・・・・・

純「遅れちゃったかな…まぁ大丈夫か」タタタッ

純「え-っと、音楽準備室への近道は…」

先輩C「鈴木?」

純「!!」ビクッ

先輩C「こんな所でなにやってるんだ?」

純「あ…センパイ」

純(急に声かけられてビックリしたー…)

先輩C「集会はもう終わったのか?」

純「はい、部長も副部長も決まりましたよ」

先輩C「そうか。私たちが引退したからって、気を緩めたりするんじゃないぞ」

純「分かってますって。それじゃ…」

先輩C「ん? どこに行くんだ?」

純「え?」

先輩C「帰るんだったら反対方向だろ。そっちは音楽室だぞ」

純「あ…えっと……」

純(どうしよう…センパイには軽音部の手伝いをするって言ってもいいのかな……)

純(センパイってあんまり軽音部のこと好きじゃなさそうだし…もし事情を話しちゃったら)


先輩C『なんだと、軽音部のライブの手伝い!?』

純『い、いえ、これには海よりも深いわけが……』

先輩C『なんであんなふざけた部活に手を貸すんだ!!』

先輩C『どんな理由があってもそんなのは認めない!!』

純『お、落ち着いてください…』

先輩C『なるほど、どうやらお前にはジャズ研の部員としての誇りがないようだな。もう一度鍛えなおしてやる!』

純『ひいいいぃぃ!?』


純(…――って、なりそう)

先輩C「どうした、さっきから難しそうな顔をして」

純「い、いえ! 実は音楽室に資料を取りに行こうかなって思って!」

先輩C「資料?」

純「その、楽譜とか…楽譜的なものとか……」

先輩C「楽譜的なものって、なんだそれ」

純「だ、だからですね」

先輩C「正直に言え。お前が嘘をついてるのはバレバレだぞ」

純「えっ…」

先輩C「本当の事を言わないのなら……力づくでも言わせようか?」

純「軽音部の手伝いに行ってきます!!」

先輩C「軽音部の手伝い?」

純(終わった…叱られる&お仕置きだ……)

純(ごめん梓…憂…今日は練習に行けそうにないや)

先輩C「なんだ、そんなことか」

純「へ?」

先輩C「行くんだったらそう言えばいいだろ。なんでわざわざ嘘をつく」

純「あの…怒ってないんですか?」

先輩C「なんで怒る必要があるんだ?」

純「だって、センパイって軽音部のこと嫌いですし行ってもいいのかなーって…」

先輩C「誰が嫌いなんて言った…。ジャズ研の活動に支障がないのなら、手伝うなりなんなり好きにしろ」

純「じゃ、じゃあ行ってもいい許可もらえるんですか!? 怒らないんですか!?」

純「よかったー」

先輩C「お前…私のことなんだと思ってたんだ」

先輩C「そもそも、なんの手伝いをしに行くんだ?」

純「あ、はい。実は友達が軽音部の先輩達にシークレットライブをプレゼントしたいっていうんで、ベーシストとして手伝いを」

先輩C「鈴木が? 軽音部に他のベーシストはいないのか?」

純「二年生一人だけなんですよ」

先輩C「そういえば…人数は少なかったな、軽音部」

純「あの~…本当に行っても大丈夫ですか?」

先輩C「しつこい、好きにしろって言っただろ。それとも私が行くなって言ったら行かないのか?」

純「あ、いえ。なんかこうあっさりと許可が貰えるとは思ってなかったんで」

先輩C「それにしても……鈴木がベースを」

先輩C「……いい機会だ」

純「え?」

先輩C「鈴木!!」

純「は、はい!」

先輩C「どうせ手伝うのなら完璧に演奏するんだぞ」

先輩C「そして軽音部のやつらにジャズ研のベーシストの実力を見せ付けるんだ!」

純「え…えっと……」

先輩C「分かったな!?」

純「い、イエッサー!」

先輩C「よし! ジャズ研の部員として、恥ずかしくない演奏をするように」

純(なんか変なプレッシャーが……)

純「じゃ、じゃあ時間なんでそろそろ行ってきます」

先輩C「ああ、遅刻はするなよ。みっともないからな」

純(もう完璧に遅刻なんですけどね……)

純「あっ、そうだ」

先輩C「どうした?」

純「センパイ、受験頑張ってくださいね」

先輩C「え? あ、あぁ…ありがとう」

純「それじゃ、失礼しまーす」タタタッ

先輩C「……あいつもあいつで、変なやつだ」


――図書館

先輩B「あっ、来た来た~」

先輩A「遅かったね、なにやってたの?」

先輩C「いろいろと……そういえば、さっき鈴木に会ったぞ」

先輩A「純ちゃんに?」

先輩C「ああ、軽音部の手伝いに行くって言ってな」

先輩C「なんでも軽音部でシークレットライブをするからその助っ人を頼まれたそうだ」

先輩B「シークレットライブ? へ~そんなことするんだ」

先輩B「いいな~」





紬(シークレットライブ…?)


