サキ「いいですよね、アデク様?」

アデク「……。お前の言う通り、隠すことではない…のかもしれないな」

サキ「フフ、では…。
まず、お前たちは疑問に思わなかったか? 私のアデク様の呼び方について…」

唯「様って…」

サキ「フンフフフ。そう、敬意を払っている。
なぜか? それはだな…まあ簡単に言えば、上下関係にあったからだ」

ハチク「上下関係?」

律「って…」

サキ「まあ私はアデク様の部下で、アデク様は私の上司だったということだ」

ハチク「部下…、上司…?」

サキ「フンフフフ、つまり……。
アデク様はプラズマ団だったのだ。それも、七賢人の一人だった」

唯律ハチク「!!!」

唯「ア、アデクさんがプラズマ団で七賢人…!?」

律「嘘だろ…?」

ハチク「…!!」

アデク「……」

サキ「フンフフフ、まあ十年前に裏切ったのだがな」

律「! 十年前…!?」

律(“ホワイトフォレスト”のあの事件…! アデクさんがプラズマ団の思惑を知っていたのは七賢人だったからだったのか!!)

唯「そっか…プラズマ団を裏切った四人って、フジさん、通りすがりのトレーナーさん、アオギリっていう人、そして…アデクさんだったんだ!!」

サキ「裏切った後、まさかこうしてチャンピオンになるとは思いもしませんでしたがね」

アデク「……」

サキ「フンフフフ…、そうだ」チラッ

ダンゴロ「ゴロ~♪」テクテク

サキ「ペルシアン!」

ペルシアン「ニャー!!」タッ

シュタッ!

ダンゴロ「?」

ペルシアン「フシャー!!」

ダンゴロ「ゴロー!?」

アデク「! なにをする気だ!?」

サキ「なにをする気か? もちろん、襲っているのですが」

アデク「やめろ! そのダンゴロがなにをした!!」

サキ「フンフフフ、なにを熱くなっているのですか?
プラズマ団成立直後は資金集めのために、野生ポケモンを売買したり…そのためにたくさんの野生ポケモンを襲ったじゃないですか。そして散々に痛め付け、捕獲した。
もちろん、アデク様もそれに貢献していましたよね?」

アデク「ぬ…!」

サキ「フンフフフ、あなたはプラズマ団に所属していた。
裏切ろうと、その事実は変わらないのです」

サキ「あなたも、我々と同類なのですよ」

アデク「……ッ」

ハチク「……けるなッ」

サキ「うん?」

ハチク「ふざけるなァッ!! アデクさんと貴様たちを一緒にするなッ!!!
それ以上アデクさんを愚弄するなァッッ!!!!」

アデク「…!」

サキ「フンフフフ…。
吠えても、なにも変わらんぞ?」

ハチク「バニリッチィ!!」

バニリッチ「リニー!!」

サキ「ジュペッタ、“シャドーボール”!!」

ジュペッタ「ジペーッ!!」ビュオッ!

バニリッチ「…!」

ハチク「しまっ…」

唯「ラー太! “シャドーボール”!!」

ラー太「ラー!!」ドギュン!

パアアン!!!!

サキ「相殺したか…!」

ハチク「…!」

唯「アデクさんは悪い人じゃないよ!」

アデク「!」

唯「プラズマ団を裏切ったのだって、自分が悪いと反省したからだよ!!」

サキ「フンフフフ…。
反省…か。ただ逃げ出したんじゃなくてか?」

アデク「……。ふっ、そうだ…ワシは……恐くなったのだ。自分のしていたことが……」

唯「アデクさん…」

アデク「そしてようやく分かったのだ。自分のしていたことが悪いことだと。そしてプラズマ団を放っておいてはいけないと!!」

サキ「……。フンフフフ…、まあ野生ポケモンを捕獲していたのは昔の話だ」

ペルシアン「ニャー」スッ…

ダンゴロ「ゴロ…」

サキ「…今は違う目的がある。
我らが王、N様が今“リュウラセンのとう”に向かっている」

唯「Nくんが…」

サキ「そしてシルバー様は“こだいのしろ”へ…」

律「……」

サキ「お二人とも、伝説のドラゴンポケモンを求めて…。
まあお前たちがどうしようと自由だ」

サキ「伝えることは伝えた…。ではさらばだ。
…行くぞ」

タッ!

