「かみがた!」


律「けっせら~せら~♪」

梓「……」

律「あーずさちゃーん」

梓「何ですか?」

律「あっそびーましょ」

梓「すいません忙しいんで」

律「ん~いけず~」

梓「」イラッ

梓(あー面倒くさいときの律先輩だ)

梓「……何でそんなに上機嫌なんですか?」

律「いや~、実は今日ティッシュペーパーの特売日でさぁ」

梓「あ、それで」

律「安く大量に買えちゃったんだぞ。向こう半年はティッシュに困らないな」

梓(何てささやかな幸せだろう)

梓「……」

律「はっぴーはっぴー♪」スルスルッ

梓(うざい)

律「きゅきゅっとな♪」

梓「……」

律「できた! ポニテ梓!」

梓「人の髪で遊ばないでください」

律「うーんなかなかセンスいいじゃん、私」

梓「」イライラ

律「つづきまして~」スルスル

梓「……」ハァ

律「黒髪ロング梓!」

梓「ただ髪を下ろしただけじゃないですか」

律「随分雰囲気変わるなぁ。大人っぽくて美人」

梓「ほんとっ!?」

律「なーんてな」

梓「」

律「大人っぽさをアピールするなら、身長をあと十センチと胸囲を二十センチほど……」

梓「」プチッ

ドゴォッ


律「」シュウシュウ

梓「さいっっていっ! しばらく一緒に寝てやんない!」

律「ちょっとした冗談なのに……」

梓「うるさい!」

律「はい」




「おむかえ!」


ワイワイ ガヤガヤ

梓「それでね、律先輩ったらひどいんだよ!」ヒック

憂「うん、何度も聞いたよ。梓ちゃんのハーゲンダッツ食べちゃったんだよね」

梓「それだけじゃなくて、『お前も私のアイスいつも食べるんだからお互い様だろ』なんて言って、謝りもしないんだよ!」

純「ごもっともだと思うけど」

梓「」ギロッ

純「」

憂「純ちゃん、めっだよ」

純「ご、ごめん」

純(どうして私が怒られてるんだろう)

