最後に唯と梓ですが……
月帝の赦しを得た現在でも、聖域で仲睦まじく暮らしています
翁と嫗だけでなく他の皆も共に暮らす事を強く勧めたのですが、二人はそれを頑なに拒みました
「だってさぁ~、折角二人でラブラブなのにわざわざ『嫁の実家』に住むってのはどうかと思わない?」
「確かに、居心地の良い空間から敢えて悪い空間へ移動する利益はありませんね」
「だから、私達はこの地に二人で暮らす事を選んだのであります!フンスッ」
「……唯先輩、ところで私達は誰にむかって話しをしているんですか?」
「えっとねぇ~、……ギャラリーの皆さんに!です!!」
「ギャラリーって……誰も居ませんよ?」
「居るよぉ~。あずにゃんわからない?」
「はい」
「仕方ないなぁ~、じゃぁ特別に唯先輩が教えてあげましょう!」
「……で、誰なんですか?」
「先ずは、空に輝く太陽さん!次に野原の草花さん達!おっと、そこを駆ける風さんも忘れちゃいけないよね!そしてそして……」
「……つまり、『自然』がギャラリーだと」
「いぇーす!あずにゃん大正解!!」
「……ハァ」
「まぁまぁ、そんな溜め息つかないで……。さて、正解したあずにゃんには唯先輩からのご褒美をプレゼントします!」
「ご褒美……?あ、なんか嫌な予感が……」
「あずにゃ~ん!むちゅちゅ~!!」
「ちょっ!そ、それはダメです~!!」
「えぇ~?なんでぇ~」
「だ、だって、約束したじゃないですか!」
「あ……そうだったね……ゴメン」
唯と梓が交わした約束
それは……
『帝と月帝の前で祝言を挙げる』
そのためには守らねばならない事がありました
「『純潔』を守らなくちゃ……ダメなんですよ」
「……うん」
「だから、キスとか……エ、エッチな事とかはしちゃいけないんです」
「そうだったね……」
「で、でも、それ以外なら……大丈夫……です、よ……」
「それ以外か~、……では改めて、あずにゃんにはご褒美のむぎゅぎゅー」
「にゃぁ~♪」
……キス程度なら問題無いとは思いますがね
それでは、後日談もこのくらいにして
私は筆を置くとしましょう
唯と梓が無事祝言を挙げられるよう祈りながら……
おしまい♪
#
……以上で、全ての撮影が終了しました!!!
「よっしゃ終わったー!!」
「流石に疲れたな……」
「早くメイク落としてお茶したいわぁ~」
「私も~。帝の衣装って動き辛いからクタクタよぉ~」
「でも先生、私の衣装よりは動きやすかったんじゃないんですか?」
「まぁね~」
「確かに……和先輩の衣装は宙吊り用のフックやら何やらがついてるから大変そうですよね」
「一応動きやすい位置に付けてあるんだけどね、それでも気をつけないといけないから……」
「朝に体験させてもらった時、こんなの付けて動けるのかぁっ!?って思いましたもん」
「でも、楽しかったね~」
「ね~」
「あ、そうだ!ナレーターさん、まだ外と話せます?」
大丈夫ですよ、律さん。……『例の件』ですね?
「そうそう。では……おーい!ゆーいー!!」
『りっちゃんな~に~?』
「撮影終了したなっ!」
『そだねっ!』
「撮影終了したんだぞ~」
『だからわかってるって~』
「……ホントにその意味がわかってるのか?」
『……どゆこと?』
『あ!唯先輩!ほら……例の……』
『例の?……あぁっ!!!』
「どうやら思い出したみたいだな……」
『うん……。ねぇ、りっちゃん……やっぱ……飲まなきゃ……ダメ?』
「そんなの当たり前じゃないか」
『で、ですよねー。あはは……』
「……とまぁ、冗談はそれくらいにしておいてっと」
『……へっ!?』
「ま、今回は特別に許してやろう」
『りっちゃん……良いの?』
「本音を言わせてもらえれば、唯にも飲ませたい。でもさぁ……唯はこのあと何をする予定だ?」
『えっと……このまま外で……ゆっくりまったりゴロゴロしようと思ってるんだけど……』
「それって、『梓と一緒に』だろ?」
『……うん』
「だったら尚更だ。なぁ唯、折角梓と二人きりでのんびりと出来るんだぞ?」
『そう……だね』
「唯は、頭の片隅で『嫌な事が待ってる』なんて考えながら……楽しく居られるか?」
『多分、無理』
「だろ~?だからさ、今回は特別って事だ」
『そっか。……りっちゃん、ありがとね』
「……そ、そのかわり、ちゃんと後で何をしてたか言うこと!これが許す条件だ!!」
「うふふ、りっちゃんたら……」
「律、見えないからって照れながら言うのはどうかと思うぞ」
「ふ、二人共!ばらすなよぉ!!」
「……フゥ、青春ねぇ~」
そうですね~。……ところで皆さんそろそろホテルに戻りませんか?
「さんせーい!早く戻ってシャワー浴びたーい!」
「もぉ、純ちゃんったら……」
「俺もゲームの続きやりたいな~」
「おい、聡は充分過ぎる程にやってただろ!だから今日はもうゲーム禁止な!」
「えぇ~?なんでだよぉ」
「ゲームは一日二時間まで!」
「はーい……」
ハハハ、仲が良いですね~。
では……。
皆さん!二日間お疲れ様でした!!
