唯「映画楽しかったね~」

梓「はい。パンフレットも買いましたし……(この女優さん唯先輩に似てて可愛い……)」

唯「じゃあ帰ろっか」

梓「はい」

唯「え~と……」

梓「桜ヶ丘行きはもうちょっと待たないと電車がないですね」

唯「ん~そっかぁ」


タクシー「」


唯「あ!」


唯「あずにゃんタクシーで帰ろうよ!」



梓「ちょっと高いですけど……いいですよ」

唯「おっけ! じゃあ捕まえてくるね!」


唯「わぁ~駅前にはいっぱい止まってるね~」

梓「電車から降りた人が良く利用するんでしょうね」

唯「どの子にしようかな?」

梓「う~ん……」

唯「あ! この子500円からだって! 他より50円安いよ!」

梓「でもそういうところは大体時間経過なんですよね~。それでトロトロトロトロ走って料金増やすんですよ」

唯「あずにゃん詳しいね!」

梓「まあ、人並みに」


唯「あ、これなんだろ!」

梓「何々、『何があっても運転手は振り返らないタクシー』?」

唯「何か面白そう! これに乗ろうよあずにゃん!」

梓「何があっても振り返らない……ですか(他人行儀だなぁ)まあいいですよ。料金もそこそこですし」

唯「わ~い。運転手さんに言えばいいのかな?」

梓「ふふ、見ててください」

パカッ

唯「おおっ! 勝手に開いたよ!?」

梓「乗りたそうにしたらドアを開くシステムが搭載されてるんですよタクシーには!」

唯「スゴいねあずにゃん! この子私達の気持ちがわかるんだ~いい子いい子」

梓「(あぁ……何でも素直に信じちゃう唯先輩可愛い……けどちょっと心配です)さあ、乗りましょうか」

運転手「どこまで」

唯「ん~と、」

梓「桜ヶ丘駅までお願いします」

運転手「はい」

唯「ふ~。タクシーって独特の匂いするよね」

梓「わかります。私この匂い結構好きなんですよ」

唯「私も! 何でこんな匂いなんだろ~?」

唯「タクシーの運転手さんがかく汗の匂いとか!」チラッ

梓「(早速揺さぶりに行ってる?! 運転手は……)」

運転手「」シーン

梓「(さすがプロ、安全運転ですね)」

運転手「これは消毒役の匂いですよ」

梓「へ~」

唯「むむ、手強い……」


唯「あずにゃんあずにゃん」

梓「はい?」

唯「買ったブラ見せ合いっこしようよ!」

梓「ぶッッッッッ!!!」

梓「な、なにもこんなところで……はっ!」

運転手「」シーン

梓「(まさか唯先輩は意地でもこのタクシーの運転手さんを振り向かせるつもりじゃ……)」

唯「ほら~! このふりふりのついたの可愛いくない?」チラッ

運転手「」シーン

梓「(やっぱりぃ!)」

唯「ほら、あずにゃんのもみ~せて」

梓「あ、ちょっと唯先輩っ」

唯「ふふ、ちょっぴり大人の黒のブラジャーとはあずにゃんも大人になったものだね……」

梓「いいじゃないですか何色でも! 返してくださいっ」

唯「ふふ、焦るあずにゃん可愛い。こんな可愛いあずにゃんを無視出来る人なんて……」運転手「」シーン唯「いたよ!」

梓「もう何やってるんですか!(見られてないって言っても恥ずかしいなぁ)」

唯「こうなったら……。あずにゃんあずにゃん!」コソコソ

梓「今度は何ですか?」

唯「ちこうよれちこうよれ」

梓「はあ……もぅ」

唯「ゴニョゴニョ」

梓「……えぇっ!? 嫌ですよそんなの!」

唯「お願いあずにゃん」

梓「~ッ! わかりました! やりますよ……全く唯先輩は」

唯「わーいあずにゃん大好き!」

梓「もぅ……///」

運転手「」シーン


唯「コホン……コホンコホン」

梓「ゆ、唯先輩? ドウシタンデスカ?」(棒)

唯「持病が再発したみたい……」

梓「エエ!? アノトンデモナク重い病気ガーですか?」(棒)

唯「もしかしたら……これがあずにゃんとの最後のランデブーになるかも……ね」

梓「そんなこと言わないでクダサイヨ唯先輩! 私……唯先輩がいなくなったらドウシタライインデスカー」(棒)

