730. VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/09/06(火) 22:37:46.24 ID:51PuW/tjo
―――――夜

ガタンゴトン  ガタンゴトン

唯「」スヤスヤ

冬「」スヤスヤ

律「結局聞けなかったな」

澪「・・・うん」

姫子「・・・」ハァ

純「今の溜息は結構深かったですよ」

姫子「・・・うん。ちょっとね・・・」

純「私がお役に立てるかもしれませんよ、聞かせてもらいましょうか」ドン

姫子「・・・ううん、ありがと」

純「えー、断って御礼を言われるの嫌ですよぉ」

姫子「わざとおちゃらけて、励まそうとしてくれているんでしょ?」

純「うぐっ・・・」

和「あのね・・・、それを言ったら純の厚意が無駄になるのよ?」

姫子「あ・・・ごめん」

純「・・・」

律「照れるなって」ナデナデ

純「こんな時の優しさは辛いですからっ!」

律「知っててやってんだよ」ナデナデ

純「ひどいっ!」

姫子「ふふっ」

純「えへへ」

冬「」スヤスヤ

澪「・・・あの後、夏はどうだった?」

純「正直に言っていいですか?」

律「お?」

姫子「うん、聞かせて」

純「これ以上私たちが踏み込んではダメです。私は冬と夏の間にある溝が埋まるとは思いません」

和「・・・断言するのね」

純「はい。私たちでは夏の傷を抉るだけで、その傷をどんどん大きくしてしまうだけだと思いました」

唯「」スヤスヤ

冬「」スヤスヤ

律「そっか・・・。人の傷なんて計り知れないもんな・・・」

澪「そうだな、・・・私たちはここまでだ」

和「・・・そうね。・・・そろそろ到着するから起こすわ」

姫子「・・・・・・あっさりなんだ」

純「・・・」

姫子「・・・・・・」

731. VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/09/06(火) 22:38:14.25 ID:51PuW/tjo
律「さっきは純の厚意を汲んだのに、今は汲み取れないのかよっ」

