84. VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/09/01(木) 21:11:26.74 ID:hNaTs+3Io
律「純、梓は?」

純「おぉ、名前で呼んでくれた」

律「梓は?」

純「・・・捕まえるなら校門だと思います」

律「さんきゅ」

タッタッタ

純「・・・」
85. VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/09/01(木) 21:13:38.61 ID:hNaTs+3Io
律「梓ッ!」

梓「・・・」

スタスタ

律「待てって」ガシッ

梓「離してください」

律「話を聞けって」

梓「・・・聞きません」

律「・・・」

梓「離してください」

律「ちょっと来い」グイッ

梓「嫌です!」バッ

律「・・・」

梓「私にとって部室で過ごした時間は大切でッ」

律「・・・」

梓「むぎ先輩と一緒にいる時間はとても大切なんです!」

律「・・・うん」

梓「その時間を・・・ッ!」

律「だから来いって!」グイッ

梓「嫌ですッ」

律「周りの目があるんだよ!」

梓「ッ!?」

「痴話げんか、か」

「律、男らしく謝りなよ」

律「うっさい、早く帰れ!」

「バイバーイ」

「明日ね〜」

梓「・・・」

律「むぎとの時間を嫌だって思う人がこの世にいるのかよ」

梓「・・・?」

律「その時間の中で貰ったものを、返せない自分がいた事を思い出すって意味だ」

梓「・・・」

律「来い」グイッ
86. VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/09/01(木) 21:17:55.20 ID:hNaTs+3Io
律「私は、時間が解決してくれると心のどこかで思っていたんだ」

梓「・・・」

律「夏前と同じように、朝、むぎが登校してきて・・・っ」

梓「・・・っ」

律「ふ・・・だん・・・どおり・・・に・・・会話をするもの・・・だと・・・思っていたんだよっ」

梓「・・・っ」

律「おはよー・・・って・・・言ってくれると・・・思っていたんだよ・・・」

梓「・・・っ」グスッ

律「なんで梓が泣くんだよ」

梓「泣きそうな声だからですよっ」グスッ

律「・・・」

梓「・・・っ」グスッ

律「唯や澪みたいに受け入れることもできなくて」

梓「・・・」

律「梓のように抗うこともできなくて」

梓「・・・」

律「私1人、別の場所にいるみたいで、そんな自分がいた事を思い出すのが嫌なんだよ」

梓「・・・それなら、むぎ先輩といる時間を思い出すことは」

律「むぎから貰ったものを返したい、それだけのことができないんだ」

梓「・・・」

律「だから嫌なんだよ」

梓「・・・」
87. VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/09/01(木) 21:18:28.08 ID:hNaTs+3Io
律「過ごした時間が大きければ大きいほどな」

梓「・・・」

律「・・・多分これから先もなにもできない」

梓「むぎ先輩がそうして欲しいと言ったんですか?」

律「・・・」

梓「1人でかっこつけないでください」

律「ぐっ・・・」

梓「・・・見損なう所でしたよ」

律「なんまいきだなっ」ガシッ

グリグリ

梓「ちょっ、痛いですから!」

律「当たり前だ、痛くしてんだからなーっ」

グリグリ

梓「離してくださいっ!」ジタバタ
88. VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/09/01(木) 21:20:04.42 ID:hNaTs+3Io
律「拗ねていたのかもしれない」

梓「?」

律「むぎのそばで大きくなっていく梓を、進化していく澪を、強くなっていく唯を」

梓「・・・」

律「私は・・・ってな」

梓「そうだったんですか」

律「・・・なんでこんな事言ってんだよ私は」ブツブツ

梓「・・・」

律「・・・」

梓「・・・澪先輩にも、純にも言われたんですけど」

律「ん?」

梓「私・・・成長していたんですか・・・?」

律「・・・」

梓「・・・」

律「・・・さぁなー」

梓「な、なんですかそれは」

律「・・・自覚が無いのはいいことだけど、その逆も危ういってな」

梓「・・・」

律「・・・」

梓「・・・」

律「・・・最近の私らってらしくないよなぁ」

梓「・・・はい」

律「・・・」

梓「・・・」

ガチャ

ゴスッ

澪「あいたっ」

唯「いたっ」

律「なにしてんだよ」

澪「え、えぇとだな・・・」

唯「聞き耳を立てていたんだよ」

律「素直に白状するなよ。・・・別にいいけどさ」
89. VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/09/01(木) 21:21:12.92 ID:hNaTs+3Io
梓「・・・あれ?」

