―――辺境の地

律「どこなんだここは……」

澪「魔界であることには変わりないな」

……お姉ちゃん……

唯「え!!」

梓「唯先輩?どうかしたんですか?」

唯「今……声が…!」

律「何も聞こえなかったぞ?」

紬「あの山の中腹にあるのは何かしら?」

澪「建物……神殿?」

律「行くぞ!!」

唯(なんだろ……胸がドキドキする)


第九章 心の旅!

……
………

澪「誰も……いないな」

梓「あるのは祭壇だけですか……」


………お姉ちゃん!………

全員「!!?」

祭壇に人の形が浮かび上がる

澪「唯?……違う!」

律「唯にそっくりだ……」

唯「君が……!」

……みなさん、はじめまして…かな……

……平沢……憂です……

唯「憂……!!」

唯がその名前を口にした瞬間

胸の奥がから言い知れない熱さが

込み上げてくるのがわかった

唯「憂……私の…妹だよね?」

律「妹だって!?」

……そうだよお姉ちゃん……

……前世で私はお姉ちゃんの妹だった……

……みなさんも前世ではお友達同士だったんです……

澪「前世?何を言ってるんだ……」

……私は前世で悪魔に殺されて…
   ルシファーに魂と体を乗っ取られた……

……前世のお姉ちゃん達はルシファーを倒したけど……

……皆さんの体は今もどこかで時間の流れが関係ない
   次元の狭間を彷徨ってる……

紬「なんですって!?」

……お姉ちゃん達は……ルシファーを倒すために
この世界に生まれたんです……

……ううん、正確には私を……和さんや学校を救うために……

梓「和さん……?」

律「ガッコウって……それじゃあの夢は!!」

……前世の姿です……

……私が……前世のお姉ちゃん達の姿を見せました……

澪「な、何がなんだか……」

……皆さんがこの世界でルシファーを倒せば……

……この世界だけじゃなく、次元の狭間を彷徨ってる
   お姉ちゃん達も助かるかもしれないんです……

唯「私達……前もずっと一緒だったんだね……」

律「これも運命ってヤツか……」

……前世の記憶を呼び戻すのはよくないんだけど……

……思い出してほしくて……

……私、前世のお姉ちゃん達…もちろん今のみなさん達にも
   助かってほしいんです!……

唯「憂……」

……あ…もう時間が来たみたい……

唯「え?」

……話せるのも……これが限界……

……お姉ちゃん…会えて……よかった……

その言葉を最後に憂の姿は消えた

唯「憂……あれ?」

唯は無意識のうちに涙が溢れていた

唯だけではなく…

そこにいた全員が……

律「なんだろ……これ」

澪「懐かしいような……」

梓「悲しいような……」

紬「涙が止まらないわ……」

「よくぞここまで辿り着きました」

唯「!?」

「私はイザナミ……あなた方がここに来るのを
 待ちわびておりました」

ケルベロス「イザナミ様……」

イザナミ「ケルベロス…お久しぶりです…
     この者たちをよくぞ守り通してくれました」

イザナミ「平沢 唯……そしてみなさん……
     あなた達はルシファーと戦う運命にあります」

唯「………」

イザナミ「今こそ内なる力に従う時……
     さあ、五つの玉を祭壇へ」

唯は玉をすべて祭壇に安置すると

まばゆい光を発し一つの玉になった

唯「これが……」

イザナミ「希望の玉の力はあなた達をルシファー城へと
     導きます」

イザナミ「さあ、お行きなさい!」

唯達は光に包まれ宙に浮く

イザナミ「あなた達には偉大な力があります…
     自分を信じて……!」

……
………

唯達は光の中を高速で進む


……ずっと…みんなで……一緒にいたいよ!……


