ゆいのいえ!

唯「たっだいまー!」

唯「」

唯「ういー?……まだ帰ってないのかな」

唯「まぁいいや、早速あずにゃんの手作りクッキーをいただくとしよう」スッ


唯「……」ジーッ

唯「……」クンカクンカ

唯「……」ツンツン

唯「……」ペロペロ

唯「……あずにゃん!」パクッ

唯「あぁん!美味しいよぉあずにゃん!!」モグモグ

唯「はぁ~食べてる!私あずにゃんを食べてる!!美味しい!!」パクパクモグモグ

唯「あー美味しくて素晴らしかった~、っと」

唯「……それはさておき」


唯(さっきあずにゃんに抱きついたときの服の下の感触……あれはきっと……)

唯(澪ちゃんのあれだったとしたら、あのくらいの大きさの丸になるよね)

唯(もしかしてあずにゃん……まさか)


憂「お姉ちゃんただいまー!」

唯「あ、ういおかえり」

憂「あれ、お姉ちゃんなんか元気なくない?」

唯「そ、そんなことないよ……それよりお腹空いたー」

憂「はーい。色々買ってきたし、すぐ作るから待っててね」

唯「ありがとー」

唯(あずにゃんをそんな疑惑の目で見たらかわいそうだよね、私のバカバカ)

唯(けど……明日ちょっと確かめてみよう)

憂(お腹空いただけで元気なくなるお姉ちゃんかわいい!)


よくあさ!

唯「あ、ムギちゃんおはよー」

紬「あら唯ちゃんおはよう。今日は早いのね、お菓子が楽しみで寝られなかったのかしら」

唯「あはは、まぁね。」

唯「……」

唯「ねぇ……ちょっとムギちゃんに頼みたいことがあるんだけど、聞いてくれる?」

紬「どうしたのよあらたまっちゃって。どうぞ言ってみて」

唯「ありがと。今日の放課後にね、みんなより先に部室に行ってキーボードの準備してほしいんだ」

紬「唯ちゃんが積極的に練習したがるなんて珍しいわね……霰でも降らなけりゃいいけど」

唯「ち、違うの!っというかさらっとひどい!」

紬「違うって即答するのも充分ひどいわよ、澪ちゃんや梓ちゃんが聞いたら何て言うか」

唯「それはまぁ、さておき……。でね、準備したあとあずにゃんが来たらテキトーに理由つけて部室を出てってほしいの」

紬「へ?」

唯「それから5分くらいの間は澪ちゃんとりっちゃんが中に入るのも食い止めてほしいの」

紬「えーと、もしかしてあれかしら、梓ちゃんと二人きりになりたいってことかしら」

唯「う、うんまぁそんなとこ。お願い……できるかな?」

紬「えぇ任せて!なんなら5分と言わず30分でも1時間でも二人きりにしてあげるから、ゆっくりシていいわよ」

唯「あ、ありがと」

紬(唯ちゃんついに梓ちゃんに告白するのかしら!?そしてその勢いで……あぁん!)ハァハァ

唯「そうそう、もしあずにゃんより先に澪ちゃんやりっちゃんが来たら、今日は諦めて練習しよっか。急ぐことじゃないし……多分」

紬「私はいつだって大丈夫よ」

紬(告白の踏ん切りがなかなかつかないのかしら、乙女ね)キュン


ほうかご!

紬「唯ちゃん!早く部室行くわよっ!」グイグイ

唯「えっわっちょっ引っ張らないでっ」

紬「ほらもたもたしないのっ!」タタタッ

唯「待ってよムギちゃあん!」テテテッ

律「なんだあいつら?……ってか私おいてきぼりかよ」


紬「よし……っと!キーボードの準備は完璧よ」ポロン♪

唯「ありがとうムギちゃん」

紬「そういえば、なんでキーボードの準備がいるの?」

唯「あ、それは、えと……」

唯(言い訳考えてなかった!どうしよう!)

紬「もしかして言いにくい理由?……あっ!」

紬(そうか!梓ちゃんのために『とわにともに/こぶくろ』を弾き語りするのね!)

紬「唯ちゃん私は何も聞かないわ、だから頑張ってね!」

唯「あ、あはは……」

唯「……」コソコソ

紬「何隠れてるの?」

唯「あずにゃんをび、びっくりさせようと思って」

紬「なるほど、じゃあ唯ちゃんが梓ちゃんに気付かれないよう私も尽力するわ」

紬(びっくりさせてドキドキさせて吊橋効果を狙ってるのね!唯ちゃんたら策士!)