姫子「え・・・?」

澪「純は向こうの席とこっちの席に線を引いて『私たち』と言ったんだ」

和「・・・そういう事ね」スッ

純「くすぐったい」モジモジ

スタスタ

和「むぎ、梓、憂、風子、英子・・・そろそろ到着するわよ」

紬「・・・?」

梓「ぅ・・・?」

憂「ふわぁ・・・」

風子「あと五分・・・」ムニャムニャ

英子「・・・到着して発車しちゃうよ」

姉「ほら・・・なつ」ユッサユッサ

夏香「・・・起きてるよ」グラグラ

姉「寝たフリ?」

夏香「話し相手が居ないから目を瞑っていただけ」

姉「私はー?」

夏香「本読んでいたでしょ」

スタスタ

和「・・・よいしょ」ストッ

姫子「・・・」ハァ

純「姫子先輩・・・梓だけだと思います。夏の心に触れたのは梓だけですから」

姫子「・・・そっか・・・ありがと」

純「私はなにもできませんでした・・・。なんかズレた受け取り方しか出来ませんでしたから」

律「・・・」

純「律先輩・・・こういう時は・・・」

律「知っててやらないんだけど」

純「ひどいっ!優しくしてくださいよっ」

律「わがままだな・・・みお」

澪「唯、冬起きて」

律「・・・は忙しいから和がやればいい」

和「・・・」

純「・・・」

和「偉いわ」

純「ありがとうございます!」

律「優しいのかそれ・・・」

姫子「・・・」

ガタンゴトン  ガタン    ゴトン

プシュー

732. VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/09/06(火) 22:42:02.10 ID:51PuW/tjo
和「おやすみ」

律「あぁ、おやすみー」

憂「おやすみなさい」ペコリ

澪「明日な」

唯「はいよ!駄菓子屋でね」

姫子「・・・バイバイ」

冬「」スヤスヤ

唯「はいは〜い」

スタスタ

澪「帰るか」

律「あぁ、今日も大変だったなー」

冬「」スヤスヤ

姫子「私ってさ・・・心狭いかな・・・」

律「なんでだ?」

姫子「さっき、電車の中で・・・純が言った事で、みんなが二人を見放すように聞こえて
      ちょっと嫌な気分になったんだよね・・・」

澪「心が狭い人なら、冬をおんぶしてわざわざ送ったりしないよ」

姫子「・・・」

冬「」スヤスヤ

律「そうだぜー。むしろその逆で大きくて余計なもんまで抱えちゃってんだよきっと」

姫子「・・・そんな事はないよ」

澪「姫子は冬を見ていればいいんだと思う」

律「そだな、二人はさすがにきっついな」

姫子「・・・」

冬「」スヤスヤ

律「代わろうか?」

姫子「・・・」

澪「おーい」

姫子「・・・」

律「ひーめーこーちゃん!」

姫子「・・・え?」

冬「・・・ぇ?」

律「だから冬をおんぶするの代わろうかって言ってるんだけど」

姫子「大丈夫だよ」

冬「えっ!?また!」

澪「びっくりした・・・。起きちゃったんだ」

姫子「降りる?」

冬「もっ、もちろんです!」

律「その返しは間違ってるぞ」

733. VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/09/06(火) 22:42:46.70 ID:51PuW/tjo
冬「あ、嫌って意味じゃなくて迷惑だろうからって事で」アセアセ