梓「モテるのか知らないけどさ、毎日毎日キャンパスで別の女の人と歩いてて」

純「本当に一緒に歩いてるだけじゃないの?」

梓「」キッ

憂「しっ」

純「……」

梓「部屋の隅で、こそこそ男の人と電話したりしてさ」

純「えー、あの律先輩が信じられないなぁ」

憂「どんなこと話してるの?」

梓「なんか、明日は都合が悪いだとかシフト替わってくれだとか色々」

純「それ単なるバイトの連絡かと」

梓「あ、お酒なくなった……すいませーん」

純「もう止めときな」

憂「飲み放題だからって飲み過ぎだよ」

純「梓、あんまりお酒強くないでしょ」

梓「今日は飲みたい気分なのー!」

純「……」ハァ



梓「」グデーン

純「……案の定」

純「しっかし、いきなり電話で呼び出したかと思えば」

憂「梓ちゃんが律さんとケンカだなんて珍しいね」

純「私にはただの惚気話に聞こえたんだけど」

憂「たまには付き合ってあげようよ。梓ちゃん滅多に愚痴なんか言わないんだから」

純「ま、そだけどさ」

ブー ブー

憂「鳴ってるよ」

純「私じゃないよ」

憂「じゃ梓ちゃんかな。おーい、携帯鳴ってるよ」

梓「zzz」

純「ダメだこりゃ」

憂「困ったなぁ、勝手に取る訳にもいかないし」

ブー…

純「あ、切れた」

憂「ま、仕方ないか」

プルル プルル

純「また鳴ってるよ」

憂「今度は私だ……律さん?」ピッ

憂「もしもし、どうしましたか?」

『あ、憂ちゃん? ごめん、梓知らない?』

憂「あ、一緒に居ますよ。今飲み屋にいて」

『たくっ、何で電話でないんだよあいつ』

憂「……」

『怒ってんのか知らないけどさ』

憂「そ、その、梓ちゃん酔いつぶれちゃって」

『酔いつぶれたぁ? ……あのバカ』

憂「はい……すいません」

『あ、いや憂ちゃんが謝る必要はないよ。で、今どこにいんの』

憂「はい、大学近くの……」




梓「zzz」

律「ごめんな二人とも、世話かけちゃって」

憂「いえ、そんな」

純「気にしないでください、これでも梓の親友ですから」

律「そっか、ありがと」

梓「……」スースー

律「よし、帰るぞ梓」ヨイショ

純「大丈夫ですか?」

律「ああ、こいつ一人ぐらい負ぶって帰れるよ」

憂「……」

憂「あの!」

律「ん?」

憂「梓ちゃん、よろしくお願いします」

律「……うん、了解」

梓「zzz」

律「じゃ、おやすみ」

憂純「おやすみなさい」


純「……」

憂「……」

純「梓、愛されてるじゃん」

憂「うん、律さんがいれば安心だね」

純「羨ましい限りだよ。はぁ、私も恋人欲しいなあ……」

憂「そう拗ねないの」ヨシヨシ



コツコツ

律「……」

梓「んー……あれ?」

律「目さめたか?」

梓「何で私」

律「潰れたって聞いたから迎えに来たの」

梓「えと……」

律「人をタクシー代わりに使いやがって」

梓「むっ、別に頼んでないもん」

律「あっそ」

梓「うー……」

律「戻す?」

梓「大丈夫、ちょっと頭痛いだけ」

律「そか」

梓「……」

律「……悪かったよ」

梓「えっ?」

律「勝手にアイス食べちゃってさ。お詫びに別の奴買っといたから」

梓「ハーゲンダッツ?」

律「うん、お前の好きな抹茶味」

梓「じゃあ許す」

律「どうも」

梓「……」

律「……」

梓「律先輩?」

律「なーに」

梓「大好き」

律「しらふのときに言ってほしいなそれ」




「かなしば!」


テレビ「ある日、夜中にふっと目を覚ましたんですね」

律「……」

梓「アワワ…」

テレビ「そしたら、体がずんっと重くて全く動かせなくなって」

律「……」

梓「ヒイィィ…」

律「おい、梓」

梓「ひっ……な、何ですか驚かさないでくださいよっ」

律「いや普通に言ったし。つか苦しいんだけど」

テレビ「ふと天井に目を向けると、血まみれの女がいて……」

梓「きゃああああああっっっ」

律「」キーン

テレビ「私の首を、ぎゅっと絞めてきたんです」

梓「いやああああああああっっっ!!!」ギュウウウウウウ

律「ぎぇっ、わたしの首が絞まってるって!!」


梓「ふぅ、怖かったぁ」

律「だったら見なけりゃいいのに」

梓「怖い番組を見て涼しくなるんです。夏の定番じゃないですか」

律「夜中にトイレ行きたくなっても知らないぞー?」

梓「よ、余計なお世話です!」

律「じゃ、電気消すぞ」

梓「はーい」

カチッ

律「ふー、今日も一日お疲れさんと」

梓「あの、律先輩」

律「ん?」

梓「そっちの布団、行っていいですか?」

律「暑いからダメ」

梓「こ、怖いんですよ!」

律「はぁ?」

梓「その、夜目を覚ましたら隣に律先輩がいなくて、代わりに貧乳の白装束女がいたら……」

律「それ貧乳設定いらんだろ」

梓「怖い怖い怖い~~」ジタバタ

律「ん、おやすみ」

梓「律先輩の薄情者!」




カッチコッチ カッチコッチ

律「……」

梓「……」スースー

律「……ん」パチッ

律「といれ……はれっ?」

律「」

律「」

律「!?」

律(な、何だこれ? 体が全然動かせない! てかすっげー苦しい)

律(もしかしてこれが金縛りってやつか!?)

律(や、やべぇ! 霊感ゼロの私が何でっ!)

律(体が熱いし何だかすごく息苦しい)

律(……)

『天井に目を向けると、血まみれの女が……』

律(ひ、ひいいぃぃぃぃぃっっ)

律(見えない見えない何も見えない私は目を閉じていて絶対に開けはしない)

カッチコッチ カッチコッチ

律(あ、暑いよぉ……苦しいよぉ……)

律(ごめんなさいごめんなさい私が悪うごぜえました)

律(小さい頃しょっちゅう澪を脅かすダシにしたことは謝ります。霊なんていないしばーかなんて思ってたことも謝ります)

律(これからはもう二度と霊的現象を否定したりしませんからぁ)ダラダラダラ


律「……ん?」

梓「だきまくら~……zzz」ギュウウウ

律「お前かよ」




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最終更新:2011年09月04日 23:53