唯「あ、あれ。パピコの容器に甘いジュースが入ってるやつ飲みたい」

和「あー、凍らせてないチューペットみたいなやつね。あれってアタリとハズレあったよね」

唯「え?そうなの?知らなかった~。ああ、あと似たようなやつで、寒天みたいなのあったよね?」

和「10円で買えるあのぷるぷるしたやつでしょ? …似てるかな? 憂は気味悪がって食べなかったけど」

唯「ねー。美味しいのにねー。憂は20円のコーラガムもあんまり好きじゃなかったなあ」

和「あの黒いネズミみたいなよく分からない生き物がこっち見てるやつ?」

唯「そーそれ!そのネズミみたいなのが描いてある紙の裏にアミダくじとかあったよね~」

和「ちょっと離してみたら結果が分かっちゃうぐらいシンプルなアミダだったね」


唯「私あのガムのなんとも言えない味が好きだなあ。悪く言うと安っぽいあの感じ」

和「39円ぐらいの安い缶コーラとかKIRINのコーラは、あれっぽい味がするよ」

唯「ほんと? じゃあ今度買ってみようかな。……あ、あと――」

ガチャ

憂「あれ、誰かと思ったらお姉ちゃんと和さん?」

唯「あ、憂。どうしたの?」

憂「どうしたのって…。ここ家の前だけど…」

唯「うっそだぁ…。……ってホントだ。気付かなかった」

和「話に夢中になりすぎてたね。じゃあ、唯。また明日。バイバイ」

唯「うん!ばいばーい!」

憂「さようならー」


和「と~りよそ~らよ わ~たしはな~がめる~♪」

和「遠くのひ~と いぃしだぁたみ かぁねの~ね~♪」

和「……うん。久しぶりに唯と帰れて良かった…かな」

和(もうちょっと立ち話してたかったけど……)

和(いいや。また今度。それまで頑張れ、私)