純「・・・」

律「なんで志村さんがいるんだよ」

純「サ行に挑戦ですか!」

律「そうだぜ!『せ』、と『そ』が残っているからお楽しみに!」

純「予告ですか・・・」

澪「・・・」

唯「どうしよっか」

梓「律先輩、純に披露してはどうですか」

律「えぇ−」

純「なにをお披露目してくれるんですか?」

澪「いいじゃないか」

律「しゃーないな。もう二度とない限定版だからなー味わって飲め!」

梓「むぎ先輩も飲みたいと言うハズです」

澪「・・・どうするんだ?」

律「・・・」

純「・・・」

律「・・・知らない」

スタスタ

澪「やれやれ」

梓「純はどうしてここに?」

純「さっきすれ違ったの気づかなかった?」

梓「・・・うん」

純「気になったからだよ」

梓「・・・」

唯「一期一会だよ」

澪「・・・」

梓「・・・そうですね」

純「なるほどー」

唯「いちご・・・いちえ・・・」

梓「どうして二回言うんですか」
90. VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/09/01(木) 21:22:11.04 ID:hNaTs+3Io
澪「じゃ、明日な」

律「じゃーな!」

唯「じゃあね、純ちゃん、あずにゃん!」

純「はい、では明日」

梓「明日です」
91. VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/09/01(木) 21:25:03.24 ID:hNaTs+3Io
唯「和ちゃん今日来なかったね〜」

律「昨日、今日の私に頑張ってもらうって言ってたからな」

唯「違うよ。昨日、明日の私に頑張ってもらう。だよ」

律「いやいや、今日の和が軸になっているんだから、今日の和が頑張っている事になる、だからそれでいいんだよ」

唯「でも、昨日言った事は昨日の事だから、正確に言うなら明日の私が正しいんだよ」

澪「・・・」

律「いいか唯。時間は常に流れているんだから、和自身もその流れに乗せなきゃいけないんだぞ」

唯「・・・」

律「昨日の和は今日頑張る事に決めたんだから、今日頑張っている和で正しいだろ?」

唯「そうだね」

澪「・・・」

律「昨日今日明日の時間を見比べるとき、中心となるのは今日だから、そう応用したほうが分かりやすい」

唯「でもさ、昨日言った事を変化させるのはおかしいよ」

律「・・・」

唯「昨日、和ちゃんが言った事はこの先変わらないんだよ?」

律「そうだな」

澪「・・・」

唯「今日に合わせることで、言った事を変えちゃったら意志まで変えちゃいそうだよ」

澪「9月2日に言った和でいいんじゃないか?」

律唯「「  そういう問題じゃないんだ(よ)  」」

澪「・・・そうか、悪かった」

律「今日、昨日をみて明日の和・・・ん?」

唯「昨日の和ちゃんは明日の和ちゃんでは・・・え?」

澪「・・・」

律「・・・」

唯「・・・」

澪「どう結論付けるんだ?」

律唯「「  和(ちゃん)は頑張っている!  」」



梓「・・・」

純「結論が出たみたいだし、行こうか」

梓「・・・うん」
92. VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/09/01(木) 21:25:53.61 ID:hNaTs+3Io
梓「どうして今日も送るの?」

純「うーん・・・」

梓「なんで悩むかな」

純「和先輩が危なっかしいって」

梓「・・・」

純「・・・」

梓「・・・だからなの?」

純「憂が言ってた・・・」

梓「?」

純「呆れた顔をしてないって」

梓「なにそれ」

純「違うな。呆れた顔しながらも笑ってないって」

梓「・・・」

純「笑ってないでしょ」

梓「・・・笑え・・・ないでしょ」

純「・・・」

梓「・・・笑える訳が・・・ない・・・よ」

純「・・・そうだね」

梓「・・・」

純「・・・」
93. VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/09/01(木) 21:26:21.02 ID:hNaTs+3Io
梓「・・・」

