268. VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/09/21(水) 19:15:59.83 ID:pC/YcMsoo

五年の空白は埋めるように彼女は言葉を紡いでいく

梓「私その時まだ19ですよ?お酒を扱う場所に連れて行くなんて
    元担任のすることじゃないですよね」


楽しそうに紡がれた言葉を  彼女は胸に受け止めていく  楽しそうに

紬「・・・」ニコニコ


彼女はハンドルを握り  前を見て  それでも言葉を止めない

梓「姫ちゃんさんには内緒にしていたから、玉恵さんの顔みてとっても驚いていましたよ」


彼女はその言葉を聴く

紬「・・・」ニコニコ


彼女は安心して言葉を続ける

梓「和さんが『約束』覚えていたんですよ。3人で交わした約束なのに
    玉恵さんとさわ子先生はすっかり忘れていたらしいです。ひどいですよね」



彼女は心地よく耳を傾ける

紬「・・・」


269. VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/09/21(水) 19:17:03.65 ID:pC/YcMsoo

一台の車が河川敷へ到着する

1人の少女が空を眺めていた

あの頃彼女がそうしていた様に


梓「あれは・・・樹ちゃん・・・?」

紬「・・・?」

キキッ

ガチャ

梓「樹ちゃん、どうしたの?」

樹「あ、お姉ちゃん!」

紬「!!!」

梓「あ、いえ。妹じゃないですよ。五年前の学園祭で出会った子です」

紬「・・・」ガッカリ

梓「なんでガッカリしてるんですか」

樹「お姉ちゃん、どこ行ってたの?」

梓「空港に行って、むぎ先輩を迎えに行ってたの」

紬「・・・」ニコ

樹「ふーん。仕事はー?」

梓「や  す  み」ブイ

樹「それじゃあ今から遊びに行こうよ!」キラキラ

梓「ざーんねん。私たち明日からの準備のために忙しいの」

樹「えー!」ブー

紬「・・・」ツンツン

梓「はい?」

紬「・・・」クイックィッ

樹「?」

梓「一緒にですか?」

紬「・・・」コクリ

梓「ダメですよ!学校があるんですから!」

紬「・・・」ニコニコ

梓「思いつきで言わないでください・・・。って、このやりとり懐かしいぃ」ウルウル

270. VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/09/21(水) 19:17:48.00 ID:pC/YcMsoo
樹「明日からの準備って?」

梓「二人で旅に出るの」

樹「お姉ちゃんも仕事あるよね?」

梓「一ヶ月休むんだよ」

樹「ずるーい!」

梓「この日のために3年間文句も言わずに働いたんだからいいの」

樹「偉い人に怒られるよきっと」

梓「怒られたよ〜。でもね、辞表チラつかせたら許可くれたんだよ」

樹「ふーん。すごいね」

梓「分かってないでしょ?」

樹「分かるよー。脅したんだよね?」

梓「人聞きの悪い・・・。風子さんじゃないな・・・純と関わっちゃダメだよ」

樹「どうして?」

梓「よくない言葉を教えるから!」

樹「わたし純ちゃんスキよ?」

梓「・・・分かった。純に言っておくから」

樹「?」

梓「なんでもない」

271. VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/09/21(水) 19:18:36.33 ID:pC/YcMsoo
樹「・・・」ジー

紬「・・・?」

樹「お姉さんがむぎさんね・・・?」

紬「・・・」キリ

樹「いつも話に出てくるよ」

紬「・・・」ニコニコ

梓「・・・」

樹「お姉さん綺麗・・・」

紬「・・・」テレテレ

梓(仕草も何一つ変わってない・・・)