……ご苦労だった、人間の子よ……


……憂を返してええええ!……


……あれで、ルシファーの心臓を……


……うわあああああああああ………


……
………


気が付くと唯達はルシファー城の前に立っていた

唯「思い出した……全部……」

律「あぁ……憂とカロンのじいさんに感謝だな」

澪「百年以上前も私達……」

梓「一緒だったんですね!」

紬「やっと会えた気がするわ!」

唯「憂!!和ちゃん!!みんな!!
  全部……全部元通りにするよ!!」

唯「百年以上かかっちゃったけど……
  待ってて!あの世界の私!!」

唯「みんな!!」


唯「行くよ!!」

……
………

唯「ルシファーーーー!!!」

―――ほう、時空を超えて転生したか―――

―――おもしろい―――

唯「憂を返して!!!」

―――憂?あの小娘か―――

―――あの小娘の魂ならサタンに身を捧げた娘の魂と
    仲良く次元の狭間を彷徨っているだろう―――

唯「許さない……私、絶対許さないから!!」

ジャキッ ジャキィン パチ……パチ…

―――私の剣とヴァジュラ…―――

―――前よりは楽しめそうだ―――

―――さあ、貴様らの最期の時はきた―――

律「それはこっちのセリフだぁ!!」

唯「みんな……!!」


……
………

どれくらい戦っただろう

どれくらい血を流しただろう

もしかしたら気が遠くなるほどの間

戦っていたかもしれない

気が付くと目の前にはルシファーが倒れていた


―――人の子よ……―――

―――サタンも同じく倒すがよい―――

―――ふ……ふふふ……―――


ルシファーは息絶えた


紬「はぁ…はぁ……サタンですって!?」

澪「サタンもこの世界にいるのか!?」

唯「両方倒せるなんていい機会だよ!!」

梓「唯先輩……」

律「お、おーし!やってやろうじゃないか!!」

そこにイザナミが現れた

イザナミ「よくやりました…みなさん」

イザナミ「ルシファーが言った通り、サタンもこの世界で
     復活をとげています」

律「ど、どこにいやがるんだ!?」

イザナミ「ここ、魔界にはおりません」

唯「!?」

イザナミ「あなた達の故郷、東京にいます」

澪「な、なんだって!?」

イザナミ「サタンがルシファーが死んだことを知れば…
     さらに動きは活発になるでしょう」

イザナミ「時間がありません……東京へ送りましょう」

唯「お願いします!!」

……
………

梓「……ここは…?」

律「ギ、ギンザじゃないか!!」

紬「え!?」

澪「鈴木カンパニー……まさか…」

唯「全部……終わりにしよう!」


―――鈴木カンパニー本社

黒服の男「何ですかあなた達は?」

律「社長を出せ!!」

黒服の男「鈴木 純社長にアポは取られておいでで?」

唯「いいからどいて!!」

黒服の男「ルシファーの剣…随分と物騒な物を持ってらっしゃいますな」

唯「!?」

黒服の男「社長にアポを取ってないのなら……
     ここを通すわけにはいきませんな!!」

黒服の男は邪神アシュラへと姿を変え

唯達に襲いかかる

しかしルシファーですら打ち倒した唯達にとっては

もはや敵ではなかった


―――社長室

バ―――ン!!

純「騒々しいなぁ…ドアを開ける時はもっと静かに…」

純「あら……何か用?」

澪「わざとらしい演技はそこまでだ……
  鈴木社長……いや、サタン!!」

純「そんな怖い顔しないでよ~!そうだ!みなさん一杯いかが?」

紬「……ふざけないで」

純「残念……じゃあ私だけいただきまーす!」

純「ところで……ここに来たってことはルシファーを
  倒したの?」

唯「倒したよ!!……この剣で!!」

ジャキン!

