③梓編

携帯「愛すーべきーてんーしに~♪」

晶「ケータイ置いていきやがって…」

晶「アイツどこにいるのかもわからんし…(三度目かよ)」

晶「鳴ってるケータイを放置するのは決して私のサガではない!…仕方ねぇ、私が出る。」

晶「えっと…着信は『あずにゃん』…」

晶「誰だっけ…?」

晶「確か…」

階層、なんて訳はなく回想

唯『あずにゃんが…』

晶『オマエの後輩なのか?』

唯『うん、私たちの可愛い後輩。今は新生軽音部の部長なの。』

晶『あずにゃんって言うのはあだ名だよな?』

唯『うん、可愛いでしょ?』

晶『私に訊かれても困る。』

晶「本名はなんて言うんだ…?」

ピッ

梓『もしもし、唯先輩…』

晶『もしもし…』

梓『唯先輩じゃない…?』

晶『唯なら事情があって今はいない。』

梓『いや、相談に乗ってくれれば、この際誰でもいいです。』

晶『誰でもいいならなんでわざわざ唯に電話したんだ?』

梓『え、えっと…唯先輩の声が聴きたくて…』

晶『(なんなんだ一体…?)』

晶『で、相談って?』

梓『それが…今の私は軽音部の部長として部員たちを引っ張ってるんですけど、ときどき疑問に思うんです。』

梓『「今の私は、軽音部を、音楽を、楽しめているのか」と。』

晶『難しい質問だな…』

梓『今までは先輩たちに引っ張られていて…なかなか練習しなくて…でもそれでも素敵な演奏をして…なによりもとっても楽しくて…』

梓『でも先輩たちが卒業しちゃって…先輩たちの残してくれた軽音部は何とか続けることができたんですけど…それは「自分にとっての最高の軽音部」じゃないんです。』

晶『(あいつら、結構慕われてたんだな…)』

梓『練習をするたびに、みんなでお茶を飲むたびに、どうしてもHTTとしての軽音部が頭に浮かんできて…』

梓『せっかく憂や純が来てくれて、菫や奥田さんが入部してくれたのに…私だけが我儘をいつも、いつもいつも心の中で言って、言い続けて…』グスッ

梓『最低ですよね…?』ヒックヒック

晶『その…お前、名前はなんて言うんだ?』

梓『中野梓です。』

晶『梓か。私はお前の顔も知らないし、お前の今の気持ちなんてはっきり言ってこれっぽちもわからん。』

梓『ええ…?』

晶『だけど、これだけは言っておく。』



晶『いつまでも過去に囚われるな!』


晶『後輩としてのお前が過ごしてきた軽音部はもはや過去の遺物。』

晶『これからの新しい軽音部は部長としてのお前が創る、似て非なる全くの別物だ。』

梓『別物…?』

晶『皆を引っ張るリーダーのお前がいつまでもウジウジ過去に拘ってんじゃねぇ!』

晶『そんなんじゃせっかく集まってくれた仲間に愛想尽かされて逃げられんぞ!?』

梓『そうですよね…私だけがいつまでもHTTの幻影を見ているわけにはいかないですよね…』

梓『前を向いて歩きださなきゃ…!』

晶『よろしい。』

梓『ありがとうございます…わざわざ赤の他人の相談に乗ってくれて…』

晶『ま、まあ気にすんな。それに、別に赤の他人ってわけじゃねぇし。』

梓『そう言えばあなたは唯先輩とはどういう関係で?』

晶『そりゃちょっとした友d…やっぱなんでもねぇ!!』

梓『あれ今、友達って言いかけましたよね?』

晶『ち、ちげぇよ!』

――――――

――――

――

梓『「恩那組」って酷い当て字ですね。』

晶『うっせぇ。』

梓『ロザリー(笑)』

晶『おめぇの「むったん」に比べりゃ何百倍もカッコいいわい!』

ガチャ

唯「ただいま~…ってそれ私の携帯!」

晶「すまん、出させてもらった。」

唯「え~?」

晶「文句言うなら、ケータイを置きっぱにすんなし。」


梓『どうやら、唯先輩が帰ってきたようですね。』

晶『んじゃあ、代わってやるか。じゃあな。』

梓『ではまた!』

晶「ほらよ、後輩からだぞ。」

唯「あ、あずにゃん?」

梓『それで、色々話して悩みも聴いてもらったり…』

唯『よかったね、あずにゃん!』

梓『はい。』

梓『ところで、唯先輩。今の軽音サークルはちゃんと楽しんでますか?』

唯『そりゃあものすごく!ティータイムは減っちゃったけど、先輩や晶ちゃん達と対バンしたり、みんなといつも一緒だったり…』

梓『そうですか。何となく安心しました。』

唯『そっちも軽音部楽しんでね、あずにゃん部長!』

梓『了解です!』


唯『それじゃあまたね。』

梓『お休みなさい。』

ピッ

ツーツーツー



晶「(よかったじゃねーか。)」

唯「はい、これノート。ありがと。」

晶「おう。」




唯「それと、明日も朝早いから起こしてくれるとありがたいな~…なんてね。」

晶「寝過ごしちまえ!!」



④さわ子編

携帯「ふでペン FU FU~♪」

晶「アイツ、ケータイ置いてったのか…何度目だよ…」

晶「ほんとどこ行きやがったんだアイツ…」

晶「ここはぐっとこらえて我慢するか…」

携帯「ふでペン(ry」

晶「耐えろ!耐えるんだ晶…!」


携帯「ふ(ry」

晶「…………!」イライラ