唯「大丈夫……あずにゃんなら一人でも……きっと強く生きていけるよ」

梓「唯先輩……嫌です。一人じゃ……嫌ですっ」

唯「私の大切な大切なあずにゃん……願わくば……もう一度……二人でタクシーにのりたか……」

梓「ゆ、ゆ……唯せんぱぁぁぁいーッ!」(迫真)

唯「」チラッ
梓「」チラッ

運転手「」シーン

唯「バカ……な」

梓「まあ丸聞こえですからね。バレてましたね」


唯「つまんな~い」

梓「何言ってるんですか。こっちを振り向かないってことは安全運転してくれてるってことじゃないですか」

唯「う~ん……そうなんだけどさ」

運転手「嘗て、その様に私を振り向かそうとした方達は何人もいらっしゃいました」

唯「!?」

運転手「しかし、私はこの振り返らないタクシーを始めて30年、一度も後部座席に振り返ったことはございません」

唯「なっ……そんなことって……!」

梓「(料金受け取る時どうするんだろう……)」

唯「あずにゃん聞いた?」

梓「はい」

唯「これは是が非でも振り返らしたいよね!」

梓「……確かに、ちょっとだけ」

唯「ふふ、やる気だね、あずにゃん」

梓「でも迷惑にならないように赤信号の時だけやりましょうね」

唯「はーい」


────

唯「平沢唯と!」

梓「あ、あずにゃんの」

唯「動物声マネシリーズ!」

唯「あるぱか!」

唯「……アルパーカ」

梓「なんでやね~ん」パシーン

唯「あいたっ」

梓「アルパカ言うとるだけやんか~そもそもアルパカって何て鳴くんか知っとんか~い」スパーン

唯「てへへすいやせん」

唯「次あずにゃんね!」

梓「……あずにゃんです!」

唯「それ鳴き声か~い」ペシッ

唯「」チラッ
運転手「」シーン
唯「駄目か……」


────
梓「てれんてんててんててんてて~てんてん」
唯「タクシーの車窓から、今日は桜が丘の隣町です」

唯「綺麗な景色と住宅街が過ぎ去って行きます。タクシーは低速でこの隣町を抜け、桜が丘に向かいます」
梓「てれんてんててんててんてて~てんてん」

唯「どうやらゴールが近づいて来たようです。タクシーの運転手の人も、手を振ってくれています」

運転手「」シーン

唯「こっちを見て手を振ってくれています」

運転手「」シーン

唯「これじゃ打ち切りだよっ!」

梓「てれんてんて(ry」

唯「あ、あずにゃんもういいよ」

唯「はあ……」

梓「諦めましょうよ。もうついちゃいますし」

唯「……」

梓「えっ……」

唯「……」

梓「ちょっと……唯先輩やめ……ん……ゆいせんぱ……」

唯「……」

梓「そんなことさわっちゃやですよ……もぅ……んんっ……あ……」

唯「……」

梓「怒りますよ……? んむ……ぷはぁ……ゆい……せんぱい、わたし、もう」

唯「……ここでしちゃおっか、あずにゃん」

梓「えっ……」

運転手「」!?

唯「どうせ見ないならなにやったってバレないよ。空気と一緒だもん」

梓「でも……」

唯「あずにゃん……」

梓「唯先輩……」


唯「」チラッ

運転手「」シーン


唯「もうっ! これでも無理ならもう無理だよ!」

梓「はあ……びっくりした(ほんとにいろんなとこ触られるなんて思わなかった……)」


────

運転手「2000円になります」
唯「はーい」

梓「(受け取る時まで振り返らないとは……やっぱり30年も振り返ってない人は違うな……)」

唯「いこ、あずにゃん」
梓「はい……」

運転手「ありがとうございましたー」

バタンッ

運転手「ふぅ」

コンコン

運転手「ん? さっきの子か。忘れ物かな」
ガチャ

梓「あ、すみません」

運転手「いえ、かまいませんよ。忘れ物ですか?」

梓「はい……恋を、忘れてきました」

運転手「えっ?」

梓「ずっと前向きで……運転するあなたに、恋……しちゃったみたい……です」

運転手「……」

梓「ここでは振り返らなくても……人生では違いますよね?」

運転手「それは……」

梓「振り返らない人生なんてつまらないと思います。私はまだ高校生で……おじさんはお父さんぐらいの年齢だけど……それでも」

梓「私に、振り返ってくれませんか?」

運転手「……で、でも私には妻子が!」フリムキッ

梓「やりましたよ唯先輩!!! 振り向かせましたよ!!!」

唯「ほんとあずにゃん!? やったね!!!」

運転手「……ふふ、百合最高!!!」


おしまい



最終更新:2011年06月22日 21:01