Episode.41
アデク「…」ザンッ
唯「アデクさんっ!」
律「来てくれたんですね!」
アデク「ああ、すまんな。ちと遅くなった」
アカギ「…ふん。森を襲撃され、仲間一人守れずに、挙げ句に戦場を立ち去った臆病者が何の用だ?」
律「……!」
アデク「どうとでも言え、わしは臆病者だ」
アデク「あの時、あの少女を止めて、わしが代わりに行けば…いや一緒に助けに行けば……いや、そもそもわしがプラズマ団にもっと早く対処していれば……コクランは死なずに済んだのだ!!」
アデク「わしは卑怯者だ!
あの後、バトル修業に明け暮れた。そしてチャンピオンになった。
わしがもっと早くに力を手に入れていれば…!!」
律「アデクさん…」
アデク「だが臆病者とでも卑怯者とでも……何と言われようとも!!
わしはおぬしたちを倒さねばならん!!」
アデク「力を手に入れるのが遅れたことに後悔したが、力を手に入れたことには後悔はしておらん!!
なぜなら、こうしておぬしたちを…この手で倒すことが出来るのだからな!!!」
マツブサ「……ッ」
アカギ「……」
律「アデクさ…」
アデク「おぬしたちは先へ進めえ!」
アデク「行って、Nとシルバーに教えてやれ! ポケモンといることで強くなれる人間がいること、ポケモンも人間と一緒に学び強くなれることを!!
ポケモンと人を切り離しても何も生まれん……、それを教えてやってくれい!!」
唯律「……」
唯「はいっ!」
律「もちろんです!!」
タタッ
アデク「ふん…本来ならわしが戦い、途方もない夢を語る五月蝿い小僧どもを黙らせるほどのポケモンとの絆を見せてやるはずだったがな……」
アデク「だが彼女らに任せようと思ったのだ。理由は分からん…。
子供にこれ程の重大な事を任せようとはな、わしも変わったものだな」
マツブサ「変わったァ? なにも変わってねえよ!
どうせ、あの時と同じように逃げ出すのさ!!」
アデク「…どうだかな」
マツブサ「決まってんだろうがよ!
俺たちの持っているあのポケモンたち……忘れてる訳ねえだろうよ!?」
アデク「……」
マツブサ「行けえ!!」
ボム! ボム! ボム!
コバルオン「こふおおおおーっ!」
ビリジオン「ききゅああああーっ!」
テラキオン「ぐるるおおーっ!」
アデク「……ふっ」
ボム! ボム! ボム!
ボルトロス「しゅるばばばーっ!!」
トルネロス「ばりゅるるるるーっ!!」
ランドロス「どろるるるるっ!!」
マツブサ「んなっ…」
アカギ「伝説のポケモン、だと…!?」
アデク「…わしも馬鹿ではないということだ」
…
律「…唯!」
唯「? なに、りっちゃん」
律「ここで戦ってるのは、私たちだけじゃないみたいだ。外を見てみろよ」
唯「…?」
唯「! あれは…」
律「アロエさんたちだ…下っ端の軍勢と戦ってる……」
唯「アデクさんも来てた…」
律「きっと、もっと多くの人たちが戦ってる……」
唯「…止めなきゃね」
律「ああ…」
ゲーチス「不可能ですよ」
律「! ゲーチス…」
ゲーチス「ご安心を。今度こそ本物ですよ」
律「……」
唯「Nくんとシルバーくんは…?」
ゲーチス「もうすぐで城の最上階……ですが、あなたたちを行かせるわけにはいきません」
ゲーチス「しかし邪魔者が多い…だから、ワタクシが直々にあなたたちの前に現れたのです」
律「へっ、都合がいいな。これで存分にお前をぶっ潰せるぜ」
ゲーチス「はて? 誰が、ワタクシが戦うと?」
律「は……?」
ゲーチス「あなたたちにとって一番のお相手を用意しました。
さあこちらですよ、…澪さん」
唯「…!」
律「澪…?」
ザッ…
澪「……」
唯「澪ちゃん!」
律「澪!」
澪「……」
律「な、んだ…?」
唯「澪ちゃん…?」
澪「……」
律「澪に…何をしやがった、てめぇ!!」
ゲーチス「ふふ…ワタクシの人心掌握術には欠陥がありましてね……」
ゲーチス「例えば、その方の心の闇を利用して操った時、その闇が深すぎた場合……最終的にはその方の心を砕いてしまうのです」
唯律「…!!」
ゲーチス「澪さんも、その闇を利用して操った一人……」
唯「じゃあ、澪ちゃんは……」
ゲーチス「心を持たない人形になってしまった、ということですね」
唯「……!」
ゲーチス「もう彼女には何もない。あるのは内に秘めた闇のみ…。
さあ、闇に従い…彼女たちを排除するのです!!」
澪「……」カチャ…
唯「澪、ちゃん…」
ボム!
