……ゴロンゴロン

ガサッ

ヤヨイ「あ~あ、中身がはみ出ちゃった。全く、さわ子は乱暴なんだから」ガサッ

ヤヨイ「よしよし」ナデナデ

さわ子「な、な、生首を撫でて……お、おかしいわよアンタ!」

ヤヨイ「さわ子なら知ってるでしょ。この袋の中が首だって事、忘れたの?」ナデナデ

さわ子「……もしかしてその首は。唯ちゃんにそっくりなあの……」

ヤヨイ「ほら知ってた。それを投げるなんてひどいよ。こんなに可愛い顔

してるのに」ポンポン

さわ子「……アンタおかしい。確実に変よ」

さわ子「その首……唯ちゃんと何か関係があるの!?」

ヤヨイ「……」ナデナデ

さわ子「答えなさい!」

ヤヨイ「もう、知ってるくせに」

さわ子「またそれ……私は何も知らないの。それが唯ちゃんと関係がある事だったら、私は……」

さわ子「私は一刻も早くそれを唯ちゃんに教えてあげないと」

ヤヨイ「唯ちゃんに? それは無理よ。だってあなた、ここで死んじゃうんですもの」

さわ子「……は?」

ヤヨイ「あなたは全てを知りながら。唯ちゃんは何も知らないままに」

死ぬの

さわ子「死ぬって……ちょっと!」

ヤヨイ「残念、もう時間みたい」

?「……」カチッ

さわ子「えっ」

ヤヨイ「さよなら、さわ子」

ボオオォォ!

ぎゃあああああぁぁぁ

ヤヨイ「ふふっ綺麗な炎」

ヤヨイ「でも、やっぱりスミオが一番綺麗に燃えた……」クスクス

……ーポー ピーポー ピーポー

ヤヨイ「唯……」

……。


――――

『……こちら現場です。身元の確認が終わっております……』

『焼死したのは冬葉スミオさん、今回のイベントを主催していたとの情報がはいっておりますが、詳しい事はまだわかっていません』

『また、イベントに参加していた他一名も死亡が確認されていますが、まだ身元はわかっておりません』

『証言によると、女性のようですが……詳しい事がわかり次第お知らせします。以上、中継現場からでした』

憂「……ボヤ騒ぎで死んじゃったなんて、怖いね」

唯「結構近くだもんね。夜の繁華街の辺りだからあまり馴染みはないけど……」

唯(さわちゃん大丈夫かな。なんだか不安だよ……)

憂「お姉ちゃん?」

唯(ううん、さわちゃんならきっと大丈夫だよ)

唯(大丈夫……だよね)

憂「……」


次の日、さわちゃんが死んだというニュースを学校で聞きました。

死因は焼死。

昨日のニュースの中継現場で死んでいたのが、さわちゃんでした。

そして、ニュースと同時にこんな噂も聞きました。

証言をしていた人は『生首が袋に入っているのを見た』とも証言していたみたいですが……。

いくら現場を探しても、そんな物は見つからなかったという事です。

ああ、怖いなあ。

帰りの空には、満月がちょっと欠けた月が浮かんでいました。

月の狂気は、まだ終わらないのでしょうか?

私には、まだ何もわかりません。

……。


唯「あ、あずにゃ~ん!」ギュッ

梓「にゃあ」


律「相変わらず仲がいいな~お二人さんは」

唯「えへへ~、あずにゃんあずにゃん」ギュッギュッ

梓「にゃあにゃあ」

律「もう将来は結婚だな結婚」

梓「にゃあ」

唯「えへへ~、ありがとう……あれ、名前なんだっけ」

梓「にゃあ」

唯「でもあずにゃんがいればいいや!」ギュッ

梓「にゃあ~」

~~~~

澪「唯!」

唯「わっ、いきなりどうしたの澪ちゃん?」

澪「唯のために詩を作ったんだ! 聞いてくれ」

唯「えっ、本当に!?」

澪「ああっ。これを書いている途中、窓から火吹きドラゴンの群れに襲われてな」

唯「え……」

澪「燃えないパピルス印が施された紙だったからよかったものの、危うく詩が灰になるとこだったよ」

唯「あ、あの~……澪ちゃん?」

澪「あ、でも安心しろ! 使ったインクは大悪魔会でも評判の虹色インクなんだ!」

唯「……はぁ。それはすごいねぇ……」キョトン

澪「ふふっ、愛しい愛しい唯のために、498年間眠らずに作った甲斐があったというものだ」

唯(澪ちゃん、今日は寝てないのかな? それとも、言葉は詩の影響かな?)

澪「じゃあ読むぞ、聞いて下さい!」

澪「еЙφΡΓゐゐゐΦλАА」

