From:唯センパイ
Sub:ふん

電話なんて掛けてこないでよ
私のこときらいなんでしょ

あずにゃんきらい


梓「……ななな……」

梓「そ、そんな……じゃ、じゃああれはマジのメールだったってこと……?」

梓「うわあああ! こ、こんな嫌われ方いやです!」

梓「ど、どうしよう……電話も取ってくれないし……」

梓「……だ、大丈夫です! ゆ、唯先輩と仲直りなんて簡単ですよ!」


To:唯センパイ
Sub:すみませんでした

ごめんなさい
さっきのメールは誤解と言うか
ボタンの掛け違いみたいなものです!
だから私は唯先輩のこと嫌いじゃないですよ!


梓「そ、送信……」ピッ

梓「こ、これで何とかいけるでしょ……うん」

ブブエー♪

梓「き、来た!」


From:唯センパイ
Sub:うそつき

どうせそれも冗談なんでしょ
あずにゃんはうそつきだもん
うそつきはきらい


梓「……なんてこった」

梓「こ、こんな調子じゃ絶対許してもらえないよ……」

梓「あ、ああ……そ、そうだ! 電話すればいいんだ!」

梓「電話して、ちゃんと事情を話せば……行けるよね!」

ペロロロロロロ…… ペロロロロロロ…

ペロロロロロロ…… ペロロロロロロ…

ペロロロロロロ…… ペロロロロロロ…

梓「と、取ってくれない……」

ブブエー♪

梓「あっ」


From:唯センパイ
Sub:電話しないでよ

取らないって言ったじゃん
聞き分けのないあずにゃんなんてきらい


梓「あう……そ、そうだった……」

梓「気が動転して……忘れてました……」

梓「……こ、このまま、唯先輩と不仲のままで……
  卒業しちゃうのかな……」

梓「……なわけないない! あの唯先輩がずっと怒るわけないよね!」

梓「大丈夫大丈夫……明日にはちゃんと全部元通りだよ……」

梓「大丈夫大丈夫」

梓「……ゆ、ゆいせんぱい」

梓「い、いや……唯先輩と仲が悪いのなんて……耐えきれない……」

梓「……唯先輩のところに謝りに行こう!」

梓「き、きっと唯先輩だって……許してくれる……」

梓「今は……午後9時30分! まだ遅くない!」

梓「よし! いってきま

ブブエー♪

梓「す……あれ? メール?」


From:純
Sub:non title

あちゃー外すんごい大雨だよ
こりゃあ当分外に出れないね


梓「う、うそ……」

ザアアアアアアアアア…

梓「そ、そんな……」

梓「で、でも行かなきゃ……行かなきゃダメ……」

ピシャアアアアア! 

梓「きゃああ!」ドテン

梓「い、今の近かった……」

梓「こ、怖い……雷怖い……」

梓「……」

梓「……今日はもう……やめにしようかな……」

梓「そうだよ……明日、謝ればいいんだ」

梓「謝ったら、唯先輩もきっと笑顔で許してくれる」

梓「その方が良いよね……うん、その方が良い。
  さて、眠っちゃおっと」

カチカチ

梓「……」

梓「……きらいだなんて、初めて言われた」

梓「私も……きらいって初めて言っちゃった」

梓「……ごめんなさい唯先輩」

梓「私……最低な子、ですよね」

ブブエー♪

梓「ん? メールだ……」


From:純
Sub:non title

何かをするって大変だけどさ、何もしないって簡単だよね
ダイエットしてて思った17の夜


梓「……そうか」

梓「そうだよね……うん! そうだそうだ!」

梓「何もしないのは簡単! 唯先輩! 今、行きます!」

バタン!!

梓母「梓? こんな遅くにどこ行くの?
    外、雨降ってるわよ」

梓「すぐ帰ってくるから!」

梓母「ちょっと梓!」

……

ザアアアアアア……

梓「うわあ……すごい雨だ」

梓「……でも、決めたからには……!」

梓「うおりゃあああああ!!」

パシャパシャ

梓「はあ……はあ……!」

服はずぶ濡れ
靴もビショビショ
お風呂に入って洗った髪はビシャビシャ
前も見えない
音も聞こえない

でも、携帯は……
携帯は、防水だから大丈夫!

梓「はあ……はあ……!」

ピシャアアアアア!!

