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冬も終わり、春が来た。
温かい日差しに誘われ、私は久し振りに外でお昼を食べてみることにする。
大学で出来た新しい友達を誘い、食堂のテラスに出た。

桜がきれいに咲き誇っている。
そのすぐ傍に、何も実っていない木がぽつりと立っていた。
私はその木に吸い寄せられるようにして近寄った。

「ちょっと梓、そんなとこで食べないでもっと桜の見える席座ろうよー」
「あ、うん……けど」

この木、私みたいだなって。
いつまでも実らない気持ちを抱えたままの。

「なに?」
「……ううん、なんでもない。やっぱそっちで食べよっか」

私は笑うと、友達の下に駆け戻っていった。
さわさわと風が吹く。何も実っていない木が、手を振るようにさわさわ揺れた。

終わり



最終更新:2011年10月06日 20:12