~~~~~~


純「あっ、お姉ちゃんおかえりなさい!」

唯「ただいま純。今日のご飯はな~に?」

純「ふふっ、お姉ちゃんの大好きなカレーとチーズケーキの甘辛焼きだよ」

唯「やったあ!」

純「早く手を洗って来てね。お料理冷めちゃうからさ」

唯「は~い」

憂「お姉ちゃん、アイス食べる?」

唯「うん、食べる食べる~」

憂「えへへ、やっぱりお姉ちゃんはアイスだよねはい」

憂「美味しい?」

唯「美味しい~」モグモグ

純「よかったぁ、お姉ちゃんのために朝から頑張って料理してたんだよ!」

唯「えへへ~、私は幸せ者だな~」

唯「ねえ純」

憂「違うよ、私は憂だよ?」

唯「あ、ごめんね憂……」

純「は? なに言ってるのお姉ちゃん。憂ちゃんはクラスメートでしょ」

唯「ああ、そうだったね……あれ、そうだっけ?」

純「そうだよ」

憂「そうだよ」

純「お姉ちゃんに近付くあんな奴なんて」

憂「死んじゃえばいいんだよ」

唯「う~ん……あ、ねえ」

「な~に、お姉ちゃん」

唯「妹の名前って……何て言ったっけ?」

「ふふっ、それはね」

~~~~~~

唯「……あれ。ここ、どこ?」

唯「……そっか。家に私帰る途中だっけ」スタスタ

唯「ん、あれ~。あずにゃん、こんな所で何してるの」

梓「あ、あはははっ。唯先輩、今お帰りですか、あははっおかえりなさい」

唯「ん~……あずにゃんどうしたのその格好。なんか赤黒い液体みたいなのが付着してるげと」

梓「何でもない、何でもないですよ。あはははははっ」

唯「ずいぶん楽しそうだね~」

梓「あはははっ、そりゃあもう」

唯「でもあずにゃん、私の家の方から来たよね?」

梓「あははっ、それがどうかしましたか? しましたか?」ケラケラ

唯「えっと……あ、もしかして憂と遊んでた?」

梓「遊んでたわけじゃないですよ、あはははっ。むしろ、助けてあげたんですよ」

唯「? どういう事?」

梓「唯先輩自分で言ってたじゃないですか。妹にばっかり頼ってちゃ自立出来ない~って。あははっ」ケラケラ

唯「う、うん。確かに言ってたけど……」

梓「あははっ、だからね。そんな唯先輩の手助けですよ。あははっ、いやあ大変でしたよ」

梓「とにかく抵抗が激しくてね、私もちょっと傷になっちゃいましたよ。あはははっ」ケラケラ

唯「傷に……?」

梓「ええっ。ほら、ここ。引っ掻かれちゃいましたよ、痛い痛い痛いあはははっ」ケラケラ

梓「まあ、三、四回刺したら大人しくなりましたけどね。あははは」

唯「え……」

梓「いやあ、意外と奥まで刺さんないもんですね。憂の奴、痛い痛いって叫んでましたよ」ケラケラ

唯「あずにゃん、もしかして……」

梓「あはははっ。まあ、これで唯先輩も晴れて一人暮らしですよ。よかったですね~あはははっ」ケラケラ

唯「あず……さ……」

梓「あ、ついでにね。隣のおばあちゃん……なんて言いましたっけか、あはははっ」

唯「ま、まさか……」

梓「まさに骨と皮でしたからね、あははっ。干物に包丁いれてるみたいで、アレはアレで楽しかったですよ」ケラケラ


唯「よくも私の大切なモノを……」

梓「あはははっ、言ったじゃないですか。手助けだって」

梓「これで唯先輩は立派な大人になったんですよ~」ケラケラ


→殺す
 殺さない


唯「……殺してやる」スッ

梓「あはははっ、あははははっ」ケラケラ

唯「お前なんか……こうして……!」ザクッ

梓「痛い、痛いですょぉ……唯先輩ぃ……」ケラケラ

唯「うるさい! 死ね! 私の大切なモノ……返せっ!」ドスッ

梓「うっ……」ガクッ

唯「……」

