Episode.36




《8ばんどうろ》


ピチャピチャ!

唯「うわあ! 水たまりがいっぱい!」

アララギパパ「見ての通り、雨が降っているからな!
この湿原を進むのだ!」

ムー太「ムウウ♪」ピチャピチャ

唯「ムー太も楽しいんだねえ」

アララギパパ「ところで唯よ。
お前はみずポケモンを持っていなかったかな?」

唯「あ、はい」

唯(ブイ太ぁ…)グスッ

アララギパパ「…? この雨の中では戦いにくい。ましてや、ほのおタイプは本来の実力の半分も出せないのだ」

唯「ラー太は外にいるだけで頭の火が消えちゃいそう…」

アララギパパ「そう! だが心配はない。
私のダイケンキがいるからな!」

ダイケンキ「キィーッ!!」

唯「あなたには“リュウラセンのとう”でお世話になったね!
ありがとう、よしよし♪」ナデナデ

ダイケンキ「キイー」テレテレ

アララギパパ「……ふ」

アララギパパ「よし、それでは進むぞ!
まずはこの先にある“シリンダーブリッジ”に…」

ピチャッ!

アララギパパ「む!」

マッギョ「マギョー」プカッ

アララギパパ「こいつはマッギョ!
確か、娘の奴が生態情報を欲しがっていたな…」

唯「……アララギ博士?」

アララギパパ「いや、唯! 少し待ってくれ! すぐに技を確かめて…」

マッギョ「マギョー!!」バシャバシャ!

アララギパパ「ぬおお!! これは“マッドショット”だな!!
いいぞ、他には何が…!」

マッギョ「マギョー!」スタコラ

アララギパパ「あっ、待て!」


アララギパパ「……唯よ」

唯「は、はい」

アララギパパ「ちょいとだけ待っていてくれ!!」ダダッ!

唯「ああっ! アララギ博士ー!?」

唯「……」

ムー太「ムウウ…」ハア

唯「…」スタッ

ムー太「ムウウ?」

唯「ムー太…。私、わからないんだ…」

ムー太「?」

唯「Nくんが言ってた、ポケモン解放…。
Nくんはシルバーくん…大切な人のために、『ポケモン解放が当然の世界』を実現しようとしてる」

唯「もちろん、そんな世界は間違ってるよ。でも、Nくんは自分にとっての正義を貫こうとしてる……それをすべて否定することはよくないことだって思うの」

唯「私、わからないよ。どうしたらいいのか……。
ムー太たちと一緒にいたい…でも、Nくんにだって考えはあるんだよ。私の思いとは違う、考えがあるの」

唯「Nくんはポケモンは人にこき使われてるって言ってた。それで、ポケモンたちは可哀相って……」

唯「…ムー太は、私といれて幸せ?」

ムー太「…」

ムー太「ムウウ!!」ムカッ

唯「ム、ムー太…?」

ムー太「ムウウ!!」ドカッ!

唯「きゃ!?」

ムー太「ムウ! ムムウ、ムムムウ!!
ムウーッ!!!」

唯「ムー太……」

ピチャッ!

ムー太「ムウ!?」ビクッ

唯「え…、なに…?」

バッ!!

「ゲロゲーッ!!!」ガシイッ

唯「わっ…」

バシャアン!!!!!

ムー太「ム、ムウウ!?」

………
……

《セッカのしつげん》


唯「うう…いたた……」

唯「ここは…?
タウンマップタウンマップ…」

唯「…“セッカのしつげん”?」

「ゲロゲーッ!!」

唯「わあっ!? あ、あなたはさっきの…!」ピッ

ポケモン図鑑『ガマゲロゲ、しんどうポケモン
あたまの コブから しんけいを マヒさせる えきたいを とばす。 しんどうで あいてを くるしめる。』

唯「ガマゲロゲ…?」

ガマゲロゲ「ゲロゲーッ!!!」

唯「ひぃ! ごめんなさいごめんなさい!!」

ガマゲロゲ「…」

唯「? あ、あれ…? なにもない…」

ガマゲロゲ「ゲロゲーッ!」クイッ

唯「…?」



ユニラン「ラン…」

フシデ「フシィ…」

バチュル「チュルゥ…」

グッタリ……

唯「ど、どうしたの!? このポケモンたち、みんな弱ってる!!」

ガマゲロゲ「ゲロゲー…」

唯「そっか。それで私を?」

ガマゲロゲ「ゲロゲ」サッ

ピトッ

唯「? 木に手を当ててなにを…」

ジュワアッ……

唯「! 木が毒で!?」

唯「…あなたの特性“どくしゅ”?」

ガマゲロゲ「ゲロ」コクッ

唯「看病したくてもできなかったんだね…」

ガマゲロゲ「ゲロー…」シュン

唯「大丈夫だよ! 私がいるから!」

ガマゲロゲ「ゲロ…」

唯「えっと、まずは薬を…。
みんなも手伝って!」ボム!