樹「お姉さん、初めまして。樹といいます」ペコリ

紬「・・・」ペコリ

梓「・・・」

樹「そっかぁ・・・。お姉さんがむぎさんなんだね」ウンウン

紬「・・・」コクコク

梓「二人でなにを頷き合っているんですか・・・。って、なんか楽しいぃ」ウルウル

樹「二人旅ってどこに行くの?北海道?」

紬「!」

梓「どうして分かったの?って、二択の内の一つだけど」

樹「オーロラ探そうよ!オーロラ!」

紬「?」

梓「だから、学校があるでしょ・・・。どうしてオーロラなの?」

樹「昨日姫ちゃんと読んだ雑誌にあったの。北海道で二人で探したオーロラって」

梓「あー、あの人の記事かぁ・・・」

紬「・・・」

樹「わたし、まだオーロラ見た事ないんだよね」

梓「私も無いよ」

272. VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/09/21(水) 19:20:01.54 ID:pC/YcMsoo
紬「・・・」ツンツン

梓「?」

紬「・・・」クイックィッ

梓「ここに残っている人たち、姫ちゃんさん、いちごさん、風子さん、春子さん、信代さん
    5人はこの子と顔見知りなんです。この子の母親とも仲良くて・・・」

紬「・・・」コクコク

梓「たまに帰ってくる、純と和さんとも遊びに行った事ありますよ」

紬「・・・」

樹「北海道行こうよ!摩周湖も見たい!」

梓「摩周湖・・・その記事も読んだの?」

樹「ううん。なんとなく行きたい」

梓「意味が分からない・・・。情報源はなんなの?」

樹「前世?」

梓「意味知ってて言ってるの?」

樹「もちろん。今学校でブームなんだよね」

梓「・・・フッ」

樹「見ててよ。お姉さんの前世を占ってあげる」

紬「・・・」ワクワク

樹「むむむ・・・」

紬「・・・」ワクワク

樹「クレオパトラです」

紬「・・・」キラキラ

273. VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/09/21(水) 19:20:29.12 ID:pC/YcMsoo
梓「私は?」

樹「カマキリだよ」

梓「あらかじめ用意してあったよね?ね!?」

樹「スフィンクスでいい?」

梓「なにそれ、同意したら決まるの?」

樹「しょうがないね。この中から選んで」ズラー

梓「それ動物占いのカードでしょ・・・。動物限定なんだ・・・」

紬「・・・」スッ

樹「ねこちゃん!」

梓「・・・」

樹「ねこちゃん大好き!」

紬「・・・」コクコク

樹「お姉ちゃんと出会ったのもねこちゃんのおかげなんだよ〜」

紬「・・・」ニコニコ

樹「一緒に遊んだんだよね、お姉ちゃん」

梓「私は遊んでないけど・・・」

樹「仲良かったよー?」

梓「あれ、なんの話をしてたっけ・・・?」

紬「・・・?」

274. VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/09/21(水) 19:21:22.57 ID:pC/YcMsoo
「樹〜、帰るわよ〜!」

樹「あ、お母さん!」

梓「あ、こんにちは」

紬「・・・」ペコリ

母「こんにちは。また遊んでもらってたのね」

樹「うん!  お母さん、私北海道へ行ってくるね!」

母「あら、どうやって行くのかしら?」

樹「お姉ちゃんの運転する車で!」

母「それなら時間がかかって学校をたくさん休まなきゃいけないわね〜」

樹「うん!学校辞める!」

母「うふふ、そうはさせませんよ」

樹「えー!?」

母「お姉ちゃんの力を借りずに自分で行きなさい」

樹「・・・はい」

母「よろしい。それでは梓さん、後ほど」

梓「はい。また、後で」

樹「お姉さんもパーティに行くの?」

紬「・・・」コクリ

梓「そうだよ。今日の主役だから」

樹「主役は春さんじゃないの?」

梓「じゃないよ」

樹「そうなんだ」

母(オリンピック出場よりメインなのね・・・)

樹「お姉ちゃん、お姉さん、また後でね」フリフリ

紬「・・・」フリフリ

梓「うん」フリフリ

紬「・・・」

梓「夏休みだったら一緒に行けましたけど・・・」

紬「・・・」コクリ

梓「少し残念ですね」

紬「・・・」

275. VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/09/21(水) 19:23:58.47 ID:pC/YcMsoo
梓「春さんって言うのは春子さんですね。柔道オリンピック出場が決まった」