律「ブフッ」

澪「遊ぶなっ」バシッ

律「いたっ!」

姫子「よいしょっと」

冬「あ、ありがとうございました」

姫子「・・・ううん・・・気にしないで・・・これくらいしか出来ないから」

冬「・・・」

姫子「・・・?送っていくから行こう?」

冬「どうかしたんですか・・・?」

姫子「どうもしないけど・・・」

冬「やっぱり迷惑だったんじゃ」

律「疲れてんだよっ」ビシッ

冬「いたっ」

澪「・・・」バシッ

律「いたっ!・・・え?」

澪「風子から律が冬を叩いたら叱ってとの伝言を承っている」

律「はぁ・・・左様ですか・・・」

冬「ふふっ」

姫子「・・・さ、行こうか・・・」

律「さっさと帰って暖かいお風呂に入って布団に入って、・・・どうしよっかなー」

澪「勉強しろ」

律「嫌だ!布団に入って勉強させるなよっ」

姫子「・・・」

冬「・・・」

734. VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/09/06(火) 22:43:14.69 ID:51PuW/tjo

冬「上がっていかないんですか?」

律「いいって、私たちも早く帰りたいからな」

澪「うん。よろしく伝えておいて」

姫子「・・・」

冬「はい・・・。せっかく明日もお誘いくださったのに・・・」

律「そんな気にしなくていいって、夏香の姉さんにも言われてんだから」

澪「そうだぞ、明日は念の為に病院へ行くべきだ」

姫子「うん」

冬「・・・はい」

律「じゃーな」

冬「今日も楽しかったです。ありがとうございました」ペコリ

律「ったりめえよ!」

澪「じゃあね、お休み」

姫子「おやすみ」


735. VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/09/06(火) 22:44:01.32 ID:51PuW/tjo
姫子「早く帰りたいんじゃなかったの?」

律「あー、うん」

澪「翻訳すると、姫子が考えている事を聞かせてくれって」

律「心を読むなっ!」

姫子「・・・」ハァ

律「この流れで溜息吐かれると・・・」

澪「冬も心配していたよ・・・?」

姫子「え?」

澪「別れ際、冬の顔がそう言ってた」

姫子「・・・そっか・・・・・・」

律「話したら見えてくることもある。話さないといつまでもそのままだ」

姫子「・・・律って・・・たまに的を射るよね」

律「・・・そんなんじゃねえよ・・・みんなで笑っていたいだけだ」

澪「・・・」

律「だけだよーん・・・」

澪「見て姫子、流れ星」

姫子「・・・?」

澪「ごめん、飛行機だった」

律「こらっ!」

澪「照れ隠しをすると余計恥ずかしかったりするんだぞ」

律「・・・」

姫子「敵わないなぁ・・・ってさ」

澪律「「  え?  」」

姫子「今の二人のやりとり、むぎと梓、唯と和と憂と純」

澪「???」

姫子「救護室でさ、律が冬を叱ったでしょ?」

律「あ、あれは・・・冬が自分を大切にしないから・・・」

姫子「うん・・・、だけどそれを私は読み取れなかった・・・」

澪「・・・」

姫子「冬が心のうちを話してくれていた時・・・むぎは何かを伝えたがっていた
      言葉が・・・っ・・・話せなくて・・・悔しそう・・・だった・・・」

律「姫子・・・」

姫子「その後に・・・っ・・・律が・・・むぎの心を代弁した・・・ようでさっ・・・」

澪「・・・っ」

姫子「そばにい・・・たのに・・・っ・・・聞こえ・・・なか・・・った・・・」

律「・・・」

姫子「私・・・っ・・・玉恵さんから・・・貰ったもの・・・・・・二人にっ・・・渡したいのにっ」

澪「・・・」

姫子「私では・・・渡せない・・・・・・っ・・・それが・・・とても・・・悔しいな・・・っ」

律「・・・」

736. VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/09/06(火) 22:45:38.47 ID:51PuW/tjo
澪「・・・」

姫子「ご・・・っごめん・・・こんなの私じゃないよね」

澪「・・・」

姫子「い、今のっ・・・忘れて」

律「ひーめーこっ」ダキッ

姫子「り、律!?」

律「はは、唯ならこうしたかなって思ってさぁ」

ギュウ

姫子「ちょっ!」

澪「・・・きっと、したな」グスッ

姫子「澪・・・」

律「あのさ、私の旅の話したじゃん?」

姫子「・・・うん」

律「あれは、私ら5人がいたから見られた景色なんだぜ?」

姫子「?」

澪「私たちの内一人でも欠けていたらみられなかったんだ」

姫子「・・・」

律「姫子が玉恵ちゃんから貰ったものってなんだ?」

姫子「・・・それは・・・思い出とか記憶とか・・・で説明できるけど・・・そうじゃなくて」

澪「うん・・・」

姫子「私と玉恵さんが繋がった事・・・。同じ景色を見られたこと・・・。・・・大切な事を教えてもらった事の全て」

律「そうだ!」

ギュウ

澪「いい加減離れろ」グイッ

律「へへっ、すいやせん」

澪「私たちと姫子は繋がっている。そして、冬と夏は姫子と繋がっている」

律「二人がもう一度繋がる事を姫子が望んでいるんだろうけど、それは私たちの望みでもあるんだ」

姫子「!」

澪「だから、大丈夫。きっと・・・必ず・・・絶対に渡せる」

律「そうだ!」

姫子「・・・」

澪「姫子は私たちと同じ輪の中にいるんだ。欠けたら・・・景色がみられなくなるぞ」

律「そうだぜ!だから、心配すんなって」ダキッ

姫子「律!?」

律「なんでかな、二人と姫子の間にあるのが愛おしくてな」オホホ

澪「うわー・・・」

737. VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/09/06(火) 22:46:15.16 ID:51PuW/tjo
pipipipipipi

姫子「・・・?」ピッ

『勝手に帰ってすいませんでした。また姫子先輩と行きたいです』

姫子「・・・」

pipipipipipi

姫子「・・・今度は冬?」ピッ

『今日はありがとうございました。とっても楽しかったです。
  お父さんとお母さんが今度お礼を言いたいそうなので時間がある時にでもいらしてくださいね。
  またみなさんと姫子先輩と行きたいです』

