……

レンズギター研究所跡 最深部
BGM

律「改めて見てみると、すごい機械だな」

澪「人が一人入れそうなポッドがたくさんあるけど……ここでレンズギターを?」

幸『そうだよ。ここにオリジナルのマスターが入って、あとはすぐにできたよね』

菖『うん、なんか研究者の人がポンってやったらあっという間にできちゃったから、仕組みはぜーんぜん』

唯「この真ん中にあるパネルを操作するのかな?」

奥田『はい。えっと、私が指示するのでパネルを操作してくれませんか? まずは右の……』

梓「わかった。これかな?」ピコンピコン


紬「すごいわ。どうしてわかるのかしら……もしかしてうちの研究者だったの?」

菫『いえ、そうじゃないと思いますけど……』

晶『そろそろ白状してもいいんじゃないか~? お前が何者なのか』

奥田『う……ま、まあ、仕方ないですね。あ、次はそこの左のボタンを』

梓「私も聞きたいな、むったんのこと」ピコンピコン


奥田『そんな大層なことではありませんが……』

奥田『私は勉強以外はからっきしで、何か新しいことをやりたくて音楽を勉強し始めました。でもいくら理論がわかっていても体がついていかなくて何も弾けませんでした……』

奥田『そんなとき、コトブキグループのレンズギターの噂を聞いたんです。楽器とシンクロして演奏能力が上がるなら、私にもできるんじゃないかと』

晶『でもコトブキグループから許可が降りるのは活動中のバンドだけだったはずだぞ?』

奥田『はい。なので……夜な夜なこの研究所に忍び込んで、機械の操作法を勉強してました』

菫『ええっ!? そ、それで抜け道を……』

梓「じゃあ、自分で作ったってこと?」ピコンピコン

奥田『はい。でも……投射された人格も私自身ですから、いくらシンクロしても結局弾けず……慣れないことはするもんじゃないですね……』ズーン

梓「そ、そうだったんだ……なんかごめん、聞いちゃって。あ、終わったよ?」ピコン

奥田『……! これは……』

梓「どう? いけそう?」

奥田『はい! これから私がみなさんをパワーアップします!!』

梓(立ち直り早っ!)