純「梓が律先輩を怒った理由は知らないけど」

梓「・・・」

純「梓自身が少し変な方向にいっている・・・といいますか」

梓「・・・うん」

純「・・・」

梓「律先輩がそういう事言わないの知っているのに。知っていたはずなのに」

純「・・・」

梓「話を聞けなかった・・・」

純「真面目すぎるなー。梓は」

梓「・・・」

純「さっき、律先輩が言っていた事で思い出したことがあるんだけどさ」

梓「?」

純「時間は川の流れと同じ。・・・らしい」

梓「・・・」

純「河川敷行きますか」

梓「・・・うん」
94. VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/09/01(木) 21:27:19.22 ID:hNaTs+3Io

唯「じゃあね〜」フリフリ

律「気をつけろよ〜」

澪「・・・明日な」

唯「大丈夫だよ〜」

テッテッテ

律「・・・」

澪「帰るか・・・」

律「おっ、かっこいいバイクだ!」

澪「・・・」

律「流行の型ではないな」フムフム

澪「・・・」

律「しかし・・・持ち主の心が宿っているようだ」フフン

澪「・・・」

律「・・・」

澪「・・・」

律「今のコメントどうだった?」

澪「バイクに詳しかったっけ?」

律「なんとなく言っただけ」

澪「そうか・・・行くぞ」

スタスタ

律「こ、コメントどうだった!?」
95. VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/09/01(木) 21:28:03.05 ID:hNaTs+3Io
―――――夜

日常が非日常になることなんて

そうそうある事じゃないと思っていたのに

一つのピースが欠けたら

その代わりを探せばいいと思っていたのに


代わりはいない

欠けさせたくない

非日常なんてすぐそこにあるんだ


『・・・最近の私らってらしくないよなぁ』

そうだな

だけど

これは

リセットしてはいけない



みんなに

ついて来いって

言えるくらいの

―――強さが欲しい
96. VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/09/01(木) 21:29:43.15 ID:hNaTs+3Io
9月4日

カンカンカンカンカン

ダカダダーンッ

ダダダダンッ

律「」スヤスヤ

This song is for my friend in summer time

ドンドンッ

「ねーちゃん、うるせー!」

律「」スヤスヤ

Every day,Every day,Every day Pray the music

ジャカジャカ

ドンドンッ

「起きろー!」

律「・・・ぅん?」

ダンダンダンダンッ

「音止めろー!」

律「・・・ふぁ」

「起きろってばー!」

ジャカジャカ

ドンドン

律「あいつ、ドラムの才能あるんじゃないのか・・・。曲のドラム音と同調してやんの」

ダンダンダダダン

「うるせー!」

律「はいはい、すいませんねー・・・」

ピッッピッピ

律「・・・なんでこんなに音大きくしたんだ・・・?」

ジャカジャカ

Oh, my joy for world, ever more...

    With the music!
律「音楽とともに・・・か」

ダダダンッ

律「久しぶりに眠れた感があるな・・・ん〜」ノビノビ
97. VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/09/01(木) 21:31:07.64 ID:hNaTs+3Io
律「出だしのドラムがいいんだよな〜」

澪「どうせ寝てて聞いてないんだろ」

律「そうですとも!だから聞きなおしましたさ!」

澪「行くぞ」

律「はいよ〜」
98. VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/09/01(木) 21:32:17.74 ID:hNaTs+3Io
バタンッ

