菖「で、バイトの話だったっけ?」
晶「は?あぁ、そういえばそんな話してたな」
菖「私達も何かしないとねぇ。今は無職だし」パクパク
晶「学生だけどな」モグモグ
紬「二人は今までどんなバイトしたの?」
晶「ん~、色々だな」
菖「そうだね。コンビニ、ファーストフード、ライブハウスのスタッフ、年賀状配達、着ぐるみ着て客寄せ、カラオケの受付、夏フェスの物販、後何やったっけ」
晶「え~っと……あ、夏休みの短期でお歳暮の仕分けとか」
菖「あ~!晶がおばちゃんぶん殴ってクビになったアレか!」
晶「そんな言い方するなって」
菖「だって事実じゃん」
紬「ぶん殴った?」
菖「そうそう。その仕事場のお偉いさんのおばちゃんと言い争いになって最終的に晶がガツン!って」
晶「アレは私達の残業代を反故にしようとした向こうが悪い」
菖「ファーストフードでは客に手ぇ上げたしね」
晶「幸を強引にナンパしてた男を追いだしただけだ」ヒョイパク
菖「夏フェスの物販でもどっかで問題起こしてなかった?」モグモグ
晶「アレはあの女共が割り込みしやがったから注意しただけ」パクパク
紬「……晶ちゃんって良い子なのね」
晶「良い子とか言うな、ムズムズする」モグモグ
菖「解決方法が滅茶苦茶だけどね」
晶「だから最近は気をつけてるだろ、ちゃんと」
菖「もう晶には接客業はさせらんないよ」モグモグ
晶「前から言ってるけど、別に三人同じバイトする必要ねぇじゃん」モグモグ
菖「だって晶一人働かせてる方が心配だもん」
晶「お前は保護者かっての」パクパク
紬「でも皆で一緒の方が楽しいよね」
菖「楽しいよ~」
晶「そうでもねぇぞ」
菖「又そんな事言って!」ズビシッ
晶「ぐっ!?……だから食事中は手ぇ出すなって朝から何べんも言ってんだろ!」ギリギリ
菖「Oh!アイアンクロー!?あ痛たたたたた!」ギリギリ
紬「まぁ……」ポー
菖「痛い痛い痛い!ってムギちゃんどうしたのいたたたた!」ギリギリ
晶「あ?どした、ぼーっとして」ギリギリ
紬「え?あぁ、いえ、ちょっと見惚れてただけで」
晶「はぁ?」パッ
紬「愛の形は人それぞれよね」ウンウン
晶「止めて気持ち悪い」ゾゾゾ
菖「ムギちゃんってやっぱり面白いよね」
晶「何か違くないか?」
菖「まぁほらほら。ムギちゃんも早く食べないとパスタ延びちゃうよ」
紬「あ、うん」チュルチュル
* * *
帰り道!
菖「あ~!お腹いっぱい!」ポンポン
紬「晶ちゃん、御馳走様」
晶「あいよ」
菖「あ、そうだ!」
晶「ん?どうした?」
菖「ちょっとコンビニ寄ってくから先帰ってて」
紬「だったら一緒に行くよ?」
菖「良いの良いの。大した用でも無いし」
晶「んじゃ先帰るか」
紬「う、うん」
菖「じゃ、又後で~」タタタタ
晶「気をつけろよ~」
紬「良いのかな?」
晶「良いの良いの。先帰っとこうぜ」
紬「うん」
晶「私もバイト探さないとなぁ~」テクテク
紬「皆で一緒にやろうよ」テクテク
晶「さっきも言ったけど友達同士でやっても良い事ばっかりじゃないぞ?」
紬「そう?楽しそうじゃない」
晶「バイトったって仕事なんだから、仲良しこよしを持ち込んで良い場所じゃないんだって」
紬「あ。そっかぁ……」ムー
晶「自分たちが楽しければ良いってのは、仕事する考えじゃねえんだよ」
紬「そうだよね……」
晶「それにお前とか澪ならまだしも、律と唯と一緒に働くのは気苦労が増えそうだ」
