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元の少女の姿に戻った梓は、逃げ出す意志がないらしく、大人しく座り込んでいる。

律休たち三人も、相対するようにその場に腰かけた。


律休「まず聞きたいことがあるんだけど」

梓「……なんでもお答えします」

律休「なんであんなにギターが上手いのか」

律休「それと、なんで油揚げに無反応だったのか、だ」

澪尚「(狐相手に策が通用しなかったのが悔しいんだな、律休は)」クスクス

紬「(りっちゃんかわいいー)」クスクス

律休「聞こえてるぞ、お前ら」

梓「え、えーと、まず2つ目の質問からお答えします」

梓「皆さんは、私のことを狐だと思っていらっしゃるようですが……」

律休「違うのか?」

梓「ええ」


そう答えた梓から、黒い猫耳と、しっぽが生えてきた。


紬「まあ、かわいい」

梓「ご覧の通り、私は狐ではなくて……いわゆる化け猫ってやつなんです」

澪尚「道理で油揚げに興味がないわけだ」


梓「で、1つ目の質問ですが…」

梓「私は、同じ化け猫である父からギターを教わりました」

紬「お父様もギタリストだったの?」

梓「ええ」

律休「猫なのにサラブレッドか」

梓「は?」

律休「いや、なんでもない」

澪尚「梓のパパは凄いんだなー」

梓「パパ?」

澪尚「お、お父さん!」

梓「長い間、私たちはひっそりと山の中で暮らしていたのですが……」

梓「何年か前、一人で人間社会をまわって腕を磨いてこいって、父に言われたんです」

梓「それで、あちこち回って見つけたのが、この桜ヶ丘寺でした」

澪尚「別に私たちの演奏なんて、大したことないと思うけど……」

梓「いえ、皆さんの演奏には、どこか魅かれるところがあったんです」

梓「だから、しばらくこのお寺をねぐらにして、皆さんの生活を見学させていただきました」

律休「そのうちに、一緒に演奏してみたいって思うようになったってわけか?」

梓「ええ、澪さんの姿に化けて、唯さんに隣町までお使いに行くよう頼んだんです」

梓「それから唯さんのふりをして皆さんの中に紛れ込みました」

梓「なぜか唯さんは、すぐにお寺に帰ってきてしまいましたが……」

律休「唯のことだから、多分何かの拍子に用事を忘れちゃったんだろうな」

澪紬「さもありなん……」

澪尚「そんなまどろっこしいことしなくても、『一緒に演奏したい』って普通に言ってくれればよかったのに」

梓「すみません、でも、受け入れてもらえるかどうか不安で……」


梓「それに、ずっと見てて思ったんですけど、皆さん練習しなさすぎです!」

律澪紬「ぐさっ」

梓「部外者として指摘するよりも、唯さんの姿になって積極的に練習する姿勢を見せた方が、皆さんやる気になってくださるって思ったんです!」

澪尚「……なんか申し訳ない」

律休「でもさ、その割には私たちの中で一番熱心におはぎ食ってたじゃん」

梓「そ、それは……ああいうお菓子を口にするのが初めてだったので、つい……」

紬「うふふ、いつでも食べに来ればいいわよ、ねえ皆?」

律休「っていうかさ、お前うちのバンドに入らないか?」

梓「え……」

律休「まあ無理にとは言わねーけど……でもさ、今日の唯の真似、すっげー似てたじゃん」

梓「はあ、それが何か?」

律休「それだけ唯のこと、よく観察してるってことだろ? 私たちでもあそこまでそっくりにはできねーよ」

梓「えと、それは、お、同じギタリストとして参考に……//」

紬「あらあら」

律休「見てるだけじゃなくて、一緒に練習することで得られるものもあるんじゃねーの?」

紬「そうよ、見てるだけじゃいつまでたっても仲は進展しないわよ!」

梓「……でも私、皆さんを騙したのに、仲間になんて」

澪尚「大丈夫だよ、誰も気にしてないさ」

梓「……では、私を、皆さんのバンドに……加えていただけますか?」

律休「おう!もちろんだぜ!」

律澪紬「ようこそ!『出家後ティータイム』へ!!」

梓(え……何その微妙な名前)



律休「いやー、なにはともあれ大団円だなー!」

紬「唯ちゃんもきっと喜ぶわね」

澪尚「あれ、そう言えば唯は?」

律休「え、誰も縄解いてやってないのか?」

律澪紬「……」


律たちは一斉に部屋を飛び出し、元の部屋へ急いだ。


ガララッ

律休「唯! 大丈夫か……えっ!?」


四人が駆け込んだ部屋の中には、唯にそっくりな人間が、二人。


律休「ま、またかよ!!」

紬「今度こそ狐かしら!」


入ってきた律休たちに気付いたのか、そのうちの一人が振り返った。


憂「あ、皆さんお久しぶりです。 私、憂です」

律休「な、なんだ憂ちゃんかー」

梓「えーと……」

紬「憂ちゃんは、唯ちゃんの妹さんよ」

憂「皆さんに差し入れを持って来たんです」


憂の後ろでは、縄を解かれた唯が、おにぎりを一心不乱に食らっている。


紬「唯ちゃん無事だったのね」

律休「腹を空かして倒れてるかと思ったぜ……」


安堵の笑みを浮かべる四人。

それに合わせて、憂もにっこりとほほ笑んだ。


澪尚「ああ、憂ちゃんごめんな、唯が縛られてて驚いただろ」

律休「これには訳があってだな……」

憂「ええ、全部聞きましたよ」

憂「皆さん、お姉ちゃんにひどいことしたらしいですね?」

律休「え、えーと……」


柔らかな笑みを崩さずに、憂がゆっくりと歩みよってくる。


澪尚「そ、そうだ! そのことなんだけど唯、伝えることがあるんだ!」

律休「唯、なかまがふえるぞ!」

紬「やったね、唯ちゃん!」

憂「……」ニコニコ


律澪紬「ご……ごめんなさーい!!!」


その日、律休、澪尚、紬の三人は、すごく叱られた。



梓「あの、唯さん、今日はすみませんでした」

唯「気にしてないよ! それより、これからよろしくね、あずにゃん!」ギュッ

梓「あ……はい!///」

唯「ああ、でもあずにゃん……」ギュー

梓「い、痛いですよ……唯さん」

唯「私の分のおはぎを食べたのは……気にしてるから」ギリギリ

梓「ひ!、ご、ごめんなさーい!!」


その日、梓も、すごく叱られた。



#2 おわり


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「以上、軽音楽部による、劇『りっきゅうさん』でした」

ワーワーパチパチパチパチ


和「なにこれ」



おわり



最終更新:2011年09月15日 22:40