……

奥田『実はレンズに投射された人格とマスターの人格が異なると、本来よりも能力が落ちるんです』

奥田『それを克服するため、試練を受けてもらいます。みなさん、楽器を持って、装置の中に入ってください』

律「試練……か。なんか面白くなってきたな!」

唯「ほい、っと! 入ったよ~?」

奥田『これからみなさんの意識はこの世であってこの世でない場所へ飛びます』

奥田『そこで、私たちのオリジナル……元のマスターに打ち勝ってください。そうすれば、本来の力を引き出せるようになります』

澪「元の、マスターと……」

紬「……戦うのね?」

奥田『はい。では、誰か装置を……』

梓「憂、お願いできる?」

憂「うん。……がんばってください、みなさん」ピコン

唯「ん……あたまが……?」フワッ

……

精神世界

唯「ここは、どこ?」

晶『わからないけど……なんか懐かしい気がする。私たちが作られたときに感じたような雰囲気だな』

唯「私……あなたと戦うの?」

晶『ああ。……来るぞ』


晶「……よく来たな、唯」

唯「……晶ちゃん、なの?」

晶『人間の形してれば名前で呼ぶんかい……』

唯「だってギー太はギー太だもん!」

晶「はっ、思ったより情けない面だな、唯。そんなんで私に勝てると思ってんのか?」

唯「……勝つよ。勝ってパワーアップして、あの激しい格好のお姉さんを倒すよ! もう、真っ暗な世界は嫌だもん」

晶『唯……』

晶「へえ……急にいい目になったじゃん。私の分身はどうだ? こんな腑抜けがマスターでいいのか?」

晶『ま、こんなやつでも少しづつは成長してるからな。私のマスターは、唯だ。行くぞ、唯!』

唯「うん!」チャキッ

晶「よーし、来い! 私を超えてみろ、唯!」チャキッ



唯「そーれっ!」ジャーン ヒュンヒュン

晶「なんだそのしょぼい音は? ギターはこうやって弾くんだ!」ギュイーン ヒュンヒュン

唯「きゃうっ!?」

晶「ほれほれ、どうした!」ジャーン ヒュンヒュン

唯「くうう……か~わ~せぇ~♪」サッ

晶「ほう……あーたーれー! それっ!」ジャーン ヒュンヒュン

唯「いたたっ! む~、ならこれなら……し~びれ――」

晶「しーびれろぉー!!」ビリビリ

唯「きゃあっ!?」ビリビリ

晶『同じ技じゃ劣るな……意表を突く攻撃をするしかないぞ、唯!』

唯「そ……そ、ん、なこ、と言っ、しびれ、るう……」ビリビリ

晶「もう終わりか? 拍子抜けだな……ねーむれぇー!」

唯「ふわぁ……」バタリ

晶『お、おい唯! バカ、起きろ!』

晶「散々だな……とどめだ、くらえ――」

唯「隙あり~!!」ギュイーン ヒュンヒュン

晶「ぐはっ!?」ガクン

晶『唯! 起きてたのか……焦らせるなよ』

唯「えへへ、意表を突く攻撃をしてみました~」

晶「……キュア!」キュルリン

唯「あっ! ずるいよ!?」

晶『ずるいもへったくれもあるか! もたもたしてないで追撃すればよかったのに……』

晶「はっ、甘いな。もう同じ手は通用しないぞ? それそれ!」ジャーン ヒュンヒュン

唯「ひいいっ!」

晶『まずいな……意表を突いて、かつ一発で仕留められるような攻撃しか……』

唯「それなら……新技だね!」

晶『そうは言っても、この場でとっさに考えつくなんて――』

唯「行くよ、ギー太!! すぅぅぅぅぅぅぅ……」

晶『え、もう思いついたのか?』

唯「わああぁぁぁおぉっ!!」  ワ  ー  オ  !

晶「なっ、なんだそりゃ――へぶっ!?」ドサッ


唯「やったよギー太!」

晶『はは……よくやったよ、唯』

レベルアップ
唯 Level 21


晶「うう……あんな技でやられるなんて……」

晶『同情するよ……まったく、唯はよくわからんやつだな』

唯「なんか勝ったのに褒められてない気がするよ!?」

晶「……まあいい。よく私に勝ったな、唯。お前が真のレンズプレイヤーだ」

唯「えへへ、それほどでも~」

晶『またそうやってすぐ調子に乗る……お前はまだまだだからな!』

唯「も~、せっかくパワーアップしたんだからちょっとぐらいいいじゃん~」

晶「600年後にお前の世話が待ってると思うと憂鬱だな……ふふ。じゃ、頑張れよ、唯」

唯「うん、ありがとう晶ちゃん!」


……

レンズギター研究所跡 最深部
BGM

唯「……あれ、戻ってきた?」

憂「お姉ちゃん! 大丈夫だった?」

唯「うん! 私、ちゃんと試練を乗り越えたよ!」

律「なんか、スティックがほとんど重さを感じなくなったな」ヒョイヒョイ

澪「ああ……まるで体の一部みたいだ」

和「パワーアップの効果は出てるみたいね」

紬「うん。前より晶術が全然扱いやすいわ!」

梓「これなら……だれにも負ける気がしません」

純「へー、すごい自信じゃん!」

和「じゃあ、一旦ノイシュタットに戻りましょう。決戦に備えて、いろいろ準備しなくちゃ」

一同「「おー!」」



ノイシュタット 港
BGM

紬「街で必要なものを準備して、うちに戻りましょう。今日はそこに泊まれるように言っておくから」

唯「またふかふかのベッドだね!」

澪「今度こそ寝坊するなよ?」

唯「だいじょーぶ!」ブイ

和「ふふ……唯、何か生き生きとしてきたね」



「それぞれの試練」


唯「澪ちゃんの試練はどんな感じだったの?」

澪「どんなって……そりゃ、熾烈な戦いだったよ。技に晶術に、私たちの全てを出し切ったって感じだったな」

幸『うん。晶たちはどうだったの?』

晶『えー、あー……』

唯「私がわ~おって言って勝ったんだよ!!」

澪「は……?」

幸『どういうこと?』

晶『聞かないでくれ……』


―――

「それぞれの試練2」


澪「なあ……律。お前の試練はどうだったんだ?」

律「私か? 菖のオリジナルとひたすら魔神剣対決してたな~」

菖『危なかったよ~、あと少しで押し負けるとこだったんだから』

律「なんたってオリジナルは魔神炎とかいって炎出してくるからな! ずるいぜ、そんなんあったなら初めから教えてくれよ菖」

菖『ふっふーん、技は自分で編み出すもんだよりっちゃん!』

律菖「『』」キャッキャッ

澪(適当だな……唯もよくわかんないし……真面目にやってた私が馬鹿だったんだろうか……)


