唯「…………毛が」
唯「怪我無い…毛が……」
唯「うう…毛が無いよぉ……」ぽろぽろ
律「唯!やっぱ痛いんだろ!?大丈夫か!?」
紬「唯ちゃんはやく保健室に…」
唯「私は平気だよ……でもりっちゃんが…えぐ………うぐぅ…」
律「だから私は怪我してないって!」
唯「りっちゃんの毛がぁ…ぐす…ひっく」
律「怪我したのは唯のほうだろ!」
唯「ちがうのぉ…私は毛があるからいいの…うううう…」
唯「りっぢゃん…は……毛が無いから………うええええええん!!」
律「ええ!?」
紬「唯ちゃん………う…ぐす…」
律「ムギも!?どうしたの!?」
澪「律…………」ボロボロ…
律「澪まで!?」
律「怪我して欲しかったのか!?」
唯「ぢぃがぁうぅのぉぉぉぉ…」
さわ子「うう…りっちゃん………」
梓「律先輩…」
律「皆どうしたんだよ!」
紬「りっちゃん!!」ガシッ
律「!?」
紬「いいお医者様を紹介するから!絶対大丈夫よ!」
紬「ダメなら最高級のかつらだって作ってあげる!」
律「え?何!?どういうこと!?」
紬「何も心配しなくていいから!」
澪「もういいんだ!何も聞くな!私も聞かない!」
梓「毛が無くったって律先輩は律先輩です!」
律「なんなんだよ皆!おかしいぞ!もう訳がわか」
キラーン!
律「うおっまぶしっ!」
澪「あ!!」
律「!??」
澪「梓!そこの鏡締まって!」
梓「は、はい!!」
律「なんだこれ…」
澪「律!」
律「なんで私ハゲてんの?」
さわ子「はぁ!?気付いてなかったの!?」
律「なんだよこれ!意味わかんないし!」
唯「りっちゃん!それはなんでもないよ!」
律「だからなんで私がハゲてるんだよ!!」
律「うわあああああああ!!」
澪「落ち着いて!!」
律「うそだ!誰だよこれ!!」
紬「りっちゃん!」
律「ああああああああああああ?!!」
紬「手荒な真似してごめんなさい!」ガシ!
律「離せムギ!死んでやる!!」
さわ子「落ち着きなさい!」
律「止めてくれるなさわちゃん!もう死ぬ!!」
紬「もしもし斉藤!?今すぐ来て!あと病院の手配も!」
律「むぎゅううううううううううう!!!」
紬「なんでもないわ!!いいから早く!!」
律「けがねなく逝きたい!!けがねなく逝きたい!!」
梓「律先輩落ち着いて下さい!!」
澪「あわわわわ…」
唯「りっちゃん…どどどどうしよう…」
ピーポーパーポー…
さわ子「ムギちゃんとりっちゃんは行っちゃったわね…」
澪「あたふたするだけで何も出来なかった…うう…」
さわ子「しょうがないわよ…あんな状況じゃ…」
唯「澪ちゃん…」
梓「律先輩大丈夫でしょうか…」
さわ子「ムギちゃんが付いてるから平気だとは思うけど…」
唯「そうそう!ムギちゃんがいるから平気だよ!」
梓「そうですよ、ムギ先輩も律先輩もあれでしっかりしてますし」
澪「ああ…」
梓「澪先輩もあまり気にしないで下さい」
澪「うん…そうだね…」
澪(あれ?梓の髪型ってこんなのだったっけ…)
さわ子「………?」
さわ子「梓ちゃん、今日は髪のセット変えてるの?」
唯「そう言われてみれば張りがないよね」
澪「梓、髪型変えたのか?」
梓「え?変えてませんよ?」
澪「そっか、なんか垂れてる感じになってたから」
唯「て言うかなんか浮いてるような…」
梓「そうですか?別に何も…」
ずる……ドサッ
梓「!?」
澪「!!」
唯「!!」
さわ子「!!」
唯「落ち……た?」
澪「え?…え?何?」
梓「は…え?あれ?こっちは?」
ぞる……
梓「あ?…れ……え?…なにこれ…私の髪の毛…?」
さわ子「何よこれ…」
唯「そんな…あずにゃん……」
梓「いや…うそですこんなの……」
澪「ツインテールの負担に毛根と頭皮が耐えられなかったんだ…」
梓「そんな…そんな………」
梓「いやああああああああ!!!」
信じられないことが起こってしまいました。
私の大切な後輩のあずにゃんもすでに悪魔に魅入られていたのです。
まるで虫の触覚のようにピンとテンションのかかったツインテール…。
あずにゃんの小さな体にはいささか負担が大き過ぎたようです。
悲惨なりっちゃんの頭部を見ていながらも、どこか自分には関係ないと言う気持ちがあったのでしょう。
「自分はハゲるはずがない、まさか自分が」
誰しもがそう思っています。
ですが、その間も頭皮と毛根は警鐘を鳴らし続けていたはずです。
食生活……生活習慣……環境…遺伝。
こうなる事は偶然ではなく必然だったのかもしれません……。
特徴的なツインテールはじわじわと毛根と頭皮を痛めつけ………そして。
ついに破滅の時がやってきました。
唯「あずにゃんまで……いやだよこんなの!!」
さわ子「梓ちゃんの髪までごっそりと抜け落ちるなんて……」
梓「あ…ああ…」ガクガク…
澪「梓!しっかりして!」
唯「そんな……そんな………!」
澪「あ!!」
澪「唯!憂ちゃんだ!憂ちゃんが危ない!!」
唯「え!?」
澪「ポニーテールだよ!いつも髪の毛結んでるだろ!」
さわ子「たしかにあの髪型は頭皮にかなりの負担のはず!」
唯「あ………あああああ?!!!」
澪「いそげ!このままじゃ憂ちゃんまでハゲてしまう!!」
唯「憂!!」
平沢家
唯「憂!!いる!?」バターン!!
