イタメシ屋
澪「おー律、並んでるか?」
律「並んでるか?じゃないよ。ずっと待ってたよ傘差して」
梓「ここ平日でも並ぶって有名なお店ですよね」
律「そうだぞー私がこうして濡れてなきゃお前らのいる場所はあそこだ!!あの最後尾のさらに後ろだぞー」
澪「ほら。今日は私たちの予定も狂っちゃったし、せっかくのデートなんだしさ」
律「だからってーその相手を並ばせときますかねーふつー。家族サービスのお父さんじゃないだぞ!!うら若き乙女なんだぞ」
ウェイトレス「3名でお待ちの田井中様ー」
梓「あ、田井中様呼ばれてますよ」
澪「ホントだ、田井中様だって」
律「よっしゃーやっと入れるぜー」
梓(タイミングよかったみたいですね)
澪(律が単純で良かった)
梓(ていうか切り替え早いですね)
律「うめー!!イカスミのパスタうめー」
澪「はしゃいじゃって、ほら律。口の横にイカスミついてるぞ」 ペロ
律「やめろって、恥ずかしいだろ」
澪「う……」
律「梓も引いてるじゃん」
梓「いえ、そんなわけでは(むしろ恥じらう律先輩の顔でビックリです)」
澪「あ、えっと……この味は嘘を付いている味だぜ!!なんて」
律「みおー」
梓「澪先輩」
澪「あう……」
律「あーそういえば梓、まだ唯から連絡来てないんだよな?」
梓「あの、私何かしたんでしょうか?唯、じゃなかった唯先輩がこんなに遅れてくることなかったのに」
律「心当たりはない、んだよな?」
梓「というかずっと連絡とってなくて」
律「ふむ。でも今日の待ち合わせ場所とか決めるためにメールしたんだろ?」
梓「日付だけは毎回デートの終わりに決めてるです。まぁ前回はその時にちょっと喧嘩になってしまってそれで仲直りのきっかけがつかめないままだったんですけど、昨日突然メールが来て」
律「ふむふむ、それで?(サラダもうめーな)」
梓「何時にどこどこでっていう簡単なメールだったんで、私もあれ?と思ったんですけど」
律「あー喧嘩のことには触れてなかったんだな」
梓「私から蒸し返すのも嫌だったし、了解しましたって返信して」
律「で、今日に至ると」
梓「そうです。喧嘩なんて今まで何度もありましたけど、こんなケースは初めてですし。私嫌われちゃったんですかね?」
律「焦るなって梓」
梓「でも、でもおかしいじゃないですか!!」
律「待てってば、澪がさっきからパスタを水に浸してるからそっちを先になんとかしよう」
澪「恥ずかしい恥ずかしい恥ずかしい」 チャプチャプチャプチャプ
梓「ですね(やべーグラスの水真っ赤だ……)」
澪「で、唯からは場所と時間だけ指定するメールが来ただけだと」
梓「はい、お二人にも相談したとおり最近はちょっと距離があったんで」
澪「なるほどね。でも律が言うにはあれだろ?(なんか味が薄いな)」
律「そう。今日の唯なんてこっちが恥ずかしくなるくらい浮かれてもの」
澪「わざと浮かれてみせる、なんてことしないよなぁ。唯だし」
梓「こんなことになるなら謝っておけば良かった……」
律「とにかくさ、今は唯を見つけなきゃ始まらないだろ」
澪「そうそう。今日は結に会うためにその可愛い服着て来たんだろ?」
梓「はい」
澪「だったらそんな浮かない顔してちゃダメ。ほら、アイス溶けちゃうぞ」
梓「ホントだ……。あ、このアイスおいしい」
澪「今度は唯と来なよ。このお店」
梓「はい、なんかアイス食べてたら元気でてきたかもです」
律「オッケー。そんじゃ唯を見つけるための作戦会議始めるぞー」
澪梓「オー!!」
―――
律「だからな、ミッキー・ロークはそこでこう言うんだ。『俺にはお前たちが家族だぜ!!』って」
梓「あの、律先輩?」
律「にゃーに?」
梓「本当にあれだけで唯先輩は見つかるのでしょうか?」
律「大丈夫だってー。なにせ大学生のお姉さんが考えに考え抜いた作戦なんだから」
澪「怖い怖い怖い(フルフル」
梓「澪先輩に至っては震えてますし」
律「まぁ流血シーンとか普通にある映画だしなー」
梓「いや、もうレスラーの話はいいですって」
律「なんだよー、あれこそロックって感じじゃないか!!」
梓「私見てないですし」
律「だからだよ言ってるんだろー。ふわふわばっかりじゃ駄目なんだよ」
律「ロクデナシの熱い生き様がかっこいいんだから!!」
梓「分かんないですよ」
律「ラム・ジャムタイムって曲を作ろうと思ってるんだ」
