かったけど、なんていうかべたべたしてる感じ。
そしてこんな光景でクラス中が埋め尽くされている。
澪「原因はわからないでもないような」
唯「なんだか落ち着かないよ」
澪「そうだな」
澪「……ところで唯」
唯「何?」
澪「今日空いてる?」
唯「うん、部活もないしねー」
澪「その、唯には迷惑かけちゃったからそのお詫びもかねて……出掛けないか?」
唯「おおっいいねえ行く行く!」
澪「そ、そうかっ!」
唯「……? 澪ちゃん顔赤いけどどしたの?」
澪「へっ!? なんでもないぞ!」
唯「そう? それでどこに行くの?」
澪「あ、ああ……ほら、唯のタイツ駄目になっちゃっただろ?」
唯「あーうん、でもあれは澪ちゃんの所為ってわけじゃないよ」
澪「それでもさ、お詫びというかなんというか」
澪「だから一緒に――」
澪「タイツ……買いに行かないか?」
END
最終更新:2011年06月01日 04:21