和「むぎ、明日の放課後に買いに行くの?」

紬「・・・」コクコク

和「丁度よかったわ」

唯「おぉ、和ちゃんも乗り気だ!」

さわ子「二人お揃いじゃなくなるかもね~」ニヤリ

梓「あ・・・」

律「そこは妥協してくれないか」

梓「しませんよ!」

律「しろよ!」

紬「・・・」ニコニコ

さわ子「まだ病にかかっていたのね・・・」

唯「むぎちゃん病だね」

澪「やれやれ」

ギュ

律「ん?」

紬「・・・」スラスラ

律「あ・・・ば・・・ん・・・ち・・・ゅ・・・ーる・・・?」

紬「・・・」コクリ

律「言いたかったのか!」

梓「む、むぎ先輩、そういうのは私を通してください」

律「なんでだよ!」

梓「わ、私がむぎ先輩の声になります!」

紬「・・・」パチパチパチ

純「よく言った」パチパチパチ

憂「梓ちゃんかっこいいよ」パチパチパチ

律「なんの拍手だ」

さわ子「いつもそばにいないといけないじゃない」

梓「だからです」

和「自己完結しないでほしいわね」

唯「キーボードだよ!」

憂「キーボード?」

唯「みなさん、鍵盤にもコードがある事はご存知ですかな」フフン

紬「・・・?」

さわ子「なるほど。コードを声に置き換えるのね」

唯「そうです!」

紬「・・・」キラキラ

梓「・・・」

律「それは途方も無い作業だな」

澪「・・・でも、やる価値は大きい」

唯「あずにゃん・・・負けないよ」

梓「! やってやるです!」

さわ子「見守っていましょうか」

和「そうですね。わたしはコード分かりませんから」

純「鍵盤かー!」

憂「少しなら分かるんだけど・・・」

唯「むぎちゃん、また明日ね~」フリフリ

和「じゃあね」

紬「・・・」フリフリ

律「・・・明日な」

澪「明日」

梓「・・・」

純「ほら、梓・・・」ツンツン

憂「梓ちゃん・・・」

紬「・・・」

ギュ

梓「あ・・・」

紬「・・・」スラスラ

梓(ま・・・た・・・あ・・・し・・・た・・・)

紬「・・・」ニコ

梓「はい、また明日です」

ガチャ

斉藤「・・・どうぞ」

紬「・・・」フリフリ

バタン

斉藤「それでは失礼致します」ペコリ

唯「気をつけてね~」

バタン

ブオオオオオオオ

梓「・・・」

純「それでは、先輩方。私は梓を送っていきますので」ビシッ

唯「頼んだよ」ビシッ

梓「1人でいいよ」

律「送ってもらえって。部長命令だ!」

梓「・・・」

澪「明日な、梓」

唯「明日ね~」

和「学校で」

憂「気をつけてね」

純「それでは~」

梓「失礼します」


唯「じゃ、明日ね~」

憂「ここで失礼します」

和「・・・学校で会いましょう」

律「あぁ、明日な」

澪「また・・・明日・・・」


澪「この言葉がこれほど大切だと思ったのは初めてかもしれない」

律「あぁ・・・」

澪「どうしよう・・・」

律「・・・」

澪「・・・現実が追いついてこない」

律「うん・・・」

澪「梓と唯が一番現実を受け入れているんだと思う・・・」

律「うん・・・」

澪「・・・」

律「帰るぞ」

澪「・・・うん」

律「・・・」

澪「・・・」

律「私もみおと一緒だ・・・追いついてこないよ・・・」

澪「・・・うん」


――――

唯「ありがとね、和ちゃん」

和「え?」

憂「?」

唯「ティータイムにしようって言ってくれて」

和「私は知っていたから、放課後までに準備ができていただけ」

憂「知っていた?」

和「えぇ、山中先生から聞いていたから。むぎの事」

唯「そっかー」

憂「・・・」

和「ねぇ、携帯電話のメールを打つように変換したらどう?」

唯「うーん」

憂「私もそう思ったよ」

和「ドを一回弾くと『あ』、二回続けて弾くと『い』」

唯「・・・」

憂「ド、ドドって弾くと『愛』になるってことだね?」

和「そう。それなら・・・」

唯「モールス信号みたいで・・・」

和「・・・お気に召さないのね」

憂「どうして?」

唯「なんだか作業のようで・・・いや・・・かな・・・」

憂「そっか・・・」

和「そうね。むぎが奏でる音を、気持ちものせた声に変換しないと意味ないわね」

唯「ありがと、和ちゃん」

和「私もむぎの声を聴きたいわ」

憂「・・・うん」

唯「よぉーし!」フンス!