「「「「「「「「「「『『お疲れ様でした!!!!!!!!!!!!』』」」」」」」」」」」
「唯、晩御飯までには戻るのよ」
『わかったよ~』
「梓ちゃん、唯がはしゃぎすぎて時間とかを忘れないようにちゃんと見ていてね」
『はい、わかりました』
『うぅ……和ちゃん酷いよ……』
♪
『フフッ、まぁ良いじゃないの。幸せ一杯の親友に対する祝辞みたいな物よ』
「ぶぅ……祝辞っぽくなぁ~い」
『……さっきの言葉、よく考えてみればわかるとおもうけどね』
「さっきの……?」
「それって、私に言った言葉ですか?」
『そうよ。……時間はたっぷりとあるんだから、二人で考えてみなさい♪じゃぁ、後でね』
「わかった~、じゃぁね~」
「お疲れ様でした!」
えっと、このスイッチを……ポチッと
「消えたかな?あーあー、聞こえますかー?……よし、オッケー」
「唯先輩、お疲れ様でした♪」
「あずにゃんも、お疲れ様でした~♪」
フゥ……やっと全部終わったよ~
「……いい天気で良かったですね」
「そだね~。……ちょっとあっちまで歩こうか、高くなってて見晴らし良さそうだし」
「良いですよ、今日は軽装ですし」
「昨日のあずにゃんだと辛いよね~、結構衣装重かったし」
「終わったあと、楽屋までまともに歩くことが出来ない状態になりましたからねぇ」
「重い衣装で座りっぱなしだったからね~」
「唯先輩が一緒に居てくれたお陰で助かりましたよ……」
そんな事を話しながら歩いていると、いつの間にか目的の場所に到着していた。
「わぁー!いい眺めー!!」
「戦国の合戦シーンを撮ったこともあるって言っていただけありますね~」
「ね~」
辺り一面に広がる草原。
吹き抜ける風が気持ち良いな~
……あ、そうだ
「えいっ♪」
「……唯先輩、そんな所に寝転がると服が汚れますよ」
「草がいっぱいだから大丈夫だよ~」
「もぉ、しょうがないですねぇ……よいしょっと」
「えぇ~?あずにゃんは座るだけぇ~?」
「当たり前じゃないですか……と言いたいところですが……えいっ♪」
「えへへ~」
「……唯先輩が気持ちよさそうにしていたから……特別、です」
「そっか」
私達はそのままボーっと流れる雲を見続けていた。
時折草花の間を駆け抜ける風の音だけが聞こえる。
「ねぇ、あずにゃん」
「……何ですか?」
「さっき和ちゃんが言ってた事って……」
「『祝辞』の事ですか?」
「うん。あれってさぁ……どこが『祝辞』なのかなぁ?」
「私が唯先輩の事をちゃんと見て、時間までに帰ってきなさい……って事ですよね」
「多分……」
うーん……わっかんないなぁ~
あずにゃんが私の事をちゃんと見て……
ん?
それってもしかして……
「あずにゃん……和ちゃんはあずにゃんに『ちゃんと私の事を見て……』って言ったよね」
「はい、そう言っていましたね」
「……和ちゃんと一緒にどこか行ったりしたときはね、和ちゃんが色々と私の世話をしてくれてたんだよね」
「はぁ」
「ちゃんと起きたか確認するついでに迎えに来るとか、電車の中で寝過ごさないように気を付けるとか」
「あ……」
「口の周りが汚れてたらそれを拭き取ったりとか、迷子にならないよう手を繋いで歩いたりとか……」
「……あの、それって……」
「そう、あずにゃんが私にやってくれてる事と一緒……だから、さっき和ちゃんが言った『ちゃんと見ていてね』ってのは……」
「唯先輩の事は全て任せた……という意味……ですか」
「うん、そうだと思うんだ。だからさ……」
そこまで話した私は「よっ」と声を出しながら身体を起こした。
隣には寝転んだあずにゃんも不思議そうな顔をしながらつられて起き上がる。
それを見た私は少し微笑みながら話を続けた。
「だから、これからも宜しくね。あずにゃん」
「あ、あのっ、こちらこそ、宜しくお願いしますっ」
「色々とお世話かけちゃうよ~♪」
「……どんとこいです。どんな事でもお世話しますよ」
「ホントにどんな事でもお世話してくれるの?」
「あ……その、ムリの無い範囲で、ですけど」
「えへへ……でも、あずにゃんのお世話もさせてね」
「当然です。恋人同士なんですから」
「そっかぁ~」
「そうですよ」
「……この先、ずっと、お世話されて、お世話して……」
「……この先、ずっと……」
「……おばあちゃんになっても……ずっと……ね」
「……はい……」
辺り一面に広がる草原……
風の声以外
何も聞こえない
「あずにゃん……大好き……愛してるよ……」
天には光り輝く太陽……
降りそそぐ日差し以外
見ている者は誰も居ない
「唯先輩……大好き……愛して……ます……」
二人きりの世界で……
「あずにゃん……」
私達は……
「唯先輩……」
初めての……
おしまい!!
最終更新:2011年08月18日 21:00