………
……

カパ「へえ…ポケモン博士をねえ」

梓「はい! サンヨウの研究所で!」

紬「私はその助手です♪」

カパ「いいわねえ…夢があって」

紬「夢…、カパさんはなんで音楽をやってるんですか?」

カパ「ううん…音楽やってたあなたたちなら分かると思うけど、楽しいからかな。五人で音楽やるのが」

カパ「それにね、音楽は音で人に思いを伝えられるものだから」

梓「確かに…楽しくなったり、悲しくなったり、曲に合わせて伝わる感情が色々ありますよね」

紬「カパさんが伝えたい思いって?」

カパ「強いて言うなら、“ジャイアントホール”のこと」

紬梓「!!」

カパ「っていう穴があるんだけどね」

梓「聞きました! イータさんのおばあさんに!」

紬「カゴメ昔話っ!」

カパ「あら、そうだったか。じゃあ大体話は分かってるわね」

梓「はい。ジャイアントホールに化け物が住んでいると」

カパ「そう、昔の人々は化け物を恐れて夜は外を出なくなった。今もそれが続いてる…。でも私はそれが気に入らないのよね」

紬「? なんでですか? 化け物とかは関係なくても、夜は危ないからいいことだと思いますけど」

カパ「うん、そうよね。子供たちにも、カゴメ昔話は夜遊びしないようにする、いい抑制になってるわ。
…でも、私は見たのよ」

紬「…見た?」

カパ「ジャイアントホールの化け物を!」

紬梓「!?」

梓「そ、それはどういう…」

カパ「いえ、あれは化け物じゃないわ。れっきとしたポケモンだった」

カパ「…私が小さい頃、ちょっとしたことからジャイアントホールに迷い込んじゃったことがあるの。
お母さんともはぐれてしまって…」

梓「! もしかして、カパさんはここの出身ですか?」

カパ「うん、そうよ。言ってなかったか。
…それでね、私が泣いていたら、突然冷たい風が吹いて……」

カパ「すぐに風が止んだと思ったら、私はカゴメタウンにいたの」

紬「不思議なこともあるのね~、一件落着♪」

梓「いや、明らかに自然の出来事じゃないでしょう…」

カパ「風が止む前ね、風と風の間にポケモンの姿が見えた…。確かに、そのポケモンが風を吹かせていたの」

カパ「そのポケモンのおかげで、今の私がいる…。
私はね、そのポケモンをジャイアントホールの化け物なんじゃないかって思っているわ」

梓「…化け物が、助けた?」

紬「でも、冷たい風を吹かせた…って、昔話の化け物と共通するところがあるわよね」

紬「本当はその化け物はいい化け物なのかも!」

カパ「…うん、私もそう思う。
だから、町のみんなの誤解を解きたいのよ。あれは化け物じゃないってね」

梓「なるほど…。じゃあそれを音楽で?」

カパ「今度、ジャイアントホールでライブをやるのよ。それを通して、町のみんなにメッセージを届けるつもり」

紬「ライブ、私たちも行きます!」

カパ「うん、ありがと! じゃあイータたちと打ち合わせしてくるから。また後でね」

タタッ

紬梓「……」

紬「ライブ楽しみね♪」

梓「はい!」

ニュー「…ライブは今日の夕方に始まる」

梓「! ニューさん!」

ニュー「…カパにとって、今回のライブにはとても深い意味がある。
絶対に成功をさせたいのだ」

紬梓「……」

ニュー「…俺もカゴメ出身でな。昔話の真偽は気になっている」

ニュー「…ふ、まあライブ ぜひ楽しみにしていてくれよ」

………
……

《ジャイアントホール》


ガチャッ、ガチャッ

イータ「よし、準備完了だな」

イータ「みんな! この日のために練習してきたんだ!
絶対に成功させよう!」

タウ「合点や!」

アルファ「オフコース!」

ニュー「…ああ」

カパ「ええ!」

イータ「んじゃあ、まだ時間もあるし。一回通してみるか」


タウ「ワン、ツー!」カッ

~♪

梓「…やっぱり、いい演奏ですね」

紬「これならカパさんの気持ち、みんなに届くわ♪」

♪ー……ギリイイ!!

皆「…!?」

タウ「な、なんや? 演奏も掻き消すデッカイ音が!」

ギリリイイ!!!!!!!