ミツル「…」タッ!

澪「……」

律「……」

澪「…」タッ!

ハチク「……。
行ったか、しかし…“リュウラセンのとう”に向かっているとは…?」

唯律「……」

アデク「……」

ハチク「…とりあえずここを抜けましょう。アデクさ…」

アデク「…すまん、ワシは行くところがある」ザッ…

ハチク「アデクさん…」

アデク「…」タッ!

ハチク「……」クルッ

ハチク「それぞれなにか思うことがあるだろうが…今は“セッカシティ”に向かおう」

律「……」

唯「…はい」




Episode.32 fin



Episode.33




《セッカシティ》


ハチク「ここが“セッカシティ”だ」

唯律「……」

ハチク「そうだな…。私は一度ジムに戻る。君たちは“リュウラセンのとう”の様子を見てきてくれ。入りはしなくていい。
そのあとに私のところへ来てくれ」

唯「はい」

律「…わかりました」

ハチク「…」ザッザッ

律「…ふ~、んじゃあ行くか」

唯「う、うん」

「お、唯と律じゃないか!」

唯律「へ?」

アララギパパ「私だ、アララギだ!」

唯「アララギ博士!」

律「なんでここに…」

アララギパパ「実はな、“リュウラセンのとう”にプラズマ団が出入りしているという情報が入ってだな。それを確かめに来たところなんだ」

唯律「!」

アララギパパ「しかし、君たちに会うとはな! 少し手伝ってくれないか?」

唯「アララギ博士…」

アララギパパ「む?」

律「その情報、本当ですよ」

アララギパパ「なに!」

唯「私たちもそんなようなことを聞いて“リュウラセンのとう”に向かってたんです!」

アララギパパ「ふむう、そうか…。
ならやはり調査するべきだな。一緒に来てくれるか?」

唯律「はい!」

………
……

《リュウラセンのとう前》


アララギパパ「ここが“リュウラセンのとう”だ」

唯「たか~い!」

律「ここにプラズマ団がいるのか」

アララギパパ「私は中を調べるが、君たちはどうする?」

唯「ハチクさんのところへ行かないと…」

律「…んじゃあ、私が行くよ。唯はアララギ博士と待っててくれ」

唯「うん! わかったよ、りっちゃん!」

律「唯をお願いします、アララギ博士」

アララギパパ「ん、ああ」

律「…」タタッ

アララギパパ「ふむう…」

唯「どうしたんですか?」

アララギパパ「いや…律はもっと元気な子のはずだったが」

唯「?」

………
……

《セッカジム》


ウィーン…

律「ハチクさーん、迎えにきましたけどー」

ハチク「ああ、君か」

律「ハチクさん!」

ハチク「む、もう一人の子は?」

律「ああ…、“リュウラセンのとう”で待っています。
じゃあ行きま…」

ハチク「…! 待つのだ」

律「!」

ハチク「……」

律「ど、どうかしました?」

ハチク「こちらに来なさい」

律「あ、はい…?」

スタスタ…

ハチク「ここだ」

律「競技場…って」

ハチク「ジム戦をしようじゃないか」

律「え!? いや…」

ハチク「あの子には悪いが、少し待っていてもらおう」

律「で、でも……」

ハチク「…“ポケモンリーグ”へ行くつもりなのだろう? それならば、私と戦うことは避けられん。
いずれは戦うのだ、今戦ってもよかろう」

律「……それじゃあ」

ハチク「よし、それでは準備をしなさい」

律「……」

律(まあ唯はアララギ博士といるから、少しくらい待たせても大丈夫だろ。
でも…)

律(サキの話が本当だとしたら…。アデクさんはどこへ行ったのか…アデクさんの気持ちを知りたい…!
それに、澪がゲーチスに操られているんなら、ゲーチスに会わないと!
シルバーも同じように操られているかもしれない!
シルバーは“こだいのしろ”っていうところにいるんだっけ…。そこに行けばゲーチスもいるかな?)

律(そうだ、そのためにも…!)

ハチク「……。形式は2対2の交替戦だ。
では始めるぞ!」

律(こんなバトル、すぐに終わらせてやる!!)

律「ボルト!」ボム!

ボルト「ゼブウウ!!」

ハチク「バニリッチ!」ボム!

