憂「そうなの?」
梓「うん、きっと純は私が好きだね」
憂「どうしてそう思うの?」
梓「だって2年続けた部活やめてまで軽音部入ってくれたんだよ?」
梓「下心以外にありえないと思わない?」
憂「それは私も同じだよ。お姉ちゃんすきすき部、なんてね」
梓「憂はその部活やめてないと思う……」
憂「あ、そっか」
梓「で、どう?」
憂「うーん。純ちゃんは特別な気持ちとかないと思うけど……」
梓「よく考えてよ。ほら、バレンタインのときとか抱きしめられたじゃん」
憂「あれは……確かにそうだけど、純ちゃんだってそんな気持ちで抱きしめてないよ」
梓「いや。確かなラヴを感じたよ、私は。愛をね」
憂「そんなに気になるなら純ちゃんに直接聞いてみようよ」
梓「だっ、だめだよそんなの! それでウンって答えられたら私どうしたら……」
憂「つきあってみたら?」
梓「ば、ばっ、ばか! 女の子どうしでそんなのだめにきまってるもん!」ポカポカ
憂「痛い痛い! これはお姉ちゃんと付き合ってる私への社会からの弾圧を暗喩しているのだろうか!?」
梓「はっ、ごめん……ついぶっちゃった」
憂「ううん、平気だよ。……でも梓ちゃん」
梓「はいっ」
憂「梓ちゃんは、純ちゃんのこと好きだよね?」
梓「えっ、それはないよ」
憂「ほんとに?」
梓「うん、だから……もし純が私のこと好きだったら困るなあって」
憂「……やっぱり、そういうことははっきりさせたほうがいいよ」
憂「いくら純ちゃんと仲良くて一緒にいても、本当の気持ちを覗き見ることはできないもん」
梓「……でも」
憂「大丈夫。誤解なら笑ってすませたらいいし、もしそうなら、ちゃんとお断りしよう?」
憂「純ちゃんはそんなに聞き分けのない子じゃないよ」
梓「……そうだね。今日、純に話してみようかな」
憂「それがいいよ。……純ちゃん、遅いね」
ガチャ
梓「純っ!?」バッ
直「……中野先輩、私は奥田直です。そろそろ下の名前も覚えてくれませんか」
梓「あ……うん、ごめん直」
菫「純先輩なら、さきほどすれ違いましたけど……」
憂「ほんと? スミーレちゃん」
直「ええ、私も一緒にいたんですが、なんだかすごく急いでる様子で」
直「早口でよく聞き取れなかったんですけど、中野先輩に伝えてほしいと」
梓「私に伝言? なにかな」
菫「はい、あの……えっと」
菫「き、聞き間違いかもしれないんですけど……」
憂「ま、まさか……」ゴクッ
梓「……い、いいよ、遠慮しないで? 純がなに言ったの? 私に伝言って?」
菫「その、『彼氏の家に行く』と……聞こえたような……」
中野「……」
直「中野先輩?」
中野「なに……それ……」
憂「あ、梓ちゃんしっかり!」ユサユサ
梓「はっ! え、なに、聞こえなかったんだけどー菫ー!」グググ
菫「え、この手はなんでしょうか……」
梓「いや、首……しめようと」
菫「……? こうですか?」ガシッ
梓「」ダラーン
憂「梓ちゃーん!」
菫「冗談ですよ」ニコッ
梓「ノってあげました!」キャピッ
直「……別に構わないんですが、中野先輩は鈴木先輩に用があったんじゃないですか?」
梓「あっ、そうだよ! 純め、彼氏……彼氏って……」ヒッグス
梓「わ、わたし……純を追わなきゃっ」タタッ
菫「梓先輩!?」
直「ころころ変わる人だなあ」
憂「私も心配だから、梓ちゃん追っかけてくるね!」タタッ
直「えっ、ちょっ……」
菫「……」
直「……あ、あれ? なんか、二人になっちゃいましたね」
菫「そ、そうですね」
直「中野先輩、なんだかただならぬ感じでしたよね」
菫「はい、心配です……」モニョモニョ
