和「まずは梓ちゃん。あなたは何をしていたのかしら」
梓「……」
律「どうせお前タイツぱくったんだろ! 私らじゃないってことは梓かムギだからな!」
澪「梓、ムギ……正直にいうんだぞ」
紬「ちょ、ちょっとまって! 私でもないんだから梓ちゃんかりっちゃん澪ちゃんよ!」
梓「私は盗ってません。むったんを部室に置きに行ったんです。朝すこし遅刻してしまって時間がなかったもので」
律「のついでに盗ったんだろ」
梓「だから盗ってませんって!」
梓(正直いうと危なかった。ムギ先輩がタイツがないことに気づいていればアウトだったから)
梓(けどムギ先輩は何をしていたんだろう。周りが目に入らないほど夢中になれることが……?)
和「まぁいいわ。とりあえず全員聞いてから話をまとめましょう」
唯「ムギちゃんは何をしに行ってたの?」
紬「それは……」
和「あなたが盗ったの?」
紬「それだけは違う」
律「じゃあ言えよ!」
紬「つ、つまみぐい……」
澪「えっ?」
紬「お腹がすいちゃって……・ケーキを、つ、つまみぐいしてました……」
律「はっ?」
唯「ずるい!」
紬「ごめんなさい……」
唯「そうだ! お腹もすいたしケーキ食べながら話そうよ!」
律「いいのかそれで」
梓「賛成ですね」
唯「じゃあたまにムギちゃんが消えるのってケーキをたべてたんだね」
紬「……恥ずかしい」
澪「太るぞ」
紬「うぅぅ……」
唯「でもこれでムギちゃんの線は消えた……」
紬「ホッ……」
律「じゃあ梓じゃん! 梓決定!」
梓「ちょっ、まっ、律先輩たちでしょ!」
澪「私たちじゃない。ムギでもない。つまりは梓なんだ」
唯「まぁまぁ、話をきこうじゃない。話してごらん」
律「なんか唯お前ちょっとケーキ食ってどうでもよくなっただろ」
唯「そんなことないよー」
律「えーっと、マジで話さなきゃだめ?」
梓「話さなきゃ犯人です」
唯「そういうことにしようめんどくさいから」
紬「唯ちゃん……唯ちゃんのタイツの話をしてるんだけど……はぁ」
律「ちくしょー。梓で確定なのにな」
梓「そそそそ、そんなことないです」
澪「しかたないな……このまま犯人扱いされるのも嫌だし」
律「でもほんとにアレ言っちゃうのかよ」
澪「……」
梓「早くゲロっちゃってくださいよ。ふたりでタイツを仲良く等分したって」
澪「あの……私たち実はさ……」
律「その、なんだ、親交を深めてたっていうか、なぁ?」
梓「なんですか歯切れの悪い」
澪「……シてた」
梓「……えっ」
律「はい言った。終わり」
唯「?」
和「そういうの。ほどほどにしなさいね……///」
律「自由に使えて人目につかねー場所ってここくらいしかないからなー」
紬「ふ、ふたりとも……まさかそんな///」
唯「??」
澪「今日は雨だし屋上も使えないからな」
紬「屋上でもしてるの!?」
律「たまーに……」
梓「信じられないです! 信じられないです!!」
梓「きっと二人で口裏あわせてるだけですよ! 私を犯人に仕立てるために!!」
紬「その可能性は大いにあるわね!」
律「はぁ?」
紬「ほんとに二人がそんな仲なのか証拠をみせてくれないと!!」
澪「え……」
律「お前らの前でかよ……話だけでも恥ずかしいってのに」
梓「あ、やっぱ作り話なんですか」
律「くそー」
澪「……」
律「澪こっち向け!」
澪「えっ、はむっ……んっ」
チュッ
梓「……チッ」
紬「すごい……ほんとにキスしてる……!」
和「疑う余地なしね……」
唯「ねぇなんでりっちゃんと澪ちゃんはチューしてるの?」
紬「愛し合ってるからよ!」
唯「? なんでムギちゃんはちょっとテンション高いの?」
紬「嬉しいからよ!」
唯「?? で、これとタイツ泥棒じゃないのは何の関係があるの?」
律「んちゅ……ったく、これでわかったろ」
澪「はぁ……ついにバレてしまったか」
唯「ねーねー、一体どういうことー?」
和「つまりね唯。二人はお互いを求め合うことに夢中でタイツどころじゃないってこと」
唯「あーっ! じゃあちょくちょくりっちゃんたちが休み時間に消えるのってずっとイチャイチャしてたんだ!」
唯「ラブラブだったんだね!」
紬「やっぱりそうだったのね! 私の予想大的中よ!」
唯「じゃありっちゃんたちは犯人じゃない……ってことは!」
梓「!」
唯「タイツが……勝手に……?」
梓「えっ」
律「いやいや」
澪「だけど梓じゃないと信じたら、ほんとにお化けの仕業でしかないな……」ブルブル
梓(そうだよ……実際にタイツは私が靴箱に隠したあと消えた)
梓(お化けだ……お化けタイツだったんだ……)
梓「ひいいいい!」
澪「おい梓!」
律「なんなんだよ。じゃあとりあえず私ら全員の荷物しらべようぜ」
紬「そうね……それが無難かも」
和「お化けなんて、バカバカしいわ」
……
律「結局どこにもなしか」
和「唯が回収したのを忘れて一人で大騒ぎしてるって線も消えたわね」
唯「和ちゃんひどい!! そんなに私バカじゃないよ!」
和「冗談よ。少しは場を軽くしないと持たない子がいるでしょ」
澪「お化けタイツ怖いお化けタイツ怖いお化け無理怖い……」ブルブル
梓(タイツは忽然と姿を消した)
梓(一瞬お化けムードに流されかけたけど、そんなはずはない。絶対人の手による仕業だ)
梓(だとすると……私がタイツを靴箱に隠したところを確実にみたはず)
梓(そいつは私がこの一連の騒動の犯人だとわかってるはず)
梓(なのになぜ何もアクションを起こさないの)
梓(怖い……何が目的なの)
梓「……」
唯「あずにゃんも怖いよねぇ? お化けだよ! 桜が丘高校七不思議だよこれは!」
紬「結局どういうことなのかしら」
和「率先してやっといてなんだけど、割と捜査はざるよね」
澪「うん。生徒同士じゃ限界がある」
律「お化けは、まぁありえないとして、何が目的なんだろうな犯人は」
唯「きっとタイツマニアだよ! タイツを集めてるんだよ!」
梓(いえ、クンクンペロペロするはずだったのですが……)
梓(そっかクンクンペロペロか……)
梓「!」
梓(犯人の目的……もし私と同じだとしたら……)
梓(私は利用された!)