紬「・・・」コクリ

梓「言ってましたよ。『律を投げた日から人生変わっちゃった』って」プクク

紬「・・・」ニコニコ

梓「それを聞いたちかさんが笑い転げてましたね」

紬「・・・」ニコニコ

梓「樹ちゃんの話なんですけど、この河川敷で過ごす事があるんですよ」

紬「・・・」コクリ

梓「私だけじゃなく、姫ちゃんさん、風子さん、いちごさんとも。
    私がいなくても樹ちゃんは懐いてて楽しくやってるみたいです」

紬「・・・」

梓「みなさん樹ちゃんを妹のように接してくれているから、見ていて微笑ましくなるんですよね」

紬「・・・」コクコク

梓「この前、と言っても半年くらい前なんですけど、樹ちゃんが私のアパートに泊まりに来たんですよ
    それを聞いた風子さんが夏香さんと英子さんを連れて来たんです」

紬「・・・」コクリ

梓「ボードゲームまで持ってきて・・・。ビックリしましたよ」

紬「・・・」ニコニコ

梓「何周もして私と夏香さんが飽きてきた頃にですね、信代さんがお酒をもって来たんです」

紬「・・・」ニコニコ

梓「それからは宴会になっちゃって、樹ちゃんがいるから私と英子さんは控えましたけど
    風子さんがお酒に強いの知ってました?」

紬「・・・!」フルフル

梓「夏香さんはマイペースで風子さんに付き合っているようです。信代さんが意外と弱いんで面白いですよ」

紬「・・・」コクリ

梓「その後みんなでDVDを鑑賞したんですよ。恐怖の心霊動画ってやつです」

紬「・・・」ゴクリ

梓「風子さんが変な事言うから、樹ちゃんが笑ってしまって、恐怖なんてどこかいっちゃいましたよ」

紬「・・・」ニコニコ

梓「みなさんお酒との付き合いが上手なんで、酒癖が悪い人はいないんですよね」

紬「・・・」コクコク

梓「大抵、信代さんと風子さんが揃うと宴会になってしまうから
    誰の部屋で飲んでも次の日は重たい体を引きずる事になるんですよね」

紬「・・・」ニコニコ

梓「そうそう、エリさん、アカネさん、慶子さん、潮さんと私で居酒屋で飲んでる時にですね
    夏と姫ちゃんさんが遅れて来たんですけど・・・ブフッ」

紬「?」

梓「あ、いえ・・・。後で夏の前で話しますね」ウシシ

276. VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/09/21(水) 19:24:24.97 ID:pC/YcMsoo
紬「・・・」クイックィッ

梓「はい。月に一度、むぎ先輩のクラスの方と会ってますね」

紬「・・・」クイックィッ

梓「いつも誘いがかかってきて・・・っていうのも、律さんが勝手に広告塔にしたからなんですよ
    『むぎの近況を知りたかったら梓まで』とか言って
    その本人は1年半くらい前から音沙汰無しなんですけど」

紬「・・・」

梓「澪さん曰く、『便りが無いのは良い便り』だとか」

紬「・・・」コクリ

梓「むぎ先輩に手紙を送っているようですから、私も心配はしていないんですけどね」

紬「・・・」ニコニコ

梓「実は、手紙にしようって言い出したの唯さんなんですよ」

紬「!」

梓「『電子メールは便利だけど、真心篭ってないよ!』とか言い出して」

紬「・・・」

梓「言いたい事は分かるんですけどね」

紬「・・・」

梓「私の仕事も文字を扱うから、それを伝える側から受け取る側へ繋げる役目として頑張ってますよ」

紬「・・・」ニコニコ

梓「むぎ先輩の翻訳という仕事もそうですよね」

紬「・・・」キリ

梓「・・・」

紬「?」

梓「あ、いえ・・・。懐かしい表情するなぁ・・・と思って」

紬「・・・」ポッ

梓(少しも変わらない・・・。それがとっても嬉しいな・・・)

