Ch.047 純「発想飛び空中離散」


ピンポーン

唯「はーい」

ガチャ

純「こんにちはー憂居ますか?」

唯「純ちゃんいらっしゃーい。憂なら今飲み物買いに行ってるから先に上がってて」

純「はーいおじゃましまーす」

唯「何か飲み物……がないんだよねえ」

唯「お? 冷凍庫にカップアイスが丁度2つ入ってる」

唯「純ちゃんアイス食べる?」

純「食べまーす」

純「おいひい~」パクパク

唯「おいひい~」モグモグ

純「このアイス最近発売したやつですね」

唯「そうなの?」

純「確か前に憂が言ってました。この夏限定のアイスだから一度食べてみたいって」

唯「そっか~」

純「……」パクパク

唯「……え?」


唯「ゴメンね純ちゃん、わざわざ付き合せちゃって」

純「いえ、私も食べちゃったし……あ、このお店です」

唯「よし、憂が帰ってくる前にアイス買って戻らなきゃ」

純「ですね……あっジャリジャリ君の新しい味が出てる!」

唯「えっほんと!?」

純「あー……アボガド味はちょっとな……」

唯「えー美味しそうじゃない?」

純「そうですかあ?」

唯「おいしそうだよ~」


唯「アイス談義してる場合じゃなかった」

純「申し訳ない」

唯「憂帰ってなければいいけど」

純「でも憂なら許してくれそうだけどなー」

唯「純ちゃん。憂の怖さをわかってないね」

純「え……」

唯「よし、家まで走るよ!」

純「あっ待って下さーい!」


唯「ついた~!」

純「はあはあ」

唯「ただいま~」

純「ただいま~」

憂「ただいま~」

純「うおっ!」

唯「うっ憂!?」

憂「えへ、お姉ちゃん達が走ってるのが見えたからこっそり後付けちゃった」

憂「でもどうして二人が走ってたの?」

純(まずい! こうなったら私が時間を稼ぐから唯先輩は早くアイスを冷凍庫に!)チラッ

唯「!」コクン

純「実は――」

唯「実はアイス買いに行ってたんだ!」

純「おいィ?」

憂「アイス?」

唯「実は憂のアイス食べちゃったの! それで買いに行ってたんだ……ごめんなさい!」

唯「純ちゃんは悪くないんだよ!」

憂「お姉ちゃん……」

唯「ひぃっ!」

憂「私怒ってないよ。それにわざわざ買って来てくれたんでしょ?」

唯「うん」

憂「ありがとうおねえちゃん」

唯「うい~」

純「やっぱり怖くないよ」

唯「憂が許してくれてよかった~」

憂「ふふ、それじゃあせっかく買ってきてもらったしアイス食べてもいいかな?」

唯「もっちろん! はいこれ」

憂「……?」

唯「ジャリジャリ君アボガド味!」

純「えっ、なんでそれ買っちゃってるの……?」

唯「えっ」

憂「なにこれ」

唯「え、あ……」

純「憂……?」

憂「私が買ったアイスと違うよね?」

唯「あひぃ!? こ、これは……そう! 純ちゃんのオススメで!」

純「!?」



離散



Ch.048 四八(手)


放課後の部室へ行くとりっちゃんが一人でソファに寝転んでいた。
澪ちゃんとムギちゃんは掃除当番って言ってたっけ。

「おーす唯」

「ういーす」

「今日もいい天気だよな~」

うん。そうだねりっちゃん。
ていうかりっちゃん、スカートで寝転がってると色々見えちゃうんだけど。
そんなことお構いなしで寝てるりっちゃんはもしかして誘っているんでしょうか。

「なあゆい」

りっちゃんの流し目にドキッとした。

「……何かな」

「暇だしさ……やるか」

「えっ、何を?」

流石りっちゃん。情緒とかないね。

「何、か……じゃあ四十八手とかやってみるか」

「……りっちゃんがやりたいなら、やる」

「んじゃあ……」

りっちゃんが立ち上がって私の前に来る。
こんな展開でも緊張してきてしまう。
りっちゃんの手のひらがゆっくりと持ち上がって私の胸に突き出された。



律「突き出し!」

唯「むおっ! じゃあ寄り切り!」

律「やるな! 押し出し!」

唯「なんのー上手投げ!」

律「じゃあ下手投げ!」

唯「掛け投げっ!」

律「どすこーい!」

唯「相撲はっ!」

律「国技ですたーい!」



END



Ch.049 ドラマー!!


澪「きたぞー」

律「おう、まあ座れよ」

澪「何してたんだ?」

律「ん? ちょっとネットサーフィンをな」

律「とりあえず飲み物持ってくるよ」

澪「ありがと。パソコン使ってていい?」

律「おーう」

澪「じゃあさっそく……」

澪「律のマイドキュメント見ちゃおう」

澪「私の恥ずかしい写真とかないよな……あったら削除しておこう」

澪「……ん、なんだこのファイル?」

澪「『fillin』……フィルイン?」

澪「なんだろ、ドラム関係のファイルかな? ちょっと見てみよう」

澪「……動画が一杯入ってる。そっか、ドラムの動画か。律も頑張ってるんだな」

澪「どれどれ……」カチ

アアーン

澪「いっ!?」

澪「ななななんだよこれ! もしかしてこの動画全部え、えっちな動画なのか……!?」

律「おまたせー何見てんのーうおおおおおおい!!」

澪「な、なんだよあれ!」

律「見たまんまだよ! ていうか見るなよ!」

澪「だってフィルインって書いてあったからドラムの動画かと……」

律「う……」

律(見られた……あ、まさかあれも!? いや、あれは隠しフォルダだから大丈夫のはず……)

