##16
学園祭前日
――ジャズ研 部室
後輩a「シーツはどこに置いておけばいいですか?」
先輩B「そこら辺の端の適当な場所にたたんで置いといて」
純「センパーイ、椅子が足りません」
先輩B「う~ん……あっ、そうだ」ピッ
プルルル、プルルル
先輩B「もっし~、ちょっとお願いしたいことがあるんだけど」
先輩B「イス余ってる? ……そっか、ありがと~。今後輩たち向かわせるから、じゃ」ピッ
先輩B「純、第三準備室に行ってきて。バトン部の部長さんにイス貸してもらえるよう頼んだから」
純「はい。行こっか」
後輩c「はいっ」
――第三準備室
いちご「これ、余ってるやつ」
純「どうもありがとうございます」
後輩c「うんしょ……」
純「運べる?」
後輩c「はい、なんとか」
純「よし、じゃあ戻ろ。失礼しました」
後輩c「失礼しました」
いちご「……」
純「これぐらいあれば十分……おっとっと」フラフラ
後輩c「だ、大丈夫ですか?」
純「大丈夫大丈夫、ちょっとつまづいただけだから」
ワイワイワイワイ
後輩c「学校中が活気付いてますね」
純「明日は学際だからね。活気付いてるというより慌てふためいてる感じだけど」
後輩c「あの……純先輩のクラスって確か二年一組ですよね?」
純「そうだよ」
後輩c「じゃ、じゃあ純先輩のクラスのお店にも行きますね」
純「うん、来て来て。大歓迎だから」
後輩c「それで…それでですね。あの……」
純「なに?」
後輩c「よ、よかったら……その……時間が空いたときでいいんで……」
後輩c「一緒に学校回ったりとか……したいんです……けど」
純「いいよ」
後輩c「!!」
純「時間があったら一緒に回ろっか」
後輩c「は、はい!」
後輩c(わ…わわ私ってばなんて大胆なことを)
――ジャズ研 部室
純「戻りましたー」
先輩B「おかえり~」
顧問「おっ、いいところに来た」
純「あれ? なんですかそれ」
顧問「喫茶店の衣装だよ」
純「わ、本格的」
後輩c「これって……」
顧問「メイド服、っていうやつ」
先輩B「ふりふり~だ~ね~」
純「これ先生が作ったんですか?」
顧問「いんや、山中先生」
先輩B「へー、あの先生が」
顧問「うちらの部活が喫茶店やるってこと話したら、衣装の話題になって」
顧問「『なんなら私が可愛いの作ってきます!』って言い出すもんだからついお願いしちゃってね」
顧問「なんかすごイキイキしてたなー、あのときの山中先生」
顧問「そういえば色んなクラスの衣装作ってるって言ってたっけ」
先輩B「ほぉ~、すんごい出来だ」
顧問「ちゃんとお礼言うんだよ? 褒められるの好きな人なんだから」
純「でもこういうの着たらなんか違う喫茶店になるんじゃないですか?」
先輩B「言うなればジャズメイド喫茶だね」
純「なんかとりあえず詰め込んでみました感がすごいんですけど」
先輩B「いいじゃん、メイドに惹かれて客が集まるかもしれないし。そういえば食べ物斑は?」
後輩a「苦戦してる模様です」
先輩B「はぁ~…じゃあそっちに手貸しに行くか」
純「あっ、私も行きます味見係として。いいですか?」
先輩B「……まぁ毒見係も必要か」
純「毒は盛らないでくださいよ」
先輩B「そんじゃ行ってくるから、後はテーブルの配置とかだけだしよろしくね~」
「「「はーい」」」
後輩c「わ、私も……」
後輩b「ほら何やってるの、こっち手伝って」
後輩c「あっ……う、うん……」
後輩c(純先輩と一緒に行きたかった……)
・・・・・
先輩B「純のクラスはもう準備終わった?」
純「はい、大体は。細かいところは明日の朝に仕上げるって感じで」
先輩B「うちのクラスもギリギリなんだよね~。まぁ聞いたらどこもそんな状態らしいけど」
先輩B「部活の方は……」
純「あっ、ナイスなアイディアを思いついたんですけど」
