梓「ベットから起き上がれない……」

梓「腕に力が入らない……」

梓「はぁ……」

コンコン

梓(お母さんかな)

梓「はーい」

ガチャ

唯「おじゃましまーす……」

梓「えっ」

唯「あずにゃん大丈夫?」

梓「あ、はい……一応」

唯「それとお土産のバナナだよ」

梓「あ、ありがとうございます。でもどうして……」

唯「もちろんあずにゃんのお見舞いに来たんだよ」

梓「そうですか……わざわざありがとうございます。んしょ……っ……あぅ」

唯「そのままでいいよ、無理しないで」

梓「すいません……」

唯「起きるのもつらいんだ……」

梓「ええ、身体に力が入らなくて……」

唯「そっか」

梓「はぁ……」

唯「つらい?」

梓「いえ、どちらかというと楽というか何も感じないというか……」

唯「そっ、か」

梓「あぁ……もうずっとこのままでもいいかな」

唯「え」

梓「もう疲れるのやだなぁ……」

唯「あ、あずにゃん!」

梓「……あ、バナナ食べてもいいですか」

唯「あ、うん……。食欲はあるみたいだね、よかった」

梓「……」

唯「はい、どうぞ」

梓「どうもです……あっ」

ポロッ

唯「あっ、持てないか……食べさせてあげるね」

梓「すいません、やっぱりいいです」

唯「えっ」

梓「なんか……食べなくてもいいかなって」

唯「食べないと元気でないよ?」

梓「……」

唯「お昼何か食べたの?」

梓「今日は何か食べたっけ……食べてないかも」

唯「だめだよちゃんと食べなきゃ。ほら、食べさせてあげるから」

梓「いや……なんかもういいです」

梓「食欲なくなっちゃいましたし……はぅ」

唯「あずにゃん……」

梓「……すいません、私寝てもいいですか?」

唯「え……」

梓「おやすみなさい、ゆいセンパイ……」

唯「あ、ずにゃん……」

梓「……」

唯「ねえあずにゃん」

梓「……」

唯「あずにゃんてばっ!」

梓「……」

唯「まだ起きてるんでしょ?」

梓「……」

唯「このままじゃ本当に起きれなくなっちゃうよ?」

梓「……」

唯「バンドは? 軽音部は?」

梓「……もういいです」

唯「っ……」

梓「……」

唯「……よくない」

バサッ

梓「……ふとん返して下さい」

唯「嫌」

梓「じゃあいいです……」


ドサ

梓「っ」

梓「……重いです。どいてください」

梓「……」

梓「……」

梓「……ゆいセンパイ?」

梓「あっ」

梓「……は、離してください」

唯「……」

梓「んっ……」プルプル

梓(力が入らない……)

梓「な、何のつもりですか……」

唯「っ……」

梓「……え、ちょ」

梓「顔近づけないで下さいっ……あっ」

梓「ち、近すぎ……」

唯「……ん」

梓(うわっ!)クルッ

唯「ちゅ……」

梓「なっなにしてるんですかやめて下さい!」

唯「……やだ」

梓「や、やだやだ、やめてっ」

唯「嫌なら自分で振り解けばいいじゃん」

梓「そんなの今の私には出来ないですっ」

唯「ほんとに?」

梓「ほんとですっ。力が入らないんで――ひあっ!?」

唯「んちゅ、ちゅる……」

梓「何でそんな事……!」

唯「あずにゃんが顔をそらすからほっぺにキスしちゃった」

梓「そうじゃなくてどうしてこんな事をするのかって言ってるんです!」

唯「ねえ、こっち向いてよ。……ちゅぷ」

梓「んんっ! ん~~!」

唯「もう少しで唇なのに」

梓「んぷっ、手離して下さいっ」

唯「……いいよ?」

パッ

梓「え……」

唯「そのかわりあずにゃんにはこっち向いてもらうから」

グイッ

梓「あべっ」

唯「……」

梓「ちょ、まっ、やめて……」

唯「嫌なら抵抗したら?」

梓「だから力が……」

唯「手は空いてるじゃん」

梓「う、く……近いですってば!」

唯「そりゃあこれからキスするんだもん」

梓「じょ、冗談はこのくらいに……」

唯「あずにゃんこそ軽音部はもういいなんて冗談はやめてよ」

梓「それは……」

唯「今のあずにゃんなら何でも出来ちゃいそうだね」

梓「えっ?」

唯「唇こじ開けるのだって楽に出来そうだし、口も簡単に開いちゃいそう……くす」

梓「ひっ」

ガシ

唯「あ、抵抗する気になったんだ」

梓「……くぅ」プルプル

唯「ほら、もっと力を入れないと」

梓「こ……の……!」

唯「そんなんじゃ止められないよ?」

梓「うぅ……」

唯「ん……」

梓「あっ……」

梓(やっぱりだめ……)