澪「なんですかあれは」

律「Fill‐In>フィルイン>おかず>アレのおかず……なんちゃって」

澪「……」

律「なんだよーいいだろべつにー!」

律「マキちゃんだってやってるかもしれないぞ!」

律「ありえないとも言い切れないぜー。以外にムギとかも」

澪「ねーよ」



END



Ch.050 律がいない軽音部


紬「お茶が入りました~」

澪「ありがと」

唯「あ、今日りっちゃんの分のケーキが余るね!」

紬「食べる?」

唯「やったぁ」

梓「それ食べたら練習しましょう」

澪「そうだな」

紬「そうね」

唯「もちろん!」



END



Ch.051 IF もしも 1「音楽を志すなら都会or地元」


唯「夢は武道館ライブ!」

唯「……とは言ったもののいまだに夢を追い続けているのは私だけ」

唯「みんな忙しくなってきてるし仕方ないか。みんなにはみんなの夢があるもん」

唯「でも私は……私だけは諦めないぞ。みんなの希望を背負って羽ばたけ私」

唯「うーん……やっぱり都会に殴り込みをかけに行ったほうがいいのかな」

唯「いろんなライブハウスで演奏したりオーディション受けたり……そういうのは都会に居た方が活動しやすいかも」

唯「それとも地元でもう少し頑張ってみようか」

唯「大学行きながら活動できるし」

唯「うーん……どうしよう?」



A 音楽を志すなら都会だ!……>>Ch.052へ

B 地元で音楽を志す!……>>Ch.053へ



END



Ch.052 IF もしも 1A「音楽を志すなら都会」


一袋のポテトチップスと一本の凍らせたチューペット。
これは私の中で祝杯を意味する。
私が曲を作る時は決まってこの山奥のペンションで缶詰になる。
そして曲が完成したら必ず一袋のポテトチップスと一本の凍らせたチューペットでささやかな祝杯をあげる。
今回はアルバム用の曲の製作のためにここに来た。
正直しんどかったけどいい曲が出来たと思う。
新しい事に挑戦しようと思って今までのキャピキャピした路線じゃなくて暗めな曲を作った。
今までとはちょっと違うけどみんなは受け入れてくれるかな。
これが上手くいったら次はどうしようか。
まだまだやりたい事がいっぱいあるんだから。

おおっと。
とりあえず今はチューペットで乾杯しよう。
ちなみにこのアイスをヌンチャクアイスって呼ぶ人もいるらしい。
上手く割れるかな……?

「ふっ!」

よし、綺麗に割れたぞ。これは幸先がいいね。
それでは。

「乾杯!」

一人きりのささやかな祝杯をあげた。

単身都会に殴りこみをかけてから何年たっただろう。
地道な下積みおかげでこうして音楽でご飯が食べられるようになった。
ひとつの事に集中できる環境がよかったのかもしれない。
今では作詞作曲も慣れたものよ。ふっふっふ。

私は今間違いなく幸せだ。
夢を叶える事が出来たし毎日大変だけど楽しさとやりがいを感じている。
だけどひとつだけ心残りがある。
地元に残してきたたった一人の妹の事だ。

憂は私がいなくなってからとても辛そうだったと聞いている。
たまに帰った時にはそんなこと感じさせないくらい元気だったんだけど。
そんな憂にも大切な人が出来てひとつになり、私から離れる事が出来た。
とっても仲が良くて私が嫉妬しちゃうくらい。
でも、憂の伴侶は突然帰らぬ人となる。事故だった。
それからの憂は心を病んでしまって見ていて辛い。
だけど私もお父さん達も仕事が忙しくて憂と一緒にいる時間を中々作れなくて。
あの時、いやそれ以前からもっと憂と一緒にいればこんな事には……。
正直心を病んでしまった憂と会う事が怖い。
それでもたった一人の妹なんだから、お姉ちゃんが何とかしてあげないと。

私は決意を固めてポテトチップスの袋を引きちぎった。
明日、久しぶりに憂の様子を見に帰ろう。
曲もとりあえず出来たし憂と一緒にいられる時間は割とある。
私が憂にしてあげられる事が何かあるはずだ。
待っててね、憂。



END



Ch.053 IF もしも 1B「音楽を志すなら地元」


唯「みんなお待たせ~!」

澪「お、来た来た」

ライブハウスの前にはもうみんなが集まっていた。

律「おーす唯」

紬「唯ちゃん」

梓「遅いですよ」

唯「ごめんごめん」

律「それじゃみんな揃った事だし入るか」

唯「おー」

今日は久しぶりにライブハウスでの演奏。
私は再結成した放課後ティータイムでバンド活動を続けている。

バンド活動って言うと本格的なものを想像するかもしれないけど実際はたまに集まって練習するくらいの趣味の範疇です。
地元で音楽活動を続けていた私だけど上手く行かなくて結局夢半ばで断念しました。
今では小さな会社に就職していて音楽は専ら趣味でやってます。

音楽を趣味として続けているのはみんな一緒で、だからこうして放課後ティータイムを再結成する事が出来たんだ。
半年に一回くらいはこうしてライブハウスで演奏します。
小さなライブハウスで対バンするのは大体身内でお客さんも大体身内。それでもこうしてみんなと一緒に演奏できるだけでとっても楽しい。
私達がライブハウスでやる時は憂や和ちゃんも駆けつけてくれるし。
これはこれで幸せ……かな。

律「――って唯!」

唯「へ? あ!」

律「リハーサルだからってぼけっとしすぎ」

唯「ごめんごめん」

律「それじゃもっかい最初からな」

唯「おっけー! みんな頑張ろうね!」



END



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最終更新:2011年07月21日 02:53