チー太「チラチー!」

ラー太「ラー!」

唯「チー太、“うたう”!」

チー太「~♪」

ポケモンたち「…」スピー

唯「これで体力も回復しやすいかな?
うん、薬も使って回復させてあげよう! ラー太もお願いっ」

ラー太「ラー!」タタッ

唯「ガマゲロゲちゃんも!」

ガマゲロゲ「ゲロ?」

唯「ねむってるから、毒になることはないよ。それにチー太が“しんぴのまもり”をはってくれるから…」

唯「あなたも、この子たちが心配でしょ?」ニコッ

ガマゲロゲ「ゲロ…!」

唯「一緒に頑張ろ!」スッ

ガマゲロゲ「ゲロ?」

唯「握手だよっ。ほら!」

ガシッ

ガマゲロゲ「ゲロ…」オロオロ

ガマゲロゲ「…ゲロ?」ナントモナイ

唯「ね?」

ガマゲロゲ「ゲロォ…!!」パアアッ

………
……

唯「…ふうっ。これで大丈夫かな?」

ガマゲロゲ「ゲロー」ホッ…

唯「でもこのポケモンたち…。
ユニラン、フシデ、バチュル……この湿原には住んでないポケモンばっかり…」

ガマゲロゲ「ゲロー?」

唯「なにかおかしいよね…」

ピチャッ!

唯「うわっ!」

マッギョ「マギョー」プカッ

唯「この子…」

バシャバシャ!

アララギパパ「ここにいたか、マッギョ!」

唯「アララギ博士!」

アララギパパ「唯!? 待っていろと言ったのに…」

唯「これを見てください!」

アララギパパ「む? 野生のポケモンか…?
いや、しかし何故ここにフシデやらが…」

唯「やっぱりそうなんですか…」

アララギパパ「やっぱり、とは?」

唯「この子たち、トレーナーのポケモンなんじゃないかなって」

アララギパパ「なるほど…有り得るな」

ガマゲロゲ「ゲロー…」

唯「大丈夫だよ、ガマゲロゲちゃん!
私がトレーナーさんに返してくるから!」

ガマゲロゲ「ゲロー」コクッ

アララギパパ「うむ。私も協力しよう」

唯「あれ? マッギョは…」

アララギパパ「状況から察するに、こちらを最優先した方がよいだろう」

アララギパパ「そうだ…、君のムンナを見かけたが…」

ムー太「ムウウ!」ピョンピョン

唯「ムー太あ!」

ムー太「ムウウ…!」

ダキッ!

唯「よかったあ~」

ガマゲロゲ「ゲロ…」シュン

唯「あ、ガマゲロゲちゃんは悪くないよ!?
ガマゲロゲちゃんのおかげで、ポケモンたちを無事に返せて、トレーナーさんたちも喜ぶから!」

ガマゲロゲ「ゲロー」

アララギパパ「よし、まずは周辺のトレーナーを当たってみようか」

唯「はい! ガマゲロゲちゃん、ありがとうね!」

ガマゲロゲ「ゲロゲー!」

唯「……」


N『君、さっき言ったよね。ポケモンといると楽しい、って…』

N『でも、楽しいのは人間だけなんじゃないのかな』

N『ポケモン自身は、楽しくないのかもしれない…』


唯(トレーナーさんたちに会えたら、ポケモンたちは喜ぶのかな…?)


…………
………
……

《8ばんどうろ》


アララギパパ「むう…“シリンダーブリッジ”も近くなってきたな…」

唯「あなたのトレーナーさんはこの近く?」

フシデ「フシフシィ!」

トレーナー「フシデぇ! どこに行ったんだぁい!?」

フシデ「フシィ!」

唯「あの人?」

フシデ「フシフシィ!!」タタッ

トレーナー「フシデ!!」

フシデ「フシィ!」

トレーナー「よ、よかった…!」ギュッ

フシデ「フシィ…!」

アララギパパ「うむ、これで三匹とも返せたな!」

トレーナー「あ、あなたたちがフシデを?」

アララギパパ「ふむう…いや、君のフシデは傷ついていてな。回復をさせたのは、この子だよ」

唯「あ…」

トレーナー「ありがとう! 本当にありがとう…!」

唯「う、うん…」

フシデ「フシィ♪」

唯「……」

………
……

アララギパパ「さて、そろそろ“シリンダーブリッジ”へ向かうか」

唯「はい」

ムー太「ムウ」

唯「……」ボー

アララギパパ「……?」

アララギパパ(ふむう…)

アララギパパ「唯よ」

唯「はい?」

アララギパパ「私はちと“シリンダーブリッジ”を調べるように娘から言われとる。
準備には…えーと、とにかく時間がかかるわけだ。だから先に行っておるぞ!」タタッ

唯「ええ! アララギ博士!?」

ムー太「ムウ…」ポカン

唯「…気を遣わせちゃったのかな?」

ムー太「ムウ?」

唯「…ムー太。さっきの答え、出たよ。
ポケモン解放とか、やっぱり私には難しくてよく分からないよ。でも…、」

唯「湿原のガマゲロゲちゃんは人懐っこくて。
さっきのフシデや…ユニランにバチュルも、トレーナーさんと会えてとても嬉しそうだった。トレーナーさんたちも…」

唯「確かにポケモンたちはモンスターボールに閉じ込められてる……。
でもね、それでも人に反抗しないのはなんでなのかな? 世界中のポケモンたちが人と争わないのはなんで? ポケモンを扱うトレーナーって人たちが存在するのはなんで?」

唯「ポケモンたちは、やっぱり…人といれて楽しいんだよ。幸せなんだよ!」

ムー太「ムウ」グイッ

唯「? あ、そっか…。
前言撤回! 私は幸せ。ムー太も幸せ!」

ムー太「ムムウ♪」

唯「……教えてあげなきゃね。Nくんに…」

唯「ポケモンといる幸せを!
ポケモンたちの幸せを!!」

ボム!!

唯「…!」

チー太「チラチー!」

ラー太「ラー♪」

ムー太「ムウウ!」

唯「うん…! 行こう!!」


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最終更新:2011年08月07日 20:28