白「へ~……やるね。ま、50%だからね。1.2回なら避けられても不思議はないか」

澪「次は私のターンだな」

空砲を確認したと同時に黒服がやってきて、私の持っていた二丁の拳銃を回収。
そして新たな黒い拳銃を二丁用意してきた。

白「さ、次は君が弾を込める番だ。当たることを祈りなよ」

澪「……」

カチャリ────

白「ふふ、思ったよりサバサバした性格なのかな? それとも決断力があるのか……怖がりな澪ちゃんはどこに行ったのかな?」

澪「……どうぞ」

黒服「はい」

弾を込めるところは黒服の人にも見えていない……ここだけは私だけが知っている事実。
正解は引き金によってのみ明かされる……。

引いた方の敗北と言う名の事実と共に……。

黒服「どうぞ」

白「サンキュー」

持って来られた拳銃を見るや否や、白は驚くべきことを告げた。

白「澪ちゃんが弾を込めるまでに左を見た回数6、右は3。肩の動き、視線の落とし方からして拳銃は弾を込める方にしか触っていない……」

澪「なっ……!」

白「黒服の人は僕の方を向いたまま澪ちゃんの拳銃を回収していた……ならここに持って来た時に黒服さんが左手に持っていた拳銃は澪ちゃんの机の上の左にあった公算大……」

澪「っ……!」

こいつ、悪魔か……!

白「そして極めつけは……よっと」

澪「なにを……!?」

黒の拳銃を光に当て何やらしている。

白「フフフ……指紋だよ。黒い拳銃だからね、わかりやすいんだ。ほーら、弾装の部分に君の可愛いい指紋がたっぷりついてるよ……ククク……!」

澪「なっ……そんな……」

白「言ったよね~僕? 人は何故か50%と言われるとその確率に身を任せるって……」

白「こうやって小さなヒントをたどって行けば……99対1にもなるのにさ」

白「フフッ、こっちにしよっと」

迷わず選ぶと白は引き金を引く……。

カチリッ──

鉄が動いただけの渇いた音が、次の私の死を予感させた。

白「さっ、次は澪ちゃんの番だよ~?」ニコニコ

この男……悪魔じみている……。

発想の外……確率外を突いてきたっ……!

白「僕は澪ちゃんと違って優柔不断だから~いっぱいベタベタ触っちゃうんだ~。わかるかな~? なんて」

澪「……」

そうか、これは……。

確率を埋めるゲーム……!

そしてそれを如何にして引かないかという勝負……!