唯「……」コソコソ

紬「……」ワクワク


ガチャッ
梓「おはよーございまーす!ってムギ先輩だけですか?」

紬「梓ちゃん!」

梓「はいっ!?」ビクッ

紬「私ちょっと急ぎで澪ちゃんに渡すものがちょっとあるからちょっと行ってくるわね!それとりっちゃんはちょっと来るのちょっと遅くなるって!じゃあねっ!」タタタッ

梓「えっ、はい、あっ、唯先輩は?」

ガチャ
紬「唯ちゃんはそのうち来るわよ、ふふふっ」
バタン

梓「……行っちゃった……」

唯(ムギちゃん不自然だよ!特に最後の笑いとかダメだよバレるよ!)ハラハラ


梓「唯先輩が来るまで何しよう……って、あ、キーボードがもう出てる」

梓「ムギ先輩も練習やる気でてきたのかな」テクテク

唯(キーボードのほうに歩いてく……)

梓「……」

梓「……」ググッ

梓「……」バキッ

唯(黒鍵を1つ取り外した!?)

梓「……」ゴソゴソ

梓「……」カポッ

唯(黒鍵をポケットに入れて、何か別のもの変わりにはめた……)

梓「……」テクテク

唯(何事もなかったように離れてく……やっぱり、ということは……)

唯「あずにゃん……」スッ

梓「!?」


梓「ゆ、唯先輩おどかさないでくださいよ」

唯「ご、ごめん……」

梓「あーびっくりした、いつからいたんですか?」

唯「……ムギちゃんが出ていく前から」

梓「……え?」

唯「あずにゃん……なんで、そんなイタズラするの?」

梓「なんの……ことでしょう」

唯「ダメだよ、私全部見てたもん。今キーボードの黒鍵とったでしょ?」

梓「これは……」

唯「私の推理があってたらとるだろうと思ってた、だからキーボードを準備してこっそり観察してたの」

唯「それに昨日澪ちゃんのベースの弦をとったのもあずにゃんでしょ?服の下に丸めたベース弦の感触があったもん」

梓「えっと……」

唯「あとこれは推測だけど、りっちゃんのスティックと私のピックもとったんじゃない?」

梓「……」

唯「なんで……なんでみんなのものをとってっちゃったの?」

梓「……好きだから、です」

唯「……え」


梓「私は先輩方みなさんのことが大好きなんです。それで、みなさんがいつも手にしてるものが手元に欲しくなって、つい……」

唯「やっぱりそういうことだったんだね……」

梓「やっぱり、ですか?」

唯「うんまぁ、そんなことじゃないかなぁとは思ってた。だって私も……あ!い、いやなんでもないよ!」

梓「唯先輩も?何ですか?スティックとったりしたんですか?」

唯「い、いや違うけど、えっと……その……もぉーー!」

梓「」ビクッ


唯「こうなったら言っちゃおう!うんあのねあずにゃん、実は私もあずにゃんにピックもらって興奮してたんだ」

梓「……はい?」

唯「あずにゃんのこと好きだからさ、そのあずにゃんがずっと手にしてるものを手に入れたって考えたら、もうたまらなくて」

梓「……」

唯「だからあずにゃんも同じように、みんなのものを手に入れて心を満たしてたんじゃないかなっと思ったわけ」

梓「……あの」

唯「クッキーも最高だった、あずにゃんを食べてるみたいだった」

唯「でもねあずにゃん、私気付いたんだ。大事なことはピックを 手に入れた ことじゃなくて もらった ことなんだって」

梓「……えと」

唯「だって私があずにゃんのピックを勝手にとってっちゃったらあずにゃん困るから嫌でしょ?だから、勝手にとってくんじゃなく相手からもらったものだけにしかハァハァしちゃダメだよ」

梓「……その」

唯「そうだ、何か欲しくなったらちゃんと伝えることにしようよ!そしたら私はあずにゃんのピックなりなんなりが手に入るし、あずにゃんも私のもの欲しいんでしょ?」

梓「……あああのっ!今更言いにくいんですけど、何か壮絶に勘違いしてませんか?」

唯「……へっ?」

梓「唯先輩は、私のピックに、その……こ、興奮してたんですよね?」

唯「ピックにもそうだけど、あずにゃんがそれをくれたっていう行為にね。でもあずにゃんは相手の気持ちを考えずにとってっちゃうから、それじゃ相思相愛で本当に心を満たすことはできないよって……」