コロぽん(ココロモリ)「ココロー!!」
バサッ!
ビュオオオオオオ!!!!!!!
唯「うう…!」
律「ぐ…ッ」
ゲーチス「いいですよ、闇に忠実にィ!!」
澪「……」
ビュオオオ!!!!!!
律「く、そ……」
律(澪…、どうして……)
(澪……!!)
澪「……“エアカッター”」
コロぽん「…」シュッ!
律「!」
コロぽん「ココロー!!」シャキンッ
唯「りっちゃ…!」
ブンッ!
ザキイイッ!!!!!!
……バタッ
律「…?」
唯「……うっ」
律「唯!?」
唯「りっちゃ…よかった……」
律「バカヤロ…! 私を庇って……」
唯「いたた…大丈夫だよ、軽い傷だし」
律「……っ」
澪「また、そうやって」
律「! な、に…?」
澪「なんで、唯ばっかり……」
律「澪…?」
ゲーチス「澪さんの心の闇……その原因はあなたですよ」
律「…! なんだって…?」
ゲーチス「イッシュに飛ばされ、澪さんとあなたたちは離れ離れになりましたね。澪さんは偶然にもワタクシのところに来ました」
ゲーチス「澪さんはあなたたちとはぐれたと知り、あなたたちを探すことにした…あなたたちのことが心配でね。
しかしあなたはどうでしょう? そんな澪さんのことを気にも掛けずに御友人とのうのうと旅をしていた。それを知った澪さんの気持ちはどんなものでしたかねえ」
ゲーチス「澪さんにとって、あなたは昔からのご親友だったはず。ですが、それに裏切られた……。もうそうすれば心は闇に染まり………後はワタクシが声をかければ……」
ゲーチス「掌握完了…」
ゲーチス「澪さんをこんなふうにしたのは、結局はあなたなのです!
あなたの行動が全ての原因なのですよ!!」
律「私、が…?」
ゲーチス「そう! あなたが彼女をこうさせたのです! 彼女を人形にしたのはあなたです!!」
律「……ッ!!」
ゲーチス「ならばあなたが罪を償うのは必然!
彼女にここで、排されるので……」
唯「違うよっ!!」
律「…!」
ゲーチス「……は?」
唯「違うもん…」グズッ
律「唯…?」
唯「りっちゃんは澪ちゃんを探してたよ! 一生懸命!
私はちゃんと見てたよ!? 澪ちゃんのために、強くなるって……プラズマ団を倒すって決めてた!!」
唯「りっちゃんはのうのうとイッシュを旅してたわけじゃないよ!!」
ゲーチス「……」
律「唯…」
唯「だから…澪ちゃん……そんな悲しいこと言わないで?
りっちゃんは澪ちゃんを裏切ったりしないよ……」
ゲーチス「…ふふ。ふはははははは!!!!
馬鹿なんですか? あいつにもう声は届かない!
人形に何を言っても無駄だー!!!」
ゲーチス「はは、…?」
バチンッ…!
ゲーチス「…!?」
ドサアッ!
ゲーチス「な……貴様…!!」
唯「あなた…最低だよ!