姫子「・・・」

律「へへっ、同時に送信するなんて・・・やっぱ双子なんだな」

澪「勝手に覗くなっ!」グイッ

律「げほっ」

姫子「ふふっ・・・あははっ・・・ははははっ」

澪「ひ、姫子・・・?」

律「ど、どうした・・・?」

姫子「誰かに渡そうなんて・・・いつから偉くなったんだろうね・・・私っ・・・二人からもたくさん貰ってるのに」

律「・・・!」

姫子「それに気付けた・・・それがとても嬉しい・・・」

澪「!」

姫子「あのさ、みんなが旅をして出会った人たちを紡いだのってむぎなんでしょ?」

澪「・・・そうだよ。むぎが紡いでくれたんだ」

律「・・・なんで知ってんだ?」

姫子「憂から聞いた・・・。・・・・・・・・・やっぱり敵わないな」

律「・・・」

澪「・・・」

姫子「むぎを中心として・・・引き寄せてられていく私たちの引力・・・か・・・」


740. VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/09/07(水) 19:10:29.83 ID:Rdx6fWIoo

9月20日


―――――駄菓子屋

エリ「こ、こんにちは・・・」

「あら、いらっしゃい。エリちゃんだったかねぇ」

エリ「な、名前覚えていてくれたんですか・・・?」

「こんな可愛い子の名前忘れるわけないさね、ねぇ虎徹?」

虎徹「・・・」

エリ「い、いやぁ・・・」テレテレ

アカネ「一昨日に来たんですけど・・・閉まってて・・・どうしたんですか?」

「あぁ、ちょいと病院へ行っててね・・・」

アカネ「元気そうにみえますけど・・・」

「腰を痛めちゃってねぇ・・・」トントン

エリ「・・・」

アカネ「・・・」

虎轍「・・・」ピョン

スタスタスタ

「これ、どこへ行くんだね虎徹」

虎徹「みゃっ」

ピョン

虎徹「・・・」ゴロゴロ

エリ「日向ぼっこ・・・気持ち良さそう」

「あのベンチは風も当たるし、いい場所なんだねぇ」

アカネ「・・・」


梓「なんですかね、このネコ」

虎徹「・・・」ムッ

梓「・・・?」

紬「・・・」

虎徹「・・・」フンッ

梓「生意気そうなネコですね・・・」

エリ「梓ちゃんと紬さん・・・?」

「おやおや、あの二人面白いね、しばらくみていようか」

アカネ「二人って・・・虎徹と梓ちゃん?」

「梓ちゃんっていうのかい・・・。そうだよ」ヒッヒッヒ

741. VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/09/07(水) 19:12:29.21 ID:Rdx6fWIoo
虎徹「・・・」ジー

梓「・・・」

虎徹「・・・」フンッ

梓「バカにされているような気がするんですけど、気のせいでしょうか」

紬「・・・」ナデナデ

虎徹「・・・」ゴロゴロ

唯「おはよ〜、どうしたの?」

梓「ネコと戯れていたんです」

虎徹「・・・」フンッ

梓「ん・・・?」

唯「おぉ〜よしよし」ナデナデナデナデ

虎徹「みゃ〜」

紬「・・・」ナデナデナデナデ

虎徹「みゃみゃ〜」ゴロゴロゴロゴロ

梓「・・・」スッ

虎徹「・・・」サッ

梓「避けましたよ!どうして私だけ!?」

虎徹「・・・」フンッ

唯「動物は本能で敵と味方を見極めるっていうから・・・」

虎徹「みゃっ」

梓「・・・私は敵だという事ですか」

虎徹「みゃみゃっ」

梓「ぐっ・・・」

紬「・・・」

梓「見てろです」

タッタッタ

唯「どこへ行くんだい!」

梓「すぐ戻ります!」


「人と人でも波長が合わない人がいるさね・・・。人と動物でもそうなのかもしれないねぇ」

エリ「・・・虎徹が遊んでいるようにもみえましたよ」

「そうかもしれないねぇ・・・」

アカネ「面白い二人ですね」

「そうだねぇ」

唯「お、エリちゃんとアカネちゃんいたんだね」

紬「・・・?」

アカネ「駄菓子を買いに来たの」

エリ「財布にも優しいし〜」

唯「うんうん、そうだよね。私たちの救世主だよ」

742. VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/09/07(水) 19:14:06.78 ID:Rdx6fWIoo
「ここで立ち話もなんだから上がって行くかい?お茶くらい出さなきゃねぇ」

