澪「ここが…ムギの理想郷なんだよ……」

澪「そっとしておこう……」

律「くっ……」

梓「やるせないです……」

唯「ねぇ!!さっき……ムギちゃんが言ってたこと……」

唯「あの頭に埋め込んであった機械は何!?」

律「…………」

梓「…………」

澪「唯……落ち着け」

唯「ねえ!どういうこと!!!」


―――どういうことなの!!!―――


……
………

唯「もうあたし……何がなんだか……」

澪「律……話してないのか?」

律「………あぁ」

梓「…………」

澪「唯……よく聞いてくれよ」

澪「律、お前小さい頃の記憶は?」

律「いーや……」

唯「!!」

梓「わ、私はありますよ!!」

澪「そうか、じゃあどこで生まれたのかも言えるな」

澪「もう隠さなくていいんじゃないのか?」

梓「!!」

梓「センター……です」

律「なにぃ!?梓もなのか!?」

梓「私も……小さい頃何をしてたのか……」

唯「あずにゃん!?」

澪「最初に梓と会った時は私もまさかとは思った……」

澪「私達は全員センターで生まれたんだ」

梓「………」

澪「唯…記憶はどこまで戻った?」

唯「えっと……」

澪「思い出せる限界があっただろ?」

唯「カ、カプセルにいた自分しか……」

澪「……それが最初だからだ」

唯「え!?」

澪「私も目が覚めたらカプセルの前に立っていた……
  それ以前の記憶が無い」

澪「私が目覚めた時にはすでに唯と梓はいなかった」

澪「そして……ムギの頭に埋め込まれていたものだが」

澪はおもむろに長い髪を書き上げうなじあたりの皮膚をつまむ

唯「み、澪ちゃん?何を……」

ベリッ

澪「私にもある」

唯「ーーー!!」

澪の後頭部には先ほど唯が見た

USBポートが埋め込まれていた

澪「これはどうやら人工皮膚らしい」ピラピラ

唯「な……な……」

律「唯……ゴメンな、今まで言わなくて」ベリッ

梓「私もなるべく考えないようにはしてたんですけど……」ベリッ

唯「みんな……!!」

澪「唯、お前自分の後頭部……気にしたことあったか?」

律「お、おい…澪……」

梓「………」

唯「な、無いけど」

澪「失礼……」

唯(うそ……)

澪は唯の髪を持ち上げ……

―――ベリッ―――

澪「……これは思い出せなかったか…」

唯「!!」

唯「い、いや………」

唯「いやああああああぁぁぁ!!」

……
………

澪「私達はみんなセンターで生まれた……もちろん和もだ
  何の意図があってか知らないが
  私達は誰かに選定されたんだ……
  研究室に集められ、機械を埋め込まれた……」