「ん?」

澪「り、律!」

「どうした澪?勢いよく扉開けて・・・」

「元気いっぱいの秋山さんって新鮮だね・・・」

「どうしたんですか?」

「大きな声で挨拶するとか?」

澪「ち、ちがう!」アセアセ



和「注目の的ね」

唯「どうしたんだろ」



律「どうしたんだー?」

「澪が元気よく扉を開けたからさ、なにかの意思表示かと思って」

律「え・・・?」

澪「白々しいぞ!」ゴスッ

律「あいたぁ!」

「なんだ、律の仕業か」

「はい解散解散」

「なーんだ〜」
99. VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/09/01(木) 21:33:19.20 ID:hNaTs+3Io
さわ子「今日もお休み・・・と」

ザワザワ

「新学期始まって一度も来ないね」

「風邪ってこんなに長引くものかな」

律「・・・」

澪「・・・」

いちご「・・・」

信代「・・・」


唯「姫子ちゃん」

姫子「?」

唯「月曜日に来るからね」

姫子「・・・」

和「・・・」

唯「・・・」

姫子「・・・うん」
100. VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/09/01(木) 21:35:35.45 ID:hNaTs+3Io
―――――昼

トントントントン

唯「『みち』だよ!」

和「正解よ」

唯「どうですかりっちゃん!」

律「二文字で威張るなよ」フフン

澪「じゃ私が弾くから」

トントントトントントントントトントントン

律「・・・」

和「律、やるわね」

唯「頑張ったんだね」

澪「梓もビックリだ」

律「答えてないんですけど・・・」

和「長かったから分からないわよね」

唯「そうだよね〜」

澪「私が悪かった」

律「ぐっ・・・」

「鍵盤・・・?」

唯「そだよ〜」

「・・・」

「私も気になってたんだけど・・・それなんの練習なの?」

律「音を拾えるようになるための練習だ」

「・・・ふーん」

「そうなんだ・・・」

澪「・・・」

「和も?」

和「えぇ」

「・・・」

姫子「春子も風子もちゃんと聞いたらいいよ。気になるんなら」

唯「うむ。どんと来たまえ」

春子「風邪じゃないでしょ?」

律「うん」

春子「あんたたちの雰囲気が夏前と違うから気になっていただけ。そんじゃ」

スタスタ
101. VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/09/01(木) 21:37:43.92 ID:hNaTs+3Io
風子「昨日秋山さんと中島さんの会話聞こえてたから」

澪「・・・そうだよな。いちごに聞かれたくらいだからね」

風子「いつ学校に来るの?」

和「月曜日ね」

風子「そうなんだ・・・。邪魔してごめんね」

スタスタ

姫子「聞かれたらちゃんと答えるんだ」

律「おぅよ!」

澪「でも、核心ついた質問はしなかったな」

和「そうね」

唯「うん」

姫子「練習の邪魔してごめんね。オヤスミ」

律「彼女はその言葉を吐き捨てるとイヤホンを耳につけ、机に伏せて眠るのであった」

唯「彼女の聴いている曲は、かの有名なきらきら星であった」

姫子「ちがう」

澪「再生してないの?」

姫子「・・・眠るのにボリューム上げないでしょ?」

和「背骨が曲がるわよ」

律「お母さんか」

唯「なに聴いてるの、モーツァルト?」

姫子「・・・」

唯「・・・」

姫子「・・・」

唯「・・・」シクシク

律「誰も・・・悪くないんだよ・・・唯」

唯「うん・・・」

姫子「律から借りた曲だよ」

和「カーテン閉めましょうか?」

姫子「・・・いい」

澪「暑くない?」

姫子「大丈夫」

律「さっきの授業でわからない所があったんだよ」

姫子「先生に聞いて」
102. VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/09/01(木) 21:39:34.30 ID:hNaTs+3Io
信代「昼は何を食べたの?」