梓「そ、そこなんですけど」

唯「え、どこ?」

梓「私は確かにスティックや弦、鍵盤をとりましたけど、……興奮するためとかそんな不純な動機じゃありません」


唯「……あれ?」


梓「私は今ギターをやってますけど、いずれベースやドラムやキーボードも上手になれたらいいなって思ってて、それで演奏者として好きな、先輩方の道具をお守り代わりに拝借したんです」

唯「……なんですと?」

梓「だからまぁ、本人にちゃんと言って何かもらうべきだった、というのはおっしゃるとおりで反省してますけど……それ以外の話は受け入れられないです」

唯「……もしかして」

梓「唯先輩が私を好きなだけならまだしもピックに興奮するなんて……」

唯「……」ゴクリ

梓「気持ち悪いです、特にクッキーのくだり!」ダッ


唯「」


……

澪「だーかーらーなんで部室に入れてくれないんだって聞いてんだろ」

紬「唯ちゃんのためなの!お願い、わかって!」

律「それじゃわかんないって言ってんじゃん!ティータイムはまだか!」

澪「おい律それは違うだろ」

律「でもティーセットは中にあるんだぞ!」

澪「だーかーらー!」

ガチャッ

澪「おぉ開いた、って……梓?」


梓「み、澪先輩!?と、律先輩に、ムギ先輩まで」

律「なんだ?梓も中にいたのか?」

紬「あああ梓ちゃんどどどどんな話をしてたの!?」ハァハァ

梓「ムギ先輩……そっか、唯先輩から協力を頼まれてたんですね、だからキーボードの準備もできてた……今わかりました」

紬「ま、まぁね。そそそれで?」ハァハァ

律「おい状況がさっぱり掴めないぞ」

澪「協力ってなんのだ?キーボードの準備って?」

梓「あの……せっかく三人とも揃ってらっしゃるので、聞いてもらっていいですか?」

紬「えぇ聞かせて!」ハァハァハァハァ

梓「みなさん……」

紬(梓「私達付き合うことになりました!」 とか?)ハァハァハァハァ


梓「すみませんでしたっ!!」ペコリッ

紬澪律「……え?」


……

澪「あーそうだったのか……ってかやっぱり弦は梓にとられてたのか」

梓「本当にすみません!」

律「あんなボロボロのスティックでよけりゃ、言ってくれたら普通にあげるのに」

梓「勇気がでなくて……つい」

紬「黒鍵1つを今返されても困るけど……なんならあのキーボードあげるから家で練習したらどうかしら」

梓「え!?いいんですか!?」

紬「私の分はお父様に新しく買ってもらうことにするからかまわないわよ」

梓「ありがとうございます!」

澪「てか梓がベース弾きたいんなら、私でよければ教えてやるぞ?」

梓「ほ、本当ですか!?」

律「私もドラム教えてやるよ、基礎からみっちりな」

紬「キーボードも、家で練習しててわからないことがあったらいつでも教えてあげるわ」

梓「すぇんぱぁい……」ジワァ

澪「おいおい泣くほどのことじゃないって」

律「まぁ廊下で立ち話もなんだし、ゆっくり紅茶でも飲みながら話そうぜ」ガチャッ

澪「お茶のあとは練習だぞ、ってあれは……唯?何してるんだ?」

唯「」

紬「中空を見つめてるって表現がぴったりね」

唯「」

律「口も微妙に半開きだぞ。ってか私達に何の反応も示してないんだが……」

唯「」


澪「なぁ梓、さっき何があったんだ?」

梓「具体的には言えないですけど……私の発言がショックだったみたいですね……」

律「まぁ確かにイタズラの犯人が梓だったってのはショックではあるけど、ここまで抜け殻みたくならなくても」

梓「いやちが、……なんでもないです」

紬「唯ちゃんがこんなんじゃ練習もできないし、とりあえずお茶でも」スッ

律「そうだなそうするかー」

澪「お茶飲んだら練習始めるぞ」

梓紬律「はぁ~い」

唯「」



~終わり~




~おまけ~


ういのいえ!


憂「あぁお姉ちゃんのピックかわいいよお」スリスリ

憂「一昨日学校に行く前に見せてくれたんだっけ、いっぱい練習したからこんなに削れたよーって」ナデナデ

憂「食卓の上に置きっぱなしだったからついもらっちゃったけど、何も言われないってことはもういらないのかな?」クンカクンカ

憂「はぁん!お姉ちゃああああん!!」ペロペロ


~終わり~



最終更新:2010年01月24日 23:46