紬「・・・」

梓「まだまだ時間ありますから、五年間の話を聞いてください」

紬「・・・」コクリ


277. VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/09/21(水) 19:25:05.32 ID:pC/YcMsoo
梓「――と冬が言ったそうです」

紬「・・・」ニコニコ

梓「あ、いけない、そろそろ明日からの準備しましょうか」

紬「・・・」コクリ

梓「私はもう準備出来てますから、荷物を取って出発できますよ」

紬「・・・?」

梓「うちの編集長が『お前も記事を書いてみろ』とか言うから迷っていたんですね
    丁度むぎ先輩が帰ってくる事を知った後でしたので、この企画案を提出したんです」

紬「・・・」コクコク

梓「そしたら、『ふざけてるのか』と突っ返されまして・・・」

紬「・・・」ゴクリ

梓「『そういう受け取り方をなされるのでしたら、私この会社を辞めます』」

紬「・・・!」

梓「しばらく膠着としていたんですけど、編集長が折れました」ブイッ

紬「・・・」ニコニコ

梓「北海道か沖縄か行き先が決まっていない旅を提案したんですから当然ですけど
    こんなチャンスを逃すなんて私の人生後悔しますよ」ウシシ

紬「・・・」

梓「また話し込んじゃいましたね・・・。ついつい喋ってしまう・・・」エヘヘ

紬「・・・」

278. VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/09/21(水) 19:25:38.38 ID:pC/YcMsoo
梓「とりあえず、二人旅の進路を決めましょう」

紬「・・・」

梓「その場所で放課後ティータイムは再結成するんですから」

紬「・・・」

梓「車で向かいますから、まだ考える時間はありますけど・・・」

紬「・・・」

梓「北海道か沖縄か」

紬「・・・」

梓「行き先が決まったら、その逆の人は移動しなきゃいけないから大変ですよね
    今か今かと待っているはずですよ」ウシシ

紬「・・・」

梓「行き先が北海道なら唯さんが北海道へ」

紬「・・・」

梓「行き先が沖縄なら澪さんが沖縄へ移動するんですから」

紬「・・・」

梓「いや、向かう途中で合流するのもありか・・・」

紬「・・・」

梓「この企画を話したとき二人とも積極的に乗ってくださいましたよ
    律さんには澪さんが話を通していると思いますけど・・・ちょっと心配ですね」

紬「・・・」

梓「北海道にいるのか・・・沖縄にいるのか・・・読めないです・・・」

紬「・・・」

279. VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/09/21(水) 19:26:36.32 ID:pC/YcMsoo
梓「・・・」

紬「・・・」

梓「むぎ先輩のクラスメイトが今夜、春子さんの道場に集まるんです。
    冬と夏も、憂、純、和さんも
    唯さん、澪さん、律さんを除いてですけど」

紬「・・・」

梓「夏と冬、憂がそれぞれ持ってくるお土産を食べてから決めてもいいかもしれませんね」

紬「・・・」

梓「唯さんは那覇で憂は石垣島だから、結構お土産が異なるんですよね
    石垣島育ちの海琴さんが勧めた土産を憂が持ってきた時はみんな苦笑いしてましたよ」プクク

紬「・・・」

梓「東と言えば東京ですけど、和さんは今ベストセラー作家の担当をしているんですよ。
    その作家はあの人なんですけどね。無理やり和さんを担当につけたみたいです
    二人が仕上げた作品もベストセラーですから呆れます。尊敬を通り越してです」

紬「・・・」

梓「純も和さんと同じ職場で頑張っているみたいです。雑誌関連ですけど」

紬「・・・」

梓「そんなバラバラな場所に居るみんなが、今日集まるんですよ」

紬「・・・」

梓「すごいです。むぎ先輩は」

紬「・・・」

梓(そうだ・・・。ちゃんと話さなきゃいけない事があった・・・)

