梓「――う、うーん」

梓「以前にかき氷食べた時はいちごミルクだったけど」

梓「ブルーハワイ……子供の時にしか食べたことないから覚えてないなぁ」

梓「唯先輩は何て言ってたっけ……」

梓「あぁ、パープルアルゼンチン……だっけ? これも想像つかない」

梓「そもそも実在するのかな?」

梓「うーん」

梓「少しは気が紛れたかな? 他に涼しくなるような……」

梓「そうだ、肝試し!」

梓「以前にムギ先輩の別荘でやったノリで――」


~~~

律「――という訳で! 肝試しをしようと思います!」

唯「え~?」

紬「わぁ~」

梓「また唐突に……どうしてですか」

律「やっぱ夏といえば肝試しだろ。夏フェスだけで終わるほど、私らの夏は短くないのさ」

梓「はぁ……まぁいいですけど」

唯「ねぇねぇ、どこでやるの?」

律「よくぞ聞いてくれた!」バサッ

紬「地図? ここにチェックしてあるけど」

唯「ここ山だよね」

律「そう! 何を隠そう、その変哲もない山……最近ウワサなんだ」

唯「ウワサ? 何の?」

律「決まってんだろ? 出るって話だよ」

紬「おぉ~」

梓「ムギ先輩の目が輝いてる……あ、でも私もそのウワサ聞いたことあります」

唯「えっ、あずにゃん知ってるの?」

梓「はい。私は純に聞いたんですけど、最近有名みたいですよ」

律「そうそう! この大波に乗り遅れる訳にはいかないっしょ!」

紬「いかない、いかない!」

唯「私も暇だから別にいいよ~」

梓「受験生の台詞とは思えませんね……」

律「よーし、じゃあ皆OKって事で――」

梓「律先輩、律先輩」チョンチョン

律「っと、なーんだよ」

梓「澪先輩はいいんですか」

唯「あれ、そういえば澪ちゃんの姿がないね」

紬「さっきまでそこにいたのに……」

律「どうせ準備室の隅とかだろ……ほら」バタン

澪「……」

紬「あ、ホントだ」

唯「さすが、りっちゃん」

律「おーい、みーお!」

澪「……かない」

律「ん?」

澪「行かない、行かない、行かない、行かない……!」

唯「おお、凄い拒否反応」

梓「そりゃ、こうなりますよ。どうするんですか」

律「任せとけって。おい澪」

澪「……?」

律「いいか、今年の夏は私達の高校生活最後の夏休みなんだぞ」

唯「そうなんだよね~。いっそ、もうずーっと夏休みでいいのにね」

梓「いや、それはどうかと……」

律「そして私達と梓が、高校で一緒にいられる最後の夏休みでもあるんだぞ!」

澪「あ……うぅ……」

唯「そっかぁ、あずにゃんは来年も夏休みあるんだ~。いいな~」

梓「大学にも夏休みあるじゃないですか。もう、唯先輩は静かにしてて下さい!」

唯「しどい!?」

律「とーにーかーく! 思い出! 思い出作りだよ」

澪「思い出……そうだな、わかった。行くよ」

唯「やった~」

律「それじゃ、今日の夜に集合なー――」

―――

律「――よーし、全員揃ったな」

唯紬「は~い!」

澪梓「はーい……」

律「テンション違うなぁ……まぁいいや。じゃあペアを作ってくださーい」

唯「そっか。二人一組で回るんだね」

澪(……ペア? 唯は勝手にどこか行きそうだし、ムギは何か撮られそうだし……)

澪「あ、梓っ!」

梓「は、はい! 何でしょうか」

澪「梓さえ良ければ、一緒に行かないか?」

梓「え……あ、はい、喜んで!」

梓(まさか澪先輩からお誘いがあるなんて! 高まれ、私のレイジングハート!!)

唯「じゃあ、ムギちゃん一緒に行こうか」

紬「うん、お願いします」

律「決まったなー? それじゃあ、コースは――」

澪「そういや、律は行かないのか?」

律「あぁ、私はあれだよ。舞台裏。盛り上げ役は必要だろ」

澪「……いや、別にいいけど」

律「シャラップ! コースは紙に書いたから、さっさと出発する!」

澪梓「……はーい――」

―――

梓「――わー……やっぱり夜の山は雰囲気ありますね」

澪「えー、あー、うん」

梓「明かりも懐中電灯だけ、人気も全くなし。絶好の肝試し場ですね」

澪「……んー、そう、だなぁ」

梓「? 澪先輩、何か反応が……って、目をつぶりながら歩いたら危ないですよ!」

澪「う……だってぇ……」

梓「わー! そこ崖になってますから! とりあえず目を開けて下さい!」

澪「もう、梓は心配性だな。この程度大丈夫だよ」

梓「いや、虚ろな顔であらぬ方向に話し掛けないで下さい。私まで怖いです」

澪「ううぅ……」

梓「澪先輩?」

澪「梓ぁ!」ガバッ

梓「ひゃあっ!? ど、どうしたんですか!」

澪「も、もう私は限界だ……ここで一生を終えるよ」

梓「何言ってるんです、大した距離じゃありませんから」

澪「でも……」

梓「私もいますから……それより、少し離れてもらえないでしょうか」

澪「えっ」

梓「あの……密着されると、ちょうど澪先輩の胸で……息が……」

澪「わぁっ、わ、悪い!」

梓「ふうっ……さぁ、手を貸しますよ」

澪「梓……ありがとう……」

梓(うっ、震えながら涙ぐんでおずおずと手を出す澪先輩……なんて官能的な……)バサバサッ

梓「わっ、鳥ですかね。少し驚きましたね」

澪「」

梓「あ……み、澪先輩?」

澪「あ、あ、あ、ああ梓ぁぁっ!!」ガバッ

梓「わぷっ! み、澪先輩落ち着いてくださ……」

澪「わああぁっ!!」ギュウゥゥゥゥゥゥ

梓「み、みおせんひゃい……むねのあっぱくが……」

梓(あぁ……でも不思議と充足感が……ここが聖地エルサレム――)


~~~

梓「――あっ、そんなトコまで……あぁもう……」

純「」

梓「これ以上は……うふふふ……ネバーランド……」

純「梓」

梓「って……あ、あれ? 純!?」

純「お、お忙しいようで……」

梓「いや! これはちょっと……な、何でもないの!」

純「改造浴衣着て、謎の言語を発しながら身をくねらせるのが何でもないと……?」

梓「うっ……」

純「ま、まぁ、アイス置いとくから、どうぞ続きをごゆっくりと。じゃあ!」

梓「あぁっ! 純、ちょっと!」ガツッ

梓「痛っ!」ベチャッ

梓「な、何これ……アイス?」

梓「…………」

梓「…………っっ~~~!」

梓「冷た~~~い!!」




おしまい!



最終更新:2011年09月28日 20:00