梓「実は先輩が居ない間に着けてましたら……その……折って……しまいまして」

律「……」




目を見開き、じっと梓を見つめる律……その視線を受けきれず、目を背ける梓
しばらくの無言のあと、律が重い口を開く


律「……あ……梓?」

梓「は、はい……律先輩」

律「おまえ!!」シュッ!!

澪(律!?)

紬「りっちゃん!?」

梓(……くっ!!)


愛着があったんだよね、あのカチューシャ――


それを壊したんだから、すんなり終わるわけないよね――


きっと、もうそこまで律先輩の手が伸びている――


堅く目を閉じたのは、その瞬間が怖かったから――


やっぱり痛いのかな――


覚悟はもう出来ています、あとはその瞬間を受け入れるだけ――


受け入れるだけ――


それはわかってる、でも……


やっぱり、こわいよ……助けて唯先輩……!!


 :
 :
 :

ぽふっ!!





梓「……」


律「おまえって、カチューシャ割るほど頭デカかったっけ?」サスサス


梓「……」プシュー プスプス…


律「ん?」サスサス




梓「ちーがーいーまーす///!!!!」 どっかーん!!




律「あわわっ!!」


梓「はあっ…はあっ……すみません…その、グイッと引っぱっちゃったんです!!」ゼーハー

律「はあっ…はあっ……あ、ああ……そ、そういうこと……ね」ゼーハー


・・・・・・・・・・・・


梓「あ…あの、先輩」

律「なんだ」

梓「私……先輩にとっての、大事なカチューシャを壊してしまいました……」

律「……」

梓「本当はすぐに謝らなきゃいけないのに、
  怖くて嘘をついてまでごまかしてました……」

律「……」

梓「そんな最低な後輩で、しかも遅れましたけれど、律先輩……
  カチューシャを壊して、本当に……すみませんでした」

律「……」

梓「……」

律「あずさ」

梓「……はい」

律「気にすんなよ」

梓「えっ」

律「さすがに今日一日お前の様子がおかしかったんだ」

律「お前が何かやらかしたことくらいある程度わかってたよ」

梓「……」


律「それに梓の胸があれだけ大きく膨らんでりゃ、
  そこに何か隠してるって気づいちゃうよ」

梓「……///」


律「まあ、なんだ、謝るにしてもちょっとビビっちゃったか?」

梓「は、はい……」

律「たしかにあのカチューシャも、もう少し使いたかったから残念なんだけど」

律「でも、梓にも悪い思いさせちゃったし、
  カチューシャに関しては悪いことは言わないよ」

梓「す…すみません」


律「しかしだ!!」


梓「にゃ!?」

律「あずさ~」ジリジリ

梓「は……はい」

律「おまえティータイムのときにさ、『澪先輩とまではいきませんが、
  わたしの次の目標はもう唯先輩です、律先輩なんて目じゃないです!!』
  って言ってたけど、あれは実際どうなんだ?」

梓「ど、どうっていいますと……?」タラー

律「お前の目標は、“私”なのか“唯”なのか?」




梓「さて、時間もまだ残ってますし、練習しましょうか」スタスタ




律「あーずーさー」グイグイ

梓「えへへ……律先輩です」

律「もういちど」

梓「律先輩です」


律「おっし!! それが聞きたかったんだ!!」

梓「えっ」

律「お前に置いていかれたんじゃ悲しいからな」

梓「は…はぁ……」


澪(なんだろう、カチューシャよりも大事なことなのか……?)


律「ということだ、お風呂での見せ合いっこも中止ということでいいな、梓?」

梓「はい、もちろんです」

唯紬「ええーーーっ!?」

澪「えっ、ムギ?」

律「やりたいんならお前らだけでやれよ」

唯「そんなのやだよ!!みんなでやろーよ!!」プンプン

紬「り、りっちゃん、胸は見られると大きくなるっていうわよ?」アタフタ

律「別に生で見られることもないだろ?」

紬「い、いや、生のほうが効果的なのよ!!」

律「でもなー」

紬「合宿っていう大チャンスを逃すつもり?」

律「ざーんねん、諦めろって」

紬「くすん」シュン

 :
 :
 :
 :
 :
 :