白「安心してよ澪ちゃん……もうこれで終わりだから、さ。フフフ……!」

澪「っ!!!」

澪「あのっ!!」

黒服「はい」

澪「あの黒い拳銃じゃないやつにして欲しいんですけど……」

白「ふふ、今更そんなことしても無駄なのに……ま、いいんじゃない?」

黒服「了解しました」

黒服が奥へ行くと、現れたのは先ほどとは違う白銀の拳銃。

白「おっ!? もしかしてコルト? そんなもんでこめかみに撃ち込んで大丈夫? 死んじゃわない?」

黒服「このゲーム専用に作られておりますので、大丈夫かと」

白「ならいいんだけどさ! 澪ちゃんに死なれても困るしね~。ああ別の意味では死んでもらわないと困るんだけど」

澪「……次からこの拳銃で勝負ってことでいいですね?」

白「わかったよ。そこまで指紋を気にするかな~普通。僕みたいにベタベタ触ればわかんないと思うんだけど」

澪「……選択を」

白「全く急かすね~君は。じゃあこっち」

カチャリ──

白「はいこれ澪ちゃんに」

黒服に手渡しする白。先程の私のミスを全て潰している……。
垣根なしに50%勝負と言うわけか……。

黒服「……どうぞ」

机の上に置かれる二丁の拳銃……。

澪「……」

二ターン目、同じ50%という確率の中で行われていた筈のゲームで……何故か私が圧倒的に追い込まれているかのような感覚……。

確率支配ゲーム、とでも言おうか……。

何故だろう……このまま選択すれば、私は間違いなく自分を撃ってしまう……そんな気がする。

白「選択を」

澪「……」

それでも、選ぶしかない。

50%を。

澪「……」

仕切りの中、私しか選べない中、私は一つを選び出し……それをこめかみに当てる。

白「じゃあね、澪ちゃん……楽しかったよ」

ヒラヒラと手を振る、何か確信でもあるのだろうか……。

私はただ、黙ってその白銀の拳銃の引き金を引いた────

カチリッ────

白「なっ……!」

白の顔が驚きに歪む。

そう、弾は出なかった。

私は選ばなかった、50%を。

澪「……さ、次はあなたの番ですよ?」ニコリ

黒服にさっきの拳銃を渡し、今度は撃つ為の拳銃と弾を一発もらう。

カチャリ──

迷わず選択。

澪「お願いします」

黒服「はい」

それを白の元へ。

黒服「白様、どうぞ」

白「バカなっ……! バカなバカなバカなっ……! 出ないわけがないっ……! あり得ないっ……! だってあの拳銃には……!」

澪「両方弾が入ってた────」

白「なっ……!」

澪「そうでしょう?」

白「なんで……?」

澪「私もあなたと同じことをしていたからです」

澪「さ、引き金を引いてください」

澪「弾が入っている確率、50%と50%を……ね?」ニコリ

白「イカサマだっ……! やつはイカサマをしたぞっ……! 黒服っ……!」

黒服「いえ、私が見ていた範囲で、彼女にイカサマは認められません」

白「な、ならさっきの拳銃を持ってこいっ!!! 両方に弾が入っているはずだっ……!
それか奴を今すぐ身体検査しろっ……!」

黒服「どうあれ彼女は拳銃を選んで引き金を引いた、それでそのターンは終了となります。次は白様、あなたが引く番です。五分以内に引き金を引いて見せてください」

白「ぐっ……!」

白「(バカな……! バカなバカなバカなっ……!
バカっぽい女だと思って軽く捻れると思っていたのに……!!!
この俺が……!!! こんな女にっ……!!!)」

澪「ほら、指紋とかさ、私の動作とか思い出して……? 何かヒントが得られるかもしれないよ?」

半笑いでそう告げる澪。

白「くううっ……!」

黒服「残り1分! さあ、早く!!!」

白「うおおおおおおお!!!!!!!」

白は無造作に拳銃を掴み上げ、こめかみに当て、そのまま引き金を引いた、、、


パァーンッ────と、渇いた音が、澪に勝利を運んできた。


黒服「どうぞ。金のリングです」

澪「ありがとう」

そのネックレス式リングを首にかけると、澪はまた大人しい雰囲気を取り戻す。

澪「良かった……勝てて」

黒服「……ちょっといいですか?」

澪「は、はいっ」

黒服「色々と気になることがあるんですが……勿論今更何があっても勝ちを取りやめ何かには致しませんから。話してもらえないでしょうか?」

澪「……なら、ちょっとだけ」

黒服「ありがとうございます。じゃあ順を追って。いつから気がついてたんですか?
この支配人必勝のゲームに」

澪「必勝、はどうかな……? 最初の私の攻撃の時、弾をいれてたらわからなかったよ」

黒服「まあキレるものならこのゲームが確率の支配だとすぐにわかるとは思いますが……普通のものならまず気づきませんよ」

澪「それにそうすると必ず指紋が二つについちゃうから最高でも50%でしか勝てる機会がなかった……」

澪「だから私はこれを見て、この部屋に入って、逆に必勝を作り上げた……」

黒服「それは……変えた時の拳銃。それで支配人のを凌いだんですね」

澪「最初の流れから言うと私は部屋の前でこれを拾った。そしてこのギャンブルを承諾」

澪「ルールを聞きあっちの不正なしでの必勝パターンを考えた場合一回目は抜いてくると思ったんだ。だから一回目は迷わず引いたよ」

黒服「確かに。引き金を引く側が弾を抜くことは禁止されていますが込める方が弾を入れるか入れないかは自由……」

澪「そう。50%二回で運否天賦するより二回目で100%の確実に殺せる方を取った方が勝率は高い」

澪「だから私も一回目は弾を入れなかった。その弾を次に入れる為にね」

黒服「つまり両方とも初めは空撃ちだったってことですか……」

澪「うん。でも見た目上は駆け引きが成り立っていた……」

黒服「二ターン目、支配人は一回目に込めなかった弾と自分からもらった弾を込めて澪さんに渡した……」

澪「そう。このゲーム圧倒的に先攻が有利。もし後攻なら二回も50%を潜らなきゃならない。しかも二回目はノーヒントで。
だから先攻だけは譲るわけには行かなかった……」

澪「だからこのゲームは元々支配人が先攻スタートという設定のゲームなんでしょう?」

黒服「はは、そこまで見破られていたか。支配人に先行を取らすように言われていたんでね。ちょっと細工させてもらったよ」

澪「普通ならここで私の負けは確定していた……けど私にも確率の外の出来事があった」

黒服「それが拾った拳銃かい?」

澪「うん。この仕切りのおかげでバレずにすんだよ」

黒服「いくら支配人が弾を二発入れたと言っても引き金を引いた、という事実確認しか出来ない自分にはそれを見届けるしかないからね」

澪「三人が三人とも第三者だったからこそ勝てたってことかな……。そして二回目、私は二発弾を入れ、白は引くしかなかった……あなたが味方じゃない限り弾の入っていない拳銃は降ってこないんだから」

黒服「……ということはもしかして勝負は君がその拳銃を手に入れた時から決まって……?」

澪「……しいて言えば、この白銀の拳銃をどうやって引っ張りだすか、それだけかな……私が勝負していたのは」

黒服「っ……!!!」

澪「じゃ、次のギャンブルに行かないと」

ガチャリ──


斎藤「……お嬢様のお友達は化物かもしれませんよ……」

斎藤「次のギャンブル……か。ゲームの言い間違いじゃないのか……?」

斎藤「ギャンブルゲーム……彼女にとって確率などないのかもしれないな……」











最終更新:2011年10月27日 00:34