イータ「うわあっ! なんだ、この騒音は!?」

アイアント「キシャー!!」ギギギィ…

アルファ「てつアリポケモン、アイアント!?
このノイズは、コイツの“きんぞくおん”デスカー!?」

「ご明察! そして、そのアイアントはこの俺のポケモン!!」

アルファ「ユーは!?」

下っ端「プラズマ団下っ端だあ!!」

紬梓「プラズマ団…!!」

梓「なぜプラズマ団がここに!?」

下っ端「話に聞く、ここの化け物という奴を捕まえにきたのさ!」

カパ「…!」

下っ端「だからよぉ、ここで騒がれると邪魔なんだよな!!
アイアント!!!」

アイアント「キシャー!!」ダッ

梓「皆さん、下がっていてください!!」

紬「ここは私たちが引き受けます!!」

ボム!!

ミミちゃん(ミミロップ)「ミミロー!」

リン(レントラー)「リン!」

ガキイイッ!!!

アイアント「…!」

下っ端「チッ…」

梓「いつもいつもあなたたちは……それにこんな時にまで…!!」

下っ端「…こんな時だあ? どんな時だよ。……ん、なんだあ? ライブでもやるのかよ」

下っ端「……クク、なるほどなあ」

梓「…?」

下っ端「演奏できなくなれば、ライブなんてやる必要もなくなるよなァ!!!」

梓「…! まさか!?」

下っ端「アイアントォ!!!」

アイアント「キシャー!!」ダッ

カパ「…!?」

紬「カパさん…っ!!」

下っ端「“いあいぎり”!!!!」

アイアント「キシャー!!」シャキンッ

ニュー「カパ!!!」ダッ

ガバッ

カパ「きゃ…」

ザキイイッ!!!!!!!!

ドオオオ!!!!

パラパラ……

アイアント「キシャシャ」

下っ端「クク…、“いあいぎり”で周囲の木々を倒して、下敷きにしてやったが……死んだか?」

イータ「カパ!! ニュー!!」

ガサッ!

ニュー「…ぐうっ……」グタッ

イータ「ニュー!!」

カパ「ああっ……! ニュー…!!」

紬「カ、カパさん! 腕を怪我して…!!」

カパ「私は大丈夫…だけど、私を庇って…ニューが……」

ニュー「……ッ」

タウ「とりあえず止血せな!」

アルファ「タオルデス! これで…」

下っ端「クク…これじゃあライブ演奏も台無しだな?」

梓「…ッ!」ギリッ

梓「…あなたに、分かりますか…」

下っ端「…あ?」

梓「カパさんがどれだけ、このライブをすることを待ち望んでいたのか……。
ニューさん、イータさん、タウさん、アルファさんが…カパさんのために、どれだけ! 日々練習を重ねてきたのか!!」

梓「そうして、やっとこの日が来たのに、あなたに台無しにされて……。
同じ…、バンドを組んでいた人間として! 私にはその悔しさが…痛いほど分かります!!
五人の気持ちが!!」

梓「あなたは、許せません!!!」

下っ端「…クク。アイアント!!」

アイアント「キシャー!!!」

ミミちゃん「ミミロー!!」ダッ

梓「…はあああああ!!!」

梓「“きあいパンチ”!!!」

ドガッ…!!!

アイアント「…!?」

ゴッ……

ドオオオオオン!!!!!!!

アイアント「キシャー!?」

下っ端「…げっ!?」

ドゴッ!!!!!