紬「・・・」

梓「準備するまえに、聞いて欲しい事があるんです」

紬「・・・」

280. VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/09/21(水) 19:27:32.14 ID:pC/YcMsoo

あどけなさの残る彼女の顔をじっとみつめる

「・・・」


その視線に気付かない彼女は空を見上げながら問う

「むぎ先輩、シーサー持ってます?」



袋に包まれた携帯ストラップを取り出す

「・・・」



それを眩しそうに確認する彼女

「もっと立派なヤツを渡せばよかったのに・・・17の私はそれが精一杯だったんですね・・・」



静かに首を振る彼女

「・・・」

281. VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/09/21(水) 19:28:26.93 ID:pC/YcMsoo

その仕草を見落としてあるものを取り出す


「これ、トカプチュプカムイというらしいです」

「・・・」

「澪さんから律さんへ渡すようにいわれたモノなんですけど、正直分かりませんでした」

「・・・」

「アイヌ語でカムイは神を指しているんですね。これは恐らく、太陽神だと思います」

「・・・」

「1年半くらい前に律さんはインドに居ました。
  それも恐らく、ヴィシュヌを探していたんだと思います。ヒンドゥー教の太陽神ですね」

「・・・」

「世界各地で守護神を探しながら、巡拝していたんだと思います。
  むぎ先輩の事を想って」

「・・・」

「旅の目的がそれだとは言い切れませんけど」


282. VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/09/21(水) 19:29:44.03 ID:pC/YcMsoo
静かに瞳を閉じる  友の顔を瞼に浮かべて  18のままの彼女を写して  胸が一杯になる

「・・・」



それに気付かず  視線を空へ戻して言葉を紡ぐ

「唯さんも同じことを沖縄でやっていたんですよ」


283. VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/09/21(水) 19:30:44.45 ID:pC/YcMsoo
瞳を開ける  隣で空に想いを残すように話す  その彼女をじっとみつめて  聴く


「・・・」

「東御廻りと言って、昔は五穀豊穣を祈願して聖地を巡礼しながら参拝していた行事なんです」

「・・・」

「あの人の記事をを読んだ事があるんですけど、真鶴はそういう信仰に纏わる場所
  沖縄の伝承にとても詳しいらしいです。
  それで、真鶴に案内させられて唯さんも祈願したんですね」

「・・・」

「最初、その話を聞いた時は名所巡りをしているんだと思っていたんです」

「・・・」

「ですが、澪さんの台詞で繋がりました」

「・・・」

「『これを律に』」

「・・・」

「全てあなたが中心にいたんです」

284. VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/09/21(水) 19:31:24.38 ID:pC/YcMsoo

もう一度瞳を閉じて  18のままの彼女たちを想い浮かべる  胸が満たされていく  

五年の空白が  隣に居る彼女の言葉で埋め尽くされていく


「・・・」

「あなたの事を想い、行動していたんです」

「・・・」

「今夜会う人たちも、その場に居ないあなたを中心として集まっていたんです」

285. VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/09/21(水) 19:32:08.83 ID:pC/YcMsoo
言葉を紡ぐ彼女は気付かない  その場所を守っていた事を  

