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憂「お小遣い帳?」

律「そう、ハチにかかるいろいろなお金のために書いてたんだろうな」

憂「……」

憂「あのお姉ちゃんが……」



○月×日

昨日子犬を拾った!
抱っこをするとあったかいくて気持ちいい



憂「もう、これじゃ日記じゃん…」

律「……」



○月×日

ハチとお風呂に入った
でも湯船にウンチをしたので臭かった……



憂「……ウンチ?」

律「ハチ……」



○月×日

憂の受験が近付いてきたから私がハチの世話を一通りするようになった
今さら気づいたけど犬の世話ってけっこう大変……
でも、ハチのためだからがんばるぞー!


○月×日

憂が言うには犬はいろいろなワクチンを打たなきゃいけないらしい
薬代もかかるって言ってた…
なので、今日から小遣い帳もつけないといけない


○月×日

ハチを動物病院に連れて行った
いろいろな薬を出された
ハチはちゃんと薬を飲んでくれるかな?



憂「ふふっ、こっそり餌に混ぜてあげてたのにハチったら全然気付かなかったなぁ」



○月×日
駅員さんにハチのことを褒められた!
自分のことを褒められるよりうれしいよー!
らりほー!



律「らりほー!はないよなぁ…」

憂「……」



○月×日

やっぱりハチはすごい!
お手を完璧にマスターした
次はマテと伏せを覚えさせたい



律「ハチ、お手」

ハチ「ワフッ」ポンッ

律「伏せ」

ハチ「……」ストンッ

憂「いい子だね、ハチ」



○月×日
久しぶりにハチとお風呂に入った
初めのころはすぐに洗い終わったのに今回は時間がかかった
大きくなったね、ハチ


○月×日

軽音部に一人だけど新入部員が入ってくれた
ハチのことを話したら見たいって言っていた


○月×日

合宿に行くことになった!
新い水着がほしいけど古いので我慢する
その分ハチに贅沢をさせてあげたい


○月×日

合宿はほとんど遊んでたけどすっごく楽しかった!
夕飯を食べてるときに、ハチが私に電話をしてきた
私がいないとダメなんだねハチ
世話がやける子!


○月×日

この日記にお小遣い帳もつけた成果か、少しずつお金が貯まってきた
明日はペットショップに行ってちょっと高い餌を買おうと思う
ハチが大好きな缶詰の餌を♪
みんなに付き合いが悪くなったと思われないか心配だ…



律「……」

憂「ここで、終わりですね……」

パタンッ

律(唯のバカヤロー……!)

憂「お小遣い帳なんて、お姉ちゃんらしくないよ…」

ハチ「?」

律「憂ちゃん、そろそろ葬儀の時間が…」

憂「はい…ハチはどうする?」

ハチ「……」ムクッ

律「いい子だ、ハチ」

憂「じゃあ、行きましょう」

律「ハチ、元気出せ!」

ハチ「……」

憂「ハチがいつまでも悲しんでたらお姉ちゃんも喜ばないよ」

ハチ「……ワフッ」


しかし唯が死んでしまったことはハチには
完全には理解できなかった
それでも周りの人間は変わらない態度でハチに接するよう努めた




―10年後―

―駅―

ハチ「………」

駅員「あれから10年か…」

ハチ「……」

駅員「ハチ、寒いだろ…」

駅員「いいもんがあるぞ」

ハチ「?」

駅員「ほら、甘酒だ」

ハチ「ワンッ!」

駅員「へへっ、乾杯」

ハチ「ワフワフッ」ゴクゴク

駅員「温まるだろ」

駅員「しかし、10年も飼い主の帰りを待つとはなぁ…」

駅員「ハチ、俺とおまえも歳をとったな」

ハチ「……」

駅員「さて、次の電車が最後だ」


ガタンゴトン、ガタンゴトン

プシューッ

ハチ「……」

駅員「……」

駅員(何年見てきても辛いな……)


うぃ~♪

ハチ「?」

澪「おい、飲みすぎたんじゃないのか?」

律「だってせっかくの同窓会だったんだもーん♪」

律「うぃー♪」

律「あっ、犬がいるぞ、犬」

律「……もしかして…ハチか?」

律「まさか、あれからもずっと待ってたのか……?」

律(体がボロボロじゃないか……)

澪「ハチ……」

駅員「ハチを知ってるの?」

律「はい、友達の犬で…」

律「ぐっ……」ポロポロ

律(涙が止まんねぇ……)

澪「律……」


憂「ハチー」

駅員「おっ、来たな」


憂「遅くなってごめんね」

ハチ「……」

憂「えっと……」

憂「もしかして、律さんと…澪さんですか?」

律「憂ちゃん? 久し振り……」

律「ハチ……ずっと待ってるの?」

憂「はい、お姉ちゃんが死んでからもう10年経つのに、おかしいですよね」

憂「でも犬には完全に理解することは無理なので…」

憂「せめてハチの気が済むまで付き合おうって決めたんです」

澪「それで10年か……」

憂「えへへ、おかしいですよね」

律「…そんなことないよ」

律「なぁ、憂ちゃん」

憂「はい?」

律「明日家に行ってもいいかな?」

律「唯にあいさつもしたいし」

憂「はい、もちろんです」

律「じゃあ、明日」

澪「おやすみ、憂ちゃん」

憂「はい」

憂「帰ろう、ハチ」

ハチ「……」

憂「ハチ?」


憂「もう伏せはいいよ」

ハチ「………」

憂「ハチ? ねぇ」ユサユサ

律「どうしたの?」

憂「ハチが……」

律「様子がおかしいな、おいっハチ!」ユサユサ




チー……

ハチー!


ハチ「ワフッ」キョロキョロ

ハチ「?」


ハチ「……?」

スタスタ


―駅―

ガラーーン……


ハチ「?」ペタンッ

ガタンゴトン、ガタンゴトン

ハチ「……」


プシュー

唯「ハチー!」

ハチ「……?」

ハチ「!!」


ハチ「ワォーーン!」

タッタッタッ

唯「ハチ!」ギューーッ!

ハチ「クゥーン……」

唯「ごめんね、ごめんね……」

唯「毛並みも悪くなって、背中も丸まってきたね……」

ハチ「フゥーン……」ペロペロ

唯「もう絶対にどこにも行かないから……!」

唯「ずっと一緒にいようね…」

ハチ「ワンッ!」

唯「そうだ……」ガサゴソ

ハチ「?」

唯「これ、缶詰♪」

ハチ「ワンッ!」

唯「ハチ大好きだったでしょ?」

唯「あとで食べさせてあげるね」

ハチ「ワンワンッ!」

唯「えへへ」

唯「よし、行こっか…」




―数日後、ペット霊園―

憂(ハチ、安らかに眠ってね……)

憂「さてと……」

ドンッ!


女の子「あっ、お姉さんごめんなさい…」

憂「いいよ、でも気をつけてね」

女の子「はーい」

女の子「ハチ、行くよ」

ハチ「ワンッ!」

憂「あの子もハチって名前なんだ……」

憂「ふふっ、あの子小さいのになんだかお姉ちゃんみたい」

憂「さて、じゃあね、ハチ」




ハチ、これからはずーっと一緒だよ!

ワンッ!


               ―完―




最終更新:2010年01月19日 04:14