姫子「・・・サンドイッチ」

唯「サンドウィッチ伯爵」キリ

和「エドワード・モンタギューね」

律「猿だか牛だかワカンネーな」

姫子「・・・」ガバッ

信代「寝るの諦めたか」

律「信代はどうしたんだよ?」

信代「姫子をイジっているから面白そうだと思って来ただけ」

唯「だめだよ。これから寝るんだから」メッ

和「さ、うちわで扇いであげるから・・・オヤスミ」パタパタ

サヤサヤ

姫子「・・・いい風だけどさ」

信代「いいお母さんだな」

和「なんだか眠たくなってきわ・・・ふぁ」

唯「私もだよ・・・」

澪「みんなで仮眠とろうか」

律「だな」

姫子「・・・」

信代「・・・一斉に伏せたけど」

澪「・・・」

和「・・・」

律「・・・」

唯「・・・」

信代「どうすんのこれ?」

姫子「人の眠気を払っておいて寝るんだ・・・」

律「冗談だよ〜ん」

澪「・・・うん」

唯「」スヤスヤ

和「」スヤスヤ

信代「二人は本当に寝たね」

姫子「・・・」
103. VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/09/01(木) 21:41:00.37 ID:hNaTs+3Io
信代「紙に書いた鍵盤・・・」

律「そうだぜ」

信代「・・・音をどうするの?」

姫子「・・・」

澪「声として聴くんだ」

信代「・・・そっか」

姫子「・・・」フゥ

律「あんまり悪いほうに考えないでくれ・・・な?」

澪「・・・」

姫子「・・・」

信代「・・・」

和「」スヤスヤ

唯「・・・ん」

律「起きたか」

澪「そろそろ先生来るぞ」

姫子「のどか・・・熟睡してるね」

唯「勉強してるからね・・・ふぁ」

姫子「・・・勉強」

信代「勉強・・・か・・・」

唯「和ちゃん起きて〜」ユッサユッサ

和「・・・ぅ・・・ん?」

律「すごい現象が起きています」

澪「滅多にないな」

姫子「・・・律」

信代「・・・澪」

律「ん?」

澪「?」

姫子信代「「  それ、一枚ちょうだい  」」
104. VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/09/01(木) 21:43:03.65 ID:hNaTs+3Io
―――――放課後

律「みんな土日はどーするんだ?」

梓「私は明日CDショップへ」

唯「それなら一緒に行こうよ」

梓「はい。いいですよ」

律「そっか〜」

澪「なにかしたいのか?」

律「そういう訳じゃないんだけどー」

唯「りっちゃんはどうするの?」

律「散歩でもすっかなー」

澪「それなら付き合うよ」

律「うむ。よきにはからえ」

澪「・・・」

唯「よきにはからえってなに?」

梓「好きにしろって事ですかね」

律「偉そうだな」

澪「言ったの誰だよ」

唯「りっちゃんです!」

律「私だよん!」

澪「・・・知ってるけどな」

梓「・・・」

唯「・・・」

律「・・・」

澪「・・・」

梓「・・・」

唯「・・・」

律「・・・」

澪「・・・あのさ」

律「なんだ?」

澪「いや・・・なんでも・・・ない・・・」

唯「・・・」

梓「・・・」

澪「・・・」

律「・・・」
105. VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/09/01(木) 21:44:52.95 ID:hNaTs+3Io
コンコン

ガチャ

純「こんにちはー」

憂「こんにちは」

唯「どうしたの〜?」

純「梓、いつ帰るのかなーって」

梓「先に帰ってていいよ」

憂「うん、分かった」

律「あ、ちょっとまって、蝉時雨れさん」

純「夏は終わったんですよ!」

梓「・・・」

純「って、そんな苗字の人いませんよ」

律「あだ名だ。今日はもう帰ろうぜー」

澪「そうだな」

唯「そだね〜」

律「と、言うわけだから。せ・・・聖歌隊のみなさん」

純「ネタを捻りすぎて自滅しましたね」

憂「クスクス」

律「次は『そ』だかんな!」ビシッ

純「・・・」

梓「それでは、これで失礼します」ペコリ

唯「あとでメールするね〜」

梓「はい」

テッテッテ

純「帰ろう帰ろう」

憂「それでは、失礼します」

澪「来週な」

律「月曜日な〜」

唯「バイバーイ」

バタン
106. VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/09/01(木) 21:45:46.44 ID:hNaTs+3Io
律「・・・」