憂「え?え!?どうしたの?」
唯「憂…」だき…なでなで…
憂「お姉ちゃん!?////」
唯「良かった…まだ抜けてない…」
憂「ええ?何?」
唯「憂、もうその髪型止めて!」
憂「え?なんで?」
唯「えーと……憂は髪下ろした方が絶対可愛い!!」
憂「!!!」
憂(ええええ!?/////)
憂「わわわわかった!」ドッキンドッキン////
憂「お姉ちゃんそっくりだよ~」
唯「うん!おそろいだね!」
憂「////」
唯「はぁ……よかったよぉ……」へなへな…へたり…
憂「お姉ちゃん!?大丈夫!?」
唯「あはは…平気平気!」
唯「あれ?」
唯「床……抜け毛こんなに多かったかな………」
唯「………これ…憂の毛だよね」
憂「あ、ごめん汚いよね…後で掃除しとくよ」
憂「最近抜け毛が多くって……季節の変わり目だからかなぁ?」
唯「え……?」
唯「……憂」
唯「10円ハゲが………」
憂「え?」
幸いな事に憂の10円ハゲ、いわゆる円形脱毛症はストレスによる物でした。
ストレスの原因はまだわからないけど、とりあえずは一安心です。
しかしクラスメイトでしょうか?
私の大切な憂に心配をかけさせる人間がいるなんて許せません…。
りっちゃんはムギちゃんの病院で治療を続けています。
かわいらしい産毛も生えてきて、もう心配は要らないそうです。
それにしても自分の髪の毛の状態に気付かないだなんて相変わらず大雑把な性格ですね!
あずにゃんは毛が抜け落ちたショックで廃人になってしまいました。
「空きれい」とうわごとの様につぶやく毎日です……。
お医者さんは首を横に振っていました…。
りっちゃんは私達が気を使って突っ込んでくれなかった事がショックだと言っていました。
今思えばりっちゃんに対して本当に失礼な事をしたと思います。
髪の毛の有無くらいで壊れる友情なんて初めからいりません。
私は気付かない振りをする事の辛さ、友達を誤魔化す事の辛さを学びました。
やはり友情は髪の毛以上に大切なのです。
数日後、病院
澪「今日も来たよ」
唯「やっほーりっちゃん!あずにゃん!」
律「おっす!」
紬「いらっしゃい、唯ちゃん、澪ちゃん」
梓「空きれい」
澪「梓は相変わらず、か…」
紬「そうね…」
律「しょうがないさ、私だって始めはショックだったし」
梓「ブツブツ…」
澪「でも律は元気そうでよかったよ」
澪「落ち込んでるんじゃないかって心配でさ……」
律「ハハハ!もう大丈夫だよ!」
律「これはこれでパンクだろ!」
澪「律ったら」ナデナデ…
律「こら!撫でるな!」
澪「産毛の感触が気持ちいいよ」
紬「ふふ…♪」
律「まぁ…私はいいんだけど梓がな…」
紬「そうね……もう治る見込みはないって…」
唯「そんなッ!」
澪「嘘でしょ!?」
紬「私だってそんなの信じない!信じたくない!」
唯「……ムギちゃん」
梓「髪の毛?…かつらだな…毛はバアーッと生えるもんな…暑っ苦しいな…ブツブツ」
澪「梓…」
唯「あずにゃん…ぎゅ……」
唯「絶対大丈夫だよ、私も一緒に頑張るから…」
澪「ああ!また前みたいにりっぱなツインテールが出来るよ!」
梓「ブツブツ…」
唯「よしよし……」
唯「ん?このふわふわした感触は」
紬「あら?これって…」
唯「あ……あー!!」
紬「皆見て!梓ちゃんにも産毛が生えてきてるわ!」
律「ほんとだ!!」
澪「ああ…よかった………よかった!!」
紬「梓ちゃん!わかる?髪の毛が生えてきてるのよ!」
梓「か……みの…毛………わたし…の?」
紬「そうよ!梓ちゃんの髪の毛よ!」
梓「あ………ああ……」ポロポロ…
唯「あずにゃぁぁぁん!!」
皆さんはあって当たり前だった物が突然なくなる体験をしたことはありますか?
ある日突然に奪われてしまう大切な物、大切な髪の毛。
私達の何気ない行為で消えていく髪の毛。
そして、そんな何気ない行為が後戻りの出来ない事態を引き起こしてしまう………。
それは髪の毛だけではなく地球環境にも言える事です。
ほんの些細な、本当に悪気の無い行為が地球を痛めつけているんです。
胸に手を当てて考えてみて下さい。
あなたの取った行動は後々どのような結果をもたらすのでしょうか…?
私が言いたい事は一つ、地球を大切に。
かけがえの無い地球を潤いの無い砂漠の星にしてしまわない為にも!
それでは聞いてください!これが最後の曲です!
『ふさふさ時間(タイム)』!!
fin
最終更新:2010年01月20日 23:45