卒業式一週間前

律「……」ドキドキ

澪「いよいよ合格発表か」

唯「最近はサイトで見れるんだね」

和「ちょっと味気無いけどね」

紬「確か更新は正午ピッタリのはずだけど」

律「重くて中々繋がらない」

和「皆見てるでしょうからね」

唯「こっちまで緊張するよ」

律「お、繋がった」

澪「ど、どうなんだ!?」

律「こいつは……」

唯「え、どうなの?」

律「……」

和「律?」

律「……」プルプル

紬「りっちゃん?」

律「……み、お」

澪「な、なんだどうした!? 早く結果教えろよ!!」

律「ふぇ」

澪「!?」

律「ふぇ~ん! 澪~!」ガバッ

澪「わわわ! なんだよバカ!」

律「ふぇ……う、受かって……グス……あ、ありがと澪……ヒグッ」

澪「な、泣くなよバカ! こ、こっちまで……バカ! ああもうバカ!」

唯「よがっだ~りっじゃんよがっだよ~」ボロボロ

和「なんで唯まで泣いてるのよ」

紬「でも本当に良かったわね澪ちゃん」

澪「べ、別に私は……」

紬「……」

澪「ぬ、うぅ……い、一回しか言わないぞ」

律「はぇ?」

澪「合格おめでとう……っていうか、ありがとう」ボソボソ

律「びお~!」ギュウ

澪「だー!」

和「めでたしめでたし」



部室!

梓「受かったんですか! おめでとうございます!」

律「ま、天才美少女りっちゃんにかかれば朝飯前だな」

唯「さっきまで澪ちゃんに泣きついてたくせに」

律「やかましい!」ゴン!

唯「暴力反対!」

紬「これで本当に……」

澪「あぁ、練習に集中出来る」

律「つってもあと一週間だけどな」

さわ子「その一週間、一秒も無駄にしない事ね」

唯「あ、さわちゃんいたんだ」

さわ子「あんたらは顧問をなんだと思ってるのよ!」ギリギリ

唯「ぎ、ギブ……」

澪(おぉ、あれがロメロスペシャル)

紬「あと一週間で、ここに来る事も無くなるのね」

澪「卒業生として来ても、感覚は違うんだろうな」

さわ子「教師として来るともっと違うわよ」

律「そして学校に地縛霊がまた一人……」

さわ子「あん?」ギロリ

律「いやーさわちゃんの桜高愛は尊敬するなー」



唯「色んな事があったな……って」

唯「皆……あのね……」

律「待て唯」

唯「?」

律「思い出話とかの類はさ、まだ取っとこうぜ。今は練習だ」


♪♪♪

さわ子「唯ちゃん、もう少し歌に集中」

唯「うん!」

さわ子「りっちゃん、早いのは良いけど周りのペース見て」

律「うっす!」

さわ子「澪ちゃんは逆にもっと前に出て」

澪「はい!」

さわ子「ムギちゃん、全員のフォローよろしく」

紬「はい!」

さわ子「梓ちゃんは言う事無し! 好き放題弾きなさい!」

梓「はいです!」

♪♪♪

さわ子「はい休憩休憩! しっかり練習するのとオーバーワークは違うんだから」

律「ふぃ~」

唯「血糖値が……足り……ない」ガク

梓「先輩!」

紬「す、すぐにお茶菓子を!」

澪「今日はずいぶん先生も張り切ってましたね?」

さわ子「ん? そう見えたなら、あなた達がそれだけやる気だったって事よ」

律「そんなもんかね」

さわ子「そうよ」

唯「えへへ、さわちゃんにも随分お世話になったね」

さわ子「誠意は言葉ではなく金額」

澪(元中日の福留)



帰り道!

