次の日。
今日は一日何も無い日です。
家でだらだらしていると、ママが声をかけてきました。
曜子母「休みの日くらい、どっか出かけてきたらどうなの」
曜子「最近ずっと塾だったんだから休ませてよー」
曜子母「高二といったら、遊び盛りなんだから・・・」
昨日だって文恵ちゃんと遊んだし、遊んでないように思われてるなら心外です。
曜子母「曜子も何か部活にでも入ればよかったのにねぇ」
ママはもったいなそうに私を見ていました。
曜子「部活入らなくても友達いるからいーの」
曜子母「だって去年の学園祭だって、曜子ヤキソバ作ってただけじゃない。何か出し物でもすればよかったのに」
親としては、子供が晴れ舞台に立つ姿が見たいのかもしれません。
そう思うと、少し複雑な心境になりました。
曜子母「ほら、今の時代高校生でバンドとか組んだりするんでしょ?友達にいない?」
曜子「・・・・・・・・・うーん、友達には・・・いないかな」
曜子母「曜子もバンドでも組んで、ステージで演奏とかしてほしかったわぁ」
曜子「・・・っ、私は楽器なんて出来ないからそんなの無理なの」
そう、私は楽器が出来ません。
だから軽音楽なんて、始めから無理に決まってます。
それに、音楽がやりたいなんて、ママにも誰にも一言も言ったことありません。
やりたいなんて、思ったことないですし。
結局その日は昼寝をして、だらだらしたまま一日が終わってしまいました。
明日は塾です。
鞄に教科書を詰めているときに、予定表に目がいきました。
曜子「あ、明日って、夏期講習の最終日・・・」
長いようで短かった講習も明日で終わり。
でも、終わるとそのまま平常授業が始まります。
特に変わったことはありません。
次の日。
今日は講習の最終日。
いつものように塾に向かい、授業を受けています。
先生「中国の歴史は農民反乱が転機となり・・・」
昨日もたくさん寝たし、体調が悪いわけではありません。
それなのに何故だかぼーっとして、先生の言葉が頭に入りません。
集中できないまま、授業は進んでいきました。
終業のチャイムがなり、先生が教室を後にしました。
これで夏期講習は終わりです。
でも、講習生と違い、塾生の私たちには関係ありません。
ふと教室の出口を見ると、秋山さんが出て行くのが見えました。
曜子「・・・」
文恵「曜子ちゃん、帰ろっ」
曜子「あ、うん」
文恵ちゃんに言われて、私も教室を後にしました。
文恵「はー、それにしても夏期講習が終わって、次の日から平常授業っておかしいよねー」
曜子「少しくらい休み欲しいよね」
文恵「そうそう、勉強ばっかで嫌になっちゃう」
曜子「でも私、文恵ちゃんがいるから塾楽しいよ」
いつものように、雑談をしながら帰ります。
何もかも、いつも通りです。
文恵「じゃあ、また明日ねー」
曜子「うん、さよなら」
薄暗い帰り道を一人で歩きます。
途中、意味も無くコンビニに立ち寄ってみました。
コンビニにはお客さんはおらず、店員が暇そうにしていました。
曜子「・・・」
何も買わないのは気まずいので、私は適当にお菓子を手に取り、レジへと向かいました。
商品を渡すと、店員は気だるそうにレジ打ちを始めました。
店員「えー、マシュマロ一点で、105円です」
私はお金を払い、店を後にしました。
次の日。
今日も塾です。
教科書を鞄に詰めているときに、ふと思いました。
夏期講習も終わり、今日から平常授業です。
曜子「・・・・・・つまんないなぁ」
私は意味も無く、独り言をつぶやきました。
いつもどおり塾へ向かい、いつもどおりの席に座ります。
講習生がいた昨日とは違い、今日は教室にいる人数も少なめです。
文恵「あ、曜子ちゃん」
文恵ちゃんも教室にやってきて、一緒に授業を受けます。
そのまま授業は進み、終了のチャイムが響きました。
今日の授業はこれで終わりです。
曜子「ふぅ・・・」