言葉で満たされていく彼女は知っている  隣に居る彼女が  その場所を守っていた事を


「・・・」

「遠い遠い空の下、私たちが繋がっていた証です」

「・・・」

「やっぱりむぎ先輩には敵いません」


286. VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/09/21(水) 19:33:08.98 ID:pC/YcMsoo

空を眺める少女がいた


「樹ちゃんは空を眺めて・・・オーロラを探していたのかな・・・」

「・・・」




記憶の彼方に居る彼女の姿と重ねて


「この空に想いを残そうとしていたのかな・・・」

「・・・」


287. VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/09/21(水) 19:33:50.32 ID:pC/YcMsoo

一つの旅が始まろうとしていた


「北海道は玉恵さんと冬と夏が旅をして、樹ちゃんが憧れる大地
  沖縄は暦さん、海琴さん、真鶴が旅をした島・・・
  どっちも魅力的ですね」

「・・・」



288. VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/09/21(水) 19:34:19.90 ID:pC/YcMsoo

それは一つの旅の終わり


「あの人の言葉があったからここにいられるようなものなんです・・・」

「・・・」


289. VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/09/21(水) 19:34:52.15 ID:pC/YcMsoo


かつて少女が憧れていた  その場所へと誘う


「暦さんから未来に踏み出す勇気を貰いました」

「・・・」


290. VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/09/21(水) 19:35:18.38 ID:pC/YcMsoo

空から視線を下ろし  今も尚尊敬しつづける人と想いを交わす



「まだまだ時間はあります」

「・・・」


291. VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/09/21(水) 19:36:14.31 ID:pC/YcMsoo

二人で歩む道を見据えて


「行きましょうか、むぎ先輩!」

「・・・――」



292. VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/09/21(水) 19:37:08.11 ID:pC/YcMsoo

旅は遥かに







「――あずさちゃん」







                      終


293. VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/09/21(水) 19:38:50.58 ID:pC/YcMsoo








































旅は遥かに
http://www.fog.jp/main/products/F2/MP3/f2_bgm01.mp3

風雨来記2のHPより




>>251
すいません(土下座)
隠しヒロインは攻略どころか、声すら聞いたことありません
キャラが知らないので登場出来ませんでした
みちのくも北へもやったことありません・・・(土下座)

アイツの登場はもっと大きく取り扱いたかったですね
本編より神々しく描けませんから無理だと戒めました


轍はこの夏に
アタイバル→石垣島→無人島を経験しています
轍なら余裕でしょう(笑)


風雨来記のサントラ聞きながら北海道を走ってみたいですね
ttp://www.nicovideo.jp/watch/sm580303(ネタバレコメ注意)
沖縄の道を2のサントラ流しながら走るとものすごく気持ちがいいです

風水嵯峨さんの手がける曲はこの作品には欠かせません
だから続編は難しいのかもしれませんね・・・

スタッフの膨大な量の取材には本当に関心させられます
FOGすごい

294. VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/09/21(水) 19:40:31.15 ID:pC/YcMsoo
ようやく終りました

前作のテーマが『出会いを大切にする事』
                    『自分を見つけること』  なら

今作は『別れを大切にする事』
          『自分を越えること』  でした

前作から読んでくださった方、本当にありがとうございます
声が出ないという不幸から始まった今作ですが、決して未来は暗くないと信じて書きました

所々の台詞回しがおかしい点はとある歌詞を引用しているからです
その曲をイメージした展開でしたが、うまくいかず苦労してます




これにてけいおん部の旅は完結です

稚拙な文でしたが、ここまで付き合ってくださった方

ありがとうございました


風雨来記3が発売する事を願って

さようなら

302. VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(沖縄県) 2011/09/24(土) 12:06:16.36 ID:+03uEoCxo
「――あずさちゃん」


夏目「人が来ないうちに、はやく!」ヒソヒソッ

先生「今変わってやるわい」

「いい旅をしてきたのね」

どろん

「あら?」

夏目レイコ「「  あ  」」

「今、ネコちゃんから人へ変わりませんでしたか?」

夏目「・・・」サァー

レイコ「おいこら、見られたではないか夏目!」

「目の錯覚かしら」ゴシゴシ

夏目「疑ってるから自然体でいてくれ、先生」

レイコ「・・・」

「・・・疲れているのかしら」

夏目「目が疲れているんですか?」

「・・・そうかもしれないです」

レイコ「夏目、それくれ」

夏目「おれの飲みかけだけどいいのか?」

レイコ「構わん」ゴクゴク

「仲がよろしいのね」

夏目「あ、はは・・・」

レイコ「・・・ぷはぁ」

「むぎ、律の個室へ行きましょう」

303. VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(沖縄県) 2011/09/24(土) 12:16:08.42 ID:+03uEoCxo
さようなら言っといて出てくるのはなんですけど

SSはもう満足気味でしたが、今作で思い残す点が生まれてしまったため
納得できないので書いてみようと思います
できるだけ短く書ける様に工夫してみます(書きあがるのかどうか不安)