携帯「(ry

晶「あー!もー我慢できねぇ!!」

晶「何度も言うようだが鳴ってるケータイを放置するのは私のサガではない…出てやんよ!」

晶「えっと…着信は『さわちゃん』…」

晶「誰だっけ…?」

晶「確か…」

回想、ではなく…あ、合ってた

唯『私はさわちゃんみたいな先生になりたいな~』

晶『そのさわ子先生だっていっつもダラダラしてる訳じゃないだろ?』

唯『そうだけど。普段は猫かぶってるんだけど、本性はデスデビルなんだよ!』

晶『どんな先生だよ。』

唯『どんなって…とにかく猫を被ったデスデビルなの!』

晶『訳分からん。(ちょっと会ってみたいような…)』

晶「オラ、ワクワクしてきたぞ。」


ピッ

さわ子『もしもし?』

晶『もしもし…』

さわ子『あら、あなたは?』

晶『唯の知り合いです。』

さわ子『唯ちゃんはどうしたのかしら?』

晶『それが…ちょっと事情がありまして…少ししたら戻ってくるとは思うんですけど。』

さわ子『そう。それじゃあちょっとお話でもして待ちましょうか。』

晶『了解です。(あれ、案外いい感じの人?)』

さわ子『唯ちゃんは元気かしら?』

晶『はい…まあ一応。』

さわ子『よかった。』

晶『心なしか嬉しそうですね。』

さわ子『大事な教え子だもの。気になっても仕方ない事じゃない。』

さわ子『せっかくだから、何か訊きたい事とかある?人生の先輩としてある程度の相談には乗っちゃうわよ。』

晶『あ、はい。それじゃあお言葉に甘えて…』

晶『実は私も教師を目指しているんですが、もしよかったら体験談とかを話していただけないでしょうか…?』

さわ子『私が初めて担任を受け持った3年2組には、唯ちゃん達四人の他にもほんとにいろんな子たちがいたわ。そしてみんなはいつも仲良しだった。』

晶『賑やかそうなクラスですね。』

さわ子『その子たちは全員無事に卒業して、それぞれの未来を歩み始めた。そして私はみんなを笑顔で送り出した。』

さわ子『そのとき、私は心の底から教師やってて良かったなって思えたの。』

晶『そうですか…ありがとうございます。(すっごくいい人じゃん…)』

さわ子『いえいえ、どういたしまして。』

さわ子『でも驚いた。進路をなかなか決められなくて悩んでたあの子がまさか教師を目指してるなんてね…』

晶『なんでもさわ子先生に憧れてるらしいんです。』

さわ子『えっ、それは本当!?私のどんなところに憧れたの!?』

晶『言っちゃっていいですかね…(たぶん傷つくと思うんですけど…)』

さわ子『いいわよ!』



晶『「さわちゃんみたいにダラダラして過ごしたいから」と言ってました。』

さわ子『』



さわ子『…』

さわ子『何故かしら…すっごくあの子と話をしたい気分だわ…』

晶『(しーらねっと…)』

――――――

――――

――

さわ子『あなたとはロックについてぜひとも語り明かしたいわね!』

晶『いつか会える日が来たら、是非とも。』

さわ子『夜まで飲み明かしちゃいましょう!』

晶『いや、私未成年なんでそれはさすがに…』

ガチャ

唯「ただいま~…ってまた勝手に出て~!」

晶「わりぃわりぃ…そう怒るなって。」

唯「プンプン!」

晶「ぶっちゃけ私も悪かった。」


さわ子『おや~唯ちゃん帰って来ちゃったみたいね~』ニコニコ

晶『そ、そのようです。』

さわ子『たーっぷり話したい事があるのだけれど…』ニコニコ

晶『そ、それじゃあ代わりますね。』

晶「オマエと是非話がしたいそうだ…」

唯「な、なんの話かな?」

さわ子『テメーは教師舐めてんのか、あぁ!?』

唯『ひえー!ごめんなさい!!』

さわ子『だいたい教師ってのはなぁ…』

唯『あ、あの。明日も早いのでお手柔らかにお願いしまーす…』

さわ子『んな言い訳通るかゴラァ!』

唯『申し訳ありません!申し訳ありません!』

さわ子『その腐りきった根性、叩き直してやろうか!?』

唯『それだけはどうかご勘弁を~!』





晶「うわ、こえぇ…(でも、いつかは直接会ってみたい。)」


だいぶ後

唯「ノ、ノートありがと…」

晶「正直スマンカッタと思ってる…」




唯「それと、やっぱり明日も朝早いから起こして…?」

晶「お前いい加減にしろ。と言いたいところだが今回は特別に許そう。」



ある日

唯「晶ちゃーん!」

晶「今度はなんだよ。」

唯「あなたを『平沢唯ファミリー』の一員に任命します!」

晶「なんだよそれ!?」

唯「この私平沢唯に、家族にもふさわしき存在と認められた者のみが得ることのできる称号なのです!」

晶「いらねぇよそんなん!!」

唯「だから、これからもよろしくね♪」

晶「ん?…ああ、よろしく。」

唯「それで、早速だけどさっきの授業のノートを…」

晶「」

唯「いや~ついうっかり睡魔に負けてしまいましてね~…」

晶「い、い…」



晶「いい加減にしろアホンダラーーーーー!!!」



これにておしまい







最終更新:2011年07月02日 00:59