紬「りっちゃん達だってしっかりしてるわよ?」
晶「律はまぁ……知らないけど、唯は先ず一人で起きれる様になってからだろ」
紬「う~ん……かも」
晶「アハハ、否定してやれよ」
紬「え?あ……唯ちゃんだってやる時はやるんだから!」
晶「そうかい。期待してるよ」
紬「あ、信用してない~」ブー
晶「まぁお前程、アイツらと仲良くないからな」
紬「これから仲良くなろうよ。みんな良い子だから」
晶「気が向いたらな」
紬「皆でご飯食べに行ったりしたら楽しいだろうな~」
晶「ご飯と言えば、今日アレで満足だったか?」
紬「うん!凄く美味しかった!」
晶「大袈裟だなぁ。お嬢様なんだからもっと良い物食ってんじゃねぇの?」
紬「あ、それは偏見よ晶ちゃん。私だってファーストフードとか駄菓子とか好きだもん」
晶「そりゃまたえらく庶民的な」
紬「それに良い物だからって美味しいっていうのは違うでしょ?」
晶「まぁ……B級グルメなんてのも有るしな」
紬「B級?」
晶「細かくはわかんねぇけど、ただ単に『安くて美味い』料理の事だよ」
紬「へぇ~……そんなのが有るのね」
晶「……興味有るなら今度行ってみるか?」
紬「近くにお店有るの?」
晶「いや、分かんねぇけど調べりゃ有んだろ、見つけとくよ」
紬「ホント!?嬉しい!」ダキッ
晶「ちょっ!?抱きつくなって!」
紬「あぁ、ごめんなさい」
晶「唯もだけどさ、お前も何でそう軽々しく抱き付くかな」
紬「愛情表現よ。唯ちゃんのだって」
晶「迷惑だ。唯だってこっちの事お構いなしじゃねぇか、いつも」
紬「……私の事は」
晶「ん?」
紬「ううん、何でもない。じゃあお店探してくれるお礼に、その時は私が奢るね?」
晶「は?別にそんな大した事じゃねぇし良いよ」
紬「良いの。折角だもん」
晶「折角って……そういえば朝もそんな事言ってたな。初めてとか」
紬「うん。友達に奢ってもらったのって今日が初めて」
晶「今までは奢ってばっかりだったか?」
紬「もう!だからそんな子達じゃ無いって言ったじゃない」プンプン
晶「いや、アイツらじゃなくてだな。他のクラスメイトとか中学の時とか」
紬「小・中はお嬢様学校だったし、一緒に買い食いしたりする様な友達は居なかったの」
晶「あ~」
紬「高校のクラスの友達も、そんな風に私を見る人は居なかったわ」
晶「……良い奴らじゃねぇか」
紬「えぇ、良い子達ばっかりだった。でも」
晶「でも?」
紬「晶ちゃんが言った事も、関係有るんだと思う」
晶「私が言った事って」
紬「うん。皆私と損得勘定で付き合ってるんじゃ無いけど、だからこそそうゆう話を出さなかったんじゃないかなって」
晶「あ~、財布って話か。まぁそうゆう優しさってのも有るんだろうな」
紬「そう。私も憧れてたんだけど、私からそんな話持ち出すのも……ねぇ?」
晶「そりゃそうだ。相手がそう思ってくれてるなら尚更失礼だろ」
紬「だからこんな話するのも晶ちゃんが初めて」
晶「そりゃ光栄だ。……光栄か?」
紬「何となく、晶ちゃんならこういう話しても良いと思って」
晶「まぁ、かまわねぇけど」
紬「ありがとうね」
晶「お前が良いならそれで良いんじゃね?」
紬「またお前って……」ムー
晶「何だよその顔。でもまぁ」
紬「うん?」
晶「私からすりゃ奢るだの何だのより、それの方が断然羨ましいけどな」
紬「それって、このネックレス?」
晶「おう。お前は周りに恵まれてるって事だよ」
紬「あ、また~」ブー