先輩B「ん?」
純「学校に泊り込みで作業するってのはどうですか? 徹夜でやれば絶対に間に合うし楽しいですよ」
先輩B「それはジャズメイド喫茶の話?」
純「そうです!」
先輩B「う~ん……どうだろうね~。ていうか部活の方の準備は今日中に終わりそうだし」
純「えー、やりましょうよぉー」
先輩B「私はやりたいと思ってるけどさ、反対意見もあるんだよね~」
先輩B「ほら、学際が終わったらすぐコンテストがあるでしょ?」
先輩B「学際に力を尽くしすぎて溜まった疲れがコンテストに影響したら、うちの部としては本末転倒なのよ」
純「んー……でもなぁ」
先輩B「そう言わずに、限りある時間で楽しむのもいいもんだよ~」
純「けどうちの部活は合宿にも行ってないじゃないですか。一度ぐらい泊まったりしたいなぁ」
先輩B「合宿はまた別の話。うちの部活に金とコネと権力の3Kがあればどこにでも行けるんだけど~」
純「今のところ0Kってことですか」
先輩B「残念なことにね~」
先輩B「まぁ合宿は来年にでも行けばいいじゃん」
純「来年かぁ……いよいよ私たちの時代」
先輩B「来年のレギュラーに純がいるとは限らないけど」
純「そこは言わないでくださいよ! これでも結構がんばってるんですから」
先輩B「じゃあ今から楽しみにしとく。来年の純はどれぐらい成長するのかな~…ってね」
純「うっ…そんなこと言われるとなんかすごいプレッシャーが……」
先輩B「私を失望させないよう精進したまえ」
純「そんなこと言うのやめてくださいよー」
先輩B「あははっ」
梓「あっ、純」
純「あれ…梓じゃん、なにしてるの? クラスの仕事もうないでしょ」
梓「部活」
純「あぁ……って今日もあるの!? 明日は学際じゃん!」
梓「だからこそ! 先輩たちは来ないと思うけど、わたし一人でも練習しないといけないし」
純「でもここ一週間ずっと一人で練習してんでしょ? それで大丈夫なの軽音部」
梓「だ、大丈夫! なんとかなるから!」
梓「それに今は、わたしができる事をしておかないと」
純「ほぉー、なら本番楽しみにしてるね」
梓「ま、任せて」
純「期待してる。じゃあ頑張って」
梓「うん、また明日」
梓「……」ペコリ
先輩B「がんばってね~」
純「梓ってば、すごいやる気」
先輩B「……大変だね~軽音部も」
純「けど二日目のライブはなんとかなると思いますよ。去年も唯先輩がギター忘れて遅れてきたけど……」
先輩B「いやそうじゃなくて、来年の話」
純「え?」
先輩B「あの~……なんだっけさっきの子。あずちゃん? 確か軽音部唯一の二年生だっけ」
先輩B「ほら、学際が終わる頃にはほとんどの部活の三年が引退するから、その~……梓ちゃんは一人になっちゃうわけでしょ?」
純「あっ……」
先輩B「今まで苦楽を共にしてきた人たちがいなくなって、急に一人ぼっちになるってのはけっこう辛いよ~」
純「……」
先輩B「先輩たちとできる最後の演奏だから、あれだけ頑張ってるのかな?」
純「そっか…梓以外は三年生か」
先輩B「来年になって新入部員が入れば、軽音部が廃部って最悪な事態にはならないだろうけど」
純「そうなればいいんですけどね」
純(でも入ったとして梓一人で新入部員の面倒みれるのかなぁ……)
先輩B「まぁもしもの時はジャズ研に引き込んじゃいなよ~、あの子」
純「梓、一年の頃ジャズ研に見学しに来てたんですよ?」
先輩B「あれ~……そうなの?」
純「そうですよ、前も言いませんでしたっけ。ジャズ研に入るのやめて、軽音部に入ったって」
先輩B「そうだったんだ、覚えてませんな~」
先輩B「あの子がジャズ研に入ってくれれば面白そうだったのに。なんかイジりがいがありそうだよね~真面目っぽいから」
純「あはは、確かにありますけどね」
最終更新:2011年07月12日 01:05