紬「・・・」

唯「ごめんねおばぁちゃん、私たちこれから海に行くんだ」

「そうかい、それは残念だねぇ」

エリ「海?ずいぶんと遠出するんだね」

唯「むぎちゃんともう一度見ておきたいんだ」

紬「・・・」ニコニコ

アカネ「・・・」

「気をつけるんだよ」

唯「はーい。と、その前に・・・電車の中で食べるおやつを準備します」

紬「・・・」コクリ

エリ「・・・私たちもついて行っていいかな?」

唯「うん、いいよ〜」

アカネ「・・・」

「おや、戻ってきたようだよ」

唯「あずにゃん?」


虎徹「」スヤスヤ

梓「ほら、起きて」ユサユサ

虎徹「・・・」イラッ

梓「ほらほら、ネコじゃらし」フリフリ

虎徹「・・・」フンッ

梓「・・・」フリフリ

虎徹「・・・」

梓「・・・」フリフリフリフリ

虎徹「・・・」ウズウズ

梓「本能に従えっ」フリフリ

虎徹「・・・!」シュッ

梓「おっと」サッ

虎徹「・・・」シュッシュッ

梓「甘い甘い」

虎徹「・・・」シュシュッ

梓「ふふ・・・勝った・・・」

律「猫に勝ってどうすんだよ」

澪「梓・・・」

唯「あずにゃん・・・」

紬「・・・」

梓「あ・・・」

743. VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/09/07(水) 19:16:12.65 ID:Rdx6fWIoo

―――――電車内


ガタンゴトン

梓「・・・」グルグル

紬「・・・」グルグル

律「固くなったら食べるんだ」

唯「・・・」パクッ

澪「おいしい?」

唯「早かったみたいだよ・・・」

エリ「・・・」グルグル

三花「・・・」グルグル

アカネ「水あめを必死にまわしているなんて・・・おかしな光景・・・」

さわ子「どうして3人がいるのよ」

律「こっちの台詞だ。どうしてさわちゃんがいるんだよ」

さわ子「ヒマだからよ」

唯「りっちゃん」

律「・・・あ、ごめん」

さわ子「謝ることじゃないわよ。・・・謝られると傷つく事ってあるのよ!」ガシッ

律「うぐっ」

さわ子「・・・」グリグリ

律「ごめんなひゃいごめんなひゃい」

紬「・・・」スッ

未知子「・・・?」

澪「あげるって言ってるんじゃないかな」

紬「・・・」ニコニコ

未知子「あ、ありがとう・・・」

梓「それじゃ私のをどうぞ」スッ

紬「・・・」コクリ

唯「あずにゃんどうぞ」

梓「それ・・・一度口に入れましたよね」

唯「幸せの連鎖だよ」

梓「論点がズレていますよ。気持ちだけいただきます」

唯「分かったよ」パクッ

エリ「幸せの連鎖・・・。はい三花」スッ

三花「・・・それ受け取ったら二つ所持する事になるんだよ」

エリ「それじゃ・・・どうぞ、さわ子先生」

さわ子「それは幸せの押し売りというのよ」

エリ「・・・」グサッ

744. VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/09/07(水) 19:17:29.13 ID:Rdx6fWIoo
律「ひでえ・・・」

アカネ「ちょうだい」

エリ「どうぞ」

アカネ「・・・はむっ」

澪「おいしい?」

アカネ「・・・それほどでもないよね」

エリ「そっか・・・」ニコニコ

さわ子「どうして嬉しそうなのよ」

三花「アカネは甘ったるいもの苦手だからですよ」ハムッ

未知子「確かに甘いね・・・」

唯「そこがいいんだよ。喉渇いちゃうちゃうけど」

紬「・・・」スッ

唯「お茶だね、ありがと〜」

律「アカネが好きなものってなんだ?」

エリ「辛めのお菓子を好んでるよ」

梓「あれ・・・?コーラ買っていませんでした?」

紬「・・・」コクリ

アカネ「喉にくるシュワシュワが好き。温くなると酸が抜けて飲めないよ」

律「温いジュースなんて誰も好んで飲まねえよ」

澪「・・・そうだな」

未知子「・・・」ハムハム

さわ子「一生懸命食べるわね」

未知子「・・・?」ハムハム

さわ子「昨日はどうだったの?あの二人は」

律「あー、それがトラブっちゃってな・・・。だけど心配はいらないと思う」

さわ子「・・・そう」

澪「姫子がいるから」

紬「・・・」コクコク

エリ「今日は姫子さん来ないの?」

唯「バイトで忙しいんだって」モグモグ

745. VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/09/07(水) 19:18:11.90 ID:Rdx6fWIoo
梓「こぼしてますよ唯先輩」

唯「おっと・・・えへへ」

紬「・・・」

梓「そろそろ着きますね」

エリ「乗り換え乗り換え〜」

三花「それで、どこへ行くの?私だけ知らされていないんだけど・・・」

律「海だ、うみ〜!」

ガタンゴトン  ガタン

紬「・・・」

梓「むぎせんぱい、どうしたんですか?」

紬「・・・」トントントトン

澪「車窓か・・・。駅に入る瞬間ってなんだかワクワクするよな」

唯「そうだよね、なにがあるんだろ〜って」

紬「・・・」コクリ

アカネ「・・・そんなに心が弾む事?」

律「列車の旅だったからな・・・」

さわ子「ほら、降りるわよ」

未知子「・・・」ハムハム

746. VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/09/07(水) 19:20:20.23 ID:Rdx6fWIoo

―――――ホーム


唯「冷凍みかんをくださいな」

「すいません・・・。あいにくそのような商品は・・・」

梓「駅の売店にあるわけ無いじゃないですか」

唯「一度電車の中で食べてみたかったんだよ!」

梓「・・・そうですか」

「あ、でも隣の売店ならまだあるかもしれないです」

律「あんのかよ・・・」

紬「・・・」

タッタッタ

未知子「?」

スタスタ

「・・・」コソコソ

prrrrrrrrr

梓「時間ですね。諦めましょう唯先輩」

唯「や〜だ〜!」グズグズ

梓「そこで駄々をこねているといいです。次は30分後に発車ですから、それに乗って追いかけてきてください」

唯「諦めるよ・・・」シブシブ

律「さすがに30分置いてけぼりは堪えたか」

『3番線間も無く発車です』キリッ

梓「・・・あれ?」

唯「どうしたの?」

律「あと30分で到着だ・・・それまでシリトリでもすっか」

澪「・・・」

プシュー

『発車します』キリッ

ガタン  ゴトン

梓「むぎせんぱいが居ない!」

さわ子「ぅん・・・?」

律「寝てんなよさわちゃん!むぎは!?未知子もいないぞ!」

エリ「そ、外見て・・・」


747. VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/09/07(水) 19:22:25.31 ID:Rdx6fWIoo
三花「・・・あ」

ガラッ

梓「むぎせんぱいっ!」

ガタン  ゴトンガタン

タッタッタ

紬「・・・!」スッ

梓「なんでみかん買ってるんですか!」

唯「危ないよむぎちゃん!」

紬「・・・」スタスタ

ガタンゴトンガタンゴトン

澪「むぎぃー・・・」

さわ子「むぎちゃんが乗り遅れるなんて・・・予想していなかったわ・・・」

アカネ「未知子さんまで・・・」

pipipipipipi

「・・・」ピッ

三花「多恵ちゃん!?」

多恵「もしもし」

『この後の電車で追いかけるから・・・』

多恵「うん、分かった・・・」

さわ子「未知子ちゃんから?」

多恵「・・・そうです」

さわ子「貸して。・・・もしもし・・・到着駅は分かってるの?」

『・・・紬さん、到着駅って知ってる?・・・・・・はい。大丈夫です』

さわ子「じゃそこに来てね。梓ちゃんは次の駅で待ってるそうだから」

『分かりました。それでは後ほど』

プツッ

さわ子「はい、ありがと。という事だから、私は到着駅まで寝るわね」

多恵「・・・」

さわ子「」スヤスヤ

律「私たちが次の駅で降りたらどうすんだよ、さわちゃん・・・」

ヒンヤリ

梓「冷たい・・・冷凍みかんですよこれ・・・」

唯「私がっあんな事言わなければっ!」

澪「まって小芝居は後だ。まずは状況を整理しようか」

唯「小芝居って・・・澪ちゃん・・・」シクシク

748. VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/09/07(水) 19:23:23.45 ID:Rdx6fWIoo
律「なんで多恵が乗ってんだ・・・?」

多恵「駅前で・・・未知子ちゃんとさわ子先生が一緒に居る所を見つけて・・・
      驚かせようと・・・思って・・・みんなが合流して・・・タイミングを逃して・・・」

