ガチャッ

唯「ただいまー!!」

憂(ん……)

唯「憂! ただいまっ」

憂(おかえり……お姉ちゃん)

唯「憂! 明日一緒に花火見に行こう!」

憂(え?)

唯「花火! キレイなんだよ~!
  この目で見た事ないけど……」

唯「お願い……私を花火に連れてって!
  憂が私のかわりに花火見てよ!」

憂(お姉ちゃん……?)

唯「ありがとね……憂…ずっとあたしの目になってくれて」

憂(そんな……私こそ……
   お姉ちゃんに何回ありがとう言っても足りないよ)

憂(ちゃんと喋れたら今すぐだってお姉ちゃんに……)

唯「きっとキレイな花火見たら元気も出るよ!」

憂(うん……うん!!)

その日、私は夢を見た

夢の中で私はお姉ちゃんと二人で浴衣を着て

手を繋ぎ花火大会に出かけていた

唯「早く! 早く!始まっちゃうよ~」

憂「お姉ちゃんそんなに走ったら危ないよ~」

私達は河川敷へと急ぎ

人気の少ない場所を選び腰を下ろす

唯「楽しみだねぇ~!」

憂「うん!」

ヒュルルルルル

ドーン

お姉ちゃんの横顔が花火に照らされる……

憂「お姉ちゃん……可愛い……」

唯「えへへっ憂も可愛いよ!」

憂「そんな………え!?」

憂「お姉ちゃん………目が……」

唯「見える……憂の顔が見えるよ!」

唯「私そっくりだねっ!」

唯「花火ってこんなにキレイなんだねぇ~
  知らなかったぁ……」

憂「お…おね……ちゃん」

憂「うわああああああああん!!」

憂「お姉ちゃん……私達……
  ずっと一緒だよね?」

憂「お姉ちゃんとずっと一緒にいたいよおおおお」

憂「なんで……なんで……私だけ……ひっく……」

唯「憂……」

唯「ずっと一緒だよっ!」

唯「だって……憂は私の……」

―――憂!! 憂!!―――

憂(あれ……夢……か……)

唯「おはよう憂! 起きれる?」

憂(うん……よいしょっと)ムクッ

憂(今日は今までで一番ダルいかも……)


……
………

唯「ごちそーさま!」

憂(…………)

ピンポーン

梓「唯せんぱーい!」

唯「あっ! あずにゃんだ!」

唯「憂……夕方までゆっくり休んでてね!」

憂(うん!楽しみに待ってる……)

唯「行ってきまーす!」

バタム

憂(なんか……苦しい……)

憂(ダメダメ!! 今日はお姉ちゃんと花火見に行くんだ!)

憂(お姉ちゃん……早く帰ってきて……)


――放課後 音楽室

律「じゃあ夕方五時に駅前集合な!」

紬「楽しみだわ~!」

澪「み、みんなは浴衣着るのか?」

律「着ねーよ?」

澪「そんなぁ!」ガーン

ガチャッ

梓「あっ皆さん早いですね!」

唯「やっほー!」

律「唯のクラスに迎えに行くのはすっかり梓の役割に
  なっちゃったな!」

唯「えへへ……いつもいつもスマンねぇあずにゃんや」

梓「何おばあちゃんみたいなこと言ってるんですか!」

澪「今日は花火大会もあるしちょっと早めに切り上げようか」

律「おっしゃぁ!」


……
………

澪「じゃ、お疲れー!」

律「また後でなー!!」

唯「そっか……みんな花火大会行くんだよね」

唯「あずにゃんも行くんだよね?」

梓「あ、私なら気にしないでください!
  ホントは唯先輩と行きたかったけど……
  あっいやいや……
  唯先輩を送ってからでも十分間に合うんで!」

唯「いいよあずにゃん! 一人でも帰れるから大丈夫!」

梓「少しでも唯先輩と一緒にいたいんです!!」

唯「あ、あずにゃん……」

梓「はっ!! ごご、ゴメンなさい! 私何を言って……」


……
………

梓「じゃあ、わたしはここで……」

唯「うん! ありがとうあずにゃん!」

梓「あの! 唯先輩!」

唯「へ?」

梓「ホントに今日……花火大会行かないんですか?」

唯「う、うん……おうちで音だけ聞くことにするよ」

梓「そうですか……憂の調子はどうですか?」

唯「良かったり悪かったり……かな
  最近は眠ってばっかりだよ……」

梓「そっか……もし憂が……」

唯「え?」

梓「あっいえ!……なんでもないです!!
  じゃあ、失礼します」


バタム

唯「ただいまー!!」

憂(お姉ちゃんおかえり!!)