梓(犯人はけいおん部じゃない!)
梓(そう、けいおん部以外の、鍵を入手できない人物だ!)
梓(そして犯人は私のことをよくしってる)
梓(知り尽くしてるといっていい)
梓(私が唯先輩タイツにムラムラして奪うことも予想していた!!)
梓(だから跡をつけてきた……!)
梓「ちくしょう……ちくしょう……」
梓「ううううっ」ガクッ
唯「あずにゃん?」
梓「……うう」
澪「なんで泣いてるんだ? お化け怖いよな」
ピリリリ
律「梓、携帯なってるぞ」
梓「……くそっ、くそっ!!」
梓「はい……もしもし」
『梓ちゃん。いまから一人でウチにこれる? これるよね?』
梓「うわああああ!! ちくしょおおおお!!」
……
憂「ちゅぷ、じゅぷ、あーおいしい♪」
梓「……」
憂「なに? ちょっと欲しい? だめー☆」
梓「……くっ」
憂「ありがとう梓ちゃん♪ お姉ちゃんのタイツ超おいしい!」
梓「あんたは姉妹なんだからいくらでも手に入るじゃん! なんでこんなことするの!」
憂「わかってないなぁ。いくらお姉ちゃんとはいえ、家で私物がなくなれば怪しむだろうし、最近では洗濯もすぐに自分でするようになった」
憂「なんだかんだで年頃の女の子なんだよ」
梓「……」
憂「でも梓ちゃんを利用すればこーんな簡単に、レアなアイテムが手に入った」
憂「どうもありがと♪」
梓「最低だよ憂……唯先輩にいいつけてやる」
憂「泥棒がそれ本気で言ってる?」
梓「くっ」
憂「私の立場ってさ、いわゆる『泥棒からタイツを取り返したできた妹』なんだけどw」
梓「うわああああ!!!」
憂「私の言葉ひとつで梓ちゃんを地獄にたたき落とすことができるんだよ?」
憂「それに、梓ちゃんがタイツをパクるシーンも携帯におさめてあるよ♪」
梓「憂いいいい!!!」
憂「あははは滑稽だね。でもね梓ちゃん、聞いて」
梓「……」
憂「これからも私のために働くなら……黙っててあげる♪ すべての真相は闇の中」
梓「……」
憂「それともお姉ちゃんに嫌われたい? 泥棒さん♪」
梓「……うううううっ」
梓「……確かに、私は泥棒だよ。でも憂も泥棒だよ」
憂「……」
梓「二人で一緒に謝ろう……」
憂「嫌だよ」
梓「どうして! 唯先輩は怯えて泣いてるよ!」
憂「それがいいんじゃん! 怯えて震えるお姉ちゃんを心配しつつ、裏ではおかずにする」
憂「さいっこうだよね! 梓ちゃんもそれがしたくて盗んだんでしょ?」
梓「く……否定できない」
憂「それどころか泥棒に発言権なんてないよ」
梓「そっちも泥棒のくせにいいい!!」
憂「私は! いつでも、正義の妹になれるの♪ えへっ♪」
梓「ちくしょおおおおおおお!!!」
憂「あははははは! あははははは!!! クンクンペロペロペロペロ!!!」
……
梓(数日が経ち、弱みを握られた私はそのまま憂の操り人形と化した)
梓(逆らうことはできない)
梓(ばらされたら唯先輩に嫌われてしまう。それだけは嫌だ)
梓(いまではあの日のことをすごく後悔している)
梓(なぜ泥棒など、すぐ足のつく事をしてしまったのだろうか……)
梓(しかし理性がふきとぶほどに唯先輩のタイツに魅力というか、魔力があるのは間違いない)
梓(いびつな愛情を持ってしまった自分を深く呪った)
憂「じゃあ梓ちゃん♪ 今日は体操服いってみよっか♪」
梓「……はい」
おしまい。
最終更新:2011年08月20日 00:09