律「アホだ・・・」

多恵「うぅ・・・」

澪「後をつけていたのに・・・未知子は多恵がこの電車に乗っている事に気付いていたんだ?」

多恵「後をつけていたの私だけじゃないから・・・」

アカネ「もう1人の誰かとつけてきたの?」

多恵「ううん・・・私を入れて・・・3人」

律「あぁ・・・多恵がこんなアホっぽい事するわけないもんな・・・後の2人は大体分かった」

梓「今のうちに食べないとただのみかんになりますから、食べましょう」

唯「ありがとうだよむぎちゃん」ムシャムシャ

澪「冷凍みかん・・・おいしいな・・・」ムシャムシャ

エリ「おいし〜」ムシャムシャ

三花「季節的にどうかと思ったけどおいしいね」

アカネ「紬さん、駅員さんに怒られていないかな・・・」

多恵「未知子ちゃんがいるから大丈夫」

749. VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/09/07(水) 19:25:25.17 ID:Rdx6fWIoo

―――――ホーム



駅員「電車と並走して物を渡すなんて危険な行為されたら困るよ!」ガミガミ

紬「・・・」ションボリ

潮「・・・ごめんなさい」

駅員「どれだけ危険な事か分かってるの!?怪我じゃすまない事だってあるんだよ!?」ガミガミ

紬「・・・」シュン

ちか「・・・はい」

駅員「・・・どうして本人が謝らないのかな・・・?本当に反省しているの?」

紬「!」

未知子「すいませんでした!」バッ

駅員「・・・」

未知子「私がお願いした事なんで、この子は悪くありません。全部私が悪いんです」

駅員「・・・」

未知子「すいませんでした」

駅員「・・・怪我をして泣くのはキミ達だけじゃないんだからね・・・。もう二度としないように」

紬「・・・」ペコリ

未知子「・・・はい」

潮「はい!」

ちか「はい」

駅員「それじゃ、気をつけて・・・」

スタスタ

潮「すいませんでしたー」

ちか「・・・ふぅ」

未知子「許してくれてよかったね・・・」

ギュ

紬「・・・」スラスラ

未知子「どういたしまして・・・」ニコ

ギュ

紬「・・・」スラスラ

潮「いえいえ」

ギュ

紬「・・・」スラスラ

ちか「ううん、気にしないで」

紬「・・・」ペコリ

潮「・・・」

ちか「・・・」

未知子「・・・」

紬「・・・」ニコ

750. VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/09/07(水) 19:26:55.21 ID:Rdx6fWIoo
潮「うん・・・。とりあえず座ろっか」

ちか「そうだね・・・。30分って長いねー」

未知子「どうして多恵ちゃんまでいたの?」

紬「!」

潮「駅前で・・・あ!信代との約束忘れてた!!」

信代「やっと思い出したか!」ガシッ

潮「うぐっ」

信代「私を置いてさっさと行きやがって!」グリグリ

潮「ごめんなひゃいごめんなひゃい」

紬「・・・」ニコニコ

信代「で、どこに行くの?」

潮「さぁ・・・?」

ちか「どこへ行くの?」

未知子「海だよね?」

紬「・・・」トントントン

信代「た・・・い・・・へ・・・いようか」

潮ちか「「  太平洋!?  」」

紬「・・・」コクリ

未知子「太平洋だったんだ・・・」


751. VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/09/07(水) 19:28:06.25 ID:Rdx6fWIoo
――・・・


さわ子「」スヤスヤ

律「さわちゃんどこでも寝るな」

三花「疲れているのかな・・・」

梓「・・・」

エリ「実をいうとね・・・駄菓子屋のおばぁちゃん、小田おばぁちゃんなんだけど」

唯「うん・・・?」

エリ「さっき・・・どう話せばいいのか分からなくて・・・。それで無理やりここについてきたの」

唯「そうなんだ」

エリ「なんていうか・・・話題をみつけられなくて・・・、挨拶だけならできるんだけど」

唯「ふむふむ」

澪「・・・」

エリ「私のおじぃちゃんとおばぁちゃんは小さい頃に会って以来、それっきり
      だから余計、接し方が分からなくて・・・」

梓「それじゃどうして、今日駄菓子屋に行ったんですか?」

エリ「そ、それは・・・その・・・」

澪「話をしたいから・・・じゃない?」

エリ「・・・うん」

唯「その気持ちがあれば充分だよ〜。何度か足を運んで、顔を合わせれば自然と言葉が生まれるよ」

エリ「・・・そっか」

アカネ「・・・」

梓「あ・・・、そういえば屋台の方はまだ内容決まっていませんでしたよね」

唯「名案だよあずにゃん!姫ちゃんに確認とってみるよ!」

ピッピップ

trrrrrrrrr

三花「名案って・・・?」

澪「駄菓子屋にしようって事じゃないかな。私もそう思った」

プツッ

唯「もしもし、姫ちゃん?駄菓子屋にしようよ!」

エリ「単刀直入すぎるよ・・・」

『姫子さんじゃないよお姉ちゃん。・・・海に着いたの?』

唯「ううん、まだだよ。どうしてういが姫ちゃんのケータイに・・・?」

『この番号私だよ。ちゃんと確認してね』

唯「・・・おぉ、間違えたよ」

『はーい』

プツッ

唯「えへへ、間違えちゃった」

律「唯・・・」

752. VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/09/07(水) 19:30:17.94 ID:Rdx6fWIoo
trrrrr

『もしもし、・・・梓?』

梓「はい。今バイト中じゃないんですか?」

『ちょうど休憩中だよ。どうしたの・・・?』

梓「学園祭の屋台の件なんですけど、駄菓子屋はどうですか?」