澪「・・・」

唯「あれ、帰らないの?」

律「梓を帰らせる口実だ」

澪「今は、純と憂ちゃんの二人といたほうがいいと思ってな」

唯「・・・そっか」

律「変に気を使いやがって・・・」

澪「それは・・・しょうがないと思うけど」

唯「・・・うん」

律「・・・」

澪「・・・」

唯「気づいた事があるんだ〜」

律「ほぅ」

澪「気づいた事?」

唯「わたしたちの言葉をクッションのように受け止めてくれる存在・・・だよ」

律「あぁ・・・そうだな」

澪「・・・うん」

唯「・・・」

律「さー・・・て」

澪「する事ってないな」

唯「どうしよっか?」
107. VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/09/01(木) 21:47:28.46 ID:hNaTs+3Io
純「〜♪」

梓「・・・」

憂「純ちゃん、最近その曲をよく口ずさむよね」

純「あ、分かる?マイフェーバリットソングなんだよね〜」

梓「・・・」

憂「どんな曲なの?」

純「ダンスクラシックやアシッドジャズを取り入れたバンドなんだって」

梓「・・・」

憂「アシッドジャズ・・・?」

純「私もよく知らないジャンルなんだけどね」

梓「色々なジャンルを混ぜ合わせたのがアシッドジャズ」

純「へぇ〜」

憂「ダンスクラシックは?」

梓「知らない・・・」

純「・・・」

憂「・・・」

梓「・・・」

純「色々なジャンルって?」

梓「純はジャズ研でしょ」

憂「・・・」

純「話題を探そうとしていたんじゃん」

梓「・・・」

憂「・・・」

純「・・・」

梓「・・・」

憂「ここ、いい所だね」

純「うん。新学期が始まってから梓と毎日来てる」

梓「・・・」

憂「上流では雨が降ったのかな?」

純「勢いがある・・・」

梓「・・・遠雷」

憂「・・・鳴った?」

純「聞こえなかったな・・・」

梓「・・・気のせいかも」
108. VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/09/01(木) 21:48:30.68 ID:hNaTs+3Io
憂「・・・」

純「・・・」

梓「憂・・・」

憂「?」

梓「唯先輩、ギターの練習してる?」

憂「ううん、してないよ」

純「・・・?」

梓「そっか・・・」

憂「変わりにキーボードとにらめっこしてるんだよ」

純「・・・」

梓「そう・・・なんだ・・・」

憂「梓ちゃんはしてる?」

純「・・・」

梓「してるよ。鍵盤の」

憂「違うよ。ギターの練習だよ」

純「・・・」

梓「・・・してない」

憂「お姉ちゃんと一緒?」

純「?」

梓「・・・多分」

憂「そっか・・・」

純「こら、二人で納得しないでくれないか」

憂「お姉ちゃんがね」

梓「今は音を出したくない」

純「・・・」

憂「・・・」

梓「・・・出せない」

純「・・・」

憂「・・・」
109. VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/09/01(木) 21:50:04.11 ID:hNaTs+3Io
梓「澪先輩が練習しようって言わない・・・」

純「え・・・」

憂「紬さんがいないから・・・?」

梓「・・・どうなんだろ。5人揃ったら言ってくれるのかな」

純「律先輩は?」

梓「・・・ドラムには触っていない」

憂「・・・」

純「・・・そっか」

梓「・・・」

憂「梓ちゃん」

梓「?」

純「?」

憂「梓ちゃんとお姉ちゃんが楽器を触らない理由は同じじゃないよ」

梓「え・・・?」

純「・・・」

憂「どうして音を出したくないの?」

梓「・・・それは・・・・・・」

純「紬先輩と演奏したいから・・・とか?」

憂「・・・」

梓「・・・うん。一緒に練習して、一緒に間違えて、一緒に補っていきたい・・・から」

純「・・・」

憂「澪さんと律さんもそうだと思うの?」

梓「・・・うん」

純「・・・」
110. VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/09/01(木) 21:51:07.28 ID:hNaTs+3Io
憂「お姉ちゃんはね、ただ、『鍵盤に集中したいから』それだけなんだよ」

