梓「ムギ先輩!!!!!!!」
律「確かにムギは気の毒だよな」
梓「じゃなくて、いません!!!」
律「へっ!?」
澪「そ、そういえば!!」
律「マ、マジだ!! いねぇ!!」
澪「もしかして……」
唯「盗まれた……」
唯「ムギちゃんが盗まれちゃった!!!!!」
~~~~~~~~~~~
紬「んっ…… ここは?」
ルパン「おっ、気づいたか」
ルパン「悪いなぁ、ホントはもっと優しく連れて来てやりたかったんだっけどもな」
ルパン「どうも、他の連中がうるさそうでな」
運転をしながら、バックミラー越しに喋りかけるルパン
紬「学校に帰して!!」
ルパン「そんな、怖がらなくても大丈夫だって~ ちょっと手伝って欲しいだけよ」
紬「手伝う?」
ルパン「あぁ、さっきみたいにまたお茶を淹れてほしいのさ」
紬「それだけなら構わないけど……」
ルパン「なら話は早い。終わったらすぐに帰すよ」
紬「でも、今手元にお菓子もお茶の葉もないわ」
キキッ―――
急にブレーキを踏みこみ、立ち止まる
紬「きゃあ!!」
ルパン「いっけね。そりゃそうだよな。どうしよ……」
紬「……家に帰ればお茶の葉もお菓子もあるわ」
ルパン「本当か!? 良かった!! 案内頼むわ」
紬「はい……」
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斉藤「お帰りなさいませ、お嬢様」
紬「ただいま。でもまたすぐに出かけなければならないの」
斉藤「左様でございますか」
紬「それといつも学校に持って言っているお茶の葉とお菓子用意してほしいの」
斉藤「はっ、畏まりました」
紬(今のうちに唯ちゃんたちに大丈夫だと連絡しとかなきゃ)
鞄から携帯を取り出し、電話をかける
プルルル―――
唯「あれ、ムギちゃんから電話だ」
澪「何!?」
唯「もしもし、ムギちゃん。大丈夫!?」
唯「うん… うん… えっ!? わ、わかったよ。気をつけてね」ピッ
律「何だって!? 無事なのか!?」
唯「うん、大丈夫だって。ちょっとお茶を淹れてくるから先に帰っていてもいいよだって」
律「はぁ? お茶を淹れる? どういうことだ?」
梓「さっぱりです」
澪「無事だと言っているけど本当はルパンに言わされているかもしれないぞ」
唯「そんな感じしなかったけどなぁ」
律「うーん」
律「とりあえずムギの言った通りに帰ろう」
律「そしてしばらくしたらまたムギと連絡をとってみるよ」
梓「それが一番いいですかね」
唯「そしたら、りっちゃん隊員頼みましたぞ」
律「ラジャー!!」
梓「呑気なもんですね」
澪(ムギ……)
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ルパン「ただいま~」
不二子「遅いじゃない。ルパン」
ルパン「いやー、ちっと寄り道をしたんでね」
次元「おいルパン、後ろの女子高生は誰なんだ?」
紬「こ、こんにちは」
ルパン「緊張しなくていいぜぇ、ムギちゃん」
ルパン「このお姉さんにおいしいお茶をご馳走してあげたいだけだからな」
ルパン「リラックスしてくれよ」
紬「はい」
不二子「この子がお茶を淹れてくれるの?」
ルパン「そうさ、このティーセットの持ち主で美味しいお茶を淹れてくれんだぜ」
ルパン「んじゃ、さっそく頼むな」
紬「はい」
アジトにある調理場を借り、お湯を沸かす
紬(数分煮立てて、カルキ抜きして)
紬(次に茶の葉の分量を間違えないようにして……)
紬(ポットをよく蒸しておけば……)
テキパキと準備を進める紬
紬「さぁ、お茶が入りました。どうぞ」
不二子「ありがとう、とっても良い香りね」
カップを傾け、口に運ぶ
不二子「おいしい!! 香りも味も全然違うわ!!」
不二子「これでこそ、このカップも栄えるというものね」
紬「ありがとうございます」
不二子「この持ってきてくれたケーキも美味しいわ。」
不二子「しっとりした生地とクリームの甘さが絶妙!!」
次元(途端にこれだもんな)
不二子「ありがとう、おかげで最高の誕生日になったわ」
ルパン「いいっていいって、これぐらい不二子のためなら朝飯前よ」
不二子「あら、あなたにお礼は言ってないわよルパン」
ルパン「えー、何でよ不二子ちゃん」
不二子「あなたは何もしてないじゃない」
不二子「お茶もケーキも全部ムギちゃんのおかげよ。ねっ」
紬に向かい、ウィンクをする
紬「は、はい(綺麗な人……)」
ルパン「そりゃないぜ……」
ヴゥー ヴゥー