―――

「それぞれの試練3」


澪「なあ、ムギの試練は……」

菫『』ガクガクブルブル

紬「? 試練がどうかしたの? うふふ……」

菫『わ、私、オリジナルじゃなくてよかったです……お嬢さまがマスターでよかったです……』ガクブル

澪(一方的な展開だったみたいだな……どっちの試練なんだか)


―――

「それぞれの試練4」


澪「梓、試練はどうだった……?」

梓「かなり激しい戦いでした。今までにないくらい……」

奥田『私と同じくオリジナルは演奏ができませんから、主に晶術で攻めてきましたね』

梓「だからそれに対抗して、私は演奏で攻めました。いろんな種類の技を使って、……って澪先輩?」

澪「うう……私は間違ってなかったんだ……よかった……」ウルウル


……

琴吹邸前

紬「みんな、もう準備はできた?」

律「ばっちりだぜ!」

和「じゃあ、これからは自由行動ね。明日の決戦に備えて休むもいいし、各自のやりたいことをしましょう」

紬「もう暗くなってきたから、あんまり遅くならないでね?」

唯「了解です! どうしようかなあ……?」

晶『明日で最後なんだ、好きなようにしな』

唯「うーん、じゃあ……ふかふかのお布団で寝る!」ダッ

晶『お、おい唯! そんなんでいいのか!?』

梓「あ……行っちゃった」

澪「唯らしいな」

憂「もう、お姉ちゃんったら」

純「私もどっかぶらついてこよっかなー。んじゃ!」

律「ま、各自解散だな!」





晶『眠れないのか?』

唯「うん……ちょっと考え事」

晶『お前が考え事だなんて珍しいな』

唯「ぶー、私だって考えるときは考えるよ! ……ねえ」

晶『何だ?』

唯「明日、私たちが勝ったら……」

晶『……ああ。間違いなく私たちを壊すような命令が出るだろうな』

唯「私はイヤだよ!」

晶『そうは言ってもな……何か対策があるのか?』

唯「うーん……みんなに、聞いてみようかな。探しに行こう!」


ノイシュタット 市街

純「お? 何か光った! レンズはっけーん!」ヒョイ

純「……いいや」ポイ

梓「……どうしたの純?」

純「うわ、いたの梓!?」 

梓「純がレンズ捨てるなんて……珍しいね」

純「うん……なんかさ、破片とはいえ神の眼の力を目の当たりにしちゃったしさ~……やっぱレンズって危ないものなんだなと思って」

梓「……」

純「レンズハンターなんてもうやめて、もっと楽しいこと探そうかな~? ねえ、梓はどうすんの? この戦いが終わったら」

梓「私は……先輩たちと、バンドを組みたい、かな」

純「そっか。てかまだ一回も演奏してないもんね。……お、あれは」

梓「? 何?」

純「私もう戻るね~。んじゃ!」ダッ

梓「あ、ちょっと純! ……なんなんだろ」

梓(レンズは危ない、かあ……この破片も、むったんも……)

唯「あ~ずにゃん!」ダキッ

梓「に゛ゃっ!?」

梓「もう……寝たんじゃなかったんですか、唯先輩?」

唯「うん、ちょっと眠れなくて……あのさ、あずにゃん」

唯(あずにゃんは、まだ知らされてないんだよね……私たちの楽器、壊されるかもしれないってこと)

梓「……何ですか?」

晶『唯……言うのか?』

唯「うん……あずにゃんにも、知っててほしいから」

……

梓「――そんな! 壊さなきゃいけないだなんて……そんなのイヤです!!」

晶『やっぱりこうなるか……』

唯「でもね、どうしたらいいかわからないんだ……」

梓「……他の先輩方にも、聞いてみましょう!」




律「いよいよ明日か~……なんか実感わかないな~。まさか私たちが神の眼と関わることになるなんて」

澪「……そうだな」

律「どうした澪、怖いのか~?」

澪「そ、そんなことないっ! ……あんな災害は、二度とごめんだからな……戦うよ」

律「あの時は何もできずに四英雄の活躍を待ってるだけだったけどな。今回は私たちの手で止めるんだ! 頑張ろうぜ、澪」

澪「……ああ!」


唯「りっちゃん、澪ちゃん!」

梓「ここにいたんですね」

律「おお、唯に梓じゃん!」

澪「どうしたんだ?」

唯「えっとね……ちょっと話したいことが」

梓「一緒にムギ先輩を探しましょう!」


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最終更新:2011年09月25日 23:10