直「うん……」
菫「……」
直「……」
ワー ファイットー
菫「えっと、とりあえず座りますか!」
直「そ、そうですね!」
菫「お茶だしますね」
直「あ、ありがとう。……い、いや私も1年なんだから私も手伝いますよ!」
菫「大丈夫です。まかせてください」ニコッ
直「……はい」
菫「♪」カチャカチャ
直「……菫さんって、どうしてお茶汲みをしてるんですか?」
菫「えっ……まあ、こう……そこにティーセットがあったから……とか」
直「……そ、そうなんですか。……それにしても、どうして軽音部の部室にティーセットが……」
菫「あ、それはおじょ……んっん! OGの先輩が残していったみたいです」
直「へぇー……高そうなのに、優しい先輩だったんですね」
菫「優しい? フッ……」
直「え?」
菫「ああ、いえいえ。きっと優しい人でしょうね。今度話を聞いてみたいです」
直「そうですね……」
菫「はい」コポポポ…
直「……」
直「えと、菫さんってどうして軽音部に?」
菫「ん、えーと……なんだか、成り行きで」
直「成り行き……私も似たようなものですよ。ここぐらいしか、私を受け入れてくれそうになくて」
菫「……帰宅部ではだめだったんですか?」
直「わたし、兄弟多くて。家にいるとちょっと狭苦しいんです。だから部活でもしようかなって」
菫「私も家は窮屈でしたね」
直「そうなんですか? ぜんぜんそうは見えないですけど」
菫「えっ、見えないってどういうことですか?」
直「いやなんか、菫さんからはイイ育ちなオーラが……なんとなくハーフかクオーターっぽいし」
菫「そんなことないですよ。純国産の中流階級です」クスッ
直「う……」カアッ
菫「あの、私べつに偉いわけじゃないですし、敬語はやめませんか?」
直「えぅ、でも、お世話になってますし。お茶とかお菓子とか」
菫「あれは私が買ったものではないですし、気にしないでください」
直「は、はぁ……えっ、じゃあ一体どこから持ってきてるんですか?」
菫「直ちゃんっ」
直「は、はいっ!」ドキーン
菫「私はもう敬語つかわないからね? 直ちゃんも仲良くしよう?」
直「あ、う、うん、えぇっと……」アセアセ
菫「……」
直(仲良くしようとはいってもなあ……菫さん、私よりちょっとだけ先輩だし、先輩とも上手に話してるし)チラッ
直(……すっごく可愛いんだもんなあ。引け目感じちゃうっていうか)ドキドキドキ
直「……う、なんか顔赤いかも」ペタペタ
菫(直ちゃんからはまだ壁を感じるなあ)
菫(ここはお嬢様直伝、琴吹流メガネっ子と仲良くなる術で接近してみよう!)テクテク
直「あ、な、なあに、菫さん」
菫「……すみれ、でいいのよ?」スッ
直「ひえっ!?」
菫「直ちゃんはもっと自信をもっていいよ? こんなに可愛いんだから……」スス…
直「あ、あのっ、菫さんっ!?」
菫「こんなものが目の前にあるから、自分の可愛さがわからないんじゃなくて?」ヒョイ
直「あっ、めがね……」
菫「私を見て、直ちゃん。その綺麗な瞳で……」
直「あ、あ……い、いけませんわ、このようなことは……」ドキドキ
菫「いいの」グッ
直「んうっ……」
ガチャ
直「!」ビクッ
直「! っっ!」バタバタ
菫(ごめんね直ちゃん。これきっかり5秒なの)
純「あれ、スミーレたち何して? ……」
ゴポポポ…ジュウー
純「あっ、オーオー! お湯がふきこぼれてるじゃーん! びっくりして今見たものわすれたー」カチッ
チュッ
菫「ぷは」
直「ふあ……」トロンッ
純「……」
直「す、すみれ……」ギュッ
純「あのー、やっぱ私ここにいちゃだめな感じ?」