紬(あれ、メールだ)カチカチ
紬(りっちゃんからだわ。大丈夫かって……)
紬「あの、私そろそろ……」
次元「おいルパン、ちゃんと送ってやれよ」
ルパン「言われなくてもわかってるよ」
ルパン「さてとムギちゃん帰りたいんだろ?」
ルパン「こっちの都合に付き合ってもらって悪かったな」
ルパン「んじゃ、行こうか」
不二子「ありがとね」
次元「元気でな」
紬「皆さんもお元気で」
紬「お茶がしたいならこのような手段を使わなくても、うちの部活に遊びに来てください」
紬「いつでも歓迎いたしますから」
次元「優しいな、お嬢ちゃん」
ルパン「ありがたい話だけど実際行くと君たちが平和にお茶できなくなるからな」
ルパン「俺たちとはこれっきりにした方がいいぜ」
紬「そうですか……」
ルパン「さっ、暗くなる前に出発だ」
帰りの車の中―――
ルパン「ムギちゃんには世話になったからな」
ルパン「なんか一つお礼をしなくちゃな。何がいい?」
紬「あの、お礼はいらないのでティーセット返して貰えませんか?」
ルパン「……」
ルパン「そんなに必要なのかあのティーセット。軽音楽と関係ねぇじゃねーか」
紬「確かに関係はないんですがあれがないのと… その…」
ルパン「……?」
紬「私たちの放課後ティータイムが消えてしまうんです」
ルパン「……」
紬「ティータイムは『これが私たち』っていう感情が湧きあがる気がして……」
紬「お茶の時間が私たちにとって大事な時間だから… そのお願いします……」
ルパン「……」
ルパン「そいつは出来ねぇ相談だ」
紬「……そんな」
ルパン「どこに盗んだ物を返す泥棒がいるんだよ」
ルパン「こればっかりは冗談きついぜ」
紬「……」
ルパン「ちょ、そんな泣きそうな顔すんなよ。女の涙には俺弱いんだから」
ルパン「さっ、家に着いたぞ。さっさとこの豪邸に帰んなさい」
紬「それじゃあ、失礼します……」
紬の豪邸の前にアルファロメオを停めたまま
煙草に火をつける
ルパン「ふうー」
大きく煙を吐きながら、体勢を崩す
ルパン「『これが私たち』ねぇ……」
ルパン「かっこいいこと言うじゃないの。ヌフフフ」
~~~~~~~~~~~~~
次の日!!
唯「ムギちゃん、昨日は大丈夫だった!?」
梓「皆、心配しましたよ」
澪「変なことされてないよな!?」
紬「みんな安心して、私は大丈夫よ」
律「ならいいけどさ、いったい何をされたんだ」
紬「ふふ、それはね」
昨日会ったこと事細かく話していく
唯「なるほどね~」
梓「向こうの都合だけでこっちはいい迷惑ですね」
澪「でもムギに身の危険がなくて良かったよ」
紬「だけどティーセットが元に戻って来なかったのは唯一の心残りだわ」
律「そうだな、高価なものだしな」
紬「ううんりっちゃん、私は値段じゃなくてね……」
ドンドン――
部室のドアを叩く音とともに声が聞こえる
「誰か開けてー!!」
唯「さわちゃん先生だ。どうしたの」ガチャ
さわ子「はぁ… はぁ… これ運ぶの手伝ってくれる?」
澪「これって盗まれた食器棚じゃないですか!!」
紬「なんでここに?」
6人がかりで食器棚を元の位置に戻す
唯「ローラーがついたままだったからなんとか運べたね」
さわ子「でもここまで一人で持ってくるのは一苦労だったのよ」
梓「で、なんで返ってきたのですか?」
さわ子「あのね、今さっき銭形警部が学校に来てねこの食器棚を持ってきたの」
さわ子「なんでもあの盗られた後、ルパンを探し続けたらアジトを見つけて」
さわ子「警官隊と突入したらしいわ」
さわ子「ギリギリのところを逃げられたけど、食器棚だけは奪い返したんですって」
律「さすがだな、銭形警部」
澪「よかったな、ムギ」
紬「うん!!」
さわ子「今もなお、銭形警部はルパンを追い続けているみたいだわ」
唯「わーい、これでまたお茶が出来るね!!」
律「よーし返ってきた記念にムギ、お茶の準備だ!!」
紬「アイアイサ~♪」
さわ子「あなたたち、お茶もいいけどそれだけじゃなく練習もちゃんとするのよ」
律「……えっ?」
唯「さわちゃん先生、なんか先生っぽい」
さわ子「へっ!? だって先生でしょ!?」
ガチャッ―――
部室のドアが力強く開く
さわ子「みんな昨日は大丈夫だった? 心配したのよ」
澪「……!!」
律「いっ……!!」
紬「あら!!」
梓「嘘っ!?」
唯「じゃあ、このさわちゃん先生は……」
全員『ルパン三世!!!!!』
終わり
最終更新:2011年09月11日 20:36