唯「んちゅ……んぷ」

梓「んふっ……ん……」

唯「てゅぷ……はぉ……ちゅうぅ……」

梓「んっぷ、ん……んふ……っ…………」

唯「ちゅ…………はあ」

梓「んっ…………」

唯「さっきあきらめたでしょ?」

梓「そんな事……」

唯「だって力が抜けたもん」

梓「も、元々力が入らなかったし……」

唯「んーん、あずにゃんは折れたんだよ」

梓「えっ……」

唯「もうだめだ、仕方ないって思って妥協した」

梓「……」

唯「キスくらいならって思ったんでしょう?」

梓「それは……」

唯「……」

梓「ゆいセンパイならいいかなって……」

唯「そうかなあ」

梓「そうです……」

唯「じゃあ相手がりっちゃんや純ちゃんだったら?」

梓「えっ……」

唯「それでもあきらめてたよね」

梓「そっ、そんな事ない……」

唯「そんな事あるよ……多分堀込先生でもあきらめてた」

梓「そんな事ないですっ……!」

唯「んちゅぷ……」

梓「わぷっ……ん、んー!」

唯「ぺろっ……ちゅぷぷ……もう抵抗しないの?」

梓「んっ……んぁ……はぷ……!」プルプル

唯「さっきより力が入ってないよ……」

梓「くぅ……!」

唯「……他のものも貰っちゃおうかな」

梓「え……?」

唯「……」ゴソ

梓「ゆいセンパイ、何を……っ!?」

唯「ココとかね」

梓「っ! い、や……」

唯「……」スッ

梓「ほ、ほんとにもうやめて下さい! これ以上は……」

唯「……」

梓「ねえ唯先輩! やめて下さい……!」

唯「……」スリスリ

梓「ひゃあ! さ、触らないでっ!」

唯「……」

梓「お願い、ほんとにやめて……!」

唯「……」

梓「う、あ……やだぁ……!」

唯「……」

梓「私動けないんですよ? それなのにこんな事して……最低です!」

唯「あずにゃんはまだ動けるでしょ」

梓「動けませんっ」

唯「またまたぁ、そんな事言いつつも私にもらわれるのが嬉しかったり?」

梓「なっ……!」

唯「なんか濡れてるみたいだし、さっきのキスも心の奥では……」

梓「そんな事ないっ!」

唯「だとすると私以外でもいいのかぁ。あずにゃんてあれだね、えっと、淫乱」

梓「っ……!」

唯「なんだか残念だなあ、でもどの道すぐなくなりそうだからあんまり価値なさそう」

梓「……っ」プルプル

唯「でもせっかくだからもらっておこうかな。バナナ代として――」

梓「唯先輩の……馬鹿ぁーーーー!!」

ゴチンッ!

唯「うぶっっ!?」

梓「あぐっ……!」

唯「お、おおお……!」

梓「はあっ……はあっ……!」

唯「い、いひゃいよぉ……!」

梓「唯先輩の石頭……」

唯「あずにゃんのほうがいしあたまだよぉ……」

梓「唯先輩が悪いんです」

唯「ん、そうだねごめんね」

梓「どうしてこんな……あれ、身体が動く」

唯「よかったぁ~」

梓「え、っと、もしかして……」

唯「んー?」

梓「いや、それでも許し難い……」

唯「あずにゃん……元気出た?」

梓「これは元気とはいいません」

唯「でも元気そうだよ?」

梓「……ほんとに怖かったんですからね」

唯「あ、うん……」

梓「今だって……」

唯「そうだ! 元気になったならバナナ食べられるよね!」

梓「こんなにバナナが……って話聞いてくださいよ!」

唯「新しいの向いてあげるから……」ツー

梓「唯先輩! 鼻! 鼻血出てます!」

唯「え、うあっ!?」

梓「ティッシュ使ってください、ってそれバナナ!」

唯「あっもう時間が……」

梓「え?」

唯「あずにゃん! もう一回ちゅーしよう!」ガバッ

梓「しませんよっ!」ベチン

唯「へぶっ」タラー

梓「うわっごめんなさい鼻血が!」

唯「らいじょーぶらいじょーぶ、それよりちゅーを……」

梓「だからもうしませんってば!」

梓「もうさっきまでの私じゃないんです!」

梓「あきらめないし折れません!」

――――

――――――――

――――――――――――

梓「……むあっ!?」

梓「あ、あれ……?」

梓「……」

梓「え、夢?」

梓「……」

梓「わ、私はなんて夢見てるのよ……」

梓「……でも、動けるようになった。力も入る」

梓「なんだろ……私ってそういう願望があったのかな……いやいや」

梓「それにあれじゃただのショック療法だよ……」

梓「もっとこう、やさしく……」

梓「……それじゃあダメだったのかも」

梓「でもこれで歩けるようになった」

梓「よし、また明日から頑張るぞー!」

ぐぅ~

梓「……うん、ちゃんとお腹も空くね」

梓「何か食べよ」

梓「……あ」

梓「バナナ置いてある……食べちゃお」

梓「いただきます」

梓「……あれ?」

梓「このバナナ、血がついてる……?」



END



最終更新:2011年11月03日 19:20