唯「あれ? 元気そうだね憂~!!」

憂(うん!! 花火が楽しみで楽しみで!!)

憂(お姉ちゃんに感づかれないようにしないと……)ヨロッ

唯「今準備してくるね!!」

正直立っているのがやっとだった

でも私は昨日見た夢が忘れられない

花火の明かりが照らす中、お姉ちゃんと交わした言葉

もしかしたら今日、奇跡が起こるのかもしれない……

そんなあり得もしない淡い期待が私の体を動かしていた

唯「お待たせー!」

憂(早く行こうよお姉ちゃん!!)

唯「ととと……待ってよ憂~」


……
………

ドンッ

唯「わわ……ごめんなさい!」

唯「人の声がいっぱい聞こえる……」

憂(お姉ちゃん! こっちこっち!)

唯「ちょ……憂! どこへ……」

私は夢で見た河川敷へと向かった……

憂(ここらへんなら大丈夫かな)

唯「ここ? ここに座るの?」

腰を下ろしたお姉ちゃんに寄り添うように私も座る

ヒュルルルルル

ドーン

唯「わあっ!!」

唯「すごい音だねぇ~憂~!!」

唯「ねね、花火キレイ!?」

花火は夢で見たそれよりも

ずっとずっとキレイで……

花火に照らされたお姉ちゃんは

やっぱり可愛かった

今なら言えそうな気がする……

憂「ア………」

憂「オ……オ……」

唯「憂? どうかした?」

やっぱり奇跡は起きないか……

そうだよね……

でも、大好きなお姉ちゃんと一緒にいれる

今はそれだけで幸せ

それだけで……

憂(だめ……もう……体が……)ドサッ

唯「憂!? 憂!!」

ヒュルルルルル

ド―――――ン

唯「憂ーーーー!!」

唯「誰か!! 誰か助けてぇ!!」

梓(あれ? あそこにいるのは……)

梓「唯先輩!!!」ダッ

律「おい! 梓!!どーした!?」


――平沢家

唯「憂……憂~……」グスッ

憂「」ハァハァ

梓「びっくりしましたよ……まさか唯先輩がいるなんて……」

唯「ゴメンねあずにゃん……花火見たら
  憂も元気になってくれるかなって……」

梓「いいんです……今はそれより……」

憂「」ハァハァ

梓「苦しそう……」

唯「憂お願い……あたしを置いていかないで……」

梓「今日、唯先輩のお家に泊まってもいいですか?」

梓「家事は私がやりますから
  唯先輩は憂のそばにいてあげてください」

唯「うん……ありがとうあずにゃん」

唯「憂……」


……
………

チュン… チュン…

―――お姉ちゃん!―――

チュッ……

唯「あ……私いつの間に寝ちゃったんだろ」

憂「おはようお姉ちゃん!」

唯「憂おは……!?」

唯「憂が喋ってる!?」

憂「お姉ちゃん……今まで私を世話してくれてありがとう」

憂「お風呂に入れてくれて……一緒の布団で寝て……」

憂「私……お姉ちゃんと一緒にいれて幸せだった……」

憂「いっぱいいっぱい愛してくれて……ありがとう!!」

唯「憂? やだ……いっちゃやだ……」

唯「私のそばにいてよ!!」

バンッ

梓「唯先輩!?」


―――ワン!! ワンワン!! ワン!!!―――


梓「憂!!」

パタッ

憂は起き上がり最後の力を振り絞ったかのような

大きな声で吠えると

その場に倒れ静かに息を引き取った

唯「あ、ああ………」

唯「うわあああああああああああああああん!!!!」

唯「やだあああああ死んじゃやだああああああ!!!」

梓「う……うっうっ……」


お姉ちゃん……泣かないで……

私、お姉ちゃんより先にいっちゃうけど

ずっとずっと見守ってるよ……

梓ちゃん……お姉ちゃんをお願いね!


……もし生まれ変わったら

今度こそお姉ちゃんの妹に……なりたいな……

さようなら……お姉ちゃん……

大好きだよ!!


おわり



最終更新:2011年08月03日 18:01