――軽音部 部室

純「おまたせ!」

憂「あっ、純ちゃん来た」

梓「遅いよ純」

純「色々あって…でも、ここからは私もバリバリと練習しちゃうからね!」

憂「今ちょうど休憩タイムに入ったところだよ」

純「せっかくやる気出してたのに…」

梓「タイミング悪かったね」

ガチャッ

梓「!!」

さわ子「あ~ず~さ~ちゃ~ん」フラフラ

梓「せ、先生!? どうしたんですか!?」

さわ子「うぅ……」

憂「だ、大丈夫ですか?」

純「なんか…体調悪そう」

さわ子「……」グリンッ

憂・純「ひいぃっ!?」

さわ子「う~い~ちゃ~~ん」ガシッ

憂「え……あのっ…」ビクッ

さわ子「お茶入れてください!!」

憂「……へ?」

・・・・・

ゴクゴク

さわ子「はぁ~…しあわせ」

梓「なるほど…最近お茶会やってなかったから落ち込んでたんですか」

憂「そっか、ムギ先輩が来なくなったからね」

純「あー…びっくりした」

さわ子「これよこれ! やっぱりこれがないと」ゴクッ

憂「戸棚にクッキーがありました~」

さわ子「まぁ~♪」

純「…一体何部なんだろうねここ」

梓「一応軽音部です……」

さわ子「久しぶりにお茶飲めて、なんだか生き返った気がするわ」

さわ子「これでこそ軽音部ね~」

純「梓、お茶会部に改名する?」

梓「先生…顧問なんですからそんなこと言わないでください!」

純「私もクッキー食べちゃお」

憂「二人の分のお茶も入れるね」

梓「はぁ…なんで毎回こうなるんだろう」

さわ子「いいじゃない、別に」モグモグ

純「そうそう、いいじゃんいいじゃん」モグモグ

梓「よくない!」

憂「お待たせ梓ちゃん、はいどうぞ」

梓「あっ、ありがとう」

純「結局梓も飲むんだ?」

梓「い、淹れちゃったものは仕方ないし!

さわ子「そういえばあなた達、部室でなにしてたの? 二人は軽音部の部員じゃないでしょ?」

梓「シークレットライブの練習を…」

さわ子「シークレットライブ?」

梓「あっ」

純(梓!? バラしちゃってどうすんの!!)

梓(つ、ついうっかり!)

梓「ち、違うんです先生! これはえっと……」

憂「えぇっと、梓ちゃんが部室で一人ギターの練習してるところを私と純ちゃんが通りかかって…」

純「そ、そうそう、梓が一人で寂しそうにしてたからなぐさめに来たんだよね!」

純「まったくー、梓は世界一の寂しがり屋さんなんだから」ナデナデ

梓「な、なにそれ!? 別に私は寂しがり屋じゃないし!」

純「えー、本当に? 私たち二人が来なくても寂しくなかったの?」

梓「べ、別に寂しくはないけど?」

純「んもー、素直じゃないなー…」

純「私は寂びしけどねっ!!」バッ

梓「えっ!?」

憂「私も寂しいっ!!」

梓「ええっ!?」

純「梓は?」

梓「……私は寂しくないっ!!」

純「ぬぅ…強情なやつ」

梓「って、そもそもそうじゃないでしょ!? 私たちが集まったのはクリスマスのシークレットライブの練習のためで……」

憂「あっ……」

純「梓…言っちゃった」

さわ子「ふーん…なるほどね」

梓「……あっ」

さわ子「クリスマス……へー」

梓「ち、違うんです先生! だからこれは…」

さわ子「別に私はなにも聞いてないわよ?」

梓「え?」

さわ子「クリスマス、か…そういえば今年は私も予定ないわね」

憂(これは間違いなく…)

純(来るつもりだ…)

梓(しかも今年〝は〟予定ないって……去年もなかったのに)

さわ子「クリスマス、暇のなのよねー」

梓「あの…先生が来るのは別にいいんですけど、先輩達にはこの事は絶対に言わないでくださいね」

さわ子「なんのこと?」

梓「だからシークレットライブのことです! もー、分かってて言ってるじゃないですか!」

さわ子「ふふっ、大丈夫よ。シークレットなんだから、ちゃんと秘密にしておくわよ」

梓「はぁ…もう」

さわ子「なるほど、だから二人が部室にいたのね」

憂「えへへ」

純「私、ベース弾けるんで」

さわ子「ふーん…よかったじゃない、梓ちゃん」

梓「え?」

さわ子「寂しい思いをしなくて、助かったわね」

梓「だ、だから私は別に寂しがり屋じゃありませんっ!!」

さわ子「ねえ、それより当日はケーキとかある?」ワクワク

梓「結局それですか……」

純「そろそろ練習しなくていいの?」

梓「あっ、そうだった! 練習しないと!」

さわ子「がんばってね、私も及ばずながら手伝うわ」

梓「えっ!」

梓(まさか、先生が顧問として初めて指導らしい指導を…!?)

さわ子「歯ギター、やってみない? 盛り上がるわよ」

梓「……けっこうです」

さわ子「憂ちゃんは?」

憂「わ、私も遠慮します……」

さわ子「そんな遠慮しなくても……そうだ!」

純「え?」

さわ子「歯ベース、挑戦してみない?」ガシッ

純「い、いいです。やりません」

さわ子「なによみんなー、ノリ悪いわよー」

梓「先生は黙って座っててください」

さわ子「!?」ガーン

さわ子「私…役立たず?」

梓「それじゃ、練習始めるよ」

憂「うんっ」

純「さてと、切り替え切り替え……って、梓」

梓「なに?」

純「クッキーの食べかす、口の周りについてる」

梓「えっ!?」

純「もー…しかっりしてよ」

梓「うぅ…///」ゴシゴシ

梓「と、とりあえず練習スタート! ワン・ツー!」


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最終更新:2011年09月29日 00:08