……

梓「ムギ先輩、今日はゲームセンターに行きましょう」

純「お、いいじゃん梓!V8も出たしやりに行こう!行こう!」

紬「私、ゲームセンターに行ったらキーボードマニアやるのが夢なの♪」

梓・純「そう、なんだ……」

憂「私、おねえちゃんのぬいぐるみたくさん取るんだぁ♪」

梓「憂は本当に唯先輩の事しか考えていないね……この前だって5千円かけても取れなかったのに……」

紬「……ゆい、ちゃん」

梓(しまっ……!ムギ先輩の前でこのフレーズは不味かったかもしれない……!)

紬「唯ちゃん……」

梓「む、ムギ先輩!さあ早くゲームセンターに行きましょう!ね?ほらプリクラとか一緒に撮りましょう?」

紬「う、うん……そうだね、うん!一緒に遊んでくれたのに梓ちゃんたちとはまだ撮っていなかったよね」

梓「そうです!だから一緒に撮りましょう!皆で撮って、その後一人ずつムギ先輩と一緒に撮るんです」

紬「へえ……そういう撮り方が流行っているの?」

梓「私たちの学年では友達と一緒に撮るときはそんな感じです」

純「そうなの?憂?」

憂「え?ああ、ごめんね純ちゃん、ちょっと今他の事考えていて話聞いていなかったよ」

梓「さあさあ早く行かないとプリクラ終わっちゃいますから!ムギ先輩、レッツゴー、レッツゴーゴーゴーです!」

紬「う、うん、じゃあ行きましょうか」


『――待って!ムギちゃんっ!』


紬「唯ち」

憂「お姉ちゃん!!お姉ちゃんも一緒にプリクラ取りに来たの?すごい!私今丁度お姉ちゃんの事考えていて」

唯「ムギちゃんっ、はぁっ、はぁ……、さがっ、探した、よっ……はぁ、はぁ」

憂「大丈夫お姉ちゃん?すごい息上がっているよ?辛くない?横にならなくて大丈夫?」

唯「ありが、とう……うい、でも、大丈夫、だんだん落ち着いてきたから……だい、丈夫だよ……」

憂「でも……、お姉ちゃん普段こんなに運動しないから心配だよ」

唯「大丈夫、たまには体動かさないと……たっ、体力つくり、しておかないと……武道館での長時間ライブなん、て、できないよ」
  だから憂、すこしの間だけ、ムギちゃんとおはなしさせて……」

憂「うん!分かったよ!私静かにしているね!」

唯「ありがとう、うい……それより……ムギ、ちゃん、に、頼みたい事が……はぁ、あるの」

紬「……なあに、唯ちゃん?」

唯「あのね、走ってきたら……お腹、減っちゃった」

紬「うん」

憂「……」

唯「それでね、私、今すっごく食べたいものがあるんだよ」

紬「うん、うん……」

憂「……………………」

唯「最近、瓜類ばかりだったからムギちゃんにも会えなくて……すごく、すごく恋しくて、ムギちゃんに会いたくて……」

紬「うん、うん……私も、わたしもだよ」

憂「………………………………………」

唯「えへへ……♪ムギちゃん、ムギちゃんの美味しい沢庵、食べたいな」

紬「唯ちゃん……!もちろん、どうぞ」

唯「ありがとう、ムギちゃん♪」ひょいパク

憂「………………………………………………………………………………」

唯「うまい!」

唯「浅漬けみたいな塩気だけじゃなく、ん……奈良漬けみたいに濃すぎなくて」ぽりぽり

紬「ひっく、ううっ……唯、ちゃん」

唯「でも今日はちょっとだけ……しょっぱいかも」ぽりぽり

唯「でも……すごく、すごく、美味しいよ、ムギちゃん」ごくん

紬「ん、ありが、とう……それと、唯ちゃん、これも一緒がいいでしょう?」

唯「わぁ……♪白いご飯!やっぱりムギちゃんはよく分かってるね!いただきまぁーっす♪」

紬「いっぱい、いっぱい食べてね、唯ちゃん♪」

唯「うん!」ひょいパク

紬「ふぁあん!」

唯「うまい!」

紬「ふふっ♪どういたしまして♪」

紬(二つとも、取られちゃったけど、今日はゲル状になってもいいかな♪)

