帰る途中――
「も、もう一声っ!!」
唯「?」
律「どうしたんだムギ?」
「あ、あのね私みんなに好きって言ってもらってすごく嬉しかったの」
梓「行動見てたらわかりますよ」
「でね、こんな素敵な日二度と来ないと思うから」
「最後にもう一回だけ言ってほしいなって……」
律「また言ったら今度は倒れちゃうんじゃないか?」
りっちゃんが冷やかしながら言う
「倒れないように、私頑張るからっ!!」
澪「頑張るって……(努力の方向性が少し違うような)」
唯「いいよ、ムギちゃん。私は何度でも言ってあげるよ♪」
「ありがとう、唯ちゃん」
律「しょうがないな、もう一回だけだからな」
「ごめんね、ありがとりっちゃん」
律「それじゃあ……」スウゥゥゥ
律「私はムギが大好きだぁぁぁぁああぁ!!!!!!」
「!!!!」
ちょ、ちょっとそんな大きな声なんて聞いてないよ
乾いた空気に律の声が夜空いっぱいに響き渡る
それはもうほかの人が簡単に聞こえるくらいの大声で
澪「わ、私もだぁぁぁああぁ!!!!」
澪ちゃんも勇気を振り絞って叫ぶ。
声が少し震えている。恥ずかしさを押し切って叫んでくれてる
梓「ペロペロしたいくらいかわいいですぅぅぅぅうぅ!!!」
梓ちゃんも先輩たちに負けじと声を張る――
唯「ムギちゃん、マジ天使ぃぃぃいいぃ!!!!」
唯ちゃんも大声……
嬉しさと恥ずかしさが入り混じった感情になる
も、もう一体どうすればいいのか
ただ、ただ感情が高揚し
またリンゴへと変わっていく
「う、うわあああぁぁあ」
律「ちょ、ちょっとムギ? どこ行くんだよ!?」
顔が熱い、いや顔だけじゃない
体全体が、脳が、心臓が全部熱い
もうとにかく嬉しさを通り越してしまったような奇妙な感情を
どうすればいいのか
私はとにかく手で顔を覆いながら走っていた
うぅ、みんな大胆すぎるよ
私死んじゃうよ
いや、もう幸せだし
死んじゃってもいいかな……
みんなをおいて一人走り続けると
公園が見えた
公園にはまだ誰も足を踏み入れておらず
私のための白銀のプールとなっていた
「えいっ」
公園の白銀プールに頭からダイビング
「嬉しい、嬉しすぎるよぉ」バタバタ
興奮のあまり手をバタバタさせる
もうこのまま冷たくなって死んじゃおうかな……
雪に顔を突っ込み、じっとする
唯「ムギちゃんみっけ!!」
律「な~にやってるんだよ?」
澪「探したんだぞ」
梓「私たちだけ恥ずかしい思いさせて逃げないでください」
みんな探しに来てくれたんだ……
律「そんなに雪が好きなのかよ」
うつぶせになっているムギを引っ張る
「あ、ありがとう。でも好きなのは雪じゃなくてみんなよ」
澪「それはありがとう。でももう遅いからみんな早く帰ろう」
律「ムギ探しに時間かかったしな」
「ご、ごめんなさい……」
梓「大丈夫ですよ、寒くなかったので苦痛だとは感じませんでしたし」
最後に私たちが公園を後にしようとした時
唯ちゃんがもう一回だけ褒めてくれた
唯「あれ?」
澪「どうした唯?」
唯「ふふふ」
梓「?」
唯「やっぱり、ムギちゃんは天使だったんだね」
「どういうこと?」
唯「ほら見て!!」
唯ちゃんが指をさしたところは
私がうつぶせになっていた所
「あっ!!」
澪「確かに天使だな」
私がうつぶせになって両手をバタバタしたものだから
そこが翼になって天使に見える……
おまけに……
唯「天使の微笑みだね!!」
にやついてる顔の後までくっきり残っていたんだとさ
おしまい
最終更新:2011年06月27日 22:16