ここまで長くなったのならちゃんと丁寧に書けばよかったです(ラストと姫子
風雨来記の魅力が活かしきれなかったのが非常に悔しい(ギリギリ

貴重なご意見ありがとうございました

次作は  前作のクロスでやってみます

それでは縁がありましたら読んでやってください
306. VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(沖縄県) 2011/09/28(水) 12:25:04.57 ID:Zkm7eHtao
まだhtml化されてないですね
もう人がいないであろうと思いますけど
あとがきでも


正直、メイン五人を動かすのが辛かったんです
キャラを崩さないように物語を作って楽しむのは前作で満足していて
今作はヴェガを通して成長しているけいおん部を描かなくてはいけないという
縛りがありました

唯がキャンプを提案するまでは楽しんで描いていたんですけど、
飽きたというか面白みに欠けてしまってボツだなと感じていました
けいおんのキャラを借りて動かしているだけで、自分自身が生み出したキャラが居ない事に気付いてしまったんです
それで筆が進まず(←作家気取り乙)、3週間くらい放置しました

前作では、鳥羽修治の名前を借りてヴェガの象徴的な存在にしましたが
今回はそれが無し
キャンプに行って、轍と会話して、それでむぎの声が戻って、
雨の中で無邪気に遊んで終ろうという中途半端な物語が出来上がっていました
CD屋に行く途中で唯と憂が思わせぶりな笑い方をしたのはこれが伏線になっているんですね
それだったら風雨来記じゃなくてもよかったんです
轍から学ぶ事なんて無いんです
ヴェガの続編じゃなくても良かったんです

ですが、玉恵が登場して物語が大きく変わりました

轍の運転するバイクの後ろに梓を乗せるかどうか、悩みました
旅のパートナーである暦たちが乗った席を、簡単に乗ってもいいものかと
この土地を去る轍の後ろに乗って何が学べるのかと

そこでバイクの免許を持っている玉恵が出てきたのです
北海道繋がりで冬と夏が登場してきて、梓と衝突になったというわけです
沖縄のメンバーだけで終るつもりでいました
玉ちゃん様々です

キャンプでむぎが、『旅が始まった』の台詞は自分でも「?」でした
その後の唯の『よく分かんないよ』の台詞がまんま自分の言葉なんです

キャンプが終って、エリとアカネが河川敷で登場した時に理解しました
旅じゃなくて、冒険をしなきゃいけないんだな、と

クラスメイト全員を繋げるという、無謀な冒険をしなきゃいけないんだと(←使命感乙)

冬と夏の存在がものすごく大きいんです
描く側はとても楽しめたのですから(この時点で読む側の事考えてなかった・・・)

>>295
ヴェガの続編として位置付けにしたのは、むぎの強さを裏付ける為でした
これは必須でしたので回避できませんでした  すいません

前作の世界の線の上を走る今作とは別に、違う線の上を走る、旅を終えた明るい日常を描こうかとも思いました
声の出るむぎとティータイムを楽しんでいる風景を、不安の無い未来を
すぐ挫折しました。『五人+四人だけ』で話を組み立てる楽しみが生まれなかったのです

けいおんの『五人+四人』から広がる輪を描くのが好きなんですね
それだけなんです

307. VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(沖縄県) 2011/09/28(水) 12:36:53.73 ID:Zkm7eHtao

姫子といちごのやりとりを見た憂のリアクションはこの曲をイメージしました
http://www.youtube.com/watch?v=TbJ3OetADDw  sweetie/折笠富美子



言い訳っぽくて、嫌なんですけど

むぎが伝えようとしてることを、読み手にも探って欲しいと思っていました
実際、書き手である私ですら「?」が多かったのも事実です
むぎから梓、梓から読み手へリレーしていけたら、むぎの人を想う強さが
ハッキリと伝わるのだと思っていたんです
こんなことって素人でしかできない試みではないかと(←プロを知ったつもりか乙!)


最後に
ここまで読んでくださった人  ありがとうございました

あとがきも長いな!




最終更新:2011年10月06日 03:15