晶「あん?だから何だよその顔さっきから」
紬「晶ちゃんずっと私の事」
唯「む~ぎちゃ~ん!」ダキッ
紬「きゃっ!?あ、唯ちゃんにりっちゃんも」
律「よっす」
唯「ただいまおかえり~」スリスリ
紬「唯ちゃんも、ただいまおかえり~」ナデナデ
唯「晶ちゃんも!」ガバッ
晶「抱きつくな!」ガシッ
律「珍しいコンビで帰ってきたな」
唯「そうだね~」グググ
晶「んな事ねぇって。あぁもう離れろ!」バッ
唯「んもう!晶ちゃんのいけずぅ」クネクネ
紬「あれ?澪ちゃんは?」
律「幸と色々お喋りするからって先に帰ってるみたい」
紬「そうなんだ」
律「ところで晶さん?」キリッ
晶「あ?」
律「ウチの紬ちゃんをワルの道に走らせるは止めていただきたいザマス!」クイッ
唯「そうザマス!こんな時間まで引っ張り回して!」クイッ
晶「こんな時間ってお前らも今帰りだろが。別に飯奢っただけだし」
律「ご飯!?二人で!?ランデブー!?どうゆう事ザマスか!?」
唯「奢り!?え、私の分は?」
晶「お前はどっちかっていうと私に奢れ。てか何だよそのキャラ」ハァ
律「あなた、ウチの紬ちゃんの何なんなん!?」グワッ
晶「え?最後なんて?」
唯「何なんなんなんなん!?」グワッ
晶「何なんだよお前ら」
紬「アハハ……」
晶「コイツの何って、友達に決まってんだろ?なぁムギ」
紬「うん。……え?」
晶「え?って、違った?」
紬「ううん、違わないけど、私の事をなんて?」
晶「は?ムギはムギだろ?それとも琴吹って呼んだ方が良いか?」
紬「いえ!全然!喜んで!」
晶「そっか。ほれ、門限近いんだしさっさと帰るぞ」パンパン
唯「は~い」
律「よ~し、みんな!寮まで競争だ!」ダッ
唯「あ!待ってよりっちゃ~ん!」ダッ
紬「きゃ~……ってアレ?晶ちゃん行かないの?」
晶「ガキの遊びに付き合う気はねぇよ」
紬「じゃあ私も晶ちゃんと一緒に帰ろ」
晶「歩いても間に合うだろうしな」
紬「これからもよろしくね?晶ちゃん」
晶「ん?おぉ、よろしくな」
紬「もう……そこは『よろしくな、ムギ』でしょ?」
晶「は?そこ気にする所か?」
紬「だって晶ちゃんさっきまでずっと私の事『お前』呼ばわりだったんだもん。もっと呼んでほしい」ムー
晶「呼んでほしいって……別に良いじゃねぇか」ヤレヤレ
紬「ちょっと寂しかった~」ブー
晶「お前しかいないからお前って呼んでる訳だし」
紬「でもぉ」
晶「他人の呼び方なんざTPOだっつうの。必要が有れば名前で呼ぶさ」
紬「……本当?」ウルウル
晶「どれだけ寂しがってんだよお前は」
紬「あ、また」
晶「はぁ……これが私なんだから仕方ないだろ?」
紬「……」シュン
晶「……あぁもう!分かったよ善処するよ。ほら、帰るぞムギ!」テクテク
紬「約束ね?」テクテク
晶「はいはい」テクテク
紬「生返事しない!」ビシッ
晶「痛ぇ!?……ちったぁ力加減しろ!バカムギ!」ゴツン
紬「あ痛~!……エヘヘ」ヒリヒリ
晶「……何でそんな嬉しそうなんだよ」
紬「晶ちゃんがスキンシップ取ってくれたのが嬉しくて……」
晶「はぁ?ほんと、つくづくお嬢様らしくねぇな」
紬「それほどでも~」テレテレ
晶「褒めてねぇ。ほれ、さっさと帰るぞ?ムギ」
紬「うん!」
END
以上、8月号を読んで思いついた話を垂れ流させていただきました。
お目通し戴き、ありがとうございます。
最終更新:2011年07月27日 01:42