和「……お~ちたえ~だ~ なみだ~なみだが~♪」

和「ふ~いに~お~もわぬなみだ~…が~…」


唯が文化祭目前にして風邪を引いた。

幼稚園から一緒だったけどあの子、一度も風邪引いたことなかったのに。

お見舞いに行ったけど、そのとき唯は寝てた。なんかガンキャノンみたいに真っ赤だった。


和「失礼します。…メンバー揃ってるか確認に来たわよ」

律澪紬梓「………」

音楽室の空気重すぎ。リュウさんぐらい重い。

和「軽音部、集合完了…と」

律「和……?」

和「昔ね、こんなことがあったの」

以下アニメ12話参照


紬「あの、どうしてそんな話を……」

和「…年季の違いを見せつけようと思って」

律「年季って…」

和「私と唯の十年以上に及ぶ歴史の歩み」

澪「………」

和「…毎号アメリカザリガニがついてきて、創刊号は190円」

梓「ディアゴスティーニ♪」

和「ちょっと。まだ宣伝の途中よ」

梓「あ、すいません」


和「最終巻の200巻まで集めるとお風呂一杯にアメリカザリガニがたまります」

和「あの当時の唯の無邪気さと一生懸命さが甦るでしょう」

和「週刊平沢唯メモリアル。本日発売開始」

和「……」チラッ

梓「……」コクリ

梓「ディアゴスティーニ♪」

和「…唯は必ず来るわ。あの子が風邪なんかで大切な学園祭を休むわけないもの」

和「あなたたちが信じたい唯を信じなさい。唯は、あなたたちが居てくれるから、ここに来れるのよ」

和「絶対に唯は来る…。だからそのときは、優しく『おかえり』って、言ってあげて。…それじゃ、私は行くから」スタスタ

律澪紬「………」

梓「素敵な人…」ポワワン

律「ごめん、正直微妙……」


生徒会副会長「あらぁ、真鍋すわぁん」

和「あ、副会長。今日はいちだんと化粧濃いですね」

副会長「軽音部、全員集合したのぉ?クラスの出席簿、平沢唯の部分は空欄だったんだけどぉ」

和「うっわ、くさ。香水ふりすぎですよ、副会長。くっさ。まじくせえ」

副会長「まあ遅れて来るにしてもぉ、一度職員室通してからでないとダメってメールとかで本人に言っておいてねえん」

和「眼元もう崩れてきてますよ。お色直ししたほうがいいんじゃないっすか」

副会長「私としては正直ぃ軽音部のライブなんて当初はなかったわけだしぃ、言いにくいんだけどぉ…」

和「あれ…?ヒゲが生えて…る…?」

副会長「このまま彼女が来なくてぇライブが中止になったほうがぁ」

和「おいおまえ、俺のクソでそれ以上その顔をくそったれにされたくなかったら今すぐに回れ右をして消え失せろいいか今すぐに、だ」


和「見回りが仕事とか言われたけど暇ねえ。模擬店にでも行ってみようかな」

下級生「へい、らっしゃいまし!」

和「すごい恰好ね。ランプの魔人?」

下級生「3つまでなら願いごとを聞きます!」

和「じゃあクレープちょうだい」

下級生「へい毎度!」

和「クリーム多めで」

下級生「サー承知!」

下級生「ほれ、おまち!200円になりまん!」

和「タダにしてください」

下級生「いや無理です。採算合わないんで」

和「業務スーパーの材料で素人が作った200円のクレープうめえ」モシャモシャ

生徒会書記「あ、あの…真鍋先輩!」

和「あら生徒会書記さん、何か用?」モシャモシャ

書記「あの…よかったら一緒に回りませんか? 学園祭…」

和「あのねえ、私たち生徒会役員でしょ。見回りしてる人が更に回ったらどうなるのよ」モシャモシャ

書記「そ、そうですよね。ごめんなさい、私ったら…」

和「謝らなくていいから、回って」モシャモシャ

書記「…はい?」

和「見回りしてる人がもう一段階回ったらどうなるのか見たいから、回って」モシャモシャ

書記「え…と…。こう…ですか?」クルクル

和「(モシャモ…あ、紙ちょっと食っちゃった…) あまり面白くなかったわね、ごめんなさい。どこかでお茶でもしましょ」


和「あんまり暇だったのでお化け屋敷に入ったのはいいけれど」

和(正直ちっとも怖くないわ…)

お化け役「ウボアー!!」

和「結!」

化け役「!?」

和「滅!」

化け役「やられたー!」バッタリ

和「ヤッター!」シュバッ

化け役「! ヤッター!」

和・化け役「「ヤッターマーン!!」」

まあそんなこんなでライブは成功した

打ち上げに呼ばれたけど先生に見つかって仕事しろって怒られた

ちゃっかり憂は打ち上げに参加するらしい羨ましい

和「お腹空いたなあ。見回りついでに何か食べよう」

模擬店の焼きそばだの何だの買ってベンチに座った

パクパクモグモグ

こうしてる間に音楽室で唯たちは楽しく打ち上げしてるのかあ

パクパクモグモグ

何で私ひとりでお昼食べてるんだろう

パクパクモグモグ

和「泣か~ないで~泣か~ないで~大切な~ひと~み~よ~…」

パクパクモグモグ…

ズバーン!!

唯「あ、和ちゃん!」

和「みんな、ライブお疲れさま。ジュースだけど、これ差し入れ」

律「おおうありがとー!」

紬「今お茶入れるわね」

憂「和さん、ここどうぞ」

和「ありがとう、憂」

唯「和ちゃん。ちゃんと私たちのライブ見てくれた?」

和「もちろん。特等席で見させてもらったわ。唯、かっこよかったよ」

唯「え、えへへ…面と向かってそう言われると…んふふ」ニヨニヨ

澪「…あれ、そういうえば生徒会の仕事は終わったの?なんか先生に捕まってたみたいだったけど」

和「……先生の死は、無駄にはしないから…」


春!三年生!

律「番号を確認します!」

律「ジャガージュン"いち"!」

唯「かって"に"改蔵!」

紬「目暮十"三"!」

澪「プラモ京"四"郎!」

和「我が名は"ゼロ"…!」

律「みんなおんなじクラスだぁーい!!!」

唯「おめでとう」

律「おめでとう」

紬「おめでとう」

憂「おめでとうございます」

梓「おめでとうございます」

和「みんな…」

和「ありがとう」ニコッ

唯「よかったね、和ちゃん!」

和「うん…本当に…よかった…」

澪「あの、私…にはない…の…?」


帰り道

今日は始業式だけだったから唯と二人で直帰

和「ねえ、唯…」

唯「なあに?」

和「手、つないでもいい?」

唯「…? うん。いいよー」

…ギュッ

唯「えへへ…。今日は和ちゃんが、甘えんぼさんな日?」

和「うん…ちょっとね」

和「私、今年は唯と同じクラスで本当に良かった。二年連続で違うクラスになってたら、…今頃泣いてるかも」

唯「私も~。去年は和ちゃんいなくて淋しかったんだ~」

和「…ホントに? 律と紬がいたじゃない」

唯「和ちゃんだって澪ちゃんが居たでしょ?」

和「それは…そうだけど」

唯「ね。軽音部のみんなもそうだけど、和ちゃんも、私の大切な人なんだから」

和「…ありがとう、唯。私も、唯と同じ気持ちだよ」

唯「えへへ~。今年もよろしくね、和ちゃん!」

和「うん。こちらこそ。よろしくね、唯」

唯「…もう家に着いちゃった。早いね~」

和「ほんとに。話してるとあっという間ね。それじゃ、唯。また明日」

唯「うん。ばいばい、和ちゃん」

…今日遅くまで話さなくても、明日になればまた会える。

部活や生徒会で一緒に帰れなくても、同じクラスなら好きなだけ一緒にいられる。

そういうことが私にとっては幸せでしょうがない。

和「ずっと~な~が~めてい~た~…」

おわり



最終更新:2010年01月25日 04:02