下っ端「ギャー!」ヒュウウッ

キラアン☆


梓「……」

ミミちゃん「ミミロー…」

梓「…ミミちゃん、ありがとう。戻って」シュウウッ

ニュー「……ッ」グタ…

カパ「ニュー…」

イータ「さあ、カパも手当しなくちゃ…」

カパ「…う、うん」

タウ「…これじゃあ、今日のライブは……」

イータ「……」

アルファ「……」

カパ「だ、大丈夫よ! また今度やれば!」

タウ「カパ……」

紬「カパさん…」

梓「……駄目ですよ」

カパ「え…?」

紬「梓ちゃん?」

梓「駄目ですっ! 町の皆さんの誤解を…早く解きたいんでしょう!?
なら、ここでやめちゃ駄目ですよ!!」

カパ「……でも、この手じゃ…」

タウ「そうや…。ニューもこの体じゃ、ギターを持つこともままならん…」

梓「私が弾きます」

紬カパ「!!」

タウ「なんやて!?」

イータ「でも梓ちゃん…」

梓「大丈夫ですよ。軽音部をやってたって話、しましたよね?
私はちょうど…いや、そう言っていいかは分かりませんけど……ギターやってましたし!」

イータ「……」

紬「…あ、私はキーボードやってましたから…」

カパ「! …でも、あなたたちにそんな迷惑…」

梓「迷惑だなんて!」

ヨロッ…

イータ「! ニュー!」

ニュー「……」

イータ「大丈夫か? 起き上がって…」

ニュー「…お願いしようじゃないか。彼女らに」

イータ「!」

カパ「でも! ニュー!」

ニュー「…カパ、お前はいいのか? 人々に伝えたい思いがあるのだろう?」

カパ「……」

カパ「…梓ちゃん、紬ちゃん」

紬梓「はい」

カパ「お願いするわ。どうぞ、よろしく…!」

梓「任せてくださいっ」

紬「絶対に成功させます!
皆さんにカパさんの思い、届けてみせます!」


ジャラアン……

梓「まだ誰も来ませんね…」

タウ「やっぱし、もうすぐ夜になるし…この時間帯には誰も外に出んのやろか…」

ザワザワ……

イータ「! あれは…」


おじいさん「おお、寒い寒い…」

おにいさん「ここは暖かいな。ひとまずここで休むか。外は寒くて寒くて」

おとこのこ「なにが始まるのー?」

おばさん「ここジャイアントホールじゃないかしら? やだ、もう夕方……でも外はすごく寒いし……」


梓「? そんな急に冷え込むものなんですかね」

アルファ「さっきは全然、ユージュアルな気温でしたが」

紬「とにかく、お客さんが来たことだし。演奏しましょう!」

イータ「よし!」

タウ「ワン、ツー!」カッ

………
……

~♪

ジャラアン!

ワアアアアアアア!!!!!

パチパチパチパチ……

おじいさん「いい演奏じゃったのう」

おにいさん「たまには昼以外にも外出するのもいいかもね」

おとこのこ「楽しかったー!」

おばさん「ジャイアントホールも案外いいところねー」

おじいさん「化け物も出てこないしのう。夜もいいかもなあ」


ニュー「…町の人々の考えが少し変わったようだな」

カパ「本来伝えたいことより、ちょっとズレてるような気もするけどね」

ニュー「…これから少しずつ考えがもっと変わっていくさ。そのうち、化け物という空虚な妄想自体もなくなるだろう」

ニュー「変わらないなら、またライブをすればいいのさ」

カパ「そうね…」


イータ「いい演奏だったよ、二人とも! ありがとう!」

梓「いえ…急だったので、少し間違えちゃいましたし」

紬「私もね~…」

タウ「まあまあ、大盛況やったし、ええやないか」

アルファ「エクセレントデシタ~!」

梓「えへへ…」

紬「ふふ♪」

おばあさん「その通りじゃ! やったことに意味があるしのう!」

イータ「婆ちゃん!? きてたのか!」

おばあさん「まあな。それにしても、お嬢ちゃんたち、よくやってくれたわい」

おばあさん「これでこの町も変わる!
わしとしても万々歳じゃな!」

イータ「? 婆ちゃんがなんで喜んでるんだ?」

おばあさん「わしも昔、ちとな」

イータ「?」

おばあさん「ほっほ、なんでもないわ!」

梓「……」

紬「どうしたの、梓ちゃん」

梓「うーん…カパさんを助けたポケモンって、結局何でしたんでしょうか?」

紬「さあ…」

ヒュウウッ……

梓「ううっ、寒い…」

紬「今日は冷えるわね…」

梓「はい…、くしゅんっ」

ヒュウウウッ…………

…………
………
……

《翌朝》


イータ「もう行くのかい?」

梓「はい、急がないといけませんから」

タウ「残念やなあ」

アルファ「ベリーサッドデース…」

カパ「ありがとう、二人とも」

梓「はい!」

紬「皆さんの演奏きけてよかったです♪」

ニュー「…お前たちの演奏も中々だったぞ」

紬「ありがとうございます~♪」

カパ「今度はバンドの五人で来てね!」

梓「はい! また会えたら!!」

紬「さようなら~!」

カパ「ええ!」

………
……

《イッシュ地方のどこか》


ゲーチス「……アカギさん、マツブサさん。
もう準備は?」

マツブサ「万端だぜ」

アカギ「ああ、いつでも動ける」

ゲーチス「それでは、この装置に……」

アカギ「…『赤い鎖』」シュラッ

マツブサ「『紅色の珠』…」スッ

ゲーチス「『ルビー』、『サファイア』…!」バッ

カチャ カチャ カチャカチャ

ギュオオオ……

ゲーチス「四つの大きなエネルギーが動かすは、我らの城……!!」

ゲーチス「地より出でよ! プラズマ団の城!
ポケモンリーグを囲め!!」

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……………!!!!!!!!!!




Episode.39 fin



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最終更新:2011年08月07日 20:45