Nくんとシルバーくんのこと、澪ちゃんとりっちゃんのこと……そんなに人の心を踏みにじって、楽しいの!?」
ゲーチス「……」
ゲーチス「クク…もちろん、楽しいですよ。
ワタクシは人々が絶望する…その瞬間を見るのが大好きですからね!!」バッ!
唯「…!」
ゲーチス「よくもこのワタクシをぶちましたねえ!?」
ブンッ!
唯「きゃ…!」
ガシイッ!!!
唯「!」
ゲーチス「なに…?」
ガシッ……
律「……」ギロ
唯「りっちゃん…!」
ゲーチス「ふ、今更何を? あなたが全ての原因だというのに…」
バチイッ!!!
ゲーチス「…?!」
ドシャアッ!
律「ああ、私が原因だ…。なら、解決するのも私だ!」
唯「りっちゃ…」
律「唯……ありがとな!」ニッ
ダッ!
律「澪!」
澪「…!」
律「お前とは、家が近所で…小さい頃から一緒に遊んで、仲良しでさ…。
だからたくさん喧嘩もしてきた! その度に仲直りして……でもこんな壮大なのは初めてだな!」
律「私が澪を裏切ったって? んなわけないだろ! 唯の言うとおりだ!!
それを…勘違いして、さ……よりにもよってゲーチスなんかに………」
律「水臭いじゃねえか!! 私に相談してくれよ! なんなら私に突っ掛かってくれてもよかっただろ!? そんなことで私たちの仲が崩れると思ったのか!?
ふざけんな! 親友だろうが!!」
律「……親友だろ…?
だから! 親友が闇に堕ちかけた時は連れ戻さなきゃな!!
お前をぶん殴ってでもだ!!!」
澪「…コロぽん!」
コロぽん「ココロー!!」
ビュオオオオオオ!!!!!!!!
律「う、うおおおおおおおおおおお!!!!」
ダッ!!!!!
澪「…!」
律「目を醒ませ! 澪おおおおお!!!」ブンッ…
バチイイン…!!!!!!
ドシャアアアアアン!!!!!!!!!!!!!
律「はぁ…はぁ……」
澪「…… り、つ…」
律「澪…、正気に戻ったのか……?」
澪「り、つ……」
澪「ご…、めん…私……!」
律「へへっ、謝るなよ。親友だろ?」
澪「律……。り、つぅ…!」
澪「りつうう…!!」ガバッ
律「うおっ!?」
澪「りつうう…」ポロポロ
律「いつかの予想通り…ははっ」
唯「澪ちゃん…よかったあ……」
ゲーチス「……ッ!!」
ゲーチス(馬鹿な…ワタクシの掌握術が解けるとは……)
ゲーチス「……」
ゲーチス(チィ……)
ソソクサッ
…
澪「……」ヒック…
律「落ち着いたか?」
澪「う、うん…」
澪「律、私……」
律「ははっ、もういいって!」
タタッ
唯「澪ちゃん、元に戻ったんだね!」
澪「! 唯…」
唯「よかったよぉ、一時はどうなるかって…」
澪「……」
唯「…澪ちゃん?」
澪「……唯…」
唯「なあに?」
澪「唯も、私を殴ってくれ!」
唯「ええ!?」
澪「このままじゃ私の気が収まらないんだ!」
唯「で、でも…」
律「はあ…唯に澪を殴れるわけないだろー?」
澪「でもそれじゃ…」
律「人にはそれぞれの愛情表現があるってもんさ。なあ、唯?」
ガバッ
唯「えいっ!」ダキッ
澪「うおっ!?」
ギュウウ…
澪「ち、ちょっと…唯……」
唯「澪ちゃん……すっごく心配、したんだよ?」
澪「…ごめん」
唯「でも、澪ちゃんが戻ってきてよかったよ♪」ニコッ
澪「…ありがとうな、唯」
律「へへっ、よかったな唯」
澪「…ありがとう、律」
澪「私は馬鹿だったよ。こんな…」
律「だーから、もういいっての!
さあ、行くぞ!」
唯「うん! プラズマ団を止めないと!」
澪「…ああ!」
…
最終更新:2011年08月07日 20:49