梓「・・・っ!」

純「・・・あらら、まーた霧に迷い込んじゃったか」

憂「もー、純ちゃん」

梓「・・・」

純「えっへへ、ごめんごめん」

憂「でも、根本的なところは同じだよね」

梓「・・・」

純「うんうん」

ゴロゴロゴロ

憂「あっ」

梓「鳴ったね」

純「結構重たい雲がきましたね」

憂「夏は終わったのに・・・ね」

梓「うん・・・」

純「いやいや、のんびりしている場合じゃないでしょ!」

ザァーーーーーーーーー

憂「橋の下行こう!」

梓「うんっ」

純「うわーっ」

タッタッタ
111. VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/09/01(木) 21:52:44.68 ID:hNaTs+3Io
ザァーーー

憂「日没までは時間があるけど・・・」

梓「止まないね」

純「予報では夜からって言ってたのに」プンスカ

憂「しょうがないよ〜」

梓「・・・」

純「走って帰りますか?」

憂「雨の中、傘をささずに踊る人がいてもいい・・・よね」

梓「・・・」

純「よーし行くぞー」

タッタッタ

pipipipi

憂「あ・・・」

ピッ

憂「もしもし、お姉ちゃん?」

梓「純ー、戻ってきてー!」

タッタッタ

純「どしたー?」

憂「うん、河川敷の橋の下で雨宿りしてるとこだよ」

梓「・・・」

純「だれ?唯先輩かな」

憂「ありがとー。それじゃ待ってるね」

ピッ

梓「なんだって?」

憂「傘持ってきてくれるって」

純「ちょっと雨にうたれちまいました」

梓「・・・」

憂「・・・」

純「・・・」
112. VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/09/01(木) 21:53:59.83 ID:hNaTs+3Io
ザァーーーー

憂「雨にうたれて歩く機会なんて、これから無くなるんだろうね」

梓「そうだね。これからは、『あの人どうしたんだろ』って見られるよ」

純「子供なら、それだけで許される光景なんだけどね」

憂「・・・」

梓「・・・」

純「・・・」

憂梓純「「「  三人で歩けば・・・  」」」

憂「ふふっ」

純「あははっ」

梓「・・・」

憂「・・・」ウズウズ

純「私もそうしたいけど」

梓「唯先輩が来てくれるんでしょ」

憂「そうだけど〜」

純「最後のチャンスみたいな・・・そんな感じ」

憂「そうだよね〜」ウズウズ

梓「・・・姉妹だね」

純「うんうん」

憂「どうしよっか?」
113. VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/09/01(木) 21:54:41.72 ID:hNaTs+3Io
唯「どうしよっか?」

澪「うーん・・・」

律「いい雰囲気っていうか、壊したくないよなー」

唯「でも、このまま私たちがここにいても、雨止まないよ?」

澪「うーん・・・・・・」

律「唸るだけか」

唯「・・・」

澪「・・・」

律「・・・」

ザァーー

唯「もうちょっとだと思ったんだけどな〜」

澪「・・・うん」

律「梓・・・笑いそうだったけどな・・・」
114. VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/09/01(木) 21:55:42.44 ID:hNaTs+3Io
律「来たぞ!」

梓「・・・あれ?」

純「澪先輩たちも来てくれたんですか?」

澪「うん、一緒に帰ろうか」

憂「傘・・・持ってきてくれたんじゃ・・・?」

唯「相合傘だよっ!」

純「失礼しますっ」ササッ

澪「あ、あぁ」

憂「お邪魔するね」

唯「はいよー」

梓「・・・」

律「・・・」

梓「・・・」

律「・・・強制はしないが」

梓「・・・お願します」
115. VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/09/01(木) 21:57:07.72 ID:hNaTs+3Io
ザァーー

唯「結構降るね〜」

憂「うん・・・通り雨だと思っていたのに」

唯「季節の変わり目だからね」

憂「暑い日だと思った次の日は肌寒くて」

唯「寒いかと思ったら暑くて・・・涼しくて」

憂「こうやって季節が歩いていくんだね」

唯「そうだね〜」
116. VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/09/01(木) 22:00:23.30 ID:hNaTs+3Io
ザァーー

