バターン



律「たのもー!」

唯「かのもー!」

律「何だそれ?」

唯「別に意味はないよ」

梓「遅いです!」

律「わりぃわりぃ、ちょっと追試があってさ」

唯「でもバッチリだったよ、あずにゃん!」ビシッ

梓「いや、最初から追試になるようなことにならなければいいんじゃないですか?」

唯「あずにゃんが冷たい……」グスッ

律「梓……お前も3年になったらわかるさ」

梓「私はそんなことにはならないから大丈夫です。さ、練習しましょう!」

唯「えー、お茶にしよーよー」

律「あれっ、澪とムギは?」

梓「それが、どこか行っちゃったみたいで」

律「どこに?」

梓「それがわかったら苦労してないです」

唯「ケーキ……食べなきゃ死ぬ…………」

律「わ、私も持病の"紅茶を飲まなきゃ死んじゃう病"が……」

梓「ケーキ食べなくても死なないし、そんな病気もありません。さ、練習です」

唯「そ、そんな~、あずにゃん殺生やで~……」

梓「何言ってるんですか。どっちにしろムギ先輩がいない今、お茶なんてできませんよ」

唯「り、りっちゃん助けて~……」

律「唯……お前の死は、無駄にはしない………」

唯「いや~~~~!!」

梓「だから練習しましょうよ!!」

律「まぁ待て梓、澪もムギもいないってことは、合わせられないんじゃないか?」

梓「う……」

唯「そーだそーだ!」

梓「で、でも個人練習はできます!」

唯「論破されちゃったよ、りっちゃん」

律「うぐ……」

梓「というわけで、練習です」

唯「そんな~……」

律「それにしても、あいつらどこ行ったんだ?」


――――

澪「ん……」パチッ

澪「あー、ほんとに寝ちゃってたのか……」ムクリ

紬「……zzZ」スー

澪「おーい、ムギ」ユサユサ

紬「う……うん?」パチ

澪「おはよう」

紬「おはようございます~……」ポテン

澪「って寝るな!」

紬「寝ちゃってたのね」ウーン

澪「そうみたいだな」

紬「どれくらい?」

澪「さぁ、30分ぐらいじゃないか?」

紬「そう……もうみんな部室来ちゃってるかもね」

澪「そうだな。そろそろ帰るか」

紬「うん」


スタスタ


澪「あれ?」

紬「どうしたの?」

澪「こんなとこに雑貨屋あったっけ?」

紬「うーん、どうだったかしら。入る?」

澪「んー、いや、またみんなで来よう。せっかくだし」

紬「そうね」

澪「さっきよりは日が暮れてるな」

紬「うん。でも、最近は日が暮れるのが遅くなったわよね」

澪「暖かくなってきた証拠だな」

紬「あ、見て澪ちゃん」

澪「ん?あぁ、花か。綺麗な花だな」

紬「私ね、こうやって道端でひっそり咲いてる花って好きなの」

澪「へぇ、意外だな」

紬「そうかしら?」

澪「なんとなくだけど、ムギはガーデニングされたたくさんの花に囲まれてるイメージがあったからさ」

紬「少女漫画の読みすぎよ、澪ちゃん」

澪「ふふっ、そうかも」

紬「こうやってね、ひっそりと、でも力強く咲いて際立ってる、それってすごく素敵だと思うの」

澪「確かに、そうかも」

紬「あとね、そんな女性になれたらいいなって」ウフフッ

澪「なんだそれ」クスッ

紬「例え話よ」

澪「そっか。とてもわかりやすい」

紬「花があって、華がある。そんな感じ」

澪「ムギは誰よりも花が似合うよ、そして華やかだ」

紬「ふふっ、ありがとう」

澪「着いた」

紬「結構経っちゃってるわね」

澪「ほんとだな」


ワーワー
ギャーギャー


紬「軽音部の部室からね」

澪「何やってんだよあいつら」

紬「早く行ってあげなきゃね」クスッ

澪「まったく、世話が焼けるよ」フフッ

澪「なぁ、ムギ」

紬「なぁに?」

澪「ムギ言ってたよな、限りある今だからこそ大切にしなきゃって」

紬「そうね」

澪「だから目一杯楽しまなきゃって」

紬「うん」

澪「とても、とてもいい言葉だと思ったんだ」

紬「ありがとう」

澪「ムギの言葉に感化された」

紬「光栄だわ」

澪「だから残りの高校生活、目一杯楽しもうと思う」

紬「その意気よ、澪ちゃん!」

澪「ムギもだぞ?」

紬「もっちろん!」

澪「そのためにも、まずは練習だ!」

紬「おー!」


ガチャ


澪「ただいま」

紬「ただいま~」

律「おかえり!」ガッシ

梓「あ、先輩……助けてくださいです」

澪「何やってんだ?」

唯「あずにゃんがりっちゃんのお菓子食べちゃったんだよ!」

梓「先輩たちが練習せずにお菓子ばっかり食べてるからですー!」

紬「あらあら」ウフフ

澪「まったく……」

唯「人のお菓子を取るなんて、あずにゃんはダメな子!」

梓「こうでもしないと練習してくれないじゃないですか!」

律「よーし、唯!梓はつかまえた、くすぐってやれっ!!」

唯「任されたよ、りっちゃん隊員!」

梓「や、やめてくださいです!」アセッ

律「ふっふっふ……もう逃げられないぞ?」

唯「あ~ずにゃ~ん?覚悟はいいかな~」ワキワキ

梓「にゃ、にゃあああああああああ!!!!」

澪「何やってんだか……」



ソーレソレソレソレ
ニャハハ、ヤメテクダサイデスー
イイゾユイ、ソノチョウシダ!



紬「楽しそうね」クスッ

澪「ほんとにな」ヤレヤレ

紬「練習は……できなさそうね」

澪「ん、まぁそこは私たちにも責任はあるけどな」

紬「せっかく意気込んできたのにね」

澪「こうなるだろうとは思ってたけどな」

紬「ねぇ、澪ちゃん」

澪「ん?」

紬「今日はありがとう」

澪「何だよいきなり、改まって」

紬「とっても楽しかった」

澪「うん、私もだ」

紬「また今日みたいに、お出かけできたらいいわね」

澪「あぁ。また行こうな」

紬「きっとよ?」

澪「もちろん、約束だ」

紬「約束……」

澪「そう、約束」

紬「約束って、いいわね」

澪「あぁ。約束の数だけ、未来があるんだ」

紬「約束の数だけ……未来がある……」

澪「だからムギ、これからもたくさん未来をつくろう」

紬「澪ちゃん、それって告白かしら?」

澪「ば、ばか言うなっ///」

紬「ふふっ、わかってる。この軽音部のみんなで、よね?」

澪「うん、そういうことだ」

紬「私との約束も忘れないでね」

澪「もちろんさ。次はどこに行こうか?」

紬「あら、気が早いわね」

澪「いいんだよ、その方が楽しみじゃないか」


約束の数だけ未来がある
大切な今日の積み重ねが
いつか優しい思い出となって
そして新たな未来へと繋がる
だから目一杯今を楽しもう



紬「ねぇ、澪ちゃん」

澪「ん?」

紬「ううん、なんでもない」ニコッ

澪「なんだそれ」クスッ




【おしまい】



最終更新:2011年09月28日 21:40