バニリッチ「リニー!!」

律「…」ピッ

ポケモン図鑑『バニリッチ、ひょうせつポケモン
ちいさい こおりの つぶを…』パタンッ

ハチク「!」

律「へえ…、バニリッチか」

ハチク「……」

律「ボルト! “ニトロチャージ”!!」

ボルト「ゼブウウ!!!」ボワアアッ!!!!

律「こおりタイプには、ほのおタイプだ!! いけええ!!!」

ハチク「…バニリッチ、“あられ”だ!」

バニリッチ「リニー!!」ビュアアッ!

律「意味ないぜ!!」

ボルト「ゼブウウ!!!」ダッ!

ボオオオン!!!!!!!

ボルト「」スタッ

律「よし、これでまずは一体…」

ハチク「倒した…と言いたいのかな?」

律「…!」

バニリッチ「リニー!!」バッ

律「な、なんで…!」

ハチク「君は実力のあるトレーナーだと、アーティやカミツレから聞いていたのに…、拍子抜けだな」

律「なに…?」

ハチク「バニリッチが無事なのは“ニトロチャージ”を回避したからだが…、
では何故、バニリッチが“ニトロチャージ”を回避できたのか分かるか?」

律「…それ、は……」

ハチク「…バニリッチはな、『こおりの つぶを たくさん つくりだして じぶんの すがたを てきの めから かくすのだ』」

律「“あられ”をして姿をくらましたのか…!
いや、でもそれが分かっているのなら! もう騙されないぜ!!
ボルト!!」

ボルト「ゼブウウ!!」ダッ!

律「もう一度“ニトロチャージ”だ!!」

ハチク「“ふぶき”!!!」

バニリッチ「リニー!!」ビュオオオ!!!!!!!

ボルト「ゼブウウ!!?」

律「…ッ!
くそッ…、ボルト! もう一度…“ニトロチャージ”で…」

ハチク「解せんな」

律「…!!」

ハチク「何故そんなに勝負を急かすのだ。
考えもなしに特攻しても、今みたいに返り討ちにあうだけだぞ」

律「……」

ハチク「…先程の“ニトロチャージ”がかわされたのも…、
君はバニリッチを見た時、図鑑を開いた。だが君は急かして途中で閉じたな。図鑑はなにかを言おうとしていたのに、だ。
図鑑は『こおりの つぶを たくさん つくりだして じぶんの すがたを てきの めから かくすのだ。』と言おうとしたのだ」

律「…!」

ハチク「最後まで説明を聞いていれば、なにか対応はできていた。
…君の焦りがそうさせたのだ」

律「…ッ」

ハチク「生半可な気持ちで勝負などするな!!
『ちゃっちゃと済ませちまおう』なんてことを思うな!!!
相手にも、自分のポケモンにも失礼だ!!!!」

律「……だって…」

ハチク「……」

律「あんたに早く勝たなきゃ…バトルを早く終わらせなくちゃいけなかったんだ!!!
それで、“リュウラセンのとう”や“こだいのしろ”に行ってプラズマ団を!!
サキの言ってた、アデクさんのことも気になる!!
やらなくちゃいけないことがたくさんあるんだよ!!!!」

律「全部…、全部…早くやらなくちゃって…!」

ハチク「……そんなことを言う前にやるべきことがあるだろう!
君のその焦りが生んだ過ちはなんだ!?」

律「……!」

ボルト「ゼブ…」ヨロッ…

律「ボ、ボルト!」タタッ

ボルト「ゼブウ…」

律「ボルト…、ご…ごめんな……。私がしっかりしないせいで……」

ボルト「ゼブウウ…!」ニコッ

律「ボルト…」

ハチク「…君のゼブライカ、とてもいいポケモンだな。君を信頼してくれている…」

ハチク「ポケモンの期待に応えてやれなくていいのか?」

律「……ボルト、休んでてくれ。よくやってくれた、ごめんな…」シュウッ

律「…」キッ!

律「モール! 頼んだ!!」ボム!

モール「グリュー!!」

ハチク「戻れ、バニリッチ!」シュウウッ

ハチク「フリージオ!!」ボム!

フリージオ「フリー!」

ハチク「さあ来い! 君の本気をぶつけてこい!!」

律「…へへっ」


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最終更新:2011年08月06日 00:26