――――

純「よっ」シュッ

チョンチョンチョンチョン ポチャン

純「4回かー」

梓「・・・」

純「難しいね、水面石飛ばし」

梓「子供っぽいよ」

純「まだ子供だよ。よいしょ」

スト

梓「・・・」

純「・・・」

梓「夕陽なのに・・・色がついてないみたい」

純「あらら」

梓「・・・」

純「成長したんでしょ」

梓「夏は・・・終わったんだよ・・・」

純「じゃあ止まったんだ」

梓「・・・」

純「・・・紬先輩の一番近くにいた梓が、梓自身が遠くに行ってどうすんのさ」

梓「・・・」

純「唯先輩に負けるよ?」

梓「・・・唯先輩は・・・凄い人だから」

純「負ける言い訳を今言うのか」

梓「・・・」

純「・・・」

梓「・・・」

純「紬先輩のそばで・・・いや、けいおん部の中で成長していく梓が羨ましく思ってた」

梓「・・・」

純「今も羨ましいかも」

梓「今でも?」

純「怒るなって。状況を羨ましがってるんじゃないよ」

梓「じゃあ、なに?」

純「ごめん。言い方が悪かった」

梓「・・・」

純「部室で梓がケータイの人に会いに行ったとき、すぐに紬先輩の表情が曇ったんだよ」

梓「え・・・」

純「律先輩と澪先輩がすぐ察知して、フォローして始めて私は気づいた
  梓を心配してるんだって。自分の事は置いておいて、梓をね」

梓「・・・っ」

純「2人の・・・いや、5人の結束は固いなって、絆は深く結ばれているなって」

梓「・・・」

純「そういう事だから・・・ごめん」

梓「ううん・・・。・・・・・・ありがと」

純「よかった・・・。よっと」ピョン

タッタッタ

梓「・・・」

純「よっ」シュッ

チョンチョン

ポチャン

純「なんでだ!」

梓「・・・・・・・・・ありがと」



―――――夜


『音楽があるから』

そうだ わたしにも音楽がある  音がある


むぎ先輩の音が 声が 聴こえる


ピンッ

シュルルルルル

バシッ



コイントスで道が開けるなんて思っちゃいけない

だけど 勇気が欲しい

手を開くのが 怖い



―――よかった



9月2日


コンコン

唯「はいよー」

ガチャ

憂「起きてたんだね」

唯「うん。おはよーうい」

憂「おはようお姉ちゃん。ご飯すぐ準備するからね」

唯「分かった。すぐ降りるよー」

憂「うん」

バタン

唯「えーと、これとこれと・・・おっと、これを忘れちゃいけないよ」

ヒョイ

唯「・・・」

ペラペラ

唯「やっぱりむぎちゃんの意見聞かないとね」ガサゴソ

ガチャ

バタン


――――

唯「おっはよ~」

澪「おはよ」

律「おっすー」

憂「おはようございます」

和「おはよう」

唯「朝の挨拶は気持ちがいいもんですな!」

律「そうですな!」

澪「行くぞ」

スタスタ

和「色々考えちゃって寝付けなかったわ」

憂「私もです」

澪「そうだな・・・なにができるんだろう」

和「なにかしよう、なんて思わないほうがいいのかもしれないわ」

憂「?」

澪「特別視しない・・・って事か」

和「そういう事ね」

憂「・・・」

澪「でも、声は聴きたいからな」

和「そうね」

憂「・・・はい」

唯「置いていかないでよ~」

律「ったくー、いつもの事だけども」

唯「わたしたち強くなったよね」

律「そうだよな!」

唯「一歩一歩確実に階段を飛び越えて」

律「いやいや、踏みしめていこうぜ~」

スタスタ

唯「それでも!?」

律「触れてくれない!?」


ガチャ

律「ふぁ~」

澪「律も寝不足か・・・」

律「まぁな~」

「おはよー律」

律「おはよー」

「のどか・・・」

和「・・・え?」

唯「ふぁ~」

澪「・・・ふぁ」

「あくびってうつるよね~」

澪「う、うん」

「紬の事聞いてる?」

唯「!」

和「聞いてるって・・・?」

「昨日のHRでさわ子先生風邪だって言ってたでしょ?」

和「えぇ・・・」

唯「・・・」

「放課後みたんだよ。校庭を男の人と歩いている所を」

和「・・・そう」

「執事さんでしょ?」

和「・・・」

「・・・どうして黙るの?」

和「・・・それは」

唯「むぎちゃんは風邪じゃないよ」

「・・・?」

和「・・・」

「じゃあどうして休んだの?」

唯「それは言えないよ。・・・ごめんね」

「・・・」

和「・・・」

唯「・・・」

「HRの後に呼ばれていたから、知ってると思って・・・さ」

和「・・・」

「言いにくいなら聞かないよ」

唯「・・・うん」

和「時間をくれないかしら」

「・・・分かった」

唯「・・・わたしたちからは言えない事なんだよ」

「・・・うん」

和「不安にさせて悪いわね姫子」

姫子「いいよ・・・」


さわ子「HRを始めます」

律「・・・」

唯「・・・」

澪「・・・」

和「・・・」

さわ子「琴吹さんは今日もお休みっと」

姫子「・・・」

「病院行ったんでしょ?」

律「う、うん・・・」

「一日では治らないか~」

澪「・・・」

唯「・・・」

和「・・・」


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最終更新:2011年10月02日 23:34