~~~~~~


……リリリリ

ピリリリリ

ピリリリリ

唯「う、う~ん……」

ピリリリリ

ピッ

唯『も、もしも~し……』

梓『唯先輩。今何時かわかりますでしょうか~?』

唯『う、う~ん。誰……?』

梓『寝ぼけないで下さいよ。梓ですよ梓』

唯『ああ~、あずにゃん~……むにゃむにゃ』

梓『ハァ。約束の時間、とっくに過ぎてますよ』

唯『んむ……やくそ……ハッ!』ガバッ

唯『うわあぁぁ! 完全に寝過ごしたよぉ!』ワタワタ

梓『ハァ……そんな事だろうと思ってましたよ』

梓『で、あとどれくらいで来れますか?』

唯『さ、さんじゅう……いや、20分で行くよ!』ワタワタ

梓『全く、人がどれだけ待っているかわかってるんですかね……ブツブツブツブツ』

唯『わ、わかったよ~。何か甘いもの奢るからさ!』

梓『デザートだけじゃなくて、ランチも奢ってもらわないと納得出来ませんね』プイッ

唯『わかったぁ! それでいいからあ!』

梓『ふふっ、約束しましたからね。じゃあ20分後に……』

唯『うん! あ、じゃあ駅前にある洋服屋さんで待ってて?』

梓『はい。では洋服屋「にゃんにゃん」で待ってます。失礼』プツッ

ツーツー

唯「……にゃんにゃん? 私、そのお店知らないんだけどなぁ」

唯「と、とにかく! 駅に向かってダッシュ!」タタタッ


――――

唯「……」コツコツコツ

コツコツコツ

唯「……」コツコツコツ

コツコツコツ

振り返る

唯「……」クルッ

唯「誰もいない……」コツコツコツ

唯「……」コツコツコツ

コツコツコツ

唯(ううっ、無視無視……!)

ホームレス「ようお嬢ちゃん。どこ行くんだよ」

唯(ひいっ! なんか来たぁ!)

ホームレス「俺も一緒に連れてってくれよ、なあ。いいだろ?」

唯(し、知らんぷり知らんぷり)タタタッ

ホームレス「……ちっ」

唯「はぁ、はぁ……」

唯(なんだろう、怖いよこの街。前はこんなんじゃなかったのに……)

デブ男「ふ、ふひゅひゅひゅ。女子高生だぁ~。き、きみ、か、かぁわいいね~」

唯(うわぁ……)

デブ男「ね、ねぇねぇ。これから一緒にデートしなぁい?」

デブ男「ボクお金いっぱい持ってるんだあ~。な、なんでも好きな物食べさせてあげるよ。ど、でふゅふゅふゅ」

唯(こ、怖い。また逃げ……)

デブ男「……逃げようなんて思わない方がいいよ。ボク、怒ったら何するかわからないから……」

デブ男「なぁ~んちゃって。うひゅ。うひゅひゅひゅひゅ~!」

唯「……」ガクガク

唯(ど、どうしよう……)

唯(そういえば憂が言ってたっけ。護身術の一つで……よしっ!)

唯「あ、あの……」

デブ男「うっひょ~。か、可愛い声えぇ。いいねえ、ま、ますます気に入っちゃった。デュフ」

唯「ど、どこに連れていってくれるんですか?」

デブ男「ど~こでもいいよぉ! ぼ、ボクお金たくさんだから……」

唯「そ、そうですか。とにかく行きましょう、ね?」ニッコリ

デブ男「うっひょ~! デートだデートだ!」

唯(とりあえず、足の届く位置をキープしてと……)

唯「あ、あの~」スッ

デブ男「んっ。な、なんだい~」

唯「え……」

デブ男「え?」

唯「えいっ!」

キーン!

デブ男「う、ううっ……な、何するんだよぉ……ぐっ」ドサッ

唯「ご、ごめんなさいっ!」

デブ男「ち、ちくしょう。待て……待てよぉ……ううっ」ピクピク

唯(よかった。ちゃんと当たったみたい)

唯(やっぱり最近おかしいよ……)タタタッ


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最終更新:2011年06月05日 22:43