梓「うるせええです! この雷やろう!」

梓「ひい……はあ……!」

梓「つ、ついたあ……」

ピンポーン ピンポーン ピンポーン ピンポーン

憂「は、はい……どなたですか……って梓ちゃん!」

梓「はあ……おじゃま……します……はあ」

憂「ど、どうしたのこんな遅くに! それにずぶ濡れだよ!?」

梓「唯先輩……に、会いに……はあ……」

憂「ああ……そっか。それで来てくれたんだね!
  でも、そんな……今日来なくてもよかったのに」

梓「それじゃ、入るね」

憂「あ、待って! 体拭いてから……」

梓「しつれいします」

ビチャ ベチャ

憂「ああ、いっちゃった……。
  うう……床がビチャビチャだよぉ……」


――ゆいのへや

コンコン

梓「唯先輩、梓です」

梓「お話があるので開けてください」

シーン

梓「ダメか……鍵もかかってる」

憂「もう寝ちゃってるかも」

梓「それはない……いや、唯先輩ならあり得るかな……?」

憂「やっぱりケンカしたの?」

梓「うん……ごめんね憂。私のせいなんだ」

憂「それはなんとなくわかったけど……どうしてケンカしたの?」

梓「そ、それは……軽音部の裏事情なので」

憂「えー、梓ちゃんひどい!」

梓「案外、軽いね憂」

憂「そんなことないよ? 私、お姉ちゃんのこと心配で眠れないんだから!」

梓「あーわかったよ」

憂「だから、梓ちゃんもがんばって!」

梓「うん!」

5分後

梓「うーん……結局ここまで来ても駄目なのか」

憂「まだあきらめちゃダメだよ梓ちゃん!
  仲直りに来たんでしょ!」

梓「そうなんだけど……これじゃあ埒が」

ブブエー♪

梓「あっ、メール」


From :純
Sub:non title

メールだメール!
メールなら相手に気持ち伝わるぜ!
っておじいちゃんが言ってた


梓「……」キョロキョロ

憂「どうしたの梓ちゃん? キョロキョロして」

梓「いや、どっかにカメラなんかあったりしないかと思って」

憂「そんなのないよ?」

梓「……この手でいこう」

憂「どの手?」

梓「メールしてみるよ」

憂「メールかあ……お姉ちゃんメール見るかな?」

梓「見るよ、絶対」


To:唯センパイ
Sub:おねがいです

ドアを開けてください
お話があるんです


梓「送信」ピッ

憂「届くかな?」

梓「届くよ」

ガチャリ

梓「ほらね?」

憂「すごい……さすが梓ちゃん!」

梓「いやいやぁ」テレテレ

梓(ナイスだ純! どっかで見てるようなナイスアシスト!)

梓「さて、それじゃあ、あとは二人で話すから」

憂「わ、私も同席したい!」

梓「大丈夫だから、憂は待ってて」

憂「うう……じゃあ何かあったらすぐに呼んでね?」

梓「わかった」

ガチャ

梓「失礼します」

唯「……!」

梓「ど、どうしました?」

唯「あずにゃん、びしょ濡れだよ!? 風邪引いちゃう!」

梓「大丈夫ですよ。ふふ、ケンカしてても心配してくれるんですね、先輩」

唯「あっ……ふ、ふん!」

梓「さてと……それじゃあ、弁解します」


梓「さっきのメールについてですけど……あれには深いわけがありまして」

唯「……」

梓「あの、えっとですねあれは……」

唯「……ん!」ズイッ

梓「はい? 携帯ですか?」

唯「ん、ん!」ピッピッ

梓「……ああ、わかりました。メールで言えってことですね」

唯「ん!」コクッ

梓(話もしたくないほど怒るだなんて……そんなにショックだったのかな……)

アルファルファー♪

唯「……」


From:あずにゃん
Sub:弁解です

唯先輩の心配ごとのメールの前にちょっとしたいざこざがあったんです
正確には、律先輩のドッキリにひっかかっちゃったわけで
それで、唯先輩も私のことをドッキリにひっかけようとしているのかと思ったんです
なので、あのメールについては撤回したいです
あれはナシです

本当にすみませんでした


唯「……」

梓「……ど、どうですか?」

唯「……」ピッ

梓(あくまでメールの会話ですか)

唯「……ん」ピッ

ブブエー♪

梓「……」


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最終更新:2011年07月11日 20:15