純「そう……うふふふ……
  みなさんの未来にかんぱーい!!」

純はグラスを空けると

後ろの壁に投げつけた

純「仮の体でうまくカムフラージュしたつもりだったんだけどなぁ……」

純「しょうがない……」


―――貴様らには本当の恐怖というものを体験していただこう―――

―――では、ショウの始まりだ!!―――


鈴木社長は真の姿……

サタンへと姿を変えた


―――どうした、臆したか?―――

……みんな…みんな元通りに……

ずっと……ずっと……一緒にいたいよ!……

ドク……ドク……

律「唯が……!?」

澪「二人に見える!?」

唯「これは……学校の分!!」

ジャキッ  ザン!!

―――な……んだと?―――

唯「これは……憂と和ちゃんの苦しみ!」

バシュッ

唯「これで終わりだあああああ」

ブン! キシャアァァァァ!!

……
………

シトシト……


唯「雨……か……」

なんでだろう……雨の日はよく眠れる……
そういう時に限って見る夢は
みんなと戦ったあの時のこと
その仲間も
今はもういない
私は病院のベットの上で
95回目の誕生日を迎えようとしていた
外を眺めると
4羽の鳥が寄り添うように
雨宿りをしていた

あれから私はみんなと別れ
京浜第3シェルターがあった場所に
孤児院を作った
私は結婚することはなかったが
何十人という愛すべき子供ができた
後悔はしていない

一緒に戦った仲間も
私が最後の一人だ


唯「あ………」

いつの間にか雨は止み
窓の外には青空が広がっていた

枕元のデジタルラジオから古い歌が聞こえた……


なぜ めぐり逢うのかを

私たちは なにも知らない

いつ めぐり逢うのかを

私たちは いつも知らない

どこにいたの?生きてきたの……

遠い空の下 ふたつの物語

縦の糸はあなた 横の糸は私

織りなす布は いつか誰かを

暖めうるかもしれない


縦の糸はあなた 横の糸は私

逢うべき糸に 出逢えることを

―――人は 仕合わせと呼びます―――


看護婦「平沢さーん、シーツの交換しましょうねー……」


看護婦「先生!!……平沢さんが……」


……終わったよ……憂………



……
………

律「唯~!おっせーよいつまで待たせる気だぁ?」

唯「律ちゃん!!」

澪「随分長生きしたな唯……」

紬「さあ、行きましょ?」

梓「みんなで迎えに来ましたよ!唯先輩!!」

唯「みんな……あ り が と う!!」



第九章 心の旅! 完



エピローグ

20xx年 東京


……お姉ちゃん!!お姉ちゃん!!……

唯「………ん……」

澪「よかった!気が付いたみたいだ」

唯「ここは……音楽室!?」

憂「お姉ちゃん!!」

唯「う……憂ーーーーー!!!!」

和「気が付いたら…私達音楽室で寝てたのよ」

唯「和ちゃん!!良かった……」

唯「じゃあ、みんな…元通りに!!」

律「あぁ……元通りだ!!」

梓「何十年ぶりにみなさんに会うような気がします!!」

律「ああ、あっちで梓は早死にしたからな~」

和「早死に?何言ってるの??」

律「あ、いや!何でもない!!梓は早死にしそうって
  言ったんだよ!!」

梓「律先輩ひどい!!」

紬「長かったわね……」

澪「ああ……長かった…」

澪「でもこれでようやく……」

唯「憂!?ホントに憂なんだよね!?生きてるよね!?」

憂「うん……生きてるよ!お姉ちゃん!!」

唯「ぐす…ふええええん憂~~!!」

憂「お姉ちゃん……ありがとう……」

和「??え、演劇の練習でもしてるのあなた達?」

……
………

律「さて……と……」

澪「何しよっか?」

梓「決まってるじゃないですか!」

紬「そうね!」

唯「憂も和ちゃんもこっちこっち!!」

律「唯~!何やりたい~?」

唯「えへへ~」



―――ふわふわ時間!!―――


……
………

21XX年 東京

?「ユイ・ヒラサワのDNAは?」

医者「はい、ここに」

?「よし……これで全員分採取した……」

?「ふふふふふ……」





唯「けいおん転生!」~デビルバスター編~ 完






最終更新:2011年07月07日 00:05