ザ―――・・・

澪「・・・・・・」ピチャピチャ

律「・・・・・・」ピチャピチャ

澪「肩ぬれてない?」

律「ん・・・だいじょうぶ・・・」

澪「・・・そっか」

律「おう・・・」

澪「・・・」

律「・・・」

律「・・・あのさ」

澪「ん?なんだよ」

律「傘入れてもらってるし、持とうか?」

澪「なにをだ?」

律「傘を」

澪「そういうのは私より身長高くなってから言え」

律「・・・・・・ごもっとも」

澪「・・・そこ右だっけ?」

律「ん、そう。そこの突き当たり、右」

澪「・・・・・・」

律「・・・・・・」

澪「なにかしゃべってよ」

律「そんないきなりなにかといわれましても・・・」

澪「しゃべってよ」

律「・・・・・・こんなとこに紅茶屋あるんだな」

澪「あ、ほんとだ。初めて知った」

律「な」

澪「うん」

律「・・・」

澪「・・・」

澪「終わり?」

律「だめ?」

澪「だめ」

律「んー・・・あー、あのさ」ポリポリ

澪「なに?」

律「お前って何学部だったっけ?」

澪「・・・忘れたのか?」

律「忘れたというより、もともと何学部か覚えてなかった気がする」

澪「ひどいな」

律「あぁ・・・私はひどいよ。知ってるだろ?そんなの」

澪「うん、知ってるよ、すごく」

律「おう。そいつはどーも」

澪「ほめてないんだけどな・・・私は英文学部だよ」

律「へー・・・なにする学部なんだ?」

澪「普通に外国の本を読んで感想レジュメ作ったり・・・」

律「・・・」

澪「叙述詩と散文詩とか習ったり、文体の違いで人にそれがどう伝わるのかを学んだりしてる」

律「・・・・・・それって面白いのか?いや、HTTの作詞担当としてはものっそい生かされてる学問だとは思うんだけどさ」ハハハ

澪「面白いよ・・・少なくとも、私には十分学ぶに値することばかりだ」

律「そっか・・・」

澪「でも、外国の文学にふれてるとたまに思うんだ」

律「?」

澪「やっぱ文学部入っとけばよかった」

律「・・・・・・」

澪「ってさ」

律「それまたどーして」

澪「いや、外国ばかりに目をむけてるとさ、こう、なんというのかな、日本のもののすばらしさっていうのがまた違う見方で見えてきてさ」

律「へー・・・」

澪「私自身がポエムちっくだったし、日本のものとはそりが合わないんだろうって勝手に決め付けて英文学にしちゃったけど」

律(・・・ポエムちっくって自覚はあったのか)

澪「それは、私の一方的な価値観の押し付けであってさ、勉強をしたら埋めることの出来る溝だったのかもしれないなって、最近思い始めて」

律「そういうもん?」

澪「そういうもん、だった」

律「そっか。あんま本読まないからなぁ・・・私には文学のことはよくわからないなぁ・・・」

澪「律もそんな毛嫌いしないで読んでみればいいのに」

律「なにを?」

澪「本を」

律「私が本とか。おかしーし。てか、澪なら知ってるだろ」

澪「?」

律「私が自分から進んで読む活字は1番長いもので音楽雑誌の上に印刷されたものぐらいだってことぐらい」

澪「あぁ、まぁ・・・それは知ってるけどさ、・・・でも」

律「でも?」

澪「面白いよ?本を読むって」ニコッ

律「・・・」

律「いや・・・そんなこと私に言われてもなぁ・・・」タハハ

ザ―――・・・

澪「じゃあさ、りつ」

律「ん?なんだよ。あ、そこ左だから」

澪「わかってる。今年の誕生日は本をプレゼントするよ」

律「」

澪「・・・・・・」

律「いや・・・いらないけど」

澪「なんで・・・そんなこというんだよ」

律「はぁ・・・」

律「それはこっちのセリフだから。いきなりなんでそんなこと言いすんだよ」

澪「なんでって・・・」

律「誕生日・・・とか、もらっても、もう困るよ」

澪「・・・・・・」

律「・・・・・・」

澪「りつは、さ・・・」

律「・・・ん?」

澪「本当に梓が好きなんだな」

律「・・・・・・」

律「おう。大好きだよ」

律「大好きすぎて、涙が出るくらい好きだよ」

澪「そっか・・・」

律「う、うん」

澪「私より好き?」

ザ―――・・・

律「・・・・・・」

澪「・・・・・・」

律「それは、」

澪「うん」

律「・・・なんて答えたら、私は誰も傷つけなくてすむかな?」ハハハ

澪「・・・ごめん」

律「いや、謝るのはこっちのほうだし・・・」

澪「ごめん・・・」

律「だから、謝らなくていいからさ」

澪「だって、りつ・・・すごく悲しい顔をしたから」

律「・・・人の顔なんてこんなとき見るなよ」

澪「ごめん・・・りつ、ごめん」

律「もういいから、謝るな・・・」

澪「・・・りつ」

律「ん?」

澪「やっぱ、すき」

律「・・・・」

澪「忘れようって思うけど、どうしても忘れられない」

律「やめてよ・・・」

澪「すき、りつ、すきだよ」

律「・・・・・・」

澪「・・・りつが、梓のこと好きでもやっぱり私はそれでも好きなんだ」

澪「りつのこと」

律「・・・・・・」

律「ごめん。傘いれてくれてありがとうな」

澪「え・・・?」

律「もうこっから1人帰るから。お前もさっさと帰れよ、台風きてるんだろ?」

澪「りつ?ちょっと、待って・・・待ってよ」

律「じゃ・・・また、来週練習でな!」ダッ

澪「りつっ!!」

ザ―――・・・

澪「・・・」

澪「・・・」

澪「・・・ばかりつ」

ザ―――・・・

がちゃがちゃ

ばたーん

律「はぁ・・・はぁ・・・」ピチョン、ピチョン

律「・・・はぁ・・・はぁ・・・」ピチョン、ピチョン」

律「うわ・・・たったあの距離でこのびしょ濡れ・・・さすが台風の雨だなぁ・・・」ハハハ

ピチョン

律「シャワー・・・、いや、もういいや・・・」ピチョン、ピチョン

すたすたすた

どたっ

律「・・・」

律「・・・」ギュ

律「・・・バカやろう・・・なんで今頃になって、なんで・・・!!」

律「なんで、あんなこと言うんだよぉ・・・!!!」

律「一緒に帰るんじゃなかった」

律「・・・全部がだめになる・・・このままじゃ・・・・」

律「・・・・・・」

律「・・・もう・・・いいや・・・、寝よう。とにかく、寝よう」ギュ

律「準備はまぁ、なんとかなるだろ。なんとか、なる・・・かな?」

律「寝て、忘れて。時間が過ぎればきっと、いつのまにか台風も去って、梓と旅行だ・・・」ハハハ

律「楽しみだなぁ・・・ははは・・・梓とりょこうかぁ・・・」

律「大丈夫、楽しいよな、絶対・・・うん、そうだ、そうに決まってる・・・」

律「服、つべたい。髪も。まぁ、いっか!なんかもうどうでもいいや」

律「梓・・・すきだ」

律「・・・へへっ」

律「うん・・・よし、ほら、・・・こんなに、こんなに大好きだ」

律「・・・」

律「・・・」









律「・・・みお」

おわり



最終更新:2011年07月24日 21:10