和「あ、唯」

唯「和ちゃん!」

和「軽音部の皆は?」

唯「そこで別れちゃった」

和「あー、こっちの方角で帰るのは私達くらいだもんね」

唯「うん」

和「久しぶりに、一緒に帰る?」

唯「やったー!」

和「軽音部の皆は?」

和「最近練習頑張ってるみたいね」

唯「うん! 和ちゃんも卒業ライブ来てね!」

和「ええ、招待してもうわ」

唯「えへー」

和「……」

和「唯、変わったよね」

唯「な、何、急に?」

和「しっかりしたというか……ちゃんとしてる」

唯「酷いなぁ、元がダメな子みたいじゃん」ブーブー

和「ふふふ、そうでしょ」

唯「ぶー」

和「軽音部に入って、本当に良かったのね」

唯「うん!」

唯「でもね」

和「?」

唯「和ちゃんが『何でも良いから打ち込める事を探せ』って言ってくれたからだよ」

唯「だから私を変えてくれたとしたら、和ちゃんなんだよ」

和「唯……」

唯「どうもありがとうございました!」ペコリ

和「そんな……頑張ったのは唯自身でしょ。私は何もしてないわよ」

唯「良いんだよ! 私が勝手に感謝してるんだから!」

和「じゃあ……その気持ち、受け取っておくわね」

唯「えへへ」

和「唯」

唯「?」

和「もう少しだけ……頑張ってね」

唯「バレてる?」

和「何年付き合いがあると思ってるのよ」

唯「えへへ、その時はお世話になります」

和「うん、いつでもおいで」

唯「じゃ……また明日!」

和「遅刻するんじゃないわよ」

唯「あいあいさー」



卒業三日前

律「いよいよ練習も最後かー」

澪「明日からは校内立ち入り禁止だからな」

梓「……」

紬「後は卒業式を待つだけね」

唯「あーあー、あっという間だったなー」

律「全くだ」

梓「あの、今日は練習止めにしませんか?」

澪「おいおい、梓が珍しいな」

梓「お願いです! 最後の我が侭です! 今日は……」

律「……ムギ」

紬「えぇ、お茶を淹れるわね。田井中部長」

律「よろしい」

唯「褒めてつかわすー」


唯「……」

澪「……」

律「……」

紬「……」

梓「……」

律「あの……誰か、喋りませんか?」

唯「りっちゃん隊員どうぞ」

律「こういう湿っぽい空気は嫌なんだよー」

澪「まぁ時期的にナーバスにもなるだろ」

紬「こうして皆でお茶を飲むのも」

梓「最後と思うと」

澪「不思議だよな、たった一日経つだけで、もう私達は桜高の……軽音部員じゃない」

律「気にし過ぎだっての」

唯「りっちゃん……」

律「いや私だってへこむよ? けどさ」

律「グダグダ言っても仕方ないし、後悔するような真似はしてないからな」

律「可愛くて頼れる後輩もいる事だし、私らはもう巣立たなきゃいけない」

律「だったら……スカッと出て行きたいだけさ」

澪「律……」

律「でもまぁ、皆に一言だけ」


ダン!

律「今からこの人類の至宝、生きる伝説田井中律がお前達への感謝の言葉を送る! 耳の穴ほじってよく聞け!」


律「ムギ!」

紬「は、はい!」

律「いつもいつも美味しいお茶とお菓子、絶えない笑顔、細やかな気配り……」

律「あと別荘とか色々……全部ひっくるめて感謝する!」

紬「りっちゃん」

律「言っとくけどな! 私はムギがムギだから感謝してんだ! そこを間違えんなよ!」

紬「うん、ありがとう……」



律「唯!」

唯「!」

律「思えばお前が入って、ようやく軽音部が形になったんだ」

律「感謝してもしきれないよ」

唯「ど、どういたしまして」

律「ま、その分だけ足も引っ張ってくれたけどな」

唯「あう……」

律「でもな、唯がいたから楽しかったんだ」

律「ありがとな、お前が……軽音部のエースだったよ」

唯「……」

律「泣くなアホ」

唯「りっ……ちゃ……」

律「ったく、最後まで世話の焼ける奴」ナデナデ




律「澪!」

澪「お、おう」

律「色々と振り回して悪かったな」

澪「ほ、本当だぞバカ律!」

律「あはは、大学でもよろしく頼むよ」

澪「唯よりお前のが世話焼けるよ」

律「そんな私を、支えてくれてありがとう」

澪「な……急にそういう事を言うな!」

律「こんな時じゃないと照れくさいだろ」

澪「まぁ……」

律「これまでも、これからも、澪は最高の親友だよ」

澪「……」ブワッ

律「うわ! 泣くなよお前まで!」


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最終更新:2010年01月17日 00:11