梓「好きにしてください」
携帯「キルザ・キーーーーン」
律「とか言ってるうちに作戦参謀からメールだ」
梓「なんて言ってます?」
律「待ち合わせ場所にもう一回行ってみたらどうですか、だってさ」
梓「意外と普通のアドバイスですね」
律「いや、でも信憑性はあるよ」
梓「まぁ憂の言う事ですから」
律「そんじゃ私たちは一回寮に戻ってみるわ。途中で唯に会うかもしれないしさ。ほら澪、行くぞ」
澪「……ハッ!!怖い話終わった?」
律「今から寮戻るぞ(なんでまだ震えてるんだよ)」
梓「(ずっと耳塞いでたんですね)」
駅前の広場
梓「まぁ憂の言ったことなら信じられるかな」
梓「律先輩の作戦も適当だよね、憂に丸投げとか」
ザーザーザー
梓「唯先輩のこと誰よりも分かってるのは憂だし」
梓「私はすぐワガママ言って喧嘩しちゃうし」
梓「ワタシって冷たいのかな?」
梓「こうやって自己嫌悪に苛まれてるのも自分のためにやってない?」
梓「酷い子、なんだね私」
広場の反対側
唯「はぁはぁ」
唯「今行くからね、あずにゃん。ちょっと遅れちゃったけど」
唯「はぁはぁ」
ザーザーザー
唯「あれ?こっちだっけ?場所が分かんないよ」
唯「あずにゃ、ん」ドサッ
唯「いったあー、こけちゃった」
女1「何アレー?なんか倒れてるけど大丈夫なの」
女2「ちょっと雰囲気怖いんですけどー。なんか必死な感じ?」
女1「そんなこと言ってないで助けたげなよ」
女2「何ソレー。アンタが行きなさいよー(可愛い子だからどーせ男が助けるでしょ)」
女1「分かったわよ」
女1「あなた大丈夫なの?立てる?」
唯「ダイジョブ」
女1「そう、体を拭くモノ持ってきてあげるからここで待ってなさい(ブラ透けてるしね)」
唯「大丈夫だからね、あずにゃん。今行くからさ。早く買い物しようね」
女1「この子……」
ザーザーザー
女2「ありゃ。結局置いてきたの?(珍しいな)」
女1「あーあれは大丈夫だわ。放っておいてもいい目をしてたから」
女2「薬ですか」
女1「バカ」
唯「行かなくちゃ」
広場
梓「唯先輩、傘持ってるのかな?」
梓「いやいや、流石に寮に予備のやつとかあるだろーし」
梓「でも、もしどこかで濡れてたら。駅の売店で買えるしね」
ザーザーザー
梓「行かなくちゃ」
回想
梓「だからー、唯先輩は無駄遣いしすぎですって!!!」
唯「可愛いからいいじゃーん。ほらほら狸だよー」
梓「こんなんじゃ夏休みだって」
唯「ふえ?夏休み?なんのこと?」
梓「まさか(旅行の約束忘れた、とか?)」
唯「狸はいいねー。愛嬌があって可愛いねー」
梓「もういいですっ!!!唯先輩とは話したくありません!!そうやって無駄遣いばっかりしててください!!」
ロータリー
梓「だめだ、どこにもいない。本当は自分の部屋で寝てたりして」
梓「もう愛想つかされたのかな」
梓「雨が霞んで見えないよ」
「そんなことないよ」
梓「え?」
「私が、あずにゃんのこと嫌いになるはずないでしょ?」
梓「唯先輩?」
唯「ごめんね、ちょっと遅れた」
梓「どうしたんですか!!びしょ濡れじゃないですか」
唯「あー本物のあずにゃんだ。わーい」ギュッ
梓「ちょ、唯せんぱーーい(本物って何?)」
唯「あずにゃんはあったかいねー」
梓「みんな見てますよ!」
唯「誰も見てないよ」
梓「え?」
唯「私はあずにゃんしか見てないよ」
梓「なに恥ずかしいこといってですか!!!」
唯「いけない?」
梓「それはその、いけなくはないかもしれないですけど」
唯「そうだ」
梓「?」
唯「傘、入れてね」
梓「あーもう。分かってますよ、ほら」
唯「ほえ?」
梓「今から家行くです!!お風呂入らないと」
唯「うん」
梓「唯先輩はダメダメです。今時子供でもこんなにビショビショにはなりませんよ」
唯「まぁまぁ良いではないかあずにゃんよ」
梓「私が言ったこと気にして傘買わなかったんですか?」
唯「申しわけない」 しょぼん
梓「そんなこと謝らないでください。私の方こそ、すみませんでした」
唯「あずにゃん?」
梓「だから今日はいっぱいいっぱいお風呂で仲良くしてくださいね」
唯「あずにゃんのエッチぃ」
梓「そんなつもりじゃ……。やっぱり傘入れてあげないです」
唯「あ、待ってよあずにゃーん」
最終更新:2011年09月04日 22:18