澪「そして記憶を消された……」

律「………」

澪「確かじゃないが…そうとしか考えられない」

唯「そんな……」

澪「もうセンターが信用できない以上……
  私達の記憶を辿る術はない」

唯「……いいんじゃないかな…別に」

澪「唯?」

唯「記憶が無くたって…あたしは
  ヴァルハラでギターの練習して…
  岡本さんが作ってくれたご飯食べて……」

唯「楽しかった……自分が誰なのかわかんなくても楽しかった」

唯「でも、自分の名前を思い出してから何かしなくちゃって
  ずっと思ってた……」

唯「それがちょっとわかった気がするんだ……」

……お前が誰だろうが…お前は俺の中でたまきだ……

……またそのマヌケなツラを見せに来い…いいな……

唯「あたしが誰だろうと……あたしはあたし
  私達に未来ががあるなら……
  明日に希望を持てるような世の中にしたいの」

唯「あたしはヴァルハラを……みんなを救いたい!」

律「そうだ……あたし達には今しなくちゃいけないことがある」

澪「そうだったな……私も、みんなが安心して暮らせるような
  理想のミレニアムを築きたい……」

梓「過去がどうであれみなさんはみなさんですよ!」

澪「行こう……ミレニアムのみんなを救うんだ」

……
………

シュンッ…

ルイ・サイファー「戻ってきたようだな」

唯「!!」

ルイ・サイファー「もうあまり時間がない……
          ヴァルハラが危ないぞ」

唯「え!?」

ルイ・サイファー「アバドンに飲み込まれたものは
          時間が経つと無に帰る」

ルイ・サイファー「ヴァルハラに会わなければならない
          人物がいるはずだ」

律「目加田……そうだ!澪!!目加田博士なら
  真実を知ってるはずだ!!」

澪「目加田博士がヴァルハラにいるのか!?
  でも…ファクトリーも解放しないと……」

律「このままじゃヴァルハラが消えちまう!」

唯「ど、どうしたら……」

ルイ・サイファー「……君達に直接手を貸すのは
          私のポリシーに反するが
          しょうがない……
          この空間の歪を利用してアバドンの
          体内に転送してやろう」

澪「な!?」

ルイ・サイファー「信じるも信じないも君達の自由だがね」

唯「……ごめん、ぺテルセンさん……
  セイレーンさんに会うの、ちょっと後になってもいいかな?」

―――いいですよ、私はここで待っています―――

澪(ルイサイファ―……一体何者なんだ…)

ルイ・サイファー「……よし…さぁ、行きたまえ」

唯「みんな、いいかな!?」

律「ああ、いいぜ!」

梓「ファクトリーのみなさんには申し訳ないけど」

澪「アバドンが先決か……」

唯「ありがとう、ルイ・サイファー」

ルイ・サイファー「礼には及ばん……」

シュンッ…


ルイ・サイファー「お前には力を取り戻してもらわないと
          困るのでな……」



―――アバドン体内

梓「うっ……ひどい匂い!」

唯「ここが……アバドンの体内?」

体内に声が響く

……誰だ……わざわざここまで来るとは……
……御苦労だがわしの身体は……
……ここにあってここに無い……
……言わば異次元にあって実体は無いのだ……
……従ってわしを倒すのは無理な事
……おとなしくわしに吸収されるがよい
……ワッハッハッハッハッハ…………

律「ここにあってここにない?
  こんな時になぞなぞかよっ!」

澪「………」

ポタッ

シュウウゥ……

澪「う!?みんな!天井から落ちる液に気を付けろ!!」

澪「強烈な酸だ!!」

律「おい……冗談きついぜ……」

……
………

澪「おい!ここに誰かいるぞ!!」

律「なんだって!?」

唯「……マダム…」

マダム「……誰?誰かいるの?
    アルフレッド?……あ、あなたは……
    唯……
    あなたもアバドンに飲み込まれたの?」

マダムの体は半分以上が

肉の壁に吸収されつつあった

マダム「ヴァルハラの支配者
    マダム様もこうなってはおしまいですわね
    ……私はセンターから任されたエリアを
    自由な場所にして沢山の人を集めた
    ヴァルハラが栄えるのを…センターが
    黙って見逃していたのは千年王国の
    人間を選ぶのに利用するため……」

澪「………」

マダム「所詮私はセンターの雇われマダムだった……
     用が無くなったらこのザマよ
     ……私一人の命ですむなら
     ヴァルハラの人たちは助けて……
     あげた…かった……」

マダム「」

律「マダム……」

唯「ヴァルハラは必ず救い出すよ!マダム……!」


―――ヴァルハラ スラム街

ガイア教徒「センターはヴァルハラを見捨てた!
       メシア教におどらされていた者も
       これで目を覚ますだろう…
       だがもう遅いのだ…ハハハハハ」ズブズブ…