菫「いっいえ! もう終わりましたから!」
直(すみれ……)ギュー
純「そうは見えないけど」
菫「直ちゃん! もう離れよ、ねっ! 純先輩来たから!」
直「あっ、うん……ゴメン」
純「いやはや、すまんね」
直「と、ところで、鈴木先輩どうしたんです?」
純「どうしたって?」
直「今日は部活は休まれるんじゃ……」
純「いんや? なーに、そんなに二人がよかった?」
直「まあ、半分はそんな感じで……」テレテレ
菫「で、でもあの、純先輩がおっしゃいましたよね、恋人の家に行かれると……」
純「えっ、なに? そんなこと言ってないけど……」
菫「やっぱり聞き間違いだったんですかね」
直「私たちには、純先輩が彼氏の家に行くって聞こえたんですが……」
純「ちーがーうーよ。そもそも彼氏とかいないし」
直「じゃあなんて言ってたんですか?」
純「それはそのう……カレー(隠語)しに行く、って」
菫「カレー?」
純「すなわちウンコだよ」
直「……最低だこの人」
菫「……言ったった!」
純「ところで梓と憂の姿が見えないけど?」
菫「あっ、お二人は実は……純先輩を追いかけるって飛び出していってしまって」
純「なぬう?」
純「あいつらは……平気で人の尾行をするようになっちゃったね」
直「でも、中野先輩、彼氏って聞いて泣いてましたよ?」
菫「あっ、直ちゃん……」
直「え?」
純「……梓が泣いてた? そんなことで?」
菫「純先輩の行き先を伝えた私の首をしめようともしました」
純「無差別!?」
純「と、とにかく呼び戻さなきゃ……」パカッ
カチカチャカチャ
プルルル…ツッ
純「もしもし梓!? いまどk」
梓『じゅーんんんううぅ!!』
純「……」キーン
梓『じゅん゙っ、あの゙ね゙、あの゙ね゙っ、わだじ、じゅんのことがっ』エグエグ
純「ちょっ、ちょ、落ち着け!」
梓『じゅん、すきぃっ! やっと、やっどわがったの、じゅんがすきだって、だぁ、だからっ』
梓『じゅんの、かれしと、わかれてっ!!』
直「おぉー」パチパチ
純「……」カアァ
純「あずさ。いいから部室に戻っといで」
梓『やだ。いま返事して』グスッ
菫「ふふ」ニコニコ
純(……1分前まで見る側だったのに)
純「あー、梓よ。落ち着いて聞くんだ」
梓『うん』
純「まず、彼氏と別れることはできない。私に彼氏はいないから」
梓『……えっ?』
純「ふたつめ。梓が私を好きなことくらい知ってたよ。とっくにね」
梓『へ? え、そんな……じゃあ……』
純「落ち着け。みっつめ。私も梓が好きで、我慢してたけど……」チラッ
純「いま、吹っ切れたというか、うらやましくなったから。付き合おう、梓」
梓『え? えっと……え、マジ?』
純「マジ。私は部室にちゃんといるから。憂連れて早く戻ってきな」
梓『うん……』
純「なんかあんまし嬉しそうじゃないね」
梓『現実感わかなくて……すぐ戻るよ』
純「おうよ。憂も一緒にいるんだよね?」
梓『え、憂? 部室にいないの?』
純「えっ?」
そのころ!
憂「お姉ちゃんおねえちゃーん♪」ハニャーン
唯「ういういー♪」ナデナデ
憂「すきすきー」チュッチュッ
唯「だいすきだいすきー」チュッチュッ
――――
菫(その日、遅くまで行われた軽音部による憂先輩捜索により)
菫(憂先輩とOGの唯先輩が付き合ってることもバレました)
直「ねぇ、菫……いいでしょ?」
菫「う、うん……」
菫(そして私は、直ちゃんになにか勘違いされてるみたいですけど……)
菫(……まあいっか♪ と思います!)
おしまい
最終更新:2011年09月17日 23:56