教科書を鞄に詰めて、一息つきます。
今日は何故か、少し疲れてしまいました。
文恵「曜子ちゃん曜子ちゃん」
曜子「何?文恵ちゃん」
文恵「ちょっと今日の授業でわかんないとこ先生に聞いてくるから、先外で待ってて」
曜子「うん、わかった」
文恵ちゃんに言われたとおり、私は先に外で待つことにしました。
校舎の外に出て、ぼーっと空を見上げました。
今日は比較的涼しくて、いよいよ夏も終わりといった過ごしやすい日でした。
もうすぐ新学期も始まります。
曜子「はぁ・・・」
考え事をしながらふとバス停のほうへ目をやると、思わぬ人物と目が合いました。
曜子「あ・・・」
澪「あ・・・」
そこには、楽器を背負った秋山さんが、立っていたのです。
曜子「えっと・・・」
澪「・・・」
お互い目があったまま、動けません。
口を開いたまま、二人で立ち尽くしていました。
しばらくすると、秋山さんがようやく喋り始めました。
澪「あ・・・さ、佐々木さん・・・だよね?」
曜子「う、うん」
澪「塾の・・・帰り?」
曜子「う、うん」
澪「そ、そっか」
何故かお互い、とても緊張していました。
ぎこちないまま、会話は続きました。
曜子「あ、秋山さんは・・・部活?」
澪「うん、そ、そうだよ」
曜子「それって・・・ギター?」
澪「あ、いや、これはギターじゃなくてベースっていうんだ」
曜子「へぇ・・・」
澪「佐々木さん、ずっとこの塾に通ってるよね・・・」
曜子「えっ」
澪「ああいや、よくこの建物に入ってくの見るし、夏期講習でも見かけたから・・・」
曜子「あっ・・・」
秋山さんは私のことを覚えてくれてたみたいで、少し驚きました。
澪「偉いよね、ちゃんと勉強してて・・・」
曜子「わ、私って勉強苦手だし、その分頑張らないといけないから・・・」
曜子「秋山さんだって、部活も勉強もして偉いよ」
澪「そ、そうかな、部活なんて遊びだし・・・」
曜子「ううん、秋山さんすごいよ。学園祭で演奏しちゃったりもしてるし・・・憧れちゃうかも・・・・・・」
文恵「ごめんごめん、待たせちゃった~?」
秋山さんと話していると、文恵ちゃんがやってきました。
それを見た秋山さんは、少し顔を伏せながら言いました。
澪「えっと・・・それじゃあ私・・・帰るから・・・」
曜子「あ、うん・・・」
文恵「あれ?秋山さん?」
文恵ちゃんも秋山さんに気づきました。
澪「そ、それじゃあ・・・」
帰ろうとする秋山さんに、私は勇気を出して言いました。
曜子「あのっ!」
曜子「・・・今年の学園祭・・・楽しみにしてるからっ!」
澪「あ・・・」
秋山さんは驚いた表情を浮かべた後、笑顔で答えました。
澪「ありがとう、今度は・・・学校で話そう!」
そう言って、秋山さんは帰路に着きました。
文恵「あれー?いつの間に秋山さんと仲良くなったの?」
文恵ちゃんは不思議そうな表情を浮かべていました。
さっきまで私の心の中にあったもやもやは綺麗に無くなって、とても清々しい気分でした。
曜子「さ、文恵ちゃん、帰ろっ」
文恵「あ、ちょっとまってよ曜子ちゃーん!」
先に歩き出した私をあわてて追いかける文恵ちゃん。
今日は、とても過ごしやすい気候です。
私の名前は佐々木曜子。
桜が丘女子高に通う、普通の高校二年生です。
部活は特にやっていませんが、受験のために塾に通っています。
もうすぐ学園祭の季節です。
今年はクラスで何を出すのか、今から楽しみです。
澪「あ・・・」
曜子「あ・・・」
私と同じ、桜が丘女子高に通う二年生。
澪「い、今から塾?」
曜子「うん、秋山さんは・・・練習?」
澪「うん、もうすぐ学園祭だしね・・・」
律「おーい澪!何やってんだ、早く行くぞー」
澪「あ・・・じゃあ・・・」
曜子「うん、また・・・ね」
彼女は私の、大切な友達です。
終わり
最終更新:2011年08月08日 00:20