唯「確か……こっちだったハズ」

唯「……この部屋だ!!」

プシューッ

目加田「おお……唯達か……
     アバドンの腹の中まで来たのか」

澪「目加田…博士……」

梓「体が…壁に飲み込まれてく!」

律「おい!しっかりしろ!!」

目加田「まさかセンター、いや元老院が
     アバドンにヴァルハラを
     飲み込ませるとは……」

唯「元老院?」

目加田「聞け……
     元老院は君と私を会わせたくなかった
     だが私がヴァルハラに隠れているのは 
     わかっても見つけられなかった
     またヴァルハラはもうセンターにとって
     利用する必要が無くなっていたのだ
     そこで魔王アバドンにヴァルハラを
     飲み込ませた……」

目加田「もう時間が無い……君達に真実を話そう」

唯「………」

唯「………」

目加田「唯……目覚めた時…君は私に
     平沢 唯と名乗ったな」

目加田「その昔……トウキョウに悪魔を自在に操り
     戦った[デビルバスター]という五人の少女達が
     いたそうだ」

唯「デビル……バスター?」

目加田「その輝かしい戦闘能力に目を付けたある人物が
     全員のDNAを採取することに成功した……」

……
………

「ユイ・ヒラサワのDNAは?」

「はい、ここに」

「よし……これで全員分採取した……」

「ふふふふふ……」

「近い将来……この者たちのデータが
必ず役に立つ時が来る……」

「め、目加田博士……?」

……
………

目加田「その人物とは……のちにセンターの前身カテドラル
     の科学者となった……私の曽祖父だ」

律「な……」

目加田「水面下ながら脈々と研究は引き継がれてきたのだよ
     来るべき時のために……」

目加田「唯、澪、律、梓、紬」

目加田「君達がそのデビルバスター…
     センターが造り上げたクローンだ」

唯「う……そ……」

律「うそだあああああ!!」

梓「そんな……そんなことって……」

澪「…………」

目加田「かつての大破壊後、世界は荒れ果てた……
     メシア教団は人々を救うため
     自らの手で千年王国を造ろうとした
     それが”TOKYOミレニアム”だ
     そして救世主の出現を待ったのだが
     彼らが待ち望んだ救世主は
     ……ついに 現れなかった」

目加田「センター元老院は自らの手で
     自らが望む救世主を造り上げようとした
     それが、百数年前実在したデビルバスター
     平沢 唯……君なのだ」

目加田「同時に君を巡る四人が
     クローン技術で造り出された……」

目加田「もっとも……真鍋 和は私達が一から作った
     人造人間だったがね……」

唯「和ちゃんが……人造人間!?」

目加田「和は唯を守るため
     律はパートナー
     紬は千年王国のテストを行う
     仮想世界のメシア
     梓は救世主のライバル
     そして澪は唯の見張り役……」

目加田「君達はクローンとして再び蘇ったのだよ……
     このTOKYOミレニアムに」

目加田「私もセンターの命令に
     何の疑いもなく従っていたが…
     勝手すぎるプロジェクトに
     どうしても我慢できなかった……」

目加田「それで私は花田と協力して君達の記憶を消し
     センターに爆破騒ぎを起こして脱出したのだ」

目加田「これを……」

唯「何?これ……」

目加田「データが壊れてしまい他の者の分は抽出できなかったが
     ……オリジナルの平沢 唯のデータディスクだ……」

目加田「センターの研究室に行けば……君が読み込めば……
     だが…精神が崩壊する危険性も……」

澪「何だって!?よく聞こえないぞ!?」

律「しっかりしろ!!」

目加田「魔王アバドン……に飲み込まれた
     物は間もなく消え去る
     私もどうやら最期だ……」

唯「え……じゃあヴァルハラは!?岡本さんは!?
  他のみんなは!?」

目加田「君達は……早く逃げるんだ……
     ”MAGプレッサー”をやろう
     これで……アバドンを実体化できる
     奴を倒して脱出するんだ……」ズブ…ズブ…

唯「待って……待って……!」

目加田「さらば……我が最高の作品達……」ズブブブ


―――プロトタイプ・1よ……!―――


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最終更新:2011年07月31日 00:53