……

私が目を覚ましたのは――毎日私たちが放課後に通っていたあの部室でした
見慣れた天井を見上げるように、私はいつの間にかソファーで横になってたみたい

「ん、目、覚めた?」

その声に答えるように体を起き上がらせると

「まったく、ムギはいくらなんでも無理しすぎだぞ?ゲル状になった時はどうなるかと思ったよ」

ソファーの隣には、笑顔律っちゃん

「ごめんなさい……」

唯ちゃんに二つ目の沢庵をあげてからは何も覚えてはいないけど
きっと律っちゃんがここまで看病してくれたんだよね

「ん?あたしの顔になんか付いてる?」
「ううん、ありがとう、律っちゃん……本当に、ありがとう」

だから律っちゃんにはそのお礼を
それともう一つ、迷っている私の事を導いてくれた事の、二つのお礼

「いやいやあたしよりさ、ほらそこに幸せそうに寝ているのに言ってやってよ」

律っちゃんが指を差した場所、私の足元……
私のふとももを枕のようにして寄りかかって寝ているのは唯ちゃんでした

「いつも気を付けていたのに、つい二つとも取ったのは私のせいだー、って言って
 ゲル状になったムギの額に付ける、何か半円状の物が無いかかけずり回ってくれたんだよ」

私が起きたことにも気づかず、すやすやと寝息を立てて眠る唯ちゃん
私はその唯ちゃんの頭をそっと撫でました
太陽のような柔らかで暖かい髪の毛が、私の指を伝い唯ちゃんの温もりを感じさせてくれます

「ありがとう、唯ちゃん」

唯ちゃんの頭を撫でる手とは逆の手で自分の額を触ると、そこにはきちんと半円状の物がふたつありました
唯ちゃんが私のために付けてくれた物……それに触れるだけで、唯ちゃんの優しさが心に染み入るようでした

「ねえ、律っちゃん」
「ん?どしたムギ?」

でも今回の事で、私も一つ勉強になりました
ずっと変わらないでいることを求めるには、変わらないといけない事もあると言う事
私が新しい探求をするように、それは必要不可欠なのかもしれません

「私、今度からヴァリエーションを増やしてみようと思うの」
「へえ……いいんじゃないの、そういうのもさ」

私は携帯を取り出し、一通のメールを送りました


唯「ほらほら、澪ちゃんも入ってこないと!」

澪「で、でも……ムギ、本当にもう怒っていない?」

紬「うん、本当に本当、だから澪ちゃんも一緒に、ね?」

澪「う、うん……おじゃま、します……」

紬「じゃあ唯ちゃんが真ん中で、澪ちゃんがこっちで、私がこっち」

唯「おほぉ♪私両手に花だね!」

澪「で、でもムギってこんなにプリクラ手馴れていたんだ……」

紬「梓ちゃんたちと何度も来ているから、いつの間にかできるようになりましたー♪」

唯「あっ!じゃあこんな感じで大丈夫かな?ここだよ?まずはここに合わせて――」


画面に写るのはお茶碗を持った澪ちゃんと笑顔の唯ちゃん、ちょっと高めの奈良漬を二枚額に付けた私
ごはんがおにぎりになっても、おにぎりがごはんになってもいい
沢庵が他の漬物になっても、大根がきゅうりになってもいい

唯ちゃんが美味しく笑顔でごはんを食べてくれるのが、私たちの幸せなんですから


……でも、沢庵だと、もっと嬉しいかも♪


 おわり




――

律「梓、そこに隠れてやってんの」

梓「いやいや、なんとも微笑ましい光景だなぁと思ってたんですよ」

律「……そこに居るとバスペダル踏めないんだよ」

梓「オート演奏にすればいいじゃないですか、私だって律先輩に私の幸せな時間を邪魔されたくありません」

律「ほぅ……」

梓「おっと、チョークスリーパーは厳禁ですよ?ゲームセンター内であんなことしたら喧嘩だと思ってつまみ出されます
  投入した100円無駄にしてもいいんですかって痛っ!痛いです!」

律「ごめんごめーん♪梓の頭とタムと間違えた♪」

梓「ああそうですか……わかりましたよ、ええわかりました、戦争ですか、やってやるです」


純「……あの二人なにやってんの?」

憂「ほら、ほら純ちゃん!偶然紐に引っかかったよ!お姉ちゃんもうすぐ取れそうだよ!もうすぐ!クレーン頑張って!
  ああもう、そのまま、そのまま!これでお姉ちゃん可愛いぬいぐるみ抱いて眠れるよー♪」

純「……そう、そりゃよかった」

 終



最終更新:2011年06月14日 23:30