『そうだね。お茶と合うから・・・いいと思う。それで進めようか』

梓「了解です。それでは、バイトがんばって下さい」

『ん。ありがと・・・。海に着いたの?』

梓「いえ・・・それが・・・。明日話しますね、変な事になっていまして』

『楽しみにしとく。それじゃ、明日ね』

梓「はい」

プツッ

唯「あずにゃん・・・私の仕事だよ・・・」シクシク

梓「いいじゃないですか。それより、ちゃんとむぎせんぱいに謝ってくださいね」

唯「了解しました!」ビシッ

アカネ「きっかけが出来たね」

エリ「・・・うん」

多恵「・・・」

三花「あ・・・到着するよ」

澪「さ、さわ子先生」ユッサユッサ

さわ子「ぅん・・・?」

ガタン  ゴトン  ガタン

プシュー

潮「おまたせ〜」

信代「よっ!」

多恵「信代ちゃん・・・?」

ちか「やっほー」

エリ「ちかも来てたんだ」

律「あれ、潮とちかは予想できたけど、信代は予想外だな」

さわ子「じゃ、みんな乗るわよ〜」

753. VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/09/07(水) 19:31:49.55 ID:Rdx6fWIoo
唯「ご、ごめんねむぎちゃん・・・」

紬「・・・」フルフル

唯「お詫びの品だす!」

律「買ったのむぎだけどな」

ヒンヤリ

紬「?」

澪「駅に到着してすぐに売店の冷凍庫借りたんだ」

紬「・・・!」

梓「私たちだけ楽しむのは物足りないと思いまして」

紬「・・・」ルンルン

未知子「嬉しそう・・・」

『6番線間も無く発車です』

紬「・・・」ムシャムシャ

プシュー

紬「・・・」ウットリ

潮「・・・」ゴクリ

律「潮涎垂れてる」

潮「・・・」フキフキ

紬「・・・」スッ

潮「ありがと」ムシャムシャ

紬「・・・」スッ

ちか「ありがと」

紬「・・・」スッ

未知子「ありがとう」

紬「・・・」スッ

信代「私もいいの・・・?ありがと」

さわ子「・・・ふわぁ」

紬「・・・」ヒョイ

さわ子「ん?・・・ちょっと、あくびしてる人の口に放り込まないでね・・・おいしいわね」モグモグ

潮「紬が頑張った理由が分かったよ」

ちか「・・・うん。みかんを冷凍庫に入れようと考えた人は表彰ものだよね」

信代「ノーベル賞あげてもいいな」

未知子「・・・」モグモグ

「「  ・・・  」」ジー

未知子「・・・?」

さわ子「オチはどうしたの?」

未知子「オチ・・・?」

多恵「一言ぼやいて笑いを取れって言ってる・・・雰囲気がそう言ってる・・・」

未知子「ぇ・・・」

754. VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/09/07(水) 19:33:49.74 ID:Rdx6fWIoo
紬「・・・」スッ

未知子「二個目・・・?」

律「はい、スタート」ポン

さわ子「おいしかったわね」

潮「乗り遅れる危険を犯してまで手に入れようとする訳だ」

未知子「・・・」ドキドキ

ちか「・・・みかんを凍らせて食べた最初の人って表彰もんだよね」

未知子「・・・」ドキドキ

信代「国民栄誉賞あげてもいいよな」

未知子「さ、さすがだよねルーシーさん」

律潮「「  外国人だったのか!  」」

澪「ブフッ」

未知子「さ、さっきノーベル賞って」オロオロ

信代「そう落とすとは思わないでしょ・・・」

唯「ルーシーさん・・・」

エリ「・・・」ヒョイ

未知子「あ・・・」

エリ「もぐもぐ」

梓「偉大な発見ですよね」

エリ「うん。お袋の味だね」

律潮「「  やっすいな!  」」

澪「グフッ」

三花(なんか楽しそう・・・私もやってみたい・・・)

紬「・・・」スッ

アカネ「私もやるの・・・?」

紬「・・・」キリ

アカネ「もぐもぐ」

三花「その味を星に例えるならなにかな」

信代(恨みでもあるのかな・・・)

アカネ「天の川」

律「幾億の数だ!」

アカネ「オリオン」

潮「それは星座だ!」

アカネ「ベテルギウス」

潮律「「  どちらさまで・・・?  」」オロオロ

澪「星の名だ・・・」

多恵「ブフッ」

755. VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/09/07(水) 19:35:53.05 ID:Rdx6fWIoo

―――――太平洋


律「白い砂浜!」

潮「青い海!」

唯「輝く太陽!」

律潮唯「「「  沖縄だー!  」」」

タッタッタ

梓「少し雲ってきましたね」

紬「・・・」

澪「太平洋は夏のイメージが強いからな。沖縄と勘違いしたんだろう」

さわ子「あの三人は勘違いしてるの?」

澪「はい」

信代「そんなキッパリ言わんでも」

エリ「あ、まだ海の家やってる」

アカネ「本当だ・・・少し覗いてこようか」

三花「賛成!ビーチボールとかあったら借りようよ」

ちか「ナイスアイディアー!」

タッタッタ

さわ子「太平洋が夏なら、日本海は冬かしら」

澪「・・・そうですね」

未知子「冬の日本海は荒れるって聞きますよね」

多恵「厳しくてとても力強いよね」

信代「・・・」

さわ子「間逆なのにねぇ・・・」

澪「・・・はい」

未知子「なにがですか?」

さわ子「なんでもないわ」

梓「・・・」

紬「・・・」ツンツン

梓「なんですか?」

紬「・・・」トントントン

梓「この海の彼方に『それ』は存在するんでしょうか・・・」

紬「・・・」

梓「あ・・・ここは沖縄じゃなかったですね・・・」

多恵「・・・『それ』って・・・?」

梓「『ニライカナイ』・・・理想郷の事です」



最終更新:2011年10月06日 01:32