律「それにしても、この前髪どうしようかね」

梓「あっ…そ、そうですね」

澪「しばらくそのままでいいんじゃないか?」

唯「そうだよりっちゃん、かっこい~よ~!!」

律「お前はもう黙れ!!」

紬「あらあら」

律「とはいっても……しばらくはこのままにしとこうかな」

澪「まあ、似合わないわけでもないからな、それもいいと思うぞ」

梓「すみません」

律「そう謝るなって、梓 ……………ん?」

梓「?」

律「ふっふっふ……梓ちゃん」


梓 ゾワッ

律「せっかくこういう機会なんだし……ちょっと遊ばせてもらおっかな~?」ニヤリ

梓「へっ?」


カポッ

梓「にゃっ?」


律「へっへーん、猫耳カチューシャ」

律「梓!!次に私がカチューシャ着けて登校するまで、お前はそれを着けて登校しろよな!!」

梓「えっ…そ、それって」

律「カチューシャ同士、交換条件だ」

梓「!?」

梓「そ、そんな……さっきもう悪いことは言わないって……」

律「そう、悪いことは言わないよ……でも、悪いことはしちゃうけどね~」ニヤリ

梓「えーっ!? 律先輩、そんなのひどいです!! それに……は、恥ずかしすぎます///」

律「そうか? 私は似合ってると思うけど」

唯「あずにゃん!!ぜんぜん違和感ないよ!!」

紬「そうよ、むしろそっちのほうが自然だわ」

梓「な、なにいってるんですか!?」

澪「しかし、ほんとよく似合うな」

梓「むぅ~、律先輩!!いまから一緒にカチューシャ見に行きましょう!!いいの探してみせますので!!」

律「ほう、これはたのしみですねぇ…でも猫耳はつけたままでな!!」

梓「ええーっ!?」

澪「面白そうだな。律、私もついて行っていいか?」

律「おう、澪しゃんも来なよ」

唯「わーい、私も行くー!!」

紬「ふふふ、じゃあ私も」

梓「わわっ、そんな……」

ガチャ

和「みんなー、下校時間よ」


唯「あっ、和ちゃん!!」

和「ふふ、いつもの軽音部ね」

唯「そうだよ、みんな仲良しティータイムだよ!!」

和「あら、梓ちゃん。その猫耳は?」

梓「あの…その…これは…」

律「交換条件だよ」

和「交換条件?」

澪「梓のやつ、律のカチューシャ壊しちゃってさ、
  そこで律が次にカチューシャ着けて登校するまで、
  代わりに梓は猫耳つけて登校することになったんだ」

梓「ま、まだOKなんてだしてませんよ」ボソッ

和「へえーそうなんだ。じゃあ仕方ないわね梓ちゃん」

梓「へっ?」

和「律のトレードマークを壊したんだもの、文句はいえないわよ」

梓「ちょっと真鍋先輩も止めてくださいよ!!」

律「ところで和、いまから新しいカチューシャ買いに行くんだけど、一緒に行くか?」

和「うーん、どうしようかな」

澪「梓は猫耳つけて行くらしいぞ」

和「いこうかな」ニコッ

梓「ちょっと!!」

紬「じゃあちょっと遠いけど、オシャレなお店を知ってるの。行ってみない?」

梓「遠いのは勘弁です!」

澪「バスとかで行けばいいんじゃないか?」

梓「そんなの恥ずかしくて死んじゃいます!!」

唯「その前におなかすいちゃったよ、先にどこか食べに行かない?」

梓「蛇口の水で満たしてください!!!」

律「なんか今日はじっくり吟味したい気分だな」

梓「私が一瞬で選んでみせます!!!!」

和「あきらめなさい」

梓「あきらめたらそこでry


律「それじゃあ梓ちゃん、いきましょうか~!!」グイグイ

梓「えっ、えっ!?」ズルズル

唯「しゅっぱ~つ!!」

梓「ふぇ~ん!!とめてくださいよ唯先輩!!許してください律せんぱ~い!!」ジタバタ

澪「じゃあ、電気消すぞ」

梓「ほ、ほんとに、ほんとに許してくださーい!!」ズルズル


ガチャ


バタン☆!!




おしまい



最終更新:2011年07月07日 01:11