澪「河川敷にはよく行くの?」

純「梓とは放課後に毎日ですね」

澪「・・・そっか」

純「なんか、話題が無くてもぼんやりできる場所なんで」

澪「・・・そういう場所があるっていいな」

純「・・・はい」

澪「・・・?」

純「・・・」

澪「どうした?」

純「今日は憂がいてくれてよかった・・・と思いました」

澪「・・・」

純「私が茶化して、憂が私を叱る。・・・その流れが出来ました」

澪「・・・」

純「梓が・・・1人で彷徨っている・・・そんな感じだったので・・・」

澪「そうか・・・」

純「・・・はい」

澪「指摘してくれたんだな・・・」

純「・・・っ」

澪「大丈夫。彷徨ってもむぎがちゃんと示してくれる」

純「でも・・・」

澪「ここにむぎがいなくても、梓はむぎを想っている。それが大切な事なんじゃないかな」

純「・・・」

澪「・・・はやくベースを弾きたいよ」

純「唯先輩と一緒だったんですね!?」

澪「え?」

純「・・・」キラキラ

澪「え・・・と・・・・・・?」
117. VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/09/01(木) 22:01:05.38 ID:hNaTs+3Io
ザァーー

律「さっきなんの話していたんだ?」

梓「?」

律「私たちが声をかける前だよ。なんか楽しそうだった」

梓「・・・憂が雨の中、傘をささずに踊る人がいてもいいよね・・・と」

律「・・・ふーん」

梓「これから先、そんな事できないじゃないですか」

律「そうだな」

梓「・・・だから・・・・・・・・・はっ」

律「・・・ニヤリ」

梓「だ、だめですよぉ!」
118. VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/09/01(木) 22:02:02.74 ID:hNaTs+3Io
澪「ん?」

純「?」

タッタッタ

律「・・・その傘討ち取ったりぃぃいいい」

バサッ

澪「あ、こらっ!」

純「あー!」

梓「律せんぱいーっ!!」
119. VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/09/01(木) 22:02:46.53 ID:hNaTs+3Io
ザァーーー

タッタッタ

律「憂ちゃーん!」

憂「はい・・・?」

唯「りっちゃん・・・雨降っているんだよ?」

律「分かってるよ!」

澪「待てりつーっ!!」

純「せっかくの相合傘ー!」

梓「傘渡してくださいーっ!」

ザァーーー

憂「お、お姉ちゃん、走って帰ろう!」

唯「・・・そうだね!」

律「よっしゃ走るぞー!」

ザァーーー
120. VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/09/01(木) 22:03:59.89 ID:hNaTs+3Io

―――――夜

澪も結局楽しそうにしてたじゃんか

なのにゲンコツなんてひっでえの


梓も少しは雨にうたれて気持ちも流せたかな

シャワーとは違った感覚で

少し気分が晴れた



むぎと・・・また笑える気がする




今しか出来ない事は

今やっておかないと

きっと

物足りなくなる

やらなかった事を正当化して

やらない事を出来ない理由にしてしまうんだ

それが当たり前になって

きっと

動けなくなってしまうんだ

そんなの



―――私は嫌だ

121. VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/09/01(木) 23:01:18.87 ID:hNaTs+3Io
9月5日

唯「おっはよ〜」

梓「もうお昼前ですよ?」

唯「感覚的にはおはようなんだよ」

梓「さっき起きたみたいじゃないですか」

憂「さっき起きたんだよ」

梓「・・・」

唯「昨日楽しかったね〜」

憂「雨の中みんなで走ってね」

唯「水溜りに飛び込むなんていつ以来だろ」

憂「小学校低学年くらい・・・?」

唯「それくらいかな〜」

梓「・・・」

唯「むふふ」

梓「・・・?」

憂「ふふっ」

梓「・・・なに